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第24話 魔王、死霊に襲われる

「ギャアアア!出たあああ!」


「≪恐怖フィアー≫」


 ジュードの悲鳴と同時に死霊(レイスの呪文が詠唱される。魔法がかかる前からひどく恐怖していたため、魔法の効果かどうかは分からないが、ジュードは真っ青な顔になり腰を抜かしてその場に倒れ込んだ。


「ジュード!大丈夫か?」


 オレが心配すると同時に、死霊(レイスの次の呪文が詠唱される。


「≪催眠スリープ≫」


 ジュードはあっさりとその魔法にかかると、そのまま静かに眠ってしまった。先ほど起こした遭難者の男も同時に魔法にかかり再び眠りに落ちた。


「やれやれ……」


 死霊(レイスの魔法攻撃は止まない。


「≪麻痺パラライズ≫」


 だが既に睡眠状態の者には、麻痺の魔法はかからないようだ。眠ったままである。


「≪恐怖フィアー≫」


「なるほど。この遭難者たちを麻痺させたのはこいつのようだな。出会いざまに恐怖フィアーで反撃を封じ、催眠スリープで戦闘不能に。催眠スリープが効かなかった相手には麻痺パラライズを掛けて動けなくさせるのか」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 バタン!と扉が開く音に、冒険者ギルドの中に居た者たちの視線が集中する。そこにいたのは、少し前に回復魔法使いを呼びに行った男だ。


「悪い!知り合いの回復魔法使いヒーラーのじいさん、腰痛で動けないらしい」


「回復魔法使いのくせに自分の腰痛も治せねえのかよ!」


 思わず的確なツッコミが飛ぶ。


「どうする?他に回復魔法を使えるやつはいねえか?麻痺回復用のポーションを買い込むか?」


 その周辺の数名は、そんな会話をしながらああでもないこうでもないと騒ぎ立てていた。


「なんだか騒がしいな?」


 墓場から帰って来たヴォルトたちは、討伐した分のスケルトンの報酬を受け取りに来ていた。

 ヴォルトたちが騒いでいる集団を横目で見ていると、受付嬢が預かった冒険者タグと、報酬分の銀貨を持ってくる。


「はい、ご苦労様。貴方たち三人合計でスケルトン二十一体の討伐が確認できたわ。一体当たり5Gだから、全部で銀貨十枚と銅貨五枚ね。それとユウさんは5級冒険者にランクアップしました」


 そう言って、カウンターの上に三人の冒険者タグと銀貨、銅貨が置かれる。

 死霊レイスの放った魔法は、ユウには常時発動型の勇者魔法≪束縛無効エターナルフリー≫の効果のため全て無効化され、、高位の魔法使いであるヴォルトにも全く通用しなかった。

 魔法が一切通じないにも関わらず、他の攻撃方法がない死霊レイスは必死で魔法を唱え続けていて、泣きそうな顔をしていたような気がする。

 そんな死霊レイスは、ユウの≪殲滅し尽くす聖剣エクスキューショナー≫の一振りで簡単に消滅した。

 死霊レイス退治後は、寝ている者を起こし、麻痺している者を近くの神殿に連れて行き回復してもらった。治療費はもちろん麻痺した者の自腹だ。


死霊レイス討伐分はないのか?」


 冒険者タグには自動的に討伐したモンスターの名前と数が登録されるらしく、彼らが死霊レイスを討伐したことは受付嬢も分かっているはずだ。だが、受付嬢から返って来た返事は残念なものだった。


「ゴブリンみたいないつでも依頼が出ているものなら報酬は出るけど、そうでなければ依頼のない魔物討伐は報酬はでないわよ。お金を稼ぎたいならちゃんと依頼が出てから討伐することね」


 結局もらえたのは、スケルトン退治分の105Gだった。


「そうか、仕方ないな。それじゃ三人で割ると、一人当たり銀貨三枚と銅貨五枚だな」


「それしかないのか?それじゃ俺が登録する時にヴォルトから借りた銀貨五枚すら返せねえじゃねえか」


「すぐに返せとは言わんから安心しろ、ユウ。コツコツ貯めるしなないだろう」


「なあ、ヴォルト、ユウ。俺は今回、麻痺パラライズを食らって足を引っ張っちまったから、俺の取り分も二人で分けてもらってもいいぜ」


 申し訳なさそうにジュードが呟いた。


「何言ってるんだ。パーティーを組んだなら報酬は山分けするのが普通だろう?気にするな。それにお前は麻痺の治療費もあるんだから。それじゃオレとユウは人と会う用事があるから、ここでお別れだ」


「ああ、世話になったな」


 そうしてヴォルトたちとジュードは別れる。

 三人が冒険者ギルドを去ってからもまだ、ハーケンたちは死霊レイス退治の準備に騒いでいた。

 とっくに死霊レイスは退治され、助けに行く仲間は神殿で治療を受けているとも知らず。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 疲れた表情で、待ち合わせ場所の水精霊神殿に辿り着いたユウとヴォルトを待っていたのは、先に到着していた騎士サラだった。


「待たせて悪いな。ちょっと冒険者ギルドが立て込んでたんで、報酬もらうのに時間がかかっちまった。ん?そっちの人は?」


 サラの横には、眼光鋭い中年の男が立っていた。


「いえ。大丈夫です。こちらは私の上司のキースです。キースさん、こちらが勇者ユウ様と……、こちらが冒険者のヴォルトさんです」


 サラはヴォルトが元魔王であることは隠し、転生した勇者ユウを上司のキースと呼ばれる男に紹介した。

 キースは一礼した後、ユウの顔をじっと見つめる。


「勇者ユウ様。私はヴァレンシュタイン王国騎士団のキースと申します。サラからユウ様が本物の勇者だと報告をもらいました。ですが正直、私にはまだ信じられません。が、本物の勇者であれば、なぜこの国に現れたのかなど色々とお話を聞かせていただかなければなりません。一度我が騎士団の団長とお会いしていただけないでしょうか」


 キースの態度こそ下手に出てはいるが、それは事実上の騎士団からの出頭命令だった。


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