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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第一部 転生少女の幼少期
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農村編⑤-出来立ての農村でした-

 ほっほっほっほ!

 満足満足!


 大漁じゃーーい! 小さいけれど。


 魚の罠は大成功だった。大人の親指ぐらいの大きさの小魚だが、篭に10匹は入っている。


 篭の中身をみて、シュウ兄ちゃんもマル兄ちゃんも驚き桃の木。

 その様子を遠目で見ていた村の子どもたちも集まってきて、自分たちも魚を捕まえたい! という話にあいなりまして。

 明日、村の子供たちとそれぞれの家にある陸稲の藁を持ってけるだけ持ってきて、ここで作ろうという話に落ち着いた。


 子どもたちからのリョウちゃんすごいすごい旋風で、ずっとにやにやしている私。グヘへへヘ!

 うむ、うむ。苦しゅうない。もてはやしたまえ、みなの衆!


 とても気分がよかったので、子どもたちに食べられる野草を教えてあげることにした。そして再びのリョウちゃんすごいすごい旋風。

 うむうむ苦しゅうない。


 みんな、栄養つけて、ガリガリ村をぽっちゃり村にしようじゃないか!





 家に帰って、小魚を見せたら、お母さんとお父さんが喜んでくれた。


 お母さん、お父さん、もっとほめていただいてもいいのよ?

 自慢の娘でしょ? でしょ? うふふ。


 その日の夕食は魚も野草も入った、おかゆ。

 骨が怖いので私は魚は食べなかったが、魚の出汁が利いているので、スープが本当においしかった。今まで生きてきて食べた中で一番うまい。まだ1年ぐらいしか生きてないけれども。


 それからは、川辺にいって、村の子供たちに小魚の罠や、わらじや篭の作り方などを教えながら、一緒に作るようになった。




 そんな日々がしばらく続いたあるとき、いつものように川辺で懇切丁寧に藁の編み方を子どもたちに教えていると、村の女の子がこんなことを言った。


「もしかしたらリョウちゃんは魔法使い様なのかもね!」


 周りのみんなも騒ぎ出した。

「確かに、そうかも!」 みたいな事を言っている。

 まあね? 私ったらー、いろんな知識や技術があるものねぇ? 前世の知識があるしー、この村ではパイオニア的な存在には、なるかもねぇ? うふふ。

 『魔法使い=技術者』ということでしたら、私は魔法使いといっても過言ではない!

 チチンプイプイ!


「でも、魔法使い様は、お父さんかお母さんが魔法使い様じゃないとなれないって、だから貴族様だけなんだって、うちのお父さんが言ってたよ!」

 あー、そう、ふーん。

 貴族がいるのか、この国には。ということは王族もいて、王子もいるんだろうね。王子様、ちょっと見てみたい。


 それにしても、魔法使いは貴族、ということは、つまりこの国では、魔法(技術のことね、プププ)は貴族などの権力者がその知識を独占している状態なのか。


 だって、この村では学校がない。

 言葉はしゃべれるが、文字が読めないし、算数もできない。しかも、農村なのに作物のことや生活の知恵まで何も知らない。それは子どもだけにとどまらず大人も。

 そこが本当に不思議だった。今までこの村の人たちは、どうやっていきてきたのだろう?


 おそらくだけど、この村は開拓地なんだと思う。

 新しくこの土地を耕してほしいといわれ、よその土地の農作業のわからない人たちが集まったとしか考えられない。

 村に住んでいる人も、基本的には、若い夫婦に子どもという核家族なのだ。おじいちゃん・おばあちゃんなどご年配の知恵袋的存在がいない。


 

「このむらは、いつからできたの?」

 

 貴族や魔法使いのお話が一段落したころを見計らって、思い切って長年の(といっても1年ぐらいですが)疑問を聞いてみた。


「5年ぐらい前だよ。それまでは、お城を作ってる魔法使い様のところまで石を運ぶ仕事をしてたんだ」

 答えたのは最年長のラージ君だ。もうすぐ10歳になるので、そろそろ畑仕事に入る予定の子である。

「そうなんだー! じゃあ、この村のおとなの人たちは、おしろをつくってたんだー!すごーい!」


 私は、やっと、このなぞの農村集団の正体に近づき興奮しながら答えた。

なるほど、土木関係のお仕事だったんですね!

 

「すごいのは、魔法使い様だよ。お父ちゃんやお母ちゃんはただ石を運ぶだけだし。魔法使い様が魔法でなんでも作ってくれるんだ!」


 まじかよ。魔法使いハンパないな。ていうか、この国は技術や知識を魔法使いが、独占しすぎでしょ。なんという技術の秘匿性。

なぜそこまで隠したがるのか! 汚職か! 内乱をおそれているのか!


 すると、年上の男の子たちが、ここぞとばかりに愚痴を語りだした。

「それにしても、お城作りのお手伝いしたときは、こんなにひもじくなかったよ。畑しごとは難しいね」

「領主様からは、土を耕して、タネを埋めて、水を与えてれば、作物ができるから収穫するだけ、ってきいていたのに、話が違うってお父ちゃんが言ってた」


 どうやらお城作りの手伝いをしていたときは、食料などがきちんと支給されていたらしい。しかしお城が完成したので、仕事がなくなった。仕事がなくなった人たちの次の職場として、国から開拓地での農業生活を勧められた、とのこと。

 そのときに、必要最小限の農具と、種を渡され、タネをまけばいいだけだからといわれたらしい。


 数年間は国からの補助で、食料などが支給されていたが、2年ぐらい前にその支給も止まってしまった。

 畑で収穫した作物を一部を税として収め、残りを自分たちのものにしていいのだから、もう食料はいらないだろ? ということらしい。

 村のおとなは適当な人多いな(自分の親含め)と思っていたが、なるほど国が適当だったのか、と妙に納得してしまった。


「でも、今度、魔法使い様が来たときに、村長さんが不作であることを相談するみたいだよ。そしたら、魔法で何とかしてくれるし、それにこれからは魚や野草も食べれる! おなかいっぱい食べれるようになるよ!」


 と、いきなりマル兄ちゃんが熱く語りだした。みんなもうんうんうなづいている。

 

 そうだね、まずはおなかいっぱい食べることが先決よね。

 みんなでガリガリ村やめて、ぽっちゃり村に入村しよう、そうしよう。




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