農村編⑦-魔法使いがやってきた-
私ったら、魔法使いかもね。
そう思っていた時期が私にもありました☆
だって、魔法使い=先進国の技術を持った人、だと思ったんだもの!ものー!
それが、アレ何よ。よく聞こえなかったけれども? 呪文のような言葉をつむげば、作物がぐんぐん成長するとか、なにあのマジック! ファンタスティックですね!
目の前のおいしそうなお魚料理をショックのあまりおいしくいただけない・・・!
現在、私の村は魔法使い様を歓迎する宴を行なっている。
村人がたくさん入るような建物はないので、村の近くの平地にキャンプファイヤーみたいに炎を焚いて、地面にテーブルやいすを用意して、お祭り騒ぎです。
どこからか取り寄せたお酒を出して、村のきれいどころのおねいちゃんたちが、せっせと魔法使い様をちやほやしている。
というかおねいちゃんたちの目がハートだ。まあ、わかる。魔法使い二人とも美形だもんね。
しかし、魔法使い様にとって、村のきれいどころのおねいちゃんたちは予選外なのか、反応がわるい。涼しい顔で、お酌をついでもらっている。
田舎娘では不足と申すか!
祭りの冒頭に魔法使いが簡単に自己紹介をしてくれた。
年上の赤髪の青年の名前は、精霊使いの「セキ=ナニワヅ」さん、もう一人の長髪の少年は、魔術師の「リュウキ=ウジカワ」さんというらしい。
魔法使いでも魔術師と精霊使いとで何かが違うらしい。よくわからんが。
ていうか10代にしかみえない少年魔法使いもお酒を飲んでいるけど平気なの? 異世界だから常識違うのかしら?
ミスガリガリ村の精鋭たちは、予選敗退のご様子だが、村自慢の料理はお気に召してくださったようで、村長に料理の注釈をもらいながら、ばくばくと口に運んでいる。
まあ、うまかろう。
食事は、本日とれたての魚の香草焼きをメインに、小魚で出汁をとった、クレソンと豆のスープ。野草のサラダ。タンポポの茎を使ったそうめん。
勿論、我が村で取れた米も、魚の出汁で炊き上げている。
味付けはわが村では塩しかないが、出汁も取れてるし、香草もあるので、なかなか奥の深いお味なのです。
ハァ・・・
私は、魔法使いのご様子を比較的お近くで拝見しながら、周りには気づかれないようにため息をついた。
村の中で、この子、魔法使いなのかも疑惑が発生していた私は、魔法使い様とお近くの席に座らせてもらってます。
ころあいを見計らって、この子、魔法使いかもしれないんですが、どうでしょうか?とお尋ね申し上げる予定になっています!
私の近くで座っているお父さんとお母さんがすごいそわそわしている!
やめてそわそわしないで! 期待に満ちた目で私を見ないで!
村長の話によると、平民から魔法使いが、もし生まれた場合、家族ごと王都に住まわせて、一生安泰な暮らしを約束してくれるらしい。
また村も貴族の直轄地となるので、今の生活よりも便利になる。
くっ、両親のギラギラした視線が痛い!
しかし、はっきりといおう、私は魔法使いじゃない!
今まで、村の人に魔法使いかもね! といわれたときは、
「そんな、そんな、私なんかがー、まさかー、うふふ」
みたいなテンションで、まんざらでもないリョウちゃんを出していたけれども。
魔法使いが魔法使いだとわかっていたら、ていうか異世界だとわかっていたら、全力で
「魔法使い違う、絶対違う!」と言い切れたのに!
しくじった。しくじりのリョウちゃん。
両親の期待を裏切るのが怖い・・・
「それにしてもこの村は豊かですね。畑があんな状態ですが、皆さんの顔色も良いようですし、こんなにおいしい料理を用意できるとは思いませんでした」
赤毛の精霊使いセキさんが、料理を召し上がりながら、本当に驚いた様子で、村長に話しかけた。
「実はですね。村の子供らが、近くの川で魚をとったり、食べられる野草を見つけてくれましてね。畑の収穫だけでは正直やってはいけなかったんですが、そのおかげで以前よりもいい暮らしが出来るようになりました。正直畑で取れたものよりも子どもらが見つけてきたものが毎日の糧となっている有様です」
「村の子供が・・・!? それはすごいですね。どうやって魚なんかは捕まえたのでしょうか?」
赤髪の魔法使いの問いかけに合わせるように村長はにやりと笑いながら、手をパンパンとたたいた。村長、思いのほかにノリノリだな。
すると、男性陣が、のそのそと小魚用の罠と、似非千歯こきを運んできた。
そして村長は、大きくうなずきながら私のほうを見た。
とうとう、私の時間がやってきたようだ。