測り合い
皆さん、新年明けましておめでとうございます。
うっかり寝落ちしないで投稿出来ました。寝ちゃいけないときに限ってよく落ちるので良かったです(笑)
年末年始にわたってお付き合いくださった方、もし、いらっしゃいましたらお礼の言葉もございません。
ただひたすら感謝です。
それではヴォオス戦記・暁、第4話をお楽しみください。あ、今回はちょっとだけ長いです。
薄暗いはずの倉庫の中は、一人の男によって明るく照らし出されていた。
でかいとは思っていたが、背筋を正して立つ今の姿から、その背丈が2メートルはあることがわかる。
不思議とそうは見えないが、実は大男だ。
埃の微粒子が空中を舞う中、淡い光を受けて、男の頭髪は大陸でもっとも換金価値が高いと言われるヴォオス金貨よりもはるかに美しい金色の輝きを放っていた。
つい先ほどまでは、開いているのか閉じているのかよくわからないような細い目をしていたのが、今は翠玉をはめ込んだかのような、深い緑色をした大きな瞳がオリオンたちを見渡していた。
ヘリッド同様目じりが下がっており、にやけた口元と相まって、妙な愛嬌を男に与えていた。
「カーシュナー様!」
その男に対し、先程倉庫の上からはしごを回収した男が、非難の響きのこもった声をかける。
こちらからも只者ではない気配が感じ取れる。
元暗殺者であるオリオンたちは、その戦闘能力もさることながら、五感が常人に比べてはるかに鋭い。それは、暗殺という目的の性質上正面切っての衝突がほぼなく、相手に気取られる前にその命を刈り取ることを目的としているためだ。
暗殺者にとってその対象となる人物と正面から向き合うような状況に陥ることは下策と言えた。
五感に優れるオリオンたちは、人間の動き、呼吸といった、日常気に留めることのないようなわずかな所作から、その人間の能力をある程度見極めることが出来る。
様付けで呼んでいることからどうやらカーシュナーという男の部下のようだが、その実力は目の前に立つ不敵な男を上回るかもしれない。
だが、人間としての性質は極めて正直で、その実力からくる脅威は測ることが出来る類のものであった。
だからと言って簡単に手に負えるとは言えない。この中でまともにやり合えるのはオリオンだけだろう。
腕に自信のあるリタとヘリッドも、正面切っての戦いでは及ばないと素直に認められるだけの強さだ。
「ダーン。俺は彼らと腹を割って話をしたいんだ。つまらない隠し事はなしだ」
正体をあっさりと明かしたことに対する非難に、カーシュナーは微塵もゆらぐことなく言い返した。
がっくり肩を落とすダーンの様子が、「ああっ、これは言うだけ無駄だ。絶対に曲げないぞ」と、言葉にするよりも雄弁に物語っていた。
その正直な人柄に、リタもヘリッドも素直に好感を持った。
「暗殺者には向かないな」
「向かないね」
ヘリッドとリタは互いの言葉にうんうんとうなずいた。
味方として信用出来るような人間は、暗殺者に限らず、裏社会には不向きなのだ。
「となると、よけいにあの天使さんは食わせ者だろうな」
「脅威って意味で言えば、まったく計り知れない分あいつの方が厄介だよ」
ヘリッドがどこか面白そうに言葉を口にしたのに対し、リタは敵愾心むき出しだ。オリオンの脅威になりそうな存在はすべて排除してやると言わんばかりの目つきをしている。それでもどこか愛くるしく見えてしまうのだから、末恐ろしい。
「うるさい」
無駄口を叩き続ける二人に、オリオンはため息とともに注意した。
二人ぴったりの動作で肩をすくめて舌を出す。彼らが元暗殺者だということを知っている者が見ても、二人が仲のいい兄妹か恋人同士にしか見えないだろう。
「助けてくれたことには礼を言う」
オリオンはそう言うと頭を下げた。
「とりあえず場所を変えないか? ここにいたんじゃまだ助けたことにならないんでね」
カーシュナーがかつらを被り直しながら提案する。
この倉庫の中にいて見つかることはないだろうが、いずれにしても、ここまでは追跡されてしまっている。盗賊ギルドはここを中心に、再度人海戦術からオリオンたちのいぶり出しを行うはずだ。盗賊ギルドに制裁を諦めるということない。裏社会において、なめられるということは死活問題なのだ。
「どこに連れてくつもりか知らないけど、行く当てがあるなら最初から行けばいいだろ!」
カーシュナーの行動をまわりくどく感じたリタが文句をつける。
「リタ、俺たちはあっちの天使さんのことは何も知らない。でも、向うはある程度俺たちの状況を把握している。でなけりゃ俺たちの先回りなんて出来るわけがない。実際、ギルドが総力を挙げて追っている俺らの先を読めたのは、部外者の天使さんだけだ。そんな奴に黙ってついて来いって言われても、素直には従えないだろ? あの天使さんは俺らに気を遣って、まずは正体を見せてくれたってことさ」
ヘリッドが状況を説明してリタをなだめる。
納得はしたのだろうが、素直に認めたくないリタは、鼻息荒くそっぽを向いてしまう。
むくれた振りでごまかしたが、ヘリッドの言葉で、改めてカーシュナーという男の底の知れない力に気づかされたのだ。
これまでギルドの犬共に嗅ぎ当てられることはあったが、先回りされたのは初めてだった。
この男がもしギルドの手先だったら、袋小路に罠を張られ、かなりの数の待ち伏せにあったはずだ。
もし、そうなっていたら、全滅こそしないだろうが、仲間の多くを確実に失っていたはずだ。
そう考えると、恐ろしくもあり、頼もしくもあった。
「今さら疑うつもりはない。好きなところへ案内してくれ」
オリオンの言葉にカーシュナーはうなずくと、倉庫に積まれた荷物の隙間へと一同を案内する。
無秩序に積まれた荷物がちょっとした迷路を形成しており、方向感覚の鈍い者が迷い込んだら簡単には出られないだろう。
カーシュナーはこれと言って特徴のない、乱雑に積まれた木箱の脇に膝をつくと、床板を複雑に動かした。当然埃が舞ったが、カーシュナーが触れた床板から埃が拭われることはなかった。床板は始めから埃が積もっているように巧妙に塗装されていたのだ。
オリオンは口にこそ出さなかったが、その周到さに目を見張った。
盗賊ギルドの歴史は、ヴォオスの建国とほぼ一致する。
王都のことはその主である国王や、偉そうにふんぞり返っている王族や貴族などよりはるかに知り尽くしていた。
つもりだった――。
どうやら盗賊ギルドは、毛嫌いして来た王侯貴族同様、いつの間にか自分たちの力を過信し、知る努力を怠っていたようだ。
「これは、十年や二十年どころじゃないな。それ以前から、ここに通路を作る目的でこの倉庫を作ったんだ……」
ヘリッドが、オリオンが口にしなかった感想を言葉にする。
「この倉庫がじゃない。この区画のすべてがだよ」
ヘリッドの言葉をカーシュナーが修正する。
「!!!!」
これには言われたヘリッドのみならず、オリオンを含めた全員が驚き、呆気に取られる。
「覚えておいた方がいい。金持ちって奴は、時に突拍子もないことを仕出かすもんなんだ」
驚く元暗殺者たちを見て、カーシュナーはニヤリと笑って見せた。
床板の一部を組み替えたことで、床に地下へとつながる入り口が現れた。入り口のすぐわきに掛けられていたランタンを手に取ると、一度奥まで行き、ランタンに火を入れてから戻ってくる。
万が一にも光を外に漏らさない用心が、身に沁みついているのだ。
その素性を問いただしたい欲求に苛立ちながらも、リタは無駄口を叩かず、カーシュナーに続こうとしたオリオンを制すると、地下へと踏み込んだ。
オリオンは自分たちの要であり、希望だ。
敵ではないようだが、得体の知れない男の近くに置くわけにはいかない。
その想いを察したのだろう。カーシュナーという男が嬉しそうに笑い、うなずいた。
なぜか頬が熱くなる。
カーシュナーのひょろ長いようで意外と広い背中を殴りつけると、リタは先を促した。
本気で殴ったのだ。かなり痛かったのだろう。涙目になっている。
もっとも、殴った方のリタも驚きを隠すのに必死だった。殴られたカーシュナーよりも、殴ったリタの方が被害が大きいかもしれない。見事なまでに鍛え上げられた、まさしく鋼のような肉体だったのだ。
後に続いたオリオンが、怪訝な表情をする。
カーシュナーが持つランタンが、足元だけを照らす特殊な構造になっていなければ、リタは表情をごまかすのに苦労しただろう。
オリオンの後から他の仲間たちが続き、しんがりとしてヘリッドが地下へと入ってくる。最後にダーンが降りて来て入り口をふさぐ。明かりがないので手探りで作業を行わなければいけないようで、ヘリッドが手伝っている。
物音一つ立てずに入り口がふさがると、カーシュナーは進みだした。
大陸の心臓とも呼ばれる王都ベルフィストは、下水処理のための地下水路が網の目のように張り巡らされている。そのおかげで他国の王都のように、路地裏に汚水が撒かれるようなことはなく、清潔に保たれている。
地下水路の整備技術も大陸随一で、想像しているような不潔な空間ではなく、どちらかと言うと辺境にわずかに残る地下迷宮のような様相を呈している。
盗賊ギルドはこの迷路のような地下水路を根城とし、ヴォオスの裏社会を支配していた。
物心つく時には地下で暮らしていたオリオンたちは、地上を逃げ回っていたさっきまでと比べてはるかに落ち着くことが出来た。
暗殺者にとって闇は味方だ。
ギルドと決別し、暗殺業から足を洗ったとはいえ、闇が味方であることに変わりはない。
地下がギルドの縄張りとは言え、広大な王都の地下すべてに張り巡らされた地下水路を把握することは出来ない。大陸最大規模の都市が、別の顔をしてもう一つ広がっているようなものなのだ。
さすがのオリオンも、今歩いている場所が王都のどのあたりなのか正確にはわからない。
そんな場所を、自分たちを先導する男は迷いなく歩いていた。
ギルドマスターによる<掟>に対する裏切りで激発したオリオンは、怒りと言う感情を覚えた。
それは、優れていすぎるが故に物事が見え過ぎ、冷え切っていたオリオンの心の一部がようやく一つ目覚めた瞬間だった。
今、また新たに、心の一部が動き出そうとしている。そのことを、オリオンはどこか他人を見るかのように、客観的に観察していた。
新たに解き放たれつつある心の一部は、好奇心だった。
カーシュナーと名乗った神話物語に登場する天使のような容貌をしたこの男のことを、オリオンはまるで測ることが出来なかった。
深くかかっていたはずの洗脳を、教育係だった人物を底の底まで読み解くことで、ごく自然に解いてみせるほど、オリオンの知能と観察力は高い。
その観察眼を持ってしても、この男は強いという程度のことしか見抜けなかった。
理解出来ないという意味では、狂人もオリオンには理解の対象外だった。どこからその人物を読み解いていけばいいのかすらわからない。感情や行動原理がわかりにくい虫と一緒だ。
だからと言って、オリオンの中に好奇心が生まれることはなかった。
理解するだけの価値を感じないからだ。
だが、前を歩くカーシュナーという男は、ギルドを離れ、組織としての力を持たない自分たちはもとより、オリオンを中心とした暗殺者の主要人物たちを欠きはしたものの、いまだに組織としては裏社会を牛耳るだけの力を持つ盗賊ギルドの上を行き、自分たちに先んじて追跡者たちを振り切るための準備をして待ち受けていた。
理解する価値は十二分に持っている。
にもかかわらず、この男はその中身を容易にのぞかせようとしない。
知りたいのに知るべき手段が見つからない。
結果、オリオンは強い好奇心を持つことになったのだ。
カーシュナーは複雑に絡み合った通路を幾度も曲がり、時には方角的に引き返したりもした。
鋭い感覚を持つ元暗殺者たちも、来た道を引き返し、入り口のあった倉庫に引き返すのはさすがに不可能になったころ、カーシュナーは不意に壁の中へ姿を消した。
すぐ後ろを歩いていたリタは突然のことに度肝を抜かれたが、それでも呼吸一つ乱さなかった。
同様に驚いたはずの他の暗殺者たちであったが、こちらもその気配を表に出すようなへまは誰もしない。
その様子を、壁の中へと消えたはずのカーシュナーが、顔だけ出して感心した様子で眺める。
すかさずリタに殴られる。
痛む頭をなでながら、カーシュナーは錯覚を利用して巧妙に隠された入り口に頭をひっこめた。
その後を鬼の形相でにらみつけながらリタが続く。
さらにその後ろから入り口を潜ったオリオンは、入り口を隠すための巧妙な技術を感嘆の想いで眺めた。そして記憶に刻み付ける。盗賊ギルドとたもとを分かった以上、こういった未知の技術は貴重だ。オリオンと同じことを考えたのであろう。前を歩くリタも、カーシュナーに気を配りつつ、あらゆるものを観察している。
しばらくしてオリオンは不意に気づいた。地下の空気の質が変わったことに――。
それと同時にカーシュナーは足を止め、全員に目を保護するように指示を出す。そして足元だけを照らすように調整されていたランタンの覆いを外した。
ランタンの光が照らしだしたその場所は、高さこそないものの、先程後にした倉庫と変わらないほど広大な空間であり、下水設備と直接つながっている地下とはとても思えないほど清潔な空間だった。
湿度はどうすることも出来ないが、火も焚いていないのに、地下にあるおかげで地上の冷え込みとは無縁であった。
質素ではあるが、家具調度も整えられ、必要な物はすべてそろっている。
明らかに地下水路とは全く異なる目的で設けられた空間だ。
「ここは、この区画が整備される際に時の権力者が自分専用に作らせた避難所なんだ。王族すらも知らない秘密の隠れ家でね。その後何代かは受け継がれたんだけど、家系そのものが断絶してしまってね。歴史の闇に呑み込まれてしまった場所なんだ」
カーシュナーがたずねられる前に説明する。
「そんな場所を、なんであんたが知っているんだよ!」
カーシュナーがごく普通にしゃべり出したので、それまで声を出さないように気をつけていたリタが勢い込んで問いただす。
「こういう誰も知らない隠れ家って、あると便利だろ?」
「確かにそうだけど、そう言うこと聞いてんじゃないことくらいわかってんだろ!」
カーシュナーのとぼけた答えにリタがいら立つ。
「リタ。お前がこの天使さんを信用していないように、この天使さんも、俺たちを信用しているわけじゃないんだよ」
また手を出しかねないリタを、ヘリッドがなだめる。なだめつつもカーシュナーを牽制することも忘れない。
「じゃあ、なんであたしらのことを助けたりしたんだよ! どんな理由があろうと、ギルドが今回のことを知ったら、必ず報復に出る。渡るには危なすぎる橋だよ!」
「無条件に寄せられる信頼は、信頼などではない。ただの依存だ。俺たちのことをこの男がどれだけ知っているかはわからんが、信頼するだけの価値があるかどうか確かめたいと言ったところなのだろう」
リタの疑問に、オリオンが答える。
オリオンの言葉を、カーシュナーはニヤリと笑うことで肯定してみせた。
「かなりの距離を歩かされたが、この場所は先程の倉庫からさして離れていないな」
オリオンは問いかけるのではなく、断定する。
「やっぱりね。ずいぶん複雑に歩くからおかしいと思ったよ。あたしらに道順を覚えさせないためだったんだね」
リタがカーシュナーをじろりとにらむ。
「俺たちと言うより、俺たちの中にいるかもしれないギルドの間者にこの場所を覚えさせないためだろう」
「こいつ、あたしらの仲間を疑っているのかい!」
オリオンの言葉にリタが気色ばむ。
「もちろん」
そんなリタの怒気を軽く受け流し、カーシュナーはあっさりと肯定してみせた。
「ふざけんなよ! オリオン、こんな場所とっとと……」
「愚かな味方は、時に賢い敵以上に恐ろしい」
リタの言葉を遮り、オリオンはカーシュナーに向けて言った。
「そうだね」
それに対し、カーシュナーは満足そうにうなずいた。
「信用するに足るだけの情報がない以上、当然必要な防衛処置は施す。あんたは俺たちに、あんた自身を判断する材料として、自分の能力を示してくれたってことか」
「気づいていると思うけど、その辺りのことをどれくらい見抜いてくるかで、同時に君の能力を判断しようとしてもいたんだよね」
カーシュナーはオリオンの言葉を認めるだけではなく、しれっとそれ以上の情報を伝えた。隠すつもりはないという意思表示のつもりだ。
「あんたの能力は十分信頼に値する。認めよう」
オリオンは素直にカーシュナーの行動を受け入れた。
「それは俺も同じだよ。十分過ぎるくらいだ」
目論見をすべて見破ったオリオンに、カーシュナーは満足していた。
「俺たちに近づいた目的だけ聞こう」
信頼云々はその後だ。どれだけ能力が高かろうと、どだい出会ったばかりのお互いを、無条件で信頼することなど出来ないのだ。出来ると言う方がうそくさい。
むしろ、共有できる目的があれば、それを通してお互いを知って行くこと出来る。
「宰相クロクスの、これ以上の権力拡大を阻止するため」
カーシュナーは率直に答えた。
「権力の拡大って、もうこの国はクロクスの国みたいなもんだろ? 何を阻止するってんだい?」
リタが疑問を口にする。
「確かにこの国におけるクロクスの権勢は、単独であれば五大家すら上回る。あの男の前では、国王はおろか、その弟で大将軍職にあるロンドウェイク殿下ですら操り人形に過ぎない。それだけの力を得てもなお、クロクスにはまだその権勢を拡大するだけの余地がある。その最悪の一手が、クロクスが盗賊ギルドと手を組むことなんだ。この二つが組み合わさり、完全に機能し始めたら、もはや覆しようもないほど強大な存在になる」
「……ギルドにそこまでの力があるのかい?」
「ギルドにと言うより、クロクスに、ギルドの価値をそこまで高めるだけの手腕があるんだよ」
リタの問いに、珍しくカーシュナーが顔をしかめる。
これまでどこかふざけた態度を崩さなかったカーシュナーが見せた生の感情に、リタは自分たちの身の上にも降りかかってきた出来事にたいして、初めて重圧を感じた。
「そっちは宰相クロクス。俺たちは裏切り者ゼム。互いの敵が手を組んでいる以上、俺たちが手を組むのも悪くないだろう」
「そう言ってくれることを期待していたよ」
「世話になる」
「こちらこそ。ああ、そうそう」
カーシュナーはオリオンに答えながらリタに視線を向ける。
「さっき、なんでこの場所のこと知っているんだって言ってたよね?」
カーシュナーの問いかけにリタはうなずく。
時の権力者が王族にすら伏せていた秘密の隠れ家だ。王都の地下に根を張って約三百年も経つ盗賊ギルドすら知りえない秘密をどうやって嗅ぎ当てたのか、それを知るのはこの男を評価するうえで重要だった。
「俺が、ヴォオス貴族の中でも特別な権限を許されている貴族、五大家の筆頭クライツベルヘン家の息子だからだよ」
金髪翠眼のその容姿以上にとんでもないことを、カーシュナーはさらっと口にしたのだった。
驚きかけて即座にダーンへと全員の視線が向けられる。
そこには頭を抱えるダーンの姿があった。
「ええええぇぇっ!!」
一拍置いて驚きの声が隠れ家に響き渡った――。
大晦日、元旦とお付き合いくださり誠にありがとうございました。
さすがにまだ書き溜めがありますので水曜日の17時頃に次話投稿させていただきます。
次もお付き合いいただければ幸いです。
それでは、皆さんの今年一年が良い年でありますように。
え~、とりあえず読んでもらえている体で後書きを書きましたが、今回だけはぜんぜん読まれないと、逆にちょっとカッコ悪くておもろいな~と思っている男、南波 四十一でした。