第10話 魔王、冒険者ギルドに登録する
『冒険者ギルド』と書かれた看板のある店の扉をくぐる。その店は、食堂兼酒場となっていた。店内の奥にあるカウンターが、この町の冒険者組合の受付のようだ。
オレはそのカウンターに行き、呼び出しのベルを押す。
食堂の方にいた店員が、冒険者ギルドのカウンターにやって来た。
「はいはーい。いらっしゃいませ。」
「冒険者ギルドに登録したいんだが。」
「新規登録ですか?タグの紛失による再交付ですか?」
「新規登録だ。」
受付の女は、不審な顔でオレを見る。
「冒険者としての登録は今回が初めてですか?」
「そうだ。確かに俺は強いが、冒険者として登録するのは今回が初めてだ。」
「今までどんな仕事をされていたんですか?」
「仕事?」
何と言えばいいのだろう?魔王やってましたとは、さすがに言えないな。しかしでたらめを言う気にもなれん。
「ん~…、」
言葉に詰まっていると、女は言った。
「あ、別に言いにくいのでしたら大丈夫です。別に細かい個人情報まで詮索しませんので。それでは現在の職業は何ですか?戦士ですか?武器をお持ちではないようですので格闘家なのですか?」
「本業は魔法使いだな。それと狩人としてのスキルもある。」
「……まじめに答えてください。」
「どうしてだ?オレは至ってまじめだぞ?」
「そんなガタイの良い魔法使いがいるわけないでしょう?」
「ここにいるぞ?」
「…それじゃあ、得意な魔法は何ですか?」
「ん~?魔法の矢かな?」
「チッ、初心者か…。まあいいや。それじゃあ魔法使いで登録しておきますよ。」
「ん?ああ、よろしく頼む。」
なんかこの受付の女に舐められてるような気がする…。
「では、新規登録費用は銀貨3枚になります。」
「高っ!何にでも金を取るんだな?」
「何を言ってるんですか?冒険者に登録したら、冒険者タグが交付されます。それには冒険者の情報だけでなく、討伐したモンスターの情報が自動的に書き込まれるようになっているマジックアイテムです。それだけで銀貨3枚分の価値があるんです。登録事務手数料をタダにしてあげてるんですからね!」
「ああ、分かった分かった。オレが悪かった。それじゃその登録とやらを頼む。」
やれやれ、田舎者は気が短くて疲れる。そう言ってオレは銀貨3枚を差し出した。
書き始めて2か月が経ちましたが、ようやくこれであらすじのところまで書き上げることができました。