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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第2部 転生少女の青春期

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新入生編⑬-法力流しの見学会-

 とうとう法力流しの日がやってきた。楽しみにしていたけれど、アランやシャルロットちゃん、リッツ君とは別の班。

 ほぼ上級生に囲まれてアウェー感満載だったけれど、なんと同じ班にカイン様がいらっしゃった! さすがフォロリスト! 一人ぼっちで寂しそうな私のフォロー? どんな時でもフォローを忘れないね!


 私の班は30人ぐらいの団体さん。比較的、学園に近い『魔の森』にて法力流しを行う班に配属された。1年生から5年生の混合集団である。


 王都の出口までは馬車で進み、不自然なほど突然ぽっこりと盛り上がっている丘の上にある王都から降りるために、動力魔術師の巨大プレートエレベーターに乗ってとうとう王都脱出!

 それからも事前に用意している馬車に揺られて郊外に出ると、馬車移動とはさようなら。荷馬車に荷物だけ載せて、生徒達は徒歩で魔の森まで目指す。多分体力づくりの一環なのかもしれないけれど、普段の授業に体育的なものがないから、1,2年のお嬢ちゃん、お坊ちゃん達はものすごく辛そうだった。

 

 しかし、法力流しのためにのっしのっしと我が班員達は進む。魔法使いの先輩方が、前と後ろをガッチリガードの横2列編成。もちろん引率の先生もいるよ!

 あまりにも幼稚園の遠足チックなので、途中で『隣のオトモダチとお手てつないでいきましょうねー』とか言われるんじゃないかとハラハラしたが、そんなことはなかった。


 私の隣はナイトのように武装しているカイン様13歳。騎士科に所属している生徒は、みんなカイン様みたいに、剣を携えて鎖帷子のような防具を着用していた。

 何で武装してるのか聞いたところ、万が一結界にほころびがあると、魔物が出てきたりするから、皆を守るためだよ、とのことだった。


 魔物かー。あの熊みたいなやつだよね? 私はちょっと昔の記憶を思い出して震えていると、カイン様がそんなことは滅多にないから安心して、と笑いかけてくれた。


 やだイケメン! さすがフォロリストやで! 

 

 久しぶりに王都の外に出てちょっとテンションがあがりつつ、コウお母さんと王都に昇る時は苦労したなーという思い出に浸りつつ、のっしのっしと雑談を交えながら歩く。

 山暮らしで足腰の強い私はあまり疲れなかったけれど、箱入りのご令嬢やご令息方には結構な運動量だったらしく、お昼休憩の辺りではみんなへとへとになっていた。


 ランチの時には、既に街から離れた場所まできていたので、オシャレなカフェもなし。長閑な草原にある岩場で、それぞれ持参していたお弁当と飲み物で一休みという感じだった。

 先生のお話によるともうそろそろ現場には着くらしい。確かに遠目で既に森が見える。

 

 朝早くにコウお母さんに作ってもらったサンドイッチを膝の上に広げる。遠足の時に、お母さんの手作りお弁当を膝の上に載せて食べるのが長年の夢でした。

 カイン様も近くに座ってくれたので一人ぼっちじゃないし、最高の気分で至福の一時を味わっていると、ちょっと離れたところからキラキラ輝ける何かがこちらに手を振っているのが見えた。


「カイン! こんなところにいたのか!」

 手を振りつつやってきたのは、ヘンリー様だった。彼は魔術師なので、先頭グループにいたけれど、カイン氏を探しに来てくれたようだ。


「どうされたんですか? ヘンリー様」

 カイン氏が笑顔でやってくる王族に驚きつつ中腰で迎えた。

「どうって、何だ。何か理由がないとカインのところには行ってはいけないのかい?」

 そうさわやか笑顔で言うと、無駄のない動きで、ヘンリー様は腰を下ろした。どうやら一緒に昼食を食べたいようだ。


「そういう訳ではありませんが……他の魔法使いの方々が一緒にご飯を食べたそうにしてますよ」

 カイン様が回りの人に聞こえないように、少しヘンリー様に寄ってそう伝えると、ヘンリー様は『おいおいそんなこと気にすんなよ』という雰囲気で『ハハ!』と笑った。


「私はカインと食べたいんだ」

 相変わらずの王族スマイルであっけらかんとそう言うと、カイン氏はあきらめたように微笑みながらため息を吐く。

「わかりました。では私は大人しく、後ほど皆にいびられましょう」

「いつも悪いな」

 ヘンリー様がからかうような口調で声をかけてカイン様の肩をポンと叩いたあたりで、やっと私と目が合った。


 ねえ、私を無視して男の友情劇場を繰り広げるのは、やめていただけないだろうか。声をかけるタイミングを見計らっている私に気づいてもらえないだろうか。


「ん? こちらのご令嬢は確かヒヨコちゃんじゃないか! そうか、カイン、ヒヨコちゃんと二人きりになりたいから私から隠れていたのだな!?」

 そう言って、カイン氏のわき腹を肘で『このこのー』という感じでつつき始めた。

「そういうのではありませんよ。彼女は、私の弟の大事な友人ですから。もちろん、私にとっても大事な友、いや妹のような感じです」

 そういってカイン氏は穏やかな笑顔のまま、ヘンリー氏の肘つつきを止めていた。


「……ヘンリー様、お久しぶりです。リョウです」

 私は、機を見計らって満を持して声をかける。


「ああ、久しぶり、ヒヨコちゃん! 結構歩いてきたけれど、ヒヨコちゃんは全然疲れてなさそうだね?」

念のためもう一度名乗ってみたけれど、HIYOKOちゃん呼びから変更する気はないらしい。


「ええ、体力はある方なので」


「そうか! 丈夫なことはいいことだ! 気に入ったよ! カインだけじゃなく私とも仲良くしてくれると嬉しい!」

 丈夫で気に入るって……丈夫系女子って今流行ってるの?

 とりあえず、あらやだー光栄ですー! 的なことを言って事なきを得よう。


 そんなことを思っていると、ヘンリー氏が、さりげない所作で、私の手をとろうとしていたので、やばい! 貴公子流の挨拶『手の甲にキス』攻撃を食らう! と、とっさに判断した私は、膝に広げたサンドイッチをつかんだ。

 

 すると、貴公子は私に忍び寄らせていた手を、さりげない所作で自分のお膝元に戻した。

 流石にサンドイッチとともに手の甲にキスは出来まい。

 私はモシャリモシャリとそのままサンドイッチを食べた。


 その後のランチは、穏やかに会話も弾みつつ終わった。


 カイン様とヘンリー様はなかなか仲がよさそうに見えた。でも、なんか少し違和感を覚える。何だろう。アランとリッツ君の仲の良さとちょっと違うような。

 やっぱり、カイン様がヘンリー様に対して敬語だからかな。学年的には1つカイン様のほうが上のはずだから余計に違和感があるのかも。まあ、ヘンリー様は王族だから当然といえば当然なのだけど。


 この学園では、日本の学校にありがちな年上の言うことは絶対! という価値観よりも、家柄や魔法使いとしての能力でその生徒の序列のようものが判断されている傾向にある。


 ヘンリー様は、家柄も最高峰で、魔術師、しかもその腕前も超強力というお噂なので、実質この学園では怖いものなしのトップだと思われる。

 そのトップが意外と気さくな感じなのが、この違和感の正体、なのかな?


 ヘンリー様は、ちょっとキザで、若干馴れ馴れしいけれど、なかなか出来た人なのかもしれない。



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