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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第2部 転生少女の青春期

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新入生編④-そういえば女友達がいない-

今日は2,3話更新する予定です

「リョウ、きいたよ? 今度アランと決闘するんだって?」

 心配そうな顔でそう尋ねにきてくれたのは、カイン様だった。

 全校生徒が講堂で受ける魔法史の授業の前のことだ。いつもだいたいカイン様は、ヘンリー様と一緒にいるのに、こちらに来るのは珍しい。

 ヘンリー様というのは、入学式の時に、上級生の代表で挨拶をしていたキラッキラの貴公子然とした殿方だ。イケメンで王族で魔法使いで、すごいのは分かるけれども、私の華麗な挨拶の後にステージに立ち、私の活躍を霞ませたという重い罪があるので、なんだか好きになれない。


 同じくイケメンのカイン様とヘンリー様はよく一緒にいるので、仲がいいみたい。周りの女子達のいい目の保養になっている。

 そんなカイン様が、決闘の件で、私のところにやってきた。


「カイン様、御機嫌よう。ええ、おっしゃるとおり今度アラン様と決闘することになりました。まだ日取りは決めていないのですけれど、その際は以前のように審判をお願いしてもよろしいですか?」

 私の提案にカイン様は渋い顔をした。


「リョウ、やめたほうがいい。アランはあれから、体も鍛えているし、魔法の腕も磨いている。怪我をするだけだよ」


 心配そうな声色でそう言うと、さりげなく私の左隣の席に座った。

 いつものように、私の右側に陣取っているアランが、カイン様の登場に怯みつつ口を開いた。


「カ、カイン兄様! ちなみに俺からふっかけた決闘じゃないですから! それに怪我はさせないようにするつもりです!」


 そうか、怪我しないように気遣ってくれるんだね、坊や、お優しい。

 悪いけれど私はちょっと容赦しない予定なので、恨まないでくれよ。


「と、アラン様もおっしゃっていますし、私は大丈夫ですよ。懐かしくなったので、ちょっとしたお遊びのつもりです。気軽に考えてください」

 と私は、完璧な笑顔でカイン様に伝えた。

 すると、うーん、と少し首をかしげて悩んだ様子を見せたけれど、結局は了承してくれた。


「分かった。アラン、リョウは女の子なんだから、怪我させないようにね。それから審判の件も引き受けるよ。むしろ、私のいないところで、絶対に決闘なんてやらないでほしい。必ず呼ぶように」


 とカイン様はやわらかい釘を刺しつつ、審判を引き受けてくれた。

 決闘の日程については、まだ決めてなくて~とか言って、具体的な日程はごまかした。確実な勝利のためには、念入りな準備と、環境が必要だもの。



------------------


 決闘の準備は順調だった。後は、機を待つのみ。

 相変わらず、私の金魚の糞のように、しかも金魚の糞なのに偉そうについて回るアラン氏を右隣に侍らせながら、私は、一つ大きな問題を抱えていることに気づいた。


 当初の目的である、女友達作成計画が全然進んでいない。

 既に一ヶ月はとうに過ぎており、私の計画では、今の時点で女友達がわんさかいる予定だった。

 なぜだ? 思いつく原因としては、私を密着取材しているアランの存在が思い浮かぶ。

 コブつきだから、話しかけられないのだろうか……。


 しかし、憎らしいことに、アランはアランで、ちゃっかり男友達をゲットしている。精霊使いの男の子、リッツ君だ。今もアランの隣にリッツ君が座っている。明るい茶色の髪を短く刈り込んでいる優しげな少年だ。


 5時間目以降の授業は、魔法使いだけの魔法の授業で、残りの一般生徒は仲良く魔法使いの偉大さを学ぶ授業を受けるため別行動なのだが、その魔法の授業の間にちゃっかりアランは友達を作っていたのだ。

 こんなに友達を切望している私に対し、ストーカーの癖にちゃっかり友達が出来ているアラン。私の何がいけないというのか……こんなに優雅な私なのに。


 1時限の授業が終わったので、今は講堂内には、1年生だけしかいない。私は軽くあたりを見渡すと、『やべぇ、目が合った!』とばかりにさっと目をそらす生徒がいる。


 なんなの? ねえ、みんななんなの? 目が合ったら石化するとかそんな逸話私には、ないよ!?

 なんか、気のせいならいいんだけど、他の生徒は私のことを警戒? というのか、なんか怯えられているような気がする。しかし、私は何かをやらかした覚えはない。


 もしかして、私が美しすぎたからだろうか……。確かに、コウお母さんの指導のもと美容に関しては余念がないけれども、髪だってオイルとかで手入れしてツヤツヤだけれど。 


 しかし、恐れられるほどの美しさはないと思う。自分で言うのもあれだけど、雰囲気美人みたいな感じだし……。仕草とかでなんかごまかしてる感じだし……。


* 


 1時限目が終わると、カイン様が『チャオ!』とでも言いそうなさわやかな笑顔で講堂から去っていった。カイン様は騎士科所属の4年生なので、騎士科の先輩達と修練の場に移動するのだ。


 3年生になったら、自分の学科を決めなければならない。

 学科は全部で4つ。騎士科、治療師科、商人科、魔法科である。魔法が使える人は強制的に魔法科だけど、他の人は自分の進路に合わせて、選択する。私はまだ決めてない。


 治療の技術はコウお母さんから学んでいるから、治療師科にはいく気がない。魔法科は行きたいけれど行けない。だから騎士科にしようか、商人科にしようかで迷っている。


 商人科は、算術に力を入れつつ、1、2年で学ぶ基礎教科をずっと学び続ける感じらしい。特出したスキルは身につかないけれど、たまに社会見学みたいな感じで、料理をしたり、お針子したり、実地体験があるというから、ちょっと魅力的だ。クワマルのアニキも商人科の硬貨作り体験で、こっそり短剣を作ったっていっていたし。

 でも、基本的には、基礎学科をひたすら学び続けるスタンスと言うのが、ちょっとね……。


 それなら、騎士科にいって、体作りをするほうがいいような気もする。身についた筋肉は決して裏切らない。騎士科では、基本的に、その名の通り剣術を学ぶ。たまに、馬術や剣の手入れや動物の解体とかも学ぶけれど、基本はひたすら体力づくりの学科で、脳筋の集まりだ。

 コウお母さんは筋肉男子が好きなので、騎士科をお勧めしていた。


 とはいっても、選択するのは2年の終わりごろ、まだまだ悩める時間はある。

 1、2年で学ぶ基礎学科の中には、算術や文字の書き取り・読み、歴史、地理なんかを学ぶ。ほぼ入学の試験の範囲なんだけれども、魔法使いは入試を受けずに入学するので、多分レベルを同じにするためにそういう一般教養の授業に取り入れているんだと思う。


 魔法使いの中には、たまに文字の読み・書きがうまく出来ない子もいた。たまにだけど。


 さっきも、魔法史の授業に先生にさされて、教科書の文章を読むように言われたが、文字をうまく読めないで、戸惑っている女生徒がいた。シャルロット嬢というかわいらしい女生徒である。同じ1年生。


 なんと彼女は奇遇なことにグエンナーシス領の開拓村の出身者らしい。もともと貴族の家から生まれたわけではないので、魔法使いであるということが判明したのが、入学直前だったらしく、文字の読み方とかの基本的なこともあまり勉強できずに入学となった。そのため、色々とご苦労されているという噂だ。


 開拓村出身といういうつながりもあるし、私は友達作り作戦の第一の目標として、シャルロット嬢に友達になってもらいたいと思っている。

 こげ茶色の髪の毛を二つのお下げにして、黒い瞳ということで、なんとも日本人らしい出で立ちに私は少なからず親近感を覚えている。今の私は金髪だけども。


 声をかけようかな、もしかしたら、友達になってくれるかもしれない。

 で、でも、緊張しちゃう! 最初なんていえばいいのかな?

 すみません、友達になってください! って言ったら、流石に突然すぎてひくかな。

 もしよろしければ私が勉強を教えてあげてもよくってよ? と言うのは、流石に偉そうかな。


「あーら、シャルロットさん、あなた、また先ほどの授業の時に、恥をかいてらっしゃいましたよね? 文字も満足に読めないだなんて、恥ずかしい。やめてくださらないかしら。今年の新入生全員があなたのように学がないのだと思われてしまいますわ」


 私がモンモンと考えていると、現在1年生の中で幅を利かせている派閥トップのカテリーナ=グエンナーシス嬢が私を押しのけてシャルロット嬢に声をかけた。


 入学式の時に、魔法使い代表として挨拶していた銀髪縦ロールの派手美人だ。なんと言う迫力。彼女の家が管理しているグエンナーシス領は裕福で力のある領地として有名で、しかもルビーフォルンとお隣の領地なので、ご近所さんでもある。


 彼女とも仲良くしたい。しかし、待ってほしい、カテリーナ嬢。


 今あなたが話しかけた子は、いま、まさに私が、声をかけようと思って、声をかける前に練習をしようと思って、練習に練習を重ねた上で、声をかけようという妄想をしていた子よ!


 横取りなんてはしたないわ!


次の話は本日更新しますので、しばしお待ちを

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あー、なんか先にこの令嬢と決闘しそう
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