遺言
「ひろたん」
「なんだ、その呼び方」
「ひーろーたーん!」
「なんだ2人きりになった途端馴れ馴れしいぞ」
莉香子は大夢を羨ましがっていた。
それもそのはず、日商簿記2級を1年秋に一発合格したのだから。
「ひろたん、かわいい」
「わるかったなー、せっきーは俺より男前だから」
「いやー、まさかまさか(笑)」
以前大夢は莉香子のことをりんりんと呼んでいたが、
りんな、りりか等似たような名前との混同を避けるため、
関口のせっきーで統一することにした。
「ぶっちゃけおっさんレベルだろ(笑)」
「おっさん通り越しておじいちゃんですわよ、おーほほほ」
「ここまでふざけられると反応に困るよ(笑)」
2人は相変わらずのノリだった。
関東大会では大夢と恒輝のバッテリーは実現しなかった。
しかし、恒輝は三塁手のスタメンを獲得するまでに至った。
大夢は少しずつ彼との距離を感じていた。
しかし、大夢は自分のやるべきことに力を注いだ。
マメができるまで打撃練習をし、走り込みを徹底した。
様々な動きを取り入れ、体幹を強化した。
そんな甲子園を目指していた大夢に悲劇が起こる。
いや、大夢だけの問題ではない。
妹のあゆみが中学校を休みがちになった。
学級でのいじめが原因らしい。
先生も先生だからどうしようもなかった。
学校に来られないものなら、部活にも行けるわけがない。
それでも、自主トレは重ねていたようだった。
自分の好きなことをしながら、自分の居場所が一番落ち着いた。
榛中はやくざの学校だ、恐ろしい、とまで言っていた。
事実なのだが、今に始まったことではない。
大夢は妹の遺言書を見つけた。
大夢は読んでいくにつれ、涙目になった。
決心した。
甲子園で活躍する。
出るだけじゃ物足りない。
何事もなかったかのように、自分の部屋に戻った。
ふざけんな。
いじめって感情の問題なんだろ。
そんなつまんないことで・・・。
お互いに良くない。
わかったよ俺・・・。
俺が甲子園で活躍して、発言して影響のある立場になっちまえばいいんだろ。
簡単なことだ。
おうよ、今まで以上に野球にストイックになってやる。
期待されてる以上は結果を残す。
そして結果を残して・・・。
すべての、野球を志す選手に・・・。
俺は、諦めない!
(続)




