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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第2部 転生少女の青春期

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学生活動編⑤ いざ校長室へ

「それで、今日の放課後、一緒に校長先生のところに来て欲しいのですが……皆さん時間大丈夫ですか?」


 署名活動の件で、いつも一緒に授業を受けているアラン、シャルロット嬢、リッツ君に話しかけた。


 結局、署名活動は私を含め4人だけだった。カイン様にも貰いたかったけれど、私が気づく時はいつもゲスリー野郎が近くにいるから声を掛けられなかった。


 署名の人数は少ないけれど、魔法使いが3人いるのだし、もしかしたらOKが出るかもしれない。

 署名した人全員で校長室へ行ったほうが迫力も出るだろうし、今日は総戦力で望む所存。


「前、リョウが言ってた請願書っていうの出しに行くのか? いいぞ、一緒にいく」

 アランが、そう言ってくれて、リッツ君もシャルロットちゃんも同意してくれた。いつもすいやせん! 助かります!


「おや? ひよこちゃん、校長先生のところに行くんだ? 署名の件だっけ? 私がいなくて平気かい?」


「それでは放課後、皆さんよろしくお願いします」

 と私はそういいながら、両手を合わせて改めて可愛くお願いをしておく。


 よし、あとは放課後どうにか校長先生をヨイショしていい感じに話を持っていけばきっとどうにかなる!


「ひよこちゃん、ひよこちゃん! ひどいなー、私を無視するとは」


 なんかさっきから雑音が入ってくるけれど、気にしない。私気にしない。


 でも、心の優しいシャルロットちゃんは気になるようで、私の隣で、私の前の席に座っている人物を見ながらあたふたしている。


「リョ、リョウ様、先ほどからヘンリー様がリョウ様に話しかけてます……よ?」


 恐る恐ると言う様子でシャルロットちゃんは私の耳元で話しかけてくれた。


 うん、知ってるよ。

 知ってるよ……。ああ、やっぱ駄目だよね。無視するのは……こいつ無視しても構わず話しかけてくるし。


「ヘンリー様、御機嫌よう。すみません、今まで全然、気づきませんでした」

「ハハ、いいよ。ただ私のことは前のように親しみを込めて、ゲスリーって呼んでもいいんだよ?」


 どうやら『ゲスリー』呼びが気に入ったらしい変態は、なんかウッキウキな顔をしている。

 悪いね、呼ばれたそうな顔されると呼ぶ気うせるタイプなの、私。


「ヘンリー様は、毎度毎度、一体リョウになんの用があるんですか!」

 そう声を荒らげたのは、アランだ。

 そう、ゲスリーとの牧場デート以来、ものすっごいゲスリーが私に構ってくるようになった。こんな感じでいつの間にか近い席に座っている時もある。


「別に用はないよ。ただ私は、リョウと話がしたいだけだよ。好きなんだ」

 ちょっと、やめて! へんな言い方しないで、この変態ゲスリー野郎め!


「ゲス……ヘンリー様。そんな変な言い方するのやめてもらってもいいですか?」

 薄い金髪をキラキラ輝かせて、イケメンの振りしたって、もう騙されない。おぬしのセリフの後には、必ず(※家畜として)という単語がつくことを私は知っているんだからね!


「リョウのことが好きって……へ、ヘンリー様が? うそだろ……」

 ものすごく呆然とした様子をしているアランだけれども、おい、子分よ、それは流石に驚きすぎなんではないかね。


 美容にも気を使ってる私はそれなりに綺麗なはずなんだから、モテたって、べつにおかしくないでしょう!


 まあ、実際、ヘンリーは私のことが好きなわけじゃないけど。好きなのは家畜としてだから。

 あれ? ていうか、私異性に好きとか言われたことない。クロードさんは、完全にそういうんじゃなかったし……ま、まさか、私、モテない? 私の女子力、低すぎ? 


 で、でも、まだ私子供だもん、これからだよ!


 その後はゲスリー野郎の、思わせぶりな発言をいなしつつ、俺の親分がこんなにモテるわけがない! みたいな顔をしている失礼な子分を落ち着かせて何とか乗り切った。


 うう、もういやよ。こんなのがしょっちゅうだなんて……私ストレスで胃に穴空きそう!



----------------------------------------



 放課後、皆で校長室に入らせてもらった。

 革張りのソファに、大きな石のテーブル、絨毯もふかふかで、さすが学校界の長のお部屋と感心した。


「なるほど、署名は3人だけど……全員魔法使いか……」

 校長先生は、改めて、請願書を見ながら、ふむふむと頷いてくれた。


「ところで、ヘンリー君から、何か話は来なかったかい? 実は私のほうでも声をかけていたんだが」

 すっごいウキウキした顔で話しかけてきた。

 わし、頑張ったんだよ、わしもね! みたいな目をしている。


 知ってますよ、先生。そのおかげで牧場デートしてきたんだからね。


「ヘンリー様とは意見が合わなくて……残念ですが」

「そ、そうか……ヘンリー君は、優しい生徒だから、協力してくれると思ったんだがね……残念だ。わかった、一度この請願書は預かろう」


 優しい生徒……。そうだね、ゲスリーの外面は優しそうだよね。


 とりあえずは書類は預かってくれた。後は、王様次第、なのかな?

 でも、あんまり校長先生の反応がよろしくないな……。やっぱり人数少なすぎたかな?


 ――――コンコン。


「私だ。入るぞ」


 そう渋い声が聞こえて、校長室の扉が開いた。入ってきたのは、黒髪を七三に分けた長身の男性だった。見たことある。この人確か、魔法使いの先生で、教頭先生だ。


「トーマス教頭先生! これはいいところに!」


 校長が嬉々として立ち上がり、教頭先生を自分の隣の席に座るように促した。


「実は、見てもらいたいものがあるんだ」


「私にですか? それに、ここにいる生徒達は……おや? 君はリッツ君じゃないか!」


 なんか面倒くさそうな顔をしていた教頭先生だったけど、リッツ君を見つけるなり、少しテンションがあがった。


 どうしたんだろう。もしかして、ソッチ系なんだろうか……。リッツ君は素朴で可愛い感じだもんね。


「リッツ君が、校長室にいるとは驚いたな、どうしたんだ?」


「トーマス先生、お邪魔してます。実は、校長先生にお願いがあって……」

 リッツ君と教頭先生が、二人で話し始めた。

 アランと違って、リッツ君は常識人なので、変なことは言わないだろうから、大丈夫だろうけど……。ソッチ系の人の魔の手にだけは気をつけてね。


 私がリッツ君と教頭先生のやり取りを見守っていると、隣に座っているアランがこっそり、私の耳元に口を寄せる。


「トーマス教頭は俺達の魔法の授業の先生なんだ。んで、得意魔法が火属性なんだけど、自分と同じ火属性が得意な生徒にものすごく甘いんだ。火なんて、あんまり使いどころのない魔法なのにな」


 あー、そういえば、リッツ君、去年、一緒に市場に行った時に、自分は火の魔法が得意とか言ってたな。

 でも、火魔法は、種火がないと使えない魔法だから使い勝手が悪くて、不人気だとかなんとか。


 あの先生は、不人気属性の火魔法を得意としてて、同じ立場の生徒にひいきをしちゃう感じなのかな。


「しかし、この請願書の内容は……必要なのか? くだらない内容に思えるが……」

 リッツ君の説明を聞き終わった七三の男性教諭は、そう言いながら請願書を見ている。

 し、失礼な! 必要だよ! 私に! 私に必要!


 私は、ちょっとイラっとしながらも、教頭先生に説明してあげることにした。


「たとえば、魔法史の授業を減らせば、別の勉強に時間をあてられます。『法力流し』の行事で、結構歩いての作業があるのに、私達は体力がありません。魔法史の授業の代わりに体を育てる授業が必要だと思っています。また、図書館はもう少し開放的であれば利用者も増えて、学校生徒全体の質が上がるのではと思います」


 ふーん、と七三のトーマス教頭は鼻息を鳴らして、請願書を校長先生に返した。


「まあ、私には関係のない話だ。それと、今から私は校長と大事な話がある。悪いが退室してくれないかね?」


 なんだ、この先生! リッツ君と話している時とは、えらい違い! なんか、やな感じ!


 私は内心ちょっとプリプリしながらも、反抗するわけにも行かないので大人しく校長室を退室した。


 部屋を去り際、リッツ君にだけ、「リッツ君、これからも頑張るんだよ。火魔法を私達で盛り上げよう」とか優しい言葉をかけて肩を叩いていた。


 ひ、ひいきは良くないと思う!



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