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 ルイの言葉によると、その何でも知っている「とり」は、森に入ってすぐのところ。それこそりんごの足でも気軽に行き来できるような場所に居を構えているという。来るもの拒まず、土産話があればなお良し、という気安い性格をしているらしい。また、「とり」であるのに建物に住んでいるらしく、客人が泊まることもできるそうだ。


「なんだか至れり尽くせりで不安になるけれど、行ってみるしかないかな」

「行くのは明日の朝ですか?」

「そうだね。今まで通り、森の中で動くのは日中にしよう。もう空は暗くなってきたからね。今から行ったら、帰りはきっと真っ暗だよ」


 夜の森は恐ろしい。前の村の村長レグシも、夜の森で仲間を失ったことがあると言っていた。


「それじゃあ、たぶんダメだと思うぜー」


 ルイがそう口を挟んだ。


「何がダメなの?」


 フランの問いに答えることには。

「とりさんはなー、夕方と朝方、太陽が赤く染まる時間帯にしか起きてないんだぜ。昼間と夜は寝ているなー。一日のほとんどを寝ているわ。やべー」

「太陽が赤く染まる時間だけ? それは本当に短い時間だね」

「なんでも、その時間が一番日差しが気持ちいいんだってよ。あとはなんか、退屈だから寝るってさ。起こしたら怒るんだぜー。やべー」


 どうもその「とり」の像が掴めない。来るもの拒まずということは、客人を歓迎しているが、寝ている時間の邪魔だけはされたくない。しかし、その寝ている理由は退屈だから。無聊を紛らわす為に客人を招くのはわかる。同様に、無聊を慰める為に寝てしまうというのもわかる。だが、その二つを比べると、寝る方が優先順位が高いというのが、僕の感性では腑に落ちなかった。

 空になった食器に、ほんの少しの水をかける。指先でこすりながら、さらさらと器の中で渦を描いた。汚れた水を、もう一つの器に移し、そちらも汚れを落とす。それから、新しい水に変えて二つともすすいだ。手元の水の表面に、窓から差し込んだ橙色の陽光がちゃぽんと跳ねた。

 そうだな……。


「結局のところ、ルイの言葉しか情報はないんだから、それを信じてみるしかないのかもしれないね」

「先輩、行くんですか?」

「うん。今から行こうと思う。いいだろうか?」

「はい、もちろんです。早いうちに手がかりを見つけられれば、前の村に戻る必要もないでしょうし」


 それじゃあ、決まったね。そう頷き、僕らは外出の準備を整えた。携行食に、下着の替え。杖はもちろんこと、火打石や小さな手斧なんかの便利な道具も持っていく。家にあった紐もや糸なんかもできるだけ持つことにした。

 ルイに歩いて案内させると、体格上仕方のないことだけれど、とても遅い。そこで、フランの手のひらにルイを乗せて歩き、進行方向を指示してもらうことになった。二本の倒木がある側から村を出て、そのまま暗くなり始めた森に足を踏み入れる。

 夕暮れに沈んだ森を歩くのは、これで二回目だっけ。一度目は、オーガのパストラルの話を聞きながら送ってもらったときだ。


 皮肉なものだ。そう思う。

 魔物を恐れるからこそ、夜の森には入らない、夕暮れの森は早く抜け出したい。それなのに、夕暮れの森を歩くときには、その魔物にお世話になっている。

 森の入り口の一本目の木。それに紐を結びつける。手の内から丸めた糸玉がするするとほどけていくのを感じながら、奥へと目指して進んでいく。ルイが言うには、すぐ近くにあるのだ。逆に、用意してきた紐や糸がなくなるような距離まで進んだなら、ルイに騙されたと考えていい。そのときに、振り返ることなく森から後ろ歩きで出られるようにと、道しるべを用意することにしたのだ。僕がこうして慎重を期して、まるでルイを疑っていると見せつけるような真似をしているというのに、ルイは気に留めた様子もない。器が大きいのか、それとも意味がわかっていないのか。もしかしたら、それすらも関係ないような罠なのかもしれないけれど。

 五〇メートルも進まずして、ルイが言う。


「もう少しで見えてくる、はず!」

「どんな見た目なんだ?」

「何がだ?」

「建物だよ」

「石で作られた、でっかい塔なんだ! やべーぞ!」


 ルイは自分のことのように自慢げに胸を張った。どこが胸かはわからないが、丸い体を精一杯反らせている。

 その言葉に違わず。それから数歩歩けば、木々の切れ間から石組みの壁が浮かび上がった。人の胴体ほどもある黒金色の巨石を組み上げ、縦長の台形の塔が形作られている。高さは二〇メートルくらいだろうか。周囲の木よりも頭二つ分高くなっている。光をざらりと弾き散らす、荒い石の表面には、ところどころに苔やツタがこびりついている。付着した土から生えたのだろう。

 黒々と屹立する、文明の気配を感じさせる塔に、僕らは息をのんだ。ここに住まう「とり」は、生半可な覚悟で会ってはいけない存在だと思えてくる。荘厳さではなく、威容と威圧がここにはある。人の手で作り上げられたようでいて、人では創れない圧力を放っている塔に、僕らの動きは縛られていた。


「なー、登んねーのか?」


 ルイが沈黙を破った。どうして僕らがためらっているのか、全くわからない様子だった。僕は腹を括った。フランも気持ちの準備できたらしく、手をぎゅっと握り込んで気合いを入れている。


「それじゃあ、入ろうか。魔物の挨拶とかって決まっているのかい?」

「いんや、てきとうでいいぞー」


 いまいち当てにならないルイのアドバイスを受け、ぐるりと塔の側面を螺旋状に囲んでいるむき出しの階段を上りだした。幅が一メートルもない、むき出しの外付け螺旋階段。普通に歩いていれば普通に上れるはずなのに、落ちたら体を支えるものがないと思うだけで、体がぐらりと傾ぐような錯覚を覚える。

 指先が触れればざらりと削られそうな表面にすがる気にもなれず、せめて塔が円形じゃなかったことに感謝して、ひたすらに上を目指した。


 塔の最上階。四方に壁のない、柱と天井があるのみの殺風景な空間。そこに、「とり」はいた。なるほど、これはとりだ。

 青天すら焦がしそうな深紅に彩られた翼、黄金色の嘴、頭頂部の金属光沢を帯びた朱の飾り羽。翼を広げれば五メートルはありそうな巨大な孔雀が、右翼に頭を乗せて眠っていた。

 低く沈んだ太陽が、西から鋭角に燃える光を差し込んだ。同調するかのような光の中で、むくりと孔雀はその身を起こす。安寧の中に生き、安寧のみを知る者特有の、優しく深い思惟を帯びた瞳が僕らを捉えた。


「ヒトか。一体いつぶりだろうか。何用だ?」

「永訣の魔女の居場所をお聞きしたく、参りました」

「そうか。永訣の魔女か……。それはまた、面白い。我は不死鳥。彼の者より永きときを生きてきた。会いたいと望むのであれば、会わせることは出来る」


 威厳に満ちている訳ではない。ただ優しげな声音で不死鳥は「出来る」と言った。「出来る」とだけ。僕は黙って続きを待った。


「話を聞く態度が出来ておるな。さて小僧、永きときを生きるとは、いかなることと考える?」

「目的如何かと。目的があれば、それは幸せなことだと思います。しかし、目的もなくただ永きときを生きるのならば、それはただ退屈ではないかと」

「及第点だ。我は退屈している。小僧らは永訣の魔女の居場所を知りたがっている。小僧らよ、真に魔女との邂逅を望むならば、我の夢の中で三晩を過ごせ。我を楽しませたならば、褒美もやろう」

「夢から出ることは出来るのでしょうか」

「日の出と夕暮れの二度、我は目覚める。そのときに、小僧らも帰ってくる」


 不死鳥はからからと笑った。

 動かぬ瞳にあるのは空虚。空っぽの感情で、明るく笑っているように見える。鳥だからだろうか。感情が見えにくいだけかもしれない。

 不死鳥と名乗るからには、不死なのだろう。……本当だろうか?


「あぁ、我は死にはする。だが、必ず森のどこかで我は蘇る。故に不死、滅びはしない」


 見透かされていた。


「失礼いたしました」

「良い。不死など人の身には信じ難いことであろう。一つ言っておくが、渇望するような良いものでは無い」

「それは……そうでしょうね」


 不死鳥は真っ直ぐに僕を見つめて話をする。

 鳥は細かく首を振る。眼球が動かないからだ。だが、不死鳥の細く長い首は泰然として揺らがない。不死鳥は、僕しか見ていない。僕の目しか見ていない。他のものに、興味を持っていない。


「そのような目をするな」


 不死鳥は苦笑した。


「死せるものがあったなら、つまりは我の中で生きていたものだ。いずれは蘇るやも知れんし、何より我に生きている部分があったことの証左。死せぬ身からすれば、死は悪いものでもない。失われぬものに美しさはない」

「容易く死す人間には共感出来ないものですね」

「そうか。それもまた良い。皆が我なら、退屈は永久に癒されぬのだから。名前を聞こう」

「僕はメルン。こちらの子が」

「私はフランと申します」

「おれ、ルイな!」


 フランは九〇度に腰を折り丁寧に挨拶をした。不死鳥は鷹揚に頷く。

「しかと覚えた。ここに誓おう『今宵より三晩、メルン、フラン、ルイの三者が我が夢でときを過ごさば、永訣の魔女の許へ至るすべを伝える。我が退屈を癒さば、それに応じた報酬を与える』」

「ご厚意に感謝致します」


 赤々と煌めいていた太陽が、森の縁にその身を隠した。残光が宙に漂い、薄れるように溶けていく。

 不死鳥はその目を閉じた。


「楽な姿勢をとるが良い。これより、夢に招こう」


 不死鳥が眠りに落ちる。茜色の輝きは森を焼くのを終え、世界が闇の懐に落ちていく。数える間もなく光の消えた世界はまるで反転する意識のようで――。

 夜明けが訪れた。

 僕らがいたはずの塔はなく、美しい緑の芝が生えた地面に座っていた。木々も森のように密に生えておらず、空が広い。なるほど、これが不死鳥の夢の世界か。ありそうで、どこにでもありそうなのに、どこにもない世界。石でもない、森でもない。ただ、安らぐ場所。これは、いや。

 不死鳥が夢に人を招く理由がわかった気がした。壊すには惜しく、しかし見続けるには退屈な場所だ。


「あったかい……」


 フランが空を見上げた。そして、目を見開く。


「あ、月が出てますよ」


 白い真昼の月が、青空に寂しげに浮かんでいる。


「フラン、月は昼間にも見えるものなんだよ」

「え、そうなんですか?」

「うん。今度見てごらん。夜にばかり見えるから、そういう先入観があって見えなくなるのかもしれないね。夜の月は鮮やかで綺麗だけど、昼にも、儚げで美しい月は空にいるんだよ」

「綺麗ですね……実は私、夜の月ってちょっとだけ怖いんです。なんていうか、禍々しい感じがします。けど、昼の月は、怖くないですね」

「うん」


 夜空に浮かぶ月は、油断をすれば何かされてしまいそうな、毒々しい美しさがある。見ている分にはいいけれど、関わり合いになりたくない。昼間の月は、眺めているだけではただただ地味だ。けれど、傍に行って抱きしめてあげたい、脆さと孤独さを抱えている。それがまた、どこか美しい。

一緒に真昼の月を眺める人がいる。これはもしかしたら、とても幸せなことなのかもしれない。しばらく空を、二人とも無言で眺めた。それから立ち上がり、言う。


「このままずっと月を眺めていてもいいけれど、不死鳥に悪いね。何か面白いものがないか探してみようか」

「そうですね。不死鳥さんが見つけられなかったものとか見つけたら、喜んでくれるかもしれません」


 ここは不死鳥の夢の中だから、きっと、どれも不死鳥自身が知っている。けれど不死鳥は言っていた。「皆が我なら、退屈は永久に癒されぬ」と。ならば、この不死鳥の知識の中を、僕らの切り口で楽しめばいいのだ。きっと。

 とりあえず伸びをして、気づいた。荷物を持っていない。服は着ているから、いらないものは現実に置いてきたのかもしれない。杖はある。枝払い用の手斧も腰に下がっている。所詮は夢のこと、リュックが必要になるようなとんでもなことは起きないだろう。


「ルイはいるのか?」

「いるぞー……ただ、やべーよここ。すげー力だ。魔物の俺にはきっちーよぅ」


 フランの肩にしがみついて、ぐったりとしている。フランが手の上に乗せ、ちょっと蝋っぽくてべたべたする表面を撫でた。


「大丈夫?」

「具合悪いわけじゃねーんだ。ただ、なんつーか、こう。なっ?」

「なって言われても……。力が入らないのかな?」

「んー、力を入れることはできるし、ほんとはなんも起きてねーはずなんだけどなー。本気だそうとも思えねー。強すぎる相手に見られてる感じがなー」


 蛇に睨まれたカエルという意味なのか。それとも、恐怖よりも遠慮や緊張感が勝っているのか。どちらにせよ、精神的な面で、ルイは行動不能なようだ。


「どうしようか。ウエストポーチにでも入ってるかい?」

「入れてくれー。そのウエストポーチだせーけど入るー」

「手斧と杖をぶら下げられるデザインはこれしかなかったんだよ……」


 げんなりしながら、ルイをポーチに放り込んだ。ベルトと小物を連結できる、頑丈な革製のウエストポーチは旅には絶対に必要だ。それをださいと言われても困る。まるっこいリンゴを入れたせいで、ださいらしいポーチがもっとださくなった。

 林程度の木々と、青々とした芝生の間を歩いていると、木製のベンチが三個並んでいた。そのうちの左端に、左目が四つ穴の大きなボタンになっている、縫い目の目立つ熊のぬいぐるみが座っていた。僕と同じくらいの上背がある。古びたグレーのベレー帽をかぶり、右の手元にステッキを置いている。熊は僕らをみかけると、ひょいと手を挙げた。


「やあ。お客人かな?」


 深みのある老人のような声音で熊は訊ねた。


「ええ、ちょっとばかり事情がありましてね」

「そうかい。事情は誰もが抱えているさ。どうだね? 君たちはまだ若いのに生き急いでいるようだ。ベンチにでも座って休憩していかないかね?」

「そうですね。さしてここではすることも決めちゃいないんですよ。お言葉に甘えて休んでいきます」


 真ん中のベンチに腰を下ろそうとすると、熊が待ったをかけた。綿が詰まりすぎていて曲げにくい腕を不器用に振りながら、反対端のベンチに座れと言う。


「なぜでしょうか?」

「そういうものだからさ。見知らぬ他人の隣に座るものじゃない。長く生きればわかってくる。人生の最大の敵は、人と関わることだ。人生の最大の痛みは孤独でいることだ。自分たちだけで立っているのも嫌だろう? 一個ベンチを挟んで、一緒に座るのさ」


 それから熊は、生身っぽい不思議な色を持つ瞳をぎゅっとつむって、へたくそなウインクをした。


「それに。老人の相手をするよりも、恋人同士で話すがよいさ。人生は無駄にするんじゃない。光陰矢のごとし。既に地面に突き立った矢は、捨てず拾わず、置いていくものさ」

「恋人だってさ、フラン」

「え、あの、その。メルン先輩からそれ言っちゃうんですか?」


 僕はフランのつっこみに、しれっと聞かないふりをした。そして、熊に話を振る。


「お爺さん? はどうしてここにいるのですか?」

「死にたくなかったからさ。ここにいる限り、死にはしないよ。ただ、いつの間にか魔物になっておった。いつなったかなんて、覚えちゃいないが……悪いものでもないさ」

「そうでしたか」

「まあ、死にたくなくて、不死鳥から不死の力を貰おうとしてね。失敗した結果、不死になり、魔物になった。人生っていうのは、どう転ぶかわからないものだよ」


 熊は朗らかに笑うと、正面を丸っこい先端の手で指した。

「あっちに行くと、いろんなものがいる。多少は栄えている場所だ。きっとそっちに行く方が楽しかろう。好みまない者も多いだろうが、なにも無いよりはマシさ」

「ありがとうございます、是非このあと行きたいと思います」

「お爺さんは、足が悪いんですか?」


 唐突に、フランが訊いた。驚いたのか、熊は目を瞬かせる。


「お爺さんは、ここに来たんですか? いたんですか?」

「ああ、なるほど。そういうことか……ここにだな。そうだな。来たのだよ、来たさ。いつだったかな、忘れてしまったが。……素晴らしい観察力だな。君らなら、どこでも生き残れるかもしれん」

「お爺さんは、その、栄えている方に行きたいですか?」


 熊は顔を縦に走る縫い目を撫でながら、しばしの間目を閉じていた。それから、ゆっくりと首を左右に振る。


「いいさ。ここにいたいのさ。代わりといっちゃなんだが、手を貸してやって欲しい子がいる。その栄えている方にまっすぐ行くと、広場に大きな枯れ木が植わっている。そこにいるはずだから。無理そうなら見て見ぬふりをしてしまえばいい。頼む」

「とりあえず、見てから判断しますね」


 フランがこれでいいんだよね? と言う風に僕を見た。この子も成長している。僕は頷いた。熊は僕らがその子に手を貸すと確信しているのか、嬉しそうに何度も頷いた。


「いいことだ。人の話を鵜呑みにして、何でもかんでも安請負するような人は、何もかも失敗して迷惑をかけるものだ。慎重な君らに頼んで良かったよ」

「こちらこそ、道を教えていただきありがとうございます」

「ありがとうございました」

「お互い様、か。頑張るんだよ、特に女の子の君」

「はいっ」


 熊と手を振りあい、教えられた方向に行く。

 そこは等間隔で街路樹が生えている、大きなテントの店が並ぶ商店街だった。何の店かは見ただけではわからないが、どうも飲食店が多いようだ。カウンター席で飲み物を飲んでいる人が多いようだ。

 楽しそうに笑って、すれ違う人同士で挨拶している。楽しげに談笑していて、皆生き生きとしている。それなのに。


「不気味な場所ですね……」


 フランが白みを帯びた顔でそう言った。僕も頷く。

 自然な笑み、ではある。けれど、その笑顔のまま表情が微動だにしない。これは、絶対に不自然だ。いろんな表情の動きがあって、その中に笑顔がある。なのに、ここの人にはそれしかない。

 誰にも目を合わせないようにしながら、息を殺してストリートを進んでいくと、一人の男性が僕らの前に立ちはだかった。


「君たち、笑顔が足りてないよ」

「どうしてここにいる方は、皆笑顔なんですか?」

「笑顔は義務だ」


 あ、この人、会話が成り立たないタイプだ。


「えーと、なぜ義務なのでしょうか?」


 フランがかなり引いた様子で、改めて訊ねた。男性は両手を広げて、自分に酔ったように――笑顔だからそう見えるのかもしれないが――語りだす。


「この世界は不死鳥様を楽しませるためにあるのだ。ならば、この世界に不愉快になる原因をもたらすことは許されない。笑顔は人を幸せにすると言うではないか。笑顔が広がり、争いがなくなり、眺めていらっしゃる不死鳥様もいい気分になられるはずだ。笑顔をやめ、不和をこの世界に落とすことは許されんのだ」


 そんなことを笑顔で言っているのだから、狂気すらも感じられる。言っている内容としては笑顔であることは矛盾していないんだけど、人の感情としては、こんな厳しくて堅苦しいことを言うのに笑顔はそぐわない。そもそも不死鳥は退屈しているんだ。みんながみんな変わりばえの無い笑顔を浮かべているだけの世界なんて、見ていて楽しくないだろうに。なんだか、この世界の住人は間違った方向に暴走しているようだ。


「えっと、気をつけますね」


 フランはそう言い、無理に笑顔を取り繕った。あわせて僕も作り笑いを浮かべる。


「わかってくれればいいのだ」


 男性は鷹揚に頷き、去って行った。彼の背を見送る気にもなれず、引き攣った笑いを浮かべながら、目的の子を探す。


「なーんかやべーところだなー」

「これはしんどいね」

「笑顔って、ずっと浮かべているものじゃないと思うんですけど……ここまでしちゃうと、もうそれは無表情と変わりありませんよ」

「無表情というよりは、仮面だよね」


 一様に同じ顔を貼りつけた人たち。どの人も、さっきの男性のように見えてくる。平和な光景のはずなのに、ぞわりとした不安が付きまとって離れなかった。

 ストリートの終着点。道が十字に交わる中心。もっとも人通りが多い場所。そこに着いた。老人が言っていた子がどれかは、見ればわかった。一目でわかった。

 ストリートの中心に立つ、巨大な枯れ木。その洞に、少女が埋められ囚われていた。絶望に色が抜け落ちた瞳で、通りを歩く人々の果てを眺めている。生きている、生きてはいる。


「フラン、助けよう」

「はい」


 少女に一切の関心を示さずに会話を楽しむ人々の間を抜け、枯れ木の前に立つ。もしこれで何かが起きてしまったら、不死鳥に謝ろうか。許してくれればいいけれど。

 腰から手斧を抜き、振りかぶった。少女の虚ろな瞳が、僕を捉える。それから、斧を見た。表情に僅かな怯えと期待があった。


「大丈夫、今から君を助ける」

 少女が何かを言おうとした。斧が振り下ろされようとした。その瞬間。夢の世界が、茜の光に塗りつぶされた。


 体がびくんと跳ねる。自分の体が自分のものじゃないような凄まじい違和感が全身に走った。それから、赤みの混じるグレーの空を見上げ、呟いた。


「もう、朝だっていうのか……」

「早すぎますね」

「あまり長き夢を見ていても、な。退屈な時間は短い方が良かろう」


 不死鳥が言った。僕は早速訊ねる。


「夢の世界で、枯れ木に囚われている少女を見つけました。枯れ木を壊して、救い出しても大丈夫でしょうか?」

「構わぬ、好きにせよ。遊ぶもよし、壊すもよし。自由に過ごしたまえ。退屈でなければ、それでいい」

「良かった。これで心おきなく助け出せますね」


 そういえば、とフランが言った。


「今日の夢は、不死鳥さんにとっては退屈でしたか? 少しは紛らわすことはできましたか」


 不死鳥は首をゆらりと動かして、フランにくちばしを向けた。相変わらず感情の読みづらい目だ。

「悪くはない」

「そうでしたか。それは良かった」

「ああ。そうだ。我の夢にいる間、小僧らは眠っている。今から改めて寝る必要もない。では、朝焼けが薄れれば、我はまた寝る」

「それでは、また今日の夕刻にここを訪ねます」

「ここは森ではない。振り返り、そのまま帰るといい」

「では。お世話になりました」


 上りで不安になる危険な階段の、下りはもっともっと怖くなる。上るよりも下る方が難しい。たっぷりと時間をかけて、不安になりながらも階段を下りきった。いつの間にか、ちゃっかりとフランの肩に乗っているルイが口を開いた。


「この後どーすんだ?」

「明るいうちに動けるようになったし、一度手前の村に戻って、食料を買おうかな。時間が出来たんだから、有効活用しないとね」


 張ってきた紐に沿うように、村に戻った。それから、そのまま歩き続けていく。


「魔物と人間が共存している村なんだけどね。ルイも一緒に行ってみるかい?」

「いいのか? キタコレ。やほー!」


 ルイは諸手を挙げて万歳した。

 昼過ぎまでに拠点にしている家に戻り、早めの夕飯の支度をした。食べたらすぐに不死鳥のもとに行く。


「では、招くぞ」

「よろしくお願いします」


 二度目の夢は、前回の終わりと同じ場所、同じタイミングだったらしい。振り下ろされた斧が、乾いた木にバキリと食い込んだ。斧の刃に沿って、枯れ木の表面に縦向きの亀裂が入る。それを剥ぎ取るように、角度を変えて何度も斧を打ち込んだ。枯れ木の木っ端が飛び散って、僕らの足元に降りかかる。

 腕が痺れて感覚がなくなるまで、ひたすらに斧を振り下ろす。木が削られていくにつれて、少女の表情が、泣きそうになっていく。


「あと少しだ、剥がすぞ」


 枯れ木に手をかけ、フランと一緒に思い切りめくった。体に力が入らないのか、よろけて出てきた少女を受け止める。


「大丈夫か?」

「うん。それよりも、お兄さん、絶対に――」


 少女が何かを言おうとした。

 誰かが、僕らに向かって、何かを叫んだ。悲鳴のようなそれに、僕とフランは振り返った。振り返ってしまった。


 ――目の前に、魔女が現れた。


「――振り返っちゃだめ」


 背中に聞こえた声が、すうっと遠くなる。

 枯れ木に触れれば、枯れ木の魔女が現れる。至近距離に、醜悪な老婆が、にやりと口角を吊り上げて待ち構えていた。

 暗転、夢の時間は終わりを告げる。

 現実に戻った。

 頭が真っ白になって、何も考えられない。息が上がり、浅い息を繰り返す。首を絞められているような感覚がして、上手く息を吸い込めない。頭が締め付けられ、お腹がぎりぎりと鈍器で突き刺されたような痛みを発している。

 地面に両手をついた。夕飯に食べた物の残滓と胃液を吐いた。吊っている喉に更なる痛みが走る。

 体の芯から込みあがってくる、恐怖。


「う、あ……魔女、魔女だ」


 脳裏でチカチカと幻影が点滅する。杖を振った。何もできなかった。魔女が笑った。彼女は消えた。何が起きた。何もできなかった。魔女だ。

 魔女が、笑っている。嗤っている。

 僕を嗤っているんだ。哂っているんだ。藁ッ手鋳婁n唾。

 寒い、寒い、寒い。

 ガチガチと鳴る歯が煩い。こんなもの無くなってしまえばいい。魔女が来るじゃないか。

 左手を口に押し込んだ。音が止む、血の味がする。これでいい。息ができない。ふざけるな。

 血を垂れ流している手を誰かに取り上げられた。包み込む温かさに全身にビリビリと緊張が走って、思わず後ずさりした。しかし、それでも手は離されない。そのまま、ひらりと布が視界いっぱいに広がって、全身が柔らかいものに包み込まれた。

 怖い。


「あ、寒く、ない?」


 ぎゅっと力が込められる。

 ああ、そうか。


「フラン」

「はい、私です」


 フランだ。その言葉と暖かさに、気が緩んだ。ふと口をついて言葉が零れる。


「助けて……」

「はい。助けに来たんですよ、メルンさん」


 細くて、熱をもった体を抱き返す。こんな細い体が今はこんなに頼もしい。情けないことだけれど、今だけは、絶対に離れないで欲しい。傍にいて欲しい。


「助けてくれ」

「助けます」


 子どもみたいに泣きじゃくって、ずっとフランにしがみついていた。

 フランの腕の中にいるまま、不死鳥も寝静まった世界で。


「ごめん、ありがとう」

「いいんです。誰だって、怖いものはありますから」

「カッコ悪いなー……」

「そうですね。でも、いいと思いますよ」


 いいのかな。いいんだろうか。

 魔女が怖いのに、魔女を探す旅にフランを連れて、魔女から守れるのだろうか。

 僕は馬鹿だ。初めの村で、フランを帰すべきだった。守れもしないくせに、甘えるばかりのくせに。


「メルンさんはすごいんです。なんでも出来るんだって思ってる時期もありました。でも、お父さんが言っていました。人間なら、誰だって欠けている部分があるんだって。メルンさんが、魔女にトラウマがあっても。大丈夫です、私が隣にいます。絶対に、私が隣にいますから」


 僕は馬鹿だ。


「ありがとう。もう、大丈夫だ」

「本当ですか?」


 フランは両手で僕の頬を挟んで、じっとすぐ近くで目を覗き込んだ。ぼんやりと、奇麗な瞳だな、なんて思った。ぱっと解放され、にっこり笑いかけられる。


「よかった。一人で抱え込んじゃダメですからね」

「うん」


 二人で立ち上がってから、汚してしまった塔の床を見た。


「まずは、掃除しないとね……」

「そうですね」


 変な味がする口を漱いで、水筒の水と布の端切れで、汚してしまったところを奇麗にした。そこまで終えたときに、ひょこりとルイが姿を現した。すっかり忘れていた。気まずそうに、手を後ろに回してみたり、前に持ってきたりしている。


「どうしたんだい?」

「その、おれが付いてきてよかったんかなってなー。ほら、二人とも、すげーじゃん。おれ、なんも出来ねーし、なんかあっても、魔物のおれは大丈夫だって、覚悟もなんもしてねーし」

「いや、ルイがいて助かってるよ。ルイがいなければ、そもそもここにたどり着けてもいないしね。フランも魔物の声を聞けるようになった。これはとても嬉しいことだよ」

「うん、全部言われちゃったけど、私も一緒にいれて嬉しいよ」

「うああ、やべー。なんだろ、すげーやべーよ」


 丸いままの目元からぼろぼろと涙をこぼすルイがなんだかおかしくって、本人が笑いだしたのを皮切りに、三人で笑いながら階段を下りた。

 朝ご飯を食べながら、今夜はどうするか考えていた。

 不死鳥の夢に入れば、フランの腕の中には、枯れ木に囚われていた少女がいる。そして、僕の目の前には枯れ木の魔女がいる。冷静に考えれば、状況は詰んでいる。不死鳥の夢に入るのは勘弁願いたい。それでも。


「なんとかなるんだろうか?」

「逃げきることは出来ませんか?」

「どうだろう。魔女ってどのくらいの速さで追ってくるのかわからないし、魔女と直接戦った魔法使いの話なんて聞いたことないからね。事前に詠唱をあらかた済ませてから、夢に入った瞬間魔法を使えたりしないだろうか……」


 魔法の詠唱が夢に持ち込めるかどうか。そして、代償は持ち込めるのか。いや、きっと無理だ。持ち込めない。動作は持ち込めていない。


「いいこと思いついたぜー」


 ルイが震える小さな声で言った。


「おれをまるっと代償にすれば、そこそこの魔法撃てるんじゃねーのか?」

「却下」

「ダメ」


 フランと二人で即答する。


「いや、話聞いてくれよ。おれはな、きっと種さえ残ってれば、またおれは増える」

「増えちゃうのか……」


 恐ろしい魔物の秘密を聞いた気がする。


「こっちで種をこう、ぶしって抜き取っておけば、おれは死んでも大丈夫。だけど、痛そうなんだよなー」

「それは、本当に、ルイなのか? ルイとそっくりな別の魔物じゃないのか?」

「わかんねー……」

「それじゃあダメじゃないですか! 手伝ってくれるのは嬉しいけど、流石に怒るよ?」

「うう」


 ただ、今の会話で活路を見いだせた気がする。

 簡単なことじゃないか。


「代償を差し出せばいいのか」

「メルンさん、何か不穏なこと考えてません?」


 訝しげに言うフランに笑顔を作って答える。


「大丈夫、大したものじゃないから」

「絶対に嘘ついてます。そういうの、ナシにしましょう?」

「うん、まあ。本当に大したものじゃないんだ。ただの便利な魔法『最良の選択肢』を使うだけだから」

「それの代償って確か――」


 魔法を学ぶ者なら誰でも知っている、初歩中の初歩。教本の冒頭に書かれていることが多い。

 その場で自分が出来る最良の選択肢をとれるというだけのもの。便利で、詠唱も一瞬で終わる。それ故に、特殊な代償を求められる。

 その代償は、寿命。数年間の時間を持っていかれる。

 『魔法とは、非常に便利なものである。人の身だけでは成しえぬものを可能とする。それ故に、取り返しのつかないものを代償として失う。生を引き伸ばさば、生きる意志を失う。良き人生を歩もうとすらば、生を縮める。侮らぬこと、驕らぬこと、軽率な使い方はせぬこと。』この文言と共に記される魔法だ。


「うん、いいんだ。使うのもこの一度きりにする。他に魔女を追い払う手段が思いつかないんだ。なら、この一つに限る。一か八かじゃなくて、代償を無駄遣いするのでもなく、この一つで確実に、みんなで生き延びよう」


 きっと僕は。生き延びたとしても、この瞬間のフランの顔を忘れることはできないだろう。でも、そんな表情を向けてくれるフランだからこそ、これを為す価値があるんだ。そして、未来の時間を捨てたとしても。やっぱり僕は、過去を捨てることができないんだ。


「わかりました」


 この一言のために、どれだけフランの心は血を流したのだろうか。


「ありがとう。この恩は一生忘れない。さあ、みんなで生き延びようか」


 夕刻を目指し。失われる未来の時間を右手に握りしめて、僕らは動き出した。

 夕日はいまだその色を晒していない。それなのに、不死鳥は目を開けて僕らを待っていた。


「腹は括ったのか?」

「ええ。最善を尽くします」

「そうか……悪かったと思っている。我が夢に住まう者は多い。彼の者を忘れておった。我が責任だ。だが、我は夢を操る力は持ち合わせていない。中に住まう者たちが造り上げてきたものだ」

「心配して待っていてくれたのですか?」

「ああ。不思議なものよ。我が退屈を打ち破ったのは、『心配』という感情だった。苦悩する小僧らを見て、抱いたのは愉悦や享楽ではなかった。そこな女童の深き情に共感したのかもしれぬ。重ね重ね心苦しいが、頼みたいことがある。小僧らが枯れ木より引き抜いた童女から手を放さないでくれ。救ってやって欲しい。報酬は弾む」

「言われずともします」

「任せてください」

「やってやんぜー」


 落ちていく日の中で、不死鳥は首をゆるゆると振った。


「眩しいな。日は沈むからこそ赤く燃える。小僧らも限りある命であるからこそ、こうも眩いのやもしれんな。弱き者たちよ、任せた。許せ」


 怖い。もう幾ばくもなく魔女が目と鼻の先に現れるのだ。腕の震えが止まらない。しかし。背筋に差し込まれた氷のような冷たさこそが僕の意識を鮮明に研ぎ澄まし、隣にいるフランの温もりが、僕の意志を燃え上がらせる。

 諦める気はない。目を背けたりしない。もう、泣かない。あんな顔はさせない。

 これっきりだ。決めてくる。助ける。自分も、フランも、ルイの気持ちも、あの少女も、不死鳥の罪悪感も。

 落ちていく太陽が手を振った。共に落ちていく不死鳥のまぶた。ふと、不死鳥が呟いた。


「きっと、わかるはずだ」


 世界の反転を感じた瞬間。何万回も繰り返してきた動きをトレース。腰のシースから銀色に冷える杖を抜き放ち叫ぶ。


「インヘリテンス!」


 目の前に浮かんだ魔女の表情を切り離し、一瞬遅滞する世界も切り離し。自動で動き出した体はマリオネットの糸に操られ、フランに手を伸ばす。張り詰められた指先はフランの胸元へと伸び、指先に引っかかった鎖を引き寄せる。水平に弧を描いたそれは、枯れ木の魔女の眼前を銀色の閃光として斬り払った。

 そうか。そうだったのか――ありがとう。

 枯れ木の魔女は仰け反り、はっきりとその表情に怯えを浮かべた。追い討ちをかけることはせず。フランと少女の手を引いて走り出す。


 フランの後を追うように、その背中に揺れる鎖の先端についていたのは、加工された、鬼の角。


 『オーガはその狂暴さと物理的な強さ、そして、それを振るう見境の無さから、魔女すら避けて通ると言われている』『昔は魔除けとして重宝したという。ただの角の欠片であったとしても、そこらの魔物であれば逃げ出すような威圧感』それを目の前で振った。まるで、殴りつけるオーガのような軌道で。

 走り出し人ごみに紛れる。背後に鬼の角を引きながら。


「おい、君たち、笑顔が足りてないぞ!」


 肩を掴んできた手を振り払った。今、そんなことに構っている暇はない!

 バルが並ぶ通りを駆け抜け。そして、見覚えのあるベンチに辿り着いた。そこには、初めてこの夢を訪れたときと変わらず、妙に生々しい熊の紳士が座っていた。生きている側の目が大きく開かれ、何かを言おうと開いた口が震えている。

 フランと手を繋いだまま、少女は熊に覚束ない足取りで近づき、触れるか触れないかの距離で立ち止まった。不安げに、熊に視線を落として、小声で訊いた。


「お父さん……?」

「ルリア、良かった」

「お父さん! あああああああ!」


 少女は熊のお腹に抱きつき、大声で泣いた。


「ルリアから手を放さないでおくれよ。この子はここから出してやらねば」

「……はい」


 熊はフランにそう言いながら、ルリアを強く抱き締めた。


「ああ、ああ。生きてみるものだ。長かった。永きときだろうと、終りが見えなかろうと。生きてみるものだった。退屈だった、死にたかった、絶望した。生きていて良かったッ!」


 熊が吼えた。その声はびりびりと夢の世界を震わせ。

 前の二回よりも、ずっと長い時間が経った。再会の時間はゆっくりと流れ。そして、ルリアは熊から手を放し、言った。


「ありがとう、お父さん。これでもう、ちゃんと生きていけるよ。もう、寂しくないよ。ちゃんと、独りで生きていけるんだよ」

「孤独は辛いから。友だちを作りなさい。ときどき会えるだけでいいから」

「うん。わかった。それじゃあ、バイバイ」

「元気でやるんだよ。バイバイ」


 二人が手を振りかわし。夢の時間は、その幕を下ろした。


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