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第33話 魔王、結局全ての王子と会う

「よし、後は第五王子で最後だな」


「あなたはまだ王族に文句を言い足りないんですか!」


 ついにスカーレットがオレの言う事を聞かなくなった。第五王子はまだ幼いので、これまでの王子たちと同じようにオレが暴言を吐くのなら会わせることはできないと言う。少し話を聞くだけなのに、困った。

 すると、オレの代わりにユウが説得をしてくれた。


「まあまあ。いいじゃねえかスカーレット。お前、こいつを客観的に見てみろよ。こいつの正体は魔王なんだぜ?お前たちは問答無用で人間を殺すと思い込んでいた魔王が、王家の家庭の事情に口出ししてるんだぜ?それだけで爆笑もんじゃね?俺はさっきから笑うのを我慢するのが大変だぜ」


「わ……笑いごとではない!自分が使える王家をバカにされたのだぞ!」


「お前は怒ってるかもしれないけど、後で王子たちに聞いてみろよ。あいつらは意外と怒ってないかもしれないぜ?」


「なんだと?」


「最初こいつ、王位継承については関わらないとか言ってただろ?多分今は、誰が王位を継ぐのが良いか考えてるんだぜ?そのために全員の話を聞きたいんだろ?俺も今日こいつと一緒に行動し始めたばかりだけどな、偉そうにしてる割にすぐに計画通りいかなくなって笑えるぜ。お前も計画通りに行かないことがあった時は、こいつを参考にするといいぜ!ぎゃはは!」


 良く分からんが、ユウはオレのことを笑っているようだ。くっ……。しかしオレほどの男が些細なことで腹を立てるわけにはいかない。

 とりあえずユウの説得のお陰で、第五王子との面会の許可を取ってもらった。しかし第五王子はまだ八歳と幼いため、その母である第五王妃と、その姉第一王女と一緒に面会をすることになった。

 第五王子と話してもまだ自分の意見もないかもしれないなと思っていたが、実際に会ってみると八歳とは思えないほどしっかりとした受け答えをする子供だった。


「僕が第五王子のピエール・カイゼ・シャンダライズです。こちらが母の第五王妃ミッシェル。そして姉の第一王女カーラです」


 そう言って家族の紹介もしてくれた。

 姉の第一王女は少し年が離れているようで、17歳だそうだ。すでに政治に携わっているらしく、魔法省という部署で働いているのだそうだ。

 ちなみに第二王子もいくつかの省を兼任しているのだそうだ。

 第五王子は、姉が優秀だということを嬉しそうに語っていた。自身も早く姉や兄たちの力になれるようがんばりたい言う。


「なるほど。子供だが、お前はすでに自分の考えをしっかりと持っているようだな。ところで第一王子のところに毎夜ガーゴイルがやってくるという話だが、おまえの部屋に来る事はないか?」


「はい。夜に窓から外を覗くと時々その姿を見たことはありますが、僕の部屋に来たことはありません。もし来ても窓には鉄の格子がありますから、入ってこれないと思います」


「そうか。ところで、ガーゴイルは誰かが操っているはずなのだが、第一王子を恨んでるやつは誰だと思う?」


「えっ?誰かが兄上を殺そうとしてるって事ですか?分かりません。でもジャットバイゼン兄上は怖い人なので、嫌っている人はたくさんいると思います。いじわるされて仕事を辞めさせられた人もたくさんいるし……」


「おまえの兄弟の中で、第一王子を殺してでも次の国王になりたいと思う奴がいると思わないか?」


「えっ?!分かりません」


「それでは、お前は王位を継ぎたいと思わないのか?」


「それは兄の誰かがなってくれると思います。僕はまだ子供ですので、大きくなったら国王となった兄を助けられるようにがんばりたいと思います」


 オレの質問に、王子の横にいた王女が顔色を変えた。

 王女もまだ幼さを残した顔立ちながら、殺意の籠った視線でオレを睨みながら言った。


「よもやと思うが、貴様弟の事を疑っているのではなかろうな?」


「フッ。いや、話して分かったが、この第五王子は今回の件とは関係がなさそうだ。おかげでいろいろ分かった。話を聞かせてくれてありがとう。そろそろガーゴイルが来る時間だろうから、行かせてもらおうか」


 そう言って、オレたちは第五王子の部屋から去った。

 すでに外は日が沈んでおり、いつガーゴイルがやってくるかは分からない。オレたちは今夜の警備について話し合った。

 この城は広く、ガーゴイルはどこから飛んでくるか分からない。騎士団たちと一緒にオレたちまで王城の周りを見回りしていたら、オレたちと会う前にいずれかの王子を襲う可能性もある。

 そもそも王子の命を狙っているのが分かっているなら、王子の部屋に現れるのは間違いない。だとしたら最初から狙われている王子の護衛をしていた方がいいだろう。


「狙われている第一王子は、ガーゴイルにやられる前にヴォルトが再起不能にしちまっただろ?守るべき王子は、第二王子、第四王子、第五王子の三人か?」


「いや、第五王子は外してもいいだろう。第二から第四王子のいずれかが犯人だとしたら、それより王位継承権の低い第五王子を狙う必要もない。第五王子は犯人ではなさそうだが、その姉と母親が第五王子に王位を継がせるためにその兄を狙っている可能性もある。その場合にも第五王子を狙われることはないだろう?実際に、他の王子の部屋にも来た事があるガーゴイルも、第五王子の部屋には来たことがないと言っていたしな」


「なるほど」


「それでは、第四王子の部屋をオレが護衛しよう。ユウとスカーレットは、第二王子の部屋を護衛してくれ。それと一応騎士団本部にいる第三王子にも、第二王子の護衛の手伝いをさせてくれ。万が一第三王子が狙われたとしても、一緒にいれば守れるだろう」


「分かった。第四王子のところは、お前一人でいいのか?」


「ああ、あいつは心の中で他の兄たちをバカにしているようだから、お前たちが一緒にいて気分が悪くなるだろうからな。その代り第二王子のところにガーゴイルが出た時は、ユウ、頼むぞ」


「オウ。任せとけ!」


 そうしてオレたちは別れ、それぞれ守る王子のところへと向かった。

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