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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第一部 転生少女の幼少期
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農村編⑥-3歳にして世界を知る-

 魔法使い様くるくる詐欺にあって、2年。ようやく魔法使い様が、我がガリガリ村に訪れました。

 遅いよー。2年ぐらい前に、もうすぐ来るよ行くよ的なうわさだったじゃないですかー!

 村のおとなたちの話だと、内戦みたいなものの影響で遅れてしまったらしいが、2年は待たせすぎですよね? 



 もう私は3歳です。3ピースです。


 私はこの2年間、精力的にガリガリ村、ぽっちゃり村化プロジェクトに力をいれていた。



 まず、魚は小魚だけでなく、大きい魚も捕まえられるよう、小魚用の罠の原理を応用して、川の中に木を差し込んで囲いを作った。

 囲いにはまった魚を藁で作った網で引き上げるという原始的な漁法ではあるが、確実な成果があり、大きい魚の料理が食卓にのぼるようになっていた。

 

 また、木材で簡単な千歯こきのようなものを作った。力がいる仕事なので、おもに私が指示をだし、マル兄ちゃんとジロウ兄ちゃんが作った感じだ。

 

 この偽千歯こきのおかげで、脱穀作業が格段に早くなった。

  ガリガリ村民の皆さんにも貸しているので、村中で脱穀作業がはやくなり、時間の余裕が出来たので、子どもたちだけでなく、おとなたちもわらじや篭などを編み始め、余ったものは旅の商人さんに売るという、やっと、やっと、農村らしい生活が出来上がってきた。


 そして一番の大発見は、川辺でマメ科の植物を見つけたことだ。蔓のような植物で、成長するとサヤの中に大豆より一回り小さいぐらいの豆を実らせる。

 長時間湯がいてからたべてみると、大豆と比べて大変青臭い味であったが、マメ科の植物らしく栄養価が高くておなかにもたまる。


 がんばれば、豆乳。味噌、醤油も夢じゃない。夢のような植物だった。




 ただ、ひとつ、畑の収穫だけは進展なし。むしろ育ちが悪くなっている。

 この村では水田でなく、畑で育てるタイプの陸稲を栽培している。前世でたべたお米よりは硬いが、まあ、お米である。嫌いじゃない。



 その陸稲だが、最初はきちんと大きく成長していたのに、年々育たなくなってきているという話だった。


 私はうすうす、というかすでに確信しているが、原因はわかっている。社会科の授業でも出てくる単語だ。


 連作障害。これだ、完全なるこれだろう。



 この地域は冬がない。ちょっと肌寒くなったかな? ぐらいなので、畑作業は休まず、収穫したらまた種をまいている。


 これじゃあ土壌のバランスが悪くなってしまうのも当然。


 しかし、私はこの連作障害に対して、特に何か対策を施していない。


 だって、村のみんながこういってるんだもの。


「魔法使い様にどうにかしてもらおう」と。


 ここまで全幅の信頼を寄せられている魔法使い様がますます気になってしょうがない。


 ありがたいことに、魚や野草のおかげで、空腹問題は大丈夫そうなので、畑に関しては様子を見ることにしたのだ。


 いったい、魔法使い様とやらは何をしてくれるのだろうか!


 ふふふ、気になるー。肥料とか用意するのかな? 深いところの土を掘り起こしてくれるのかも。それとももしかしたら、治水をして、水田にしてくれるかもしれない!

 気になるー、はよこい! 魔法使い!


 と思いをはせて、やっと本日、魔法使い様が村にやってきたのである。

 レディを待たせるなんて失礼しちゃうわ!


 そして、やってきた魔法使い様はなんとお二人。

 一人は背の高い、赤髪の男性。20代前半ぐらいかな? きりりとした眉がりりしい気の強そうな方である。

 もう一人の方は、金髪、といっても我が家の金髪と比べると色素が薄くて、なんか上品な感じの、少年・・・? 年齢は10代に見える。まだ若いからか中性的な顔立ちだが、男性であるらしい。髪を伸ばして、後ろに縛っている。なんか神経質そうで、眉間にしわがよっている。

 

 うん、どちらにしろ、お二人とも、美形だ。

 私は、今のところ、母似の地味顔であるので、美形が大変まぶしい。

 しかし地味顔なのも今だけよ、女はいつでも化けられるんだからっ!

 かわいいは作れる!


 それにしても村に現れた魔法使い様の格好が、すその長いずっしりしたローブなんかを着込んじゃってるので、本当に“魔法使い”みたいな格好なのだ。コスプレイヤーなの?


 ていうか、正直、熟練のおじさんみたいな人がくると思ってたので、若い人がきてびっくり。

  このくたびれた畑をどうにかできる知識や技術がこの若造にあるとは思えない。

 どちらかというと、おそらくこの魔法使いの護衛でやってきているであろう、鉄製のよろいを着込んでいる騎士風のおっさん達のほうが、頼りになりそうである。

 ていうか、騎士風の格好って、生ではじめてみた。


 ちなみに私は、いま、家の扉の隙間から、他の兄弟と一緒にのぞきみしている。


 現在、魔法使いご一行は、村の入り口的なところで、はげ頭の村長(あの人が村長だったんだ)と、挨拶を交わしているのをこっそりのぞいているところなのだ。

 どうやら挨拶が終わったようで、村長が魔法使いを引き連れて、村の畑を紹介し始めていた。

 村の真ん中に畑地帯が広がっており、その周りを私たちの家が囲っている形になっている。

 おとなたちは外に出て、魔法使いをお迎えしているが、村の子供たちは、たぶん私たちの同じように、窓の隙間や扉の隙間からのぞいているに違いない。


 そして村長さんが、畑を示しながら、顔をしかめて、首を横に振っている。

おそらく、「この畑だめなんすよー、ぜんぜんみのらないんすよー」とかなんとかいっているのだろう。


 すると、赤髪の魔法使いが、鷹揚にうなづいてからしゃがみこみ、大地に手を付けて、畑を見ながら、口をパクパク動かし始めた。土の品質でも見てるのかな?


 クラウチングスタートみたいな格好をしているが、もしやこれは「よーい、ドン☆」といってほしいのだろうか。


 私がくだらないことを考えていたら、ワーーー! という歓声が聞こえた。


 あわてて、畑を見てみると、陸稲が、ぐんぐん成長しているのである!


 まじで、何これ? 

 今まさにくねくね踊るように成長する陸稲たち。


 どういうこと?

 え、どういうこと・・・?



 何あの不思議な光景は!

 あ、り、え、な、い!!



 ねえ、もしかしてだけど


 もしかしてなんだけど……


 魔法使いって本当に魔法使い……なの?




 じゃあ、つまりここは――――――――



 転生先は異世界……?

 剣と魔法のファンタジー……というやつ?



 私は、前世で読んだ、ファンタジー系の物語や映画を思い出しながら、

3歳にしてやっと現状を理解した。



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