狙い
好きだ。
好きだ。
大好きなんだ!
野球が。
今日も大夢の日常が始まる。
ベッドから起きて、シャワー浴びて、トイレ行って、顔洗って歯を磨いて朝食。
最近ハマってるのはコーンフレーク。
カロリーは控えめだが、栄養が豊富である。
バスに乗ってカロリー補給のためウィダーを飲む。
朝練に備えるためだった。
それでも野球部員の中でも少食な方ではあった。
その日の朝は監督が悩みに悩んだ末、
やっと決まった新人戦メンバーを発表する。
約60人の中から20名が選ばれる。
投打のバランスと上級生下級生のバランスを考慮したとのことだ。
ベンチ入り20名中、2年生は13名。1年生は7名。
恒輝は背番号15だった。
大夢はギリギリの20だ。
恒輝は活躍や調子次第でスタメン起用することから、
準レギュラーをものにしたのも同然だ。
そして大夢は野手として、投手としても出番の可能性がある。
試合で勝負どころに強さを発揮できていた。
そして、将来性も買ってくれた。
体力以外は努力で掴み取った、その結果だ。
メンバー表はこの通りだ。
1 投手 神津 佑 右右 2年
2 捕手 島田 健太 右右 2年
3 一塁 矢部 大和 左左 2年
4 二塁 星野 純樹 右左 2年
5 三塁 笹山 慶人 右左 2年
6 遊撃 清水 卓 右右 2年
7 左翼 三島 大輔 右右 2年
8 中堅 須崎 佳之 右左 2年
9 右翼 小林 駿介 右右 1年
10 投手 小平 真史 左左 2年
11 投手 浦野 凌平 右右 1年
12 捕手 山田 勇喜 右左 2年
13 内野 松崎 佑真 右右 2年
14 内野 山崎 修二 右右 1年
15 内野 前田 恒輝 右右 1年
16 外野 西山 一樹 右右 2年
17 内野 篠田 敬太 右左 1年
18 投手 黒岩 大河 右右 1年
19 外野 今井 慎 右左 2年
20 外野 坂上 大夢 右右 1年
大夢は凄く疑問に思った。
左投げの選手が2人しかいない。
一塁のレギュラーと左エース、いずれも2年生だけだ。
しかし、左打ちは8人と多い。
何を意図して監督はこの布陣にしたのか。
もっと自分より上手い選手だっているじゃないか。
しかし、監督は上手い下手だけで決めはしなかった。
試合での結果も大事だ。
体力や運動能力、コミュニケーション能力なども影響する。
甲子園優勝に向けて最適なメンバーになるような判断を総合的に下していた。
大夢の中にはわだかまりがあった。
スライダーやカーブだけでは物足りない。
左投げのスライダー、カーブにあたる、
右投げのシンカーやシュートのような逆方向の変化球も重要だ。
登録時点では外野手ではあるが、投手として、
秘密兵器としての登板も考えられ得る。
できることは練習試合で確かめたつもりだ。
サイド気味のスリークォーターから、
常時120キロ前後のストレートと90キロ台の変化球の組み合わせた制球重視の投球が持ち味だ。
投球後は九人目の野手となり得るのだが、フィールディングの切り替えが素早く打球反応が速い。
走力は盗塁も狙える足はあるが、敢えて無理せず挟殺逃れとスキをつく走塁に集中させる。
打撃はコンパクトなスイングから確実性のあるバッティングコントロールと、選球眼が持ち味だ。
守備は一歩目が速い。夏季合宿のアメリカンノックの成果が実を結んで更に守備範囲が広くなっていた。
初戦は下仁田、長野原、万場連合チーム。
言っちゃあなんだが、弱小レベルだ。
大夢は2番レフトで先発出場する。
ノーアウト一塁、サード前にバントを決めるが、
相手の三塁手の守乱により、2、3塁という場面になる。
4回から2イニング、大夢がマウンドに登る。
しかし、相手が下手くそと分かっていても、
自分の力で押さえつけることはしなかった。
ただ、当たり前のことを、いつも通りやるだけ。
最初のバントだって、何の変哲もない、自分がアウトになるような送りバントだったのに。
なんかあっけなくぼこぼこにしてしまうのも可哀想だしな。
しょうがない。敢えてピンチを作って、自分を追い込んでみるか。
連続四死球でノーアウト、1、2塁のピンチを作る。
ここでベンチが動く。
誰もがピッチャー交代と思った。
しかし、監督は正捕手島田に代えて、控えの山田に代える。
山田は真面目で規律正しい島田と違い、明るく雰囲気を良くする技術に長けていた。
次回に続く。