青春の1ページ
大夢と莉香子の何気ない会話。
「よう」
「やぁ、ひろくん・・・目の下にすごいクマできてるよ!?」
「あっ、あぁ気にしないで」
「なんでなんで?気になるー」
「単純に寝不足なんだよね」
「無理しないでよー。体が資本なんだからちゃんと寝ないと!」
「あはは、悪いなぁ」
「そういえば久々に中学の部活覗いてみたけど、あゆみちゃん凄いよね」
「ははっ、相変わらず嫌われ者だけどな」
「そんなことないよ!私は直向きに頑張るあゆみちゃんが好きだよ!」
「本当か?」
「そうだよ、嘘じゃないよ!」
「へぇ、ならいいんだ・・・」
「うん、どうかしたの?」
「どうしたも何も、あいつ凄く遠慮しているんだ。何しろ、受けるキャッチャーが居ないんだもの。」
「あれでも力を抑えてるってこと!?」
「そうなんだよ、悪い癖が出ないか心配でね・・・。ただでさえ球は速いのにそれを受けるキャッチャーが毎回ビビってたら、変化球も投げられない。球が受けられなかったらリードの組み立てもできない。」
「そりゃ捕るだけでも精一杯だもんね」
「そうそう。あと動く速球も持ってるけど、それは封印してる感じ。自分の時にしか投げて来ない」
「それは初めて聞いたよ!後輩とはいえ、自分が打席に立ったらどんなに恐ろしいことか・・・」
「まぁ、言ってもつい最近覚えたばかりだからなぁ。俺もびっくりしたよ。普通の速球と同じ感覚で捕ろうとしたらミット普通に弾いたし」
「中学生でムービングファスト投げるってあまり聞かないよ。中学から始める素人が聞いたら、はぁ?何それ?って感じよね。」
「超やばいんだよ。そして、性格もこの通りだから受けるキャッチャーがいない。困ったもんだ。」
「あなたが受けたら?」
「現実見ろよ・・・」
「冗談よ、ふふっ」
「あー、今からかったなー!」
「そんなことないよー!」
何やら楽しそうだった。
恒輝はそれを聞きつけて、
「よう、大夢、何彼女といちゃいちゃしてんだー??」
「うるせーぞ、恒輝!」
お決まりのノリである。
「中学から同じクラスメートなんだよ」
「へー中学の頃から付き合ってるのね!」
「おっ、お前なー!勝手にすり替えんじゃねー!」
「何ムキになってんだよー!じゃぁ大夢、また放課後なー!」
「お、おう!」
「ふぅ・・・ごめんな関口さん、毎回のように騒がせちゃって。」
「・・・」
「ん?どうかしたかい?」
「まぁ、そういうことにしておきましょう」
莉香子は既に赤面していた。
大夢自身恥ずかしさはあったが、
「まぁ、なんというか、中学の頃色々あって憎たらしい奴しか居なくて、もう、忘れたいんだけど、関口さんはまぁ・・・」
「いいよ、気にしなくて!」
急に莉香子は大夢に抱きついた。
「私もあのクラス大っ嫌いだから、全部忘れたい。でも坂上君だけは唯一信じているから、私も!」
「あっ、あぁ、良かった」
「だから、ひろくん・・・」
「関口さん、いや、りんりん」
「やっとあだ名で呼んでくれたよね!うれしいよ!」
「これから、お互い切磋琢磨していこうな」
「もちろん!」
大夢の青春ストーリーが思わぬ形で幕開けとなった。