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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第一部 転生少女の幼少期

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山賊編⑭-まさかこんなところで会えるとは-

 親分達を解放して、今度は逆に、騎士達や、リュウキのアホを縄で縛って拘束した。もちろんリュウキのアホには猿轡を忘れない。

 セキさんとバッシュさんは親分の判断で、拘束を解かれていた。


「リュウキ、お前、バッシュ様に危害を及ぼすとは何事だ。あれでも伯爵様だぞ」

 というセキさんの言葉に、リュウキさんはムームー言って、なんか反論している。猿轡されてるから、何を言っているか分からない。ムームー言ってる。


「セキ……何気にアレ呼ばわりは酷いんじゃないか。それにしても、リュウキ君! こんなに護衛騎士を連れて……タゴサク様はどうしたのだ? お一人にしたのではないだろうな!?」

 今度はバッシュさんが、リュウキのアホに話しかけたが、彼はムームーしか言えないムームー谷の住人なので、返答が出来ない。その隣で拘束されている騎士が、申し訳なさそうに声を上げた。


「おそれながら、お近くにいらっしゃると思います。お近くで隠れてもらうようお願いいたしましたので。おそらくあのあたりかと……」

 といいながら目線で大体の場所を示してくれた。

 

 クワマルのアニキがその辺りの雑木林に入ってすぐに、フードを目深にかぶった人を連れてきた。すっごくおどおどしているのが分かる。


「タ、タゴサク様、申し訳ありません! おそろしい思いをさせてしまいました! クワマル! もっと丁重に扱え、タゴサク大先生様だぞ!」

 猫の首でもつかむような感じでフードの人を連れてきたクワマルから、バッシュさんがフード男を奪う。


「タゴサクって言われても知らねぇよ。誰だよ」

「我が領地に農業の改革をすすめてくださるありがたいお方なんだ!」

 ほう、あのフード男がねぇ。


「にしてもバッシュよ、こいつら騎士はお前のところの騎士だろ。何裏切られてんだよ」

 そういわれてシュンとするバッシュさん。親分あんまりそういうことは言わないであげて。心をえぐらないであげて。


 何もいえないバッシュさんに代わって、慌てて拘束されている騎士が弁明し始めた。

「わ、私達は裏切ったのではない! リュウキ様が、バッシュ様が怪しい行動をされて、魔物に誑かされているのではと聞いたので、お諌めに参ったのだ! けっして、リュウキ様が協力してくれたら新しい剣とか鎧を作ってくれるという約束になびいた訳ではない!」

 そうか、なびいたんだな。正直な奴だな、君は。


「ハア。ああ、でもしょうがない。リュウキ君はどっちにしろ、うちの娘と結婚してもらうから、次期伯爵だ。しかも魔法使いなんだ。みんながそっちになびくのはしょうがないんだ……」


 バッシュさんが肩を落として、独り言のようにつぶやいている。

 あまりのいたたまれなさに、みんな何も言えない。ただ、ムームー谷の鳴き声だけがこだました。


「リュウキっていうのは、セキの息子か? では、アニエスとの子か。ほとんどアニエス似だな。王族の血が色濃く出てる」

 ルーディルさんがムームー言っているアホをしげしげとみながらセキさんに話しかけた。


「ああ、素質も魔術師だ」

「ふーん、じゃあ、アタシの甥っ子ちゃんねー。なかなかの美少年じゃなーい。鼻血姿もいい感じ」

 舌なめずりしそうなコウお母さんに、さっきからムームー言ってたアホはヒっという感じで、黙った。さすがコウお母さんだ。


「だがよ、魔法使いとして優秀そうだが、リョウには敵わなかったみたいだな」

 そう、すっごく嬉しそうな声を出して、親分が言うと、よっこいしょと私を持ち上げて、抱っこをしてくれた。


 もう一度言おう。抱っこをしてくれた!


「うふふ、アタシたちの娘のほうが優秀だったみたいね~。でも途中心配でハラハラしちゃったわー」

 すかさずコウお母さんも喜びの声をあげる。


「子どもはアレぐらい元気じゃねぇとな」

 よかったー、人を膝蹴りしたから怒られるんじゃないかと思ったけど、アレぐらいは元気のうちなんだね! 親分!


「あ、兄上、とうとう、アレクさんと、子どもを!?」

 セキさんの青ざめた一言に、親分が鋭い眼差しで、ふざけたこと言ってんじゃねぇと凄んでいる。

「ああ、そうだよな、そんなことないよな。すまないアレクさん。あと、ちょっとこっちに……」

 といって、セキさんは、皆がいるところから少し離れて、小声で話し始めた。私は抱えられたままなので、小声の内容がばっちり聞こえる。


「すまなかった。息子に感づかれていたとは。あれはあれで、素直な子なんだが、考え方が完全に王国よりで、意外と頭も切れる。確信はしてないみたいだが、アレクさんの正体を疑っている。一体どこからそんな情報を手に入れたのか……。悪いが、ここでは正体を隠したほうがいい」


「んなこたぁ分かってるよ。そう思うなら、息子の前で俺の名前を呼んだりするなよ。思いっきりアレクって呼んでたじゃねぇか」


「そうか。そうだったな、確かに。すまない」


「まあ、もういいがよ。どうせすぐに去るからな。だが、その前にバッシュとは話さなきゃならねぇ。悪いが、バッシュだけ少し借りてくぞ」


「……私も一緒ではだめなのか? アレクさんの行動に理解を持ってるつもりだ」


「だが、お前は魔法使いだ。息子もな。命まで賭けれる覚悟はねぇだろう?」

 セキさんは視線を落としてちょっと黙り込む。


「……わかった。どっちにしろ、息子の見張りも必要だ。私は残るよ。私が伝えたいことはバッシュさんにも伝えている。立ち話で悪いが、少しはなれたところで、バッシュさんの話も聞いて欲しい」


 セキさんの話に、ああ分かってると親分が頷くと、二人は皆の輪の中に戻って、抱っこされていた私を地面に下ろした。

 おお、抱っこ期間は終了ですか。


 そしてそのまま親分は、タゴサク大先生とやらに、大丈夫ですかー? の声がけを行なっているバッシュさんの肩に手をおいて、

「バッシュ悪いが、この状況だ。一人で来てほしい。ちょっと離れたところで、また立ち話で悪いがそこで話したい」

 とこっそり告げた。

 私は、近くで突っ立ちつつ、バッシュさんの隣にいるフード男を見る。フード男と目が合った。すると、驚きに目を見開くフード男に、何か驚いているフード男に驚く私。


 え? 何どうしたの?


 フード男は、勢いよくフードを取ると、満面の笑みで、

「まさか、リョウ!? いや、リョウ様でございますか!?」

 と、すっごい大声で叫んだ。


 え? 誰? 私はリョウだけど、君誰?


 私はよく観察して、この人が誰なのか記憶をめぐらす。タゴサク大先生と言われてたけれど……。


 鷲鼻が少し特徴的だが、後はまあ、何かどこでもいそうな感じの人、ていうか確かに見たことあるこの人。イケメンの顔は良く覚えるんだけど、ちょっと、好みから外れると……ごめんね。

 年のころは20台後半なのかな、肌はまだ若若しいが、髪の毛が既にはげ散らかっている。

 はげ散らかっている、この頭。あれ、どこかで……。


 分かった!


「ガリガリ村村長! ……の息子さん?」


 剥げ頭がトレードマークの村長一家の長男は、満面の笑みで頷いた。





次回、ガリガリ村の今!ですが、明日から2,3日は更新できないかもしれません。感想の返信も滞ってしまうやも。今しばらくお待ちください。

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