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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第2部 転生少女の青春期

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呪文の謎編② コイバナ風投資話

 レインフォレストの夕食会。料理がすごく美味しい。なんていっても食事内容がルビーフォルンより豪華。なかなか潤っている証拠ですなぁ。

 あ、でも今年のルビーフォルンはお酒でフィーバーしてるし、もうちょっとレベルが上がってるかも。


「コーキさんから頂いた美容液ですごく最近お肌の調子がいいの。こちらを発つ前にもう少しいただけないかしら?」

「いいですよ。ただ、あまり保存が利くものではないので、使いきれる分だけですが、よろしいですか?」

「ええ、それで結構よ」

 私は鶏肉の丸焼きをパクパク口に運びながら、不思議な気持ちでアイリーンさんとコウお母さんのやり取りを聞いていた。

 コウさんはオネエの片鱗など一つも見せずに完璧な紳士として対応している。


 私が学校へ入学するために、王都に引っ越してきて以来、コウお母さんはオネエを封印している。王都に来たとき、心無いゲス野郎どもが、コウお母さんのオネエ喋りに難癖をつけてきやがったので、それ以降人前ではオネェだとばれないように気をつけてる。

 私と二人っきりのときは、いつもどおりのコウお母さんだけど……。こうやって人前で、男の人のフリをするのは、というか男の人だけど、でもコウお母さんが男の人のフリをするのは、きっと堅苦しくてやりづらいんじゃないかなーとも思う。でも、それでまた嫌なこと言われるよりかは……いいの、かな。


「そういえば、リョウに聞きたいことがあったんだ」

 と、私が、かぼちゃのポタージュを飲んでいると、クロードさんが私に話しかけてきた。

 まさか、またウヨーリ教のことだろうか……? しかし、タゴサクさんにはもう、変な話しは吹き込まないって約束してもらったし、定期的に送ってくるタゴサクさんの妄想ストーリーには毎回、却下です! と、書き直しを要求しているので大丈夫な、はず!


「な、なんでしょう? ウ、ウヨーリの教えのことですか?」


「いや、違う違う。去年ほどウヨーリの教えのことは聞かなくなってるしね」

 おお、タゴサクさんの妄想話をストップさせたことが功を奏したようだ。あのタゴサクさんのことだから、こっそり布教活動に勤しむんじゃないかって疑ってたけど、私、信じてよかった! まあ、ちょっと疑ってたんだけど、うん。


「今回折り入って聞きたいのは、短い期間で大量にお酒を作る方法なんだ。仕入れの時にお世話になってるルビーフォルンの人に聞いても、分からないって言うんだよねー」

 そう言って、チラリと私の顔色を伺うクロード氏。

 クロードさん直球ですな。でも、まだ教えるわけには行かない。企業秘密だもの。


「さあ、私はあまりそういうところは詳しくないもので、全然わかりません」

「えー? そうなのかい? てっきりリョウの発案なんじゃないかなって思ったんだけどねー」

「うふふ、まさかー」

「アハハ」


 お互い、笑顔だけ顔に張りつけてうふふアハハ戦争勃発。

 しかし私は引かないぞ! そのうち知られることにはなるだろうけれど、まだ知られたくない。もう少し王都にいる腐死精霊使いを集めてから……個人的な欲を言えば、シャルちゃんが卒業して、グエンナーシス領を出る時に、ルビーフォルンへ呼びたいから、それまで秘密にしたい!


 私の固い意志が伝わったのか、クロードさんは小さく息を吐いた。


「知らないということにしようかな。どちらにしろ、こちらに卸してくれるお酒をさばくのに今は手一杯だからね。今は」

 お、クロードさんが引き下がってくれた……のかな? 『今は』の部分がずいぶん強調されていたけれど、一旦は引いてくれるらしい。

 あー怖かった。私も商人になるとしたら、こんな感じで、腹の探りあいとかすることが多くなるんだろうか。はげそう。



----------


「リョンリョン! お待たせー! 遅くなっちゃった!」

 夕食を終えて、部屋で呪文集を眺めていると、ノックもなくロンネさんはテヘペロな様子で現れた。だからノックしてって……まあもういいや。


 ロンネさんは、お茶を私と自分の分も用意して、普通にイスに座った。

 ふ、普通使用人は席を共にしないのよ!? と思ったけれども、もうロンネさんだからしょうがないと諦めた。


「可愛さで言えばー、私が一番なんですけどー、やっぱり私たちの中だと、リオーネさんがクロードさんと一番一緒にいることが多いんですよねー」

 ロンネさんはそう言って、最後に『チッあの年増』とダークな声を響かせて、お茶を一口飲んだ。ま、まあ落ち着いて。


 どうやら、クロードさんに買われたあの3人組みの間では、クロードさんの正妻の座を手に入れるための過酷な戦いが行なわれているらしい。女と女の争い。怖い。

 とか言いつつも、ちょっと刺激的なその内容は、とっても未知の世界なので、興味がない事もない。私だって、女の子! 恋バナだってしたいお年頃だもの!


 リオーネさんといえば、クロードさんハーレムで一番年上のボンキュボンだ。なかなか頭の回転が早い人らしくクロードさんの秘書的な立ち位置をキープしてる。


「でも、ロンネさん、本当にクロードさんでいいんですか? 結婚相手、ですよ? ロンネさん若いし、クロードさんとは年がはなれすぎのような気もしなくもないですけど」

 ロンネさんはあのメイド三人組みの中だと、一番年下で16歳ぐらい。クロードさんの年齢は30オーバーだったはず。


「えーだって、クロードさん最高じゃないですかー? お金持ってるし、準貴族だしー、色んなもの持ってるしー、将来性もあって、安定感がありますよね!」

 あれ、恋バナしてるつもりだったけど、もしかしてこれ、コイバナじゃない?

 ちょっと戸惑う私を置いて、彼女は話し続ける。


「まあ、カイン様が爵位を取得したら、そっちに鞍替えもいいかなって思ったりー。でも、クロード様以上に競争率高そうじゃないですかー? あとは、アラン様もいいですけど、流石に魔法使い様だと気後れしちゃいますし、きちんとした血筋じゃないと受け入れないって感じですからねー。それに伯爵夫人とかはちょっと……。だからやっぱりクロード様かなーって」

 うん、コレは完全に恋バナではない。株式売買のような雰囲気を感じ取った。

 ロンネさんは、今一番安心の有望株であるクロードさんに全額投資で行くらしい。


「クロード様のことをお慕いして、とかじゃ、ないんですね?」

「やだ、リョンリョン、もちろん慕ってるに決まってるじゃないですかー。超慕ってます!」

 と言ってすごくいい笑顔だけど、本当に慕ってるのだろうか。いや、まあ、うん、クロードさんだし、いいんだけど……うん。


「クロード様ってどういう女性が好きなんですかね? リョンリョンどう思いますー?」

 目をハートマークにさせながらと見せかけて、$マークにさせているロンネさんが、好みのタイプを聞いてきた。

 クロードさんか……。ロリコン疑惑がはれないけれど……。


「クロードさんが私に求婚した時、私の、自分で言うのもアレですけど、頭の良さというか、こう、道具を作って利益を生み出すところとか、そういうのを評価しているようでした。だからそういう人が好きなんじゃないですかね。あと、若ければ若いほど好きなんじゃないですかね」


「あーやっぱり、そう思いますー? 若さなら、あの中だと私が一番ですけど。もの覚えの良さとかは、やっぱりリオーネが一番なんですよねー。でも、私もそう思って、実はこっそり文字の読みとか勉強してるんですー!」


 と言って、ロンネさんは、テーブルの角においていた私が書きなぐった呪文集に目を留めた。

 私が止める間もなく、その呪文が書かれた冊子をロンネさんは掴んで、パラパラ捲ると『いいところに文字が! 読んじゃいますよー! って、あれー? なんか読みづらい。ていうか、なんか読めない……あっ! でもこれ読めそうー!』とおっしゃった。


 ……え? これ、読めそうって、言った? 今、言った!?


「ど、どれが読めそうなんですか!?」


 私が、思いのほかに勢いよくロンネさんの肩を掴むと、ちょっとビクッとしながらも、『あ、これ……です』と答えて、一つの呪文を指差した。


 それは、私が前世の記憶を引っ張り出して自分で書き出し、そして七三の教頭が『読めないから呪文だな』と分けてくれた短歌。どの生徒もこの呪文を授業でメモすることがなくて、どういう効果があるのか分かっていない、未知の呪文だった。



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