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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第七部 転生少女の革命期
303/304

番外編:リョウが口で薬を飲ませる話、サロカテ編(学生の頃)

【宣伝】

とうとう明日! 転生少女の履歴書のコミック第一巻が発売します!(パフパフ!)

藤本れもち先生による美しすぎる転生少女の履歴書の世界が!!

ちなみに、明日発売日なのですが、地域によっては本日も書店に出ていたようです!

売り切れる前に急がないと…!


そしてコミック発売記念番外編も今回ので三回目です!

リョウちゃんの勘違いが、サロメとカテリーナに迫る!!

お楽しみいただけたら幸いです。



「リョウさん! リョウさん! 大変よ! 大変なのよ!」

 学校がお休みなので、自室で作業をしていると、すごい勢いでドアがノックされ、カテリーナ嬢の叫び声が聞こえてきた。


「ど、どうしたんですが? ちょ、ちょっと待ってください。今行きますから!」

 私はマッチ作製のための作業台の上をパパッと片付けると、急いで扉を開ける。

 するとこの世の終わりみたいな悲壮な顔をしたカテリーナ嬢がいた。いつもの縦ロールのドリル感も弱弱しい。


「リョウさん! 遅いわよー! もう! 大変なのよ! 私、どうすればいいのかわからなくて! サロメが! サロメがー!」

「ええ!? ま、まずは落ち着いてくださいカテリーナ様。サロメさんに何かあったんですか?」

 ものすごい勢いでしゃべりだすカテリーナ様の背中をさすっていると、騒ぎに気付いたシャルちゃんも自室から出てきてくれた。


「リョウ様に、カテリーナ様、ど、どうしたんですか?」

 そして、シャルちゃんもカテリーナ嬢の取り乱しように驚いて問いかけると、ようやく落ち着いてきたカテリーナ嬢がゆっくりと口を開いた。


「サ、サロメが、し、死んじゃう」

 そう言って、さめざめとカテリーナ嬢が泣き始めた。


 マ、マジかよ。死んじゃうって……!

 私は思わず一緒にカテリーナ嬢をなだめていたシャルちゃんと目を合わせた。

 そして、とりあえず状況を確認しなくちゃと思って、急いでカテリーナ嬢と一緒にサロメ嬢の部屋に向かう。カテリーナ嬢の話だとサロメ嬢は自室で倒れているらしい。

 一体何がどうなって、倒れているのかは、ぐずぐず泣いているカテリーナ嬢から聞き出すことはできなかったけれど、一刻を争うかもしれない。


 サロメ嬢の部屋の前につくと、カテリーナ嬢はノックもせずに、部屋に入って、ベッドのところに駆けだす。


「サロメ! サロメー! リョウさんとシャルロットさんを連れてきたわ! だ、だから、元気に、早く元気になって、死なないで―! サロメー!」

 カテリーナ嬢は、ベッドに横たわるサロメ嬢の手を握りながら泣き叫んだ。

 そして、手を握られたサロメ嬢は、目を開ける。

「カ、カテリーナ、静かにして、くれる? 耳元で大声は、頭に、響く……」

 サロメ嬢の怠そうな声が聞こえた。そして、サロメ嬢はゆっくりと上体を起こして、かすれた声で「リョウさんに、シャルロット様?」と言って首を傾げた。


「サロメさん、大丈夫ですか? カテリーナ様から、死にそうって伺って……」

 と言って、私とシャルちゃんもサロメ嬢のベッドの近くに向かう。

 私とシャルちゃんの姿を見て、驚いたように目を開けていたサロメ嬢は、申し訳なさそうに笑った。


「ごめんなさい。カテリーナが呼んだのね? もう、大丈夫だって言ったのに。最近はやっている風邪に罹っただけよ」

 風邪! 確かに、顔色が悪いし、ダルそうなお声。

 最近アランやカイン様の看病で見た症状と似ている。


「だって、だって、サロメ! こんなに弱ったサロメ初めてだもの! 私、死んじゃうかもって、いやよ、死なないでよー!」

「だから死なないわよ、カテリーナ」

 そう言って、カテリーナ嬢を落ち着かせるように頭を撫でたサロメ嬢が、呆れたように微笑んだ。


「サロメさんが、思ったよりも元気そうで安心しました。カテリーナ様ったら、ものすごい剣幕だったから。でも、風邪もこじらせると危険ですからね。私、ちょうどいいお薬持ってるんです。最近風邪が流行っているみたいなので、コウさんからいくつかお薬を融通してもらっていて」

「コウさん? ああ、たしかリョウさんのところの治療師ね? お薬嬉しいわ。歩くのも怠くて、薬をもらえなくって困っていたの。カテリーナはあんな状態で、頼むに頼みにくくて」

 と言って、サロメ嬢の膝の上に顔を置いてさめざめ泣いているご様子のカテリーナ嬢に視線を向けた。

 たしかに、こんな状態のカテリーナ嬢を、町に繰り出させるわけにはいかない。


「アランも同じ症状の風邪を引いていたんですけれど、この薬をのんだらすぐに治りましたよ。少し苦いですけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。ありがとうリョウさん」

 そう言ってサロメ嬢が、薬の入った瓶を受け取った。

 そして、私はアラン、そしてカイン様を看病した時のことを思い出す。


 そう、コール。あの時、大失敗した私のコール。


 ここで、ご意見をうかがうことはできないだろうか。そりゃあ、もしかしたら下手かもしれないコールを友達に聞かせるのは恥ずかしいけれど、何がダメなのか分からないままじゃ一生の恥になってしまう。


「あの、よかったらサロメさん、お薬、私が口で飲ませてみてもいいですか? それで、できれば感想を聞きたくて」

 私がそういうと、何故かその場がシーンと静まり返った。


 さっきまでぐずぐず泣いているカテリーナ嬢の泣き声もピタリと止まる。

 そして、カテリーナ嬢が、ゆっくりと私を振り返った。何故かその顔が怒っている、ような。


「ちょ、ちょっとリョウさん!? 一体何を言って……!? 私のサロメに何をするつもりなの!? だめよ、だめ! 絶対にダメなんだからー!」

 ええ!? な、なんで!? なんでそこまで反対するの!?

 やっぱり音痴? 私って音痴なの? だから嫌なの?


 私は某アニメの音痴なのに歌を聴かせたくて定期的に子分を集めてリサイタルを開くガキ大将を思い出す。

 や、やだ、私ってもしかしてあのガキ大将的な立ち位置だったの!?


「そ、そうですよ。リョウ様、そんな、口で、なんて。そんな。風邪も移ってしまうかもしれないですし……」

 と言って、シャルちゃんが、顔を赤くさせてわたわたしている。


 シャルちゃんまで何やら嫌がっているご様子……風邪が移るって、私の歌ってそんな風邪を発症させるぐらいの威力なの!?

 まさかの自分音痴説に、戦慄していると、そんな様子を見ていたサロメ嬢が私に声をかけた。


「リョウさん、私は別に構わないけど……」

 と言って色っぽく笑うサロメ嬢にカテリーナ嬢がすごい勢いで振り返って、何事か言おうとしたのをサロメ嬢がカテリーナ嬢の唇に指を置いて止めてから、再びサロメ嬢が口を開いた。


「一応、確認しておくけれど、口で飲ませるって、どういう意味?」

「え? どういうって、それは、だから、小気味の良いリズムと一緒に『イッキイッキ』とか『のんでのんで』とかいう勢いのある言葉を口にして、気持ちよく一気に飲み物を飲ませるってことです、けど?」

 そう言いながら、私は首をひねると、また部屋の中が静かになった。


「な、なんだぁ、そういうことだったんですね。私ったら、てっきり……」

 と言ってシャルちゃんが、頬を両手で挟んで顔を赤くさせた。

 え? てっきり? 


「もう! リョウさんったら、変な言い方はしないでくださる!? 口でなんていうから、口移しで飲ませるのかと思ったじゃない!」

 カテリーナ嬢がぷんぷん怒ってそう言ったので、私はやっと理解した。


 一体何と勘違いしていたのだろうと思ったら、口移しと勘違いしてたのか。


「そ、そんなことするわけないじゃないですか。口移しだなんて!」

 ヤバイ、なんか顔が熱い。

 だって、口移しだなんてそんな! みんな、もう! おませさん!


 それを見ていたサロメ嬢が「そんなことだろうと思ったわ」と言って面白そうにクスクス笑う。

 なんか笑われてる感じで気恥ずかしさがあったけれども、自分が音痴だから嫌がってるわけじゃないと分かってちょっとほっとした。

 でも言われてみれば、まだ酒を嗜んでいらっしゃらない彼女たちには、コールなんてものはなじみがないかもしれない。

 あれ? というか、この世界にコールとかいう文化はあるのだろうか。王都でもルビーフォルンでも見たことがない。


 いや、でも、もとをただせば、アランがしてほしいって言って来たのだし……。

 つまり、それって……。


 私は少しだけ考えて口を開いた。


「どうやら、こうやって歌と一緒にお酒を飲ませていくのって、レインフォレスト限定の文化みたいですね」

「え? レインフォレスト限定、ですか?」

「はい、最初にアランがしてほしいってお願いしてきたんです。よくご両親がしていらっしゃるようで」

 そう答えながら、私はいいひらめきを思いついた。


 私ったら王都で酒場を経営してるんだし、このコール文化をさりげなく広めていくのはどうだろう。

 お酒の消費が早くなるだろうし、お酒の注文の回転率が上がるんじゃなかろうか。

 よし、さっそくジョシュアさんに相談してみよう。


「アランさんが、口で飲ませてほしいって言ったの……?」

 すると突然、カテリーナ嬢がいたたまれない顔をして、そう呟いた。


「はい、そうです。だから歌ったんですけど、不満そうで」

 私がそう答えると、残念そうな顔でサロメ嬢も首を振った。


「きっと風邪を引いた勢いでつい口走ってしまったのね。……まあ、届かなかったけれど」

 何かを憐れむような二人。しかしシャルちゃんはどちらかというと、怒っているのか眉を寄せている。


「でも、お優しいリョウ様にどさくさに紛れてそんなお願いをするなんて、アラン様ったら、もう」

 どうしたのだろう……?

 三人の様子が気になるところではあるけれどもどちらかというと今の私は、コール文化を王都に広めるというひらめきに頭がいっぱい。


 明日さっそく酒場に行こう。あ、でもその前に、コールについてもう少し調べたほうがいいかもしれない。アランに聞いてみよ。

 私は固い決意をして明日の予定を決めたのだった。


【宣伝!】

転生少女の履歴書のコミック第一巻明日9月9日発売です!(なお地域によってはすでにおいていただいているところも!)

コミックで転生少女の履歴書が読めます!

週末のおともに!お酒のつまみに!コールのネタに!どうぞ活用ください!


そしてコミック第一巻記念番外編更新も残すところあと一話…!

最後までお楽しみいただけたら嬉しいです!

あと、今度はこんな番外編が読みたいとかあれば、感想とかメッセージでいただけると助かります!


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― 新着の感想 ―
[一言]  本人の知らぬ間に、アランの黒歴史が親しい女友達たちに拡散されているという恐怖……。
2022/10/31 20:57 退会済み
管理
[良い点] 転生少女の履歴書のコミックスは、前日の9月8日にフライング発売してたから買ったよ~^^v しかも出版社特典のポストカード付で! [気になる点] やはり全員口移しだと勘違いしちゃってたかぁ~…
[一言] リョウさん、一気飲み(一気飲ませ)は死人が出るから流行らせちゃダメよ。
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