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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第2部 転生少女の青春期

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新入生編②-ストーキングボーイアラン-

 入学式&オリエンテーションを無事に終えて、次の日から学校の授業が始まった。

 一番最初の授業は、魔法史の授業。1時限目の授業は毎日この魔法史の授業になるみたい。


 一日の流れとしては、1時限目に1年生から5年生のほぼ全員が講堂に集まって、魔法史の授業を受ける。ちなみに席は自由。この授業が終わると3年生から上の学年の人達は、それぞれの学科の授業を受けに別の教室へ移動するような流れだ。

 

 とりあえず、魔法史の授業は、実際の国の歴史と言うよりも、今までの偉大なる魔法使いの偉大なお話を聞いて、魔法使いSugeeeeって言い合う授業だった。ちょっと肌が合わない感じがした。


 色々思うところはあるけれど、とりあえずトイレにいきたい。もうすぐ授業始まりそうだから急いでいかないと。

 そう思って席を立つと、私の隣の席を陣取っていたアランが、私のほうを見た。


「どこへ行くんだ?」


「お花を摘みにいってきます」

 うふっとお嬢様らしく答えたけれども、アランには伝わらなかったみたいで、

「何で今からお花を摘みにいくんだよ。もうすぐ授業始まるぞ」

 と真顔で返された。


「お手洗いです! 厠に行くんです!」


 レディに何てこと言わせるんだとおもいつつ憤慨して答えたが、一方のアランは気にした様子もなく「ああ、わかった」と頷くと、何故か立ち上がった。


 そして私が歩き出すと、アランも歩き出した。


 コ、コイツ、ついてくるぞ!


 流石に女子トイレの中にまでは、来なかったけれど、私が用を足して、ハンカチで手をふきふきしながら、トイレから出ると、ぬっとアランが現れて、

「よし、じゃあ、もどるぞ」

 と、偉そうに声をかけてきた。

 

 近くで待機していたの!?

 やだ、この子怖い!



 入学式で再会して以来、アランが必要以上に私に構ってくる。

 今朝も、学校へ行くために、女子寮から出ると、アランが腕を組んで待っていた。いつからいたのか分からないが、私が寮から出てくると当然のように、『行くぞ』と言って、一緒に講堂まで行く流れになった。


 女子寮の前は当然のことながら、女子率が高いので、周辺の女子達の視線がいたい。『やだやだ、彼氏かしら、かわいいカップルねー、うふふー』みたいな上級生のお姉さまからの暖かい眼差しを感じた。


 講堂についてからも、アランは私から離れない。

 席は、好きなところに座って授業を受ける感じなのだけれども、アランは、当然のように私に声をかけて、この辺にしようと言って、一緒に隣同士の席に座った。


 確かに、まだ友達とかいないから一緒に座ってくれるのは嬉しいけれども、なんかアランの視線が痛い。なんか私を監視というか、なんか見張っているような感じがするのだ。

 それに入学式での出来事もあって、なんか、距離感がつかめない。アランの視線に怯える小動物のような私がいた。


 そして現在の女子トイレの前でも待ち続けるアラン氏である。

「ア、アラン様、こんな時まではついてこなくていいんですよ」


 私は恐る恐るそうお伝えしたが、アランは聞く耳を持たないようで、

「リョウは危なっかしいからしょうがない。早く講堂にもどるぞ」

 と言って、偉そうに歩き出した。


 トイレに行くのに危ないとかあるの? まさかこの世界でもトイレのハナコさん的なお化けがいて、かわいい子をあの世に連れて行ってしまうような逸話があるのだろうか……。


 しかし私は実際問題ハナコさんよりも今のアランのほうが怖い。


 その後も、様子のおかしいアラン氏に怯えながら、一緒にランチを頂く。 ありがたいことにランチにはカイン様もいてくれたのでいくらか雰囲気が和んだのが救いだ。


 そうこうしていると、4時限目の授業が終わった。

 1,2年生でも、魔法使いの生徒だけは5時限目に魔法の授業を受けるため移動する。これから5時限目なので、魔法使いであるアラン氏とは別行動。


アランは移動のために席から立ち上がったが、何か煮え切らないような顔をして、私をチラチラ見ている。


 気にしないでアラン坊や、私は平気よ! だから早くいっておいで! と視線で伝えてみる。しかし伝わらなかったようだ。


「リョウ、俺、移動するけど、一人で大丈夫か?」

 と確認してきてくれた。大丈夫だよ! むしろ私はなんかアランのほうが心配だよ! 


「大丈夫ですよ。それより早く行かないと授業に遅れますよ。急いでください」

 と言って、私は半分追い出すような動作で、アランの背中を押し出した。

 アランは顔だけ振り返って、神妙な顔をしながら、


「まあ、安心しろ。授業が終わればすぐに戻ってくるから、ここで待ってろ」

 と言ってきた。

 5時限目終わったら、寮に帰るだけだよね!? それに私だって、予定はある! 今日は、学園を出て、王都に住んでるコウお母さんのところでご飯を食べるんだから!


「あ、放課後は私予定があるので無理です。先に女子寮に戻ってますからー」

 と答えて、アランを他の魔法使いの生徒の群れに押し付けてダッシュで席に戻り、頭を抱えた。


 やだ、どうしよう、アランが怖い。



--------------------------



 アランの様子がおかしいこと以外は、基本的には何事もなく学校生活を送れている。

 初めての寮生活だけど、新生活の準備はばっちりだったので、引越し作業も順調だった。まあ、持ち込むものもそんなにないしね。


 私の部屋は、8畳ほどの大きさの一人部屋。部屋には、机とベッドがあるぐらい。トイレもお風呂も共同。

 食事は、学園内に食堂館があるので、そこで食べたり、外出許可をもらって学園の外で済ませる人もいる。

 私の場合、夕食は毎日じゃないけれど、外で済ませることが多い。外食と言うか、王都に移り住んだコウお母さんの家で食べているのだ。


 コウお母さんは学校からそう離れていないところに住んでくれてる。

 当初、王都で仕事を探すというようなことをいっていたコウお母さんを心配して、王都を練り歩いて、オカマバーを探したのだが、そういったものはこの都には見つけることが出来なかった。


 このままオカマバーが見つからなければ、コウお母さんが、路頭に迷ってしまう! 


 と、絶望した私だったが、コウお母さんは薬屋さんをもともと開業する予定だったらしく、問題なく店を構えることに成功していた。

 

 ということで、現在は自宅兼仕事場を構えて王都に住んでくれているので、授業が終われば、外出許可をもらって、コウお母さんのところに通ったり通わなかったりという毎日。


 そんな生活を1ヶ月どうにか続けていたけれども、最近、追っ手が、私の行く手を阻もうとする力を増してきている。

 追っ手というのは、アランだ。優秀なストーキングボーイである。


 アランは私から基本的に離れたがらない。

 私がどこかに行くと必ずついてくる。


 ちょっと! レディの後をつけるなんて、ストーカーなのではなくって!?


 と思いつつも、私も私で、なんか、心配をかけてしまった負い目というか、そういうのがあるので、強く出れないまま1ヶ月。


 ただ、5時限目はいつも魔法使いだけ特別授業があるので、別行動。そしてそのまま寮に帰る流れなので、背後霊のようについてくるのは基本的に、4時限目の授業までだ。


 だから、今までは、どうにかこうにか、外に繰り出せたのだけど、最近、私が外出していることを察知したようで、付けねらい始めている。



 本日も放課後、コウお母さんのところに行こうと、学園から出ようとしたところ、門の前で、アランらしき男の子が、仁王立ちで待ち構えているのが見えた。


 あ、あれ? もう、魔法の授業終わったのかな? ちょっと早くない?

 外出許可証の更新に手間取ったか……。


 私はこっそり、ばれないように、抜き足差し足で校門を出ようとしたが、

「オイ、リョウ!」

 と、声をかけられてしまった。

 抜き足さし足中だった私は、ピンと背中を伸ばして、にっこり笑ってアランに向き直る。


「まあ、アラン様、ごきげんよう。本日はいかがされたんですか?」


「……なんか、笑顔が白々しい。俺に気づいた上で、無視しようとしてないよな?」


 鋭いアランの問いかけに、まさか、まさか、そんなまさかーと言って、お嬢様らしくオホホとわらってごまかした。


「ならいいけど、外に出かけるなら、俺も一緒に行くって前にもいっただろ。今日こそ一緒にいかせてもらう」


 やはりそうきたか。アランの首には外出許可証が紐でぶら下がっている。準備も万全のようだ。


「ついてきても、そんな大層なことはしないんですよ。つまらないだけです。私のお世話をしてくれるルビーフォルンの方のところでご飯を食べるだけなんですから」


「別に面白そうだから、ついていきたいわけじゃない。今は明るいけれど、帰りは暗いだろ? リョウ一人じゃあぶない。俺も一緒に行く」


 クッ、そういう風に言われると、私何も言えねぇ。

 基本的に私のことを心配してくれているがゆえのストーキングのようなので、私、強く出れない。


「大丈夫ですよ。このあたりは治安がいいですし、帰りはいつもそのルビーフォルンの方に送ってもらってますから。それに、突然、アラン様を連れてきたら、その人が驚きます。私はルビーフォルンに居候の身の上です。あまりご迷惑は掛けられません」


「そんな肩身の狭い思いをしてるなら、レインフォレストに来ればいいじゃないか」


「いえ、いえ、肩身が狭いわけではありません。良くして下さってます!」


 とか何とか言いつつ、もうアランを振り切るのは限界だと思い始めた。

 多分、コウお母さんなら、友達の一人や二人連れてきても面倒くさからずにむしろ喜んで出迎えてくれると思うけれど。

 でも、私が、なんか嫌だった。あんまり、出来れば、コウお母さんと会わせたくない。


 だって、せっかくの家族の時間だし、家族の前の自分と子分の前の自分てなんか違うし、それにコウお母さん、私の彼氏を味見するって言ってたしな……。

 アランは断じて彼氏ではないけれど、アランはあれでもなかなか整った顔をしている。


 まだ子どもだから、コウお母さんの食指は動かないと信じているが、万が一ということもある。


 アラン坊や、君を誘わないのは君の事を思ってのことなのだよ! と訴えかけたい。


 しかし、どんなに訴えかけても、どっしりと仁王立ちで構えているアランの猛追を撒けそうにない。


「いいから、一緒にいくぞ!」

 そういってアラン坊やは悩める私の右腕を強引につかんで、外に出た。


 うーん、しょうがない。コウお母さんのところに連れて行くか……。


 どうなっても、知らないからね! 食われても知らないよ!



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