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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第2部 転生少女の青春期

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新入生編⑰-長期休みのための準備-

 もうすぐ長期休みなので、コウお母さん家で、只今荷物を整理中。

 何を持って行こうかなー? しばらく戻れないとなるとあれもこれも持って行きたくなる。なんてったって長期休みは約3ヶ月ほどありますからね! まあ、領地に帰るから結構移動時間で取られると思うけど。だからこその超長期休みなんだと思う。


 それにしても長期休みが終わったら、もう二年生か。思いの外早い。

 ストーカーにビビったり、ボッチにビビったり、カテリーナ嬢にビビったりしてたら、終わってた……。


 特にストーカーのあたりは、私の学生生活終わったかもって思ったね!

 まあ、でも 最初の1年目なんてこんなもんかな、きっと。シャルロットちゃんとも仲良くなれたし、むしろ上々な気がする。


 念願の図書館は私が求めていたような知識はなかったけれど、それが分かっただけでもよかったかもしれない。


 そんな感じで私が学校生活にやる気を見せたり、ビビったりしながら、ふと部屋を見渡すと、アイスクリーム作りで余った砂糖が目に入った。


 砂糖も少し持っていこうかな。行きはアランやカイン様と一緒に馬車移動だし、お菓子を作って、持って行くのもいいかも。


 あ、そうだ。 砂糖と硝石でリョウちゃん印の秘密道具作りして、それも持ってこ!


 ということで、思い立ったが吉日。私は、早速秘密道具作りに取り掛かる。


 小皿の上で砂糖と氷の魔石の粉を混ぜて、三脚台の上に乗せる。そしてその下にロウソクを置いて火をともす。すると、皿の中の砂糖が溶けてドロドロするからそれをクルクル回しつつ、丸める。


 よし、これで多分煙玉の完成! のはず! あっという間だね!

 私は完成した薄茶色の小さい玉をみて満足げに頷く。


 うむ、しかし使ったことがないから果たしてこれできちんと煙玉としての役割を果たせるのか疑問だ。煙玉は、前世で本を読んで作り方だけは知ってるけれど、実際使ったことがないから効果の程がわからない。



「リョウちゃん、それ何?」


 近くで薬の調合をしていたコウお母さんが聞いてきた。


 これですか?

 ふふ、よくぞ聞いてくれました! 私の新たな秘密道具! 期待のルーキー、ニューフェイス!


「煙玉です! 火をつけると、なんとすごく煙が出ます!」


「煙? そんな物作ってどうするの?」


「えっ!?」


「えっ!?」


 どうするのか聞かれて驚いた私とそんな私の様子に驚いたコウお母さん。


 確かに、私は煙玉なんか作って何をするつもりなんだろう。私、忍者か。ドロンってしたいのか、私は。


 いや、だって、楽しかったから。煙玉とか……作るの楽しかったから……!

 ていうか私趣味が秘密道具作りになってる気がする。硬貨手裏剣だって、法力流しでたまたま魔物に出くわしたから、活用できたけど、あれなかったら未だに出番はなかったよね。


 いやでも、唐辛子爆弾のおかげでアランの暴走を止めることが出来たわけだし、秘密道具の充実は悪いことではないはず!


 うん、うん、それに煙玉があれば万が一再びストーカーに襲われても煙に巻くことができるかもしれん!


 これから、領地に帰るために長旅だってするんだし、いつ魔物や野生の獣に襲われても自分の身を守るために秘密道具を充実させるのはいいに違いない!


 そうそう、秘密道具の拡充は決して無駄じゃない! 多分!


「け、煙玉があれば、何か危険が迫った時に煙に紛れて逃げたりできます! あ、あと、遭難した時の狼煙とか!」


 という私の必死の弁明にコウお母さんは渋い顔をした。

「危険? 遭難? 最近の学校ってなんか危ないことでもするの?」


 いや、そういうわけじゃないけれども……。


「……備えあれば憂いなし的な感じです。もうすぐ長期休みで、領地に帰るまでの長旅だってありますし。もちろん護衛もいますけれど、煙玉もないよりあったほうがいいと思います!」


「そう、ふーん。まあ、リョウちゃんが突然何か作り出すのはいつものことよね。リョウちゃんは相変わらずねー。それでこの煙玉は火をつけると煙が出るってどれくらい出るの?」


 山賊暮らしのときも、色々と作っていたことをコウお母さんは知っているので、まあ、いつものことか、ということで片付いたみたい。やっぱり日ごろの行いが大事なんだね。


 それにしても煙玉の効果については、正直私もよくわからない。今チョット使ってみようかな。たくさん煙が出るといっても、蚊取り線香よりチョットすごいぐらいの煙なんじゃなかろうか。

 今から出かけて空き地とかに行くのも面倒だし、煙は出るけど火が出るわけじゃないから火事もないだろうし、いっちょ室内で火をつけてみようかな。


 どのぐらい煙が出るか見たらすぐ水の中に入れればいいしね。


「どのぐらい煙が出るかわからないので、今火をつけて、試してみます!」


 私はそう言って、一応換気のために窓をあけとく。

 そして、煙玉をピンセットのようなものでつまんで火をつけると、煙玉から明るい紫色の火がちろっとでて、そしてもくもくと煙が……。


 と思ったらもくもくどころじゃない! プシューって煙が出てくる!


 やだ何これ予想外にすごい煙い。室内でやっちゃダメ絶対!


 私はゴホゴホ言いながら慌てて煙玉を水の中に入れて消火する。


 コウお母さんがゲホゲホ言いながら慌てて扉も開けて換気をしていた。


 ご、ごめん! コウお母さん! 

 ここまでとは思わなかった!



 秘密道具のニューフェイスはなかなか強力のようです。

 ……何個か作っとこ。


「もーう、リョウちゃん、ゴッホこんなに煙が出るならもっと最初に言って、ゲホ欲しかったわゲホッ」


「ごめんなさい、私もここまでとは、ゲッフゲッフ思ってなくて」

 コウお母さんにちょっぴり怒られた。テヘペロ。


 でも、やっぱり何個か作っとこ!


 扉と窓を全開にしたら、煙っぽさは風に乗って流れていった。

 それにしても煙玉、なかなか強力。


 私は気を取り直して、いくつか作るため再度作成作業に入った。


「あ、なんだかんだで作るのね。一体あんなものいつ使うのかしら。出来ればそんな機会が無いことを祈るわ」


「へへ、そうですね!」

 うん、私もそう思ってるよ! でも、本当はちょっと使いたい。使いたくないけど使ってしまいたい。これが揺れる乙女心ってやつなのかな。乙女って大変!


「それにしても、リョウちゃんって不思議よね。どうやってそういうものを作る知識を得てるのかしら。タゴサクさんが騒ぎ立てるのもわかる気がするわ」


 あ、やめてタゴサクさんのことは思い出したく無い。ルビーフォルンに帰るのに一番不安なのは彼の存在だ。あの人苦手。


「コウお母さん、あんまりタゴサクさんの話はしないで……思い出したくない」


「とは言っても、彼、どうにかしないと、なんだかすごいことになりそうよ」


 うん、分かってる。領地に戻ったらまた説得してみる。私は人間だよって、説得してみる。

 ……今まで何回か話し合ったけど結局話がかみ合わなくて断念してたけど。


「今度の長期休暇の時に、何とかしてみます」


 私は、力なく宣言した。正直自信がなかった。



-------------------


 無事終業式を迎えて、学校生活1年目は終わった。


 一年生のうちに私が見ることの出来る図書館の本はあらかた目を通したけど、私が知りたいことは載ってなかった。だから、魔法使いにしか見せてくれない本をどうにかして読みたい。


 二年生の課題はそれ。

 1年目の学生生活を終わらせたと思いきや早速二年生になった時の目標を決めるさすがの私は、コウお母さんの家に来ていた。


 長期休暇中は、寮で寝泊りしなくてもいいので、終業式が終わってそのままコウお母さんのところでお泊り。


「明日は朝早いのよね?」

 インゲンの筋取りをしながらコウお母さんは私に聞いてきた。私もお手伝いしながら答える。

「はい。アラン達が迎えにきてくれます。馬車や護衛も用意してくれてるみたいで」

「そう。なんだかレインフォレスト家の方に悪いわね」

「カイン様が言うには、もともと雇うつもりのものだから、気にしないでとは言ってくれました」

「カイン様って……アラン君のお兄さんね? あの子はなかなか将来が楽しみな子よねー」

 舌なめずりしそうなコウお母さんだ。カイン様はもう家には呼ばないほうが良いかもしれない。アランには動かなかった食指が動いてしまうかもしれない。


「あ、そーだ! 手土産にこれ持っていって」

 そういって、コウお母さんは何か色々なものが入っている籠を渡してきた。

「これ、化粧水に美容油……コウお母さん特製美容薬一式ですね! レインフォレスト家は女伯爵のアイリーン様が切り盛りして頑張ってるので、きっと喜びます!」

 私とコウお母さんが協同で作った美容薬一式。まだおおっぴらには販売はしていないけれど、なかなか評判がいい。実際効果もあるし。これのおかげで私もコウお母さんもいつも髪もお肌もツヤツヤ。


「そういえば……アレクが言ってたけど、レインフォレストには、リョウちゃんを嫁にしたいとか言ってた幼児趣味の男がいるんでしょう? それは、大丈夫なの?」

 クロードさんのことか……そういえばそんな約束をしてしまっていた。


「多分、大丈夫かと……。数年前の約束ですし、当時の私は、お金で買われた小間使いでしたけど、今は一応伯爵令嬢ですし」


 流石のクロードさんも手は出せまい。それに、すでに別の女の子を3人ほど買ってるみたいなので、もう用済み臭がする。


「そう、なら、いいのだけど……気をつけてね」

「はい!」

 私が返事をすると、コウお母さんは微笑んだけれども、やっぱりちょっと元気がない。

 コウお母さんは、インゲンの筋取りの手を止めて、左の手の甲を右手でさすった。コウお母さんが不安な時によくやる仕草だった。


「……レインフォレストってアレクが攫う前にリョウちゃんがいたところなのよね」

「そう、ですね。……何か、心配ごとですか?」


「ううん、大丈夫よ! アタシもお仕事片付けたらリョウちゃんを迎えにレインフォレスト家に寄らせてもらうわね!」

 そう言ったコウお母さんはいつものコウお母さんだったので、その後は、いつもみたいにくだらない雑談をしながら過ごした。


 そういえば、なんだかんだコウお母さんに出会ってからは、大体一緒にいたし、学校の寮生活でもしょっちゅう遊びに行ってたから、今回みたいに長く会えなくなるのは初めてかも。


 早速明日、アラン達が迎えにきてくれて、レインフォレストに行くわけだけど、なんかもうすでにホームシックになりそう。


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