女神編③ リョウとコウお母さんと時々親分
【とても重要なお知らせ】
転生少女の履歴書12巻、6月30日(木)発売決定!!ぱふぱふ!
すでにAmazonなどで予約受付中です(^O^)
なんと12巻は、半分以上書下ろし…!どうぞよろしくお願いします!
そしてそして、お知らせその二なのですが…
転生少女の履歴書のweb版、ここまで読んでいただいた方はなんとなく察しているかと思いますが、
なんとそろそろ完結します!(今回の話含めておそらくあと8話で完結になるかなと…)
いやもう本当に、クライマックスもクライマックスですよ…。
気づけば、100万字以上も書いていたことに気づいて、自分でも驚きました。
ここまでお付き合いいただいた皆様には本当に感謝しかない…!ありがとうございます!(感涙)
とか言って、今もう終わるみたいな雰囲気ですが、まだ少し続きますので最後までお付き合いいただけますと本当にうれしいです!
どうぞよろしくお願いします!
執務室で、書類に目を通していると、紅茶の香ばしい香りが漂ってきた。
思わず顔を上げると、ティーカップをもったコウお母さんがいた。
「コウお母さん、来てたんですか……」
ぼうっとしながらそう言うと、コウお母さんが困ったように笑う。
「リョウちゃん、最近根を詰め過ぎじゃない?」
そう言って、紅茶の入ったカップを私のデスクに置いた。
「……やることが一杯で」
そう言って私はカップから立ちのぼる湯気と香りを胸いっぱいに吸い込んだ。そして、ゆっくり吐き出す。
あー癒される。
体がほぐれてゆくのがわかる。
「昼食も、手についてないみたいね。あんまり無理してはダメよ。リョウちゃんが倒れちゃう」
デスクの脇を見ながらコウお母さんがそう言った。
そこには昼食と言って渡された卵と葉野菜のサンドイッチが、手つかずで置かれている。
食べるの、忘れてた……。
「そうですね……。つい没頭してしまって。食べます」
そう言って、サンドイッチを掴む。
少しパンの表面が固くなってしまった。結構長いことここに置きっぱなしだったから、仕方ない。
もそもそとサンドイッチを食べていると、コウお母さんが、デスクの前に椅子を置いてそこに座った。
「もしかして、じっとしてると、思い出しちゃう?」
コウお母さんにそう言われて、もそもそサンドイッチを食べる私の手が止まる。
だって、図星だったから。
コウお母さんは、『何を』思い出すとまではハッキリは言わなかったかったけれど、きっと全てお見通し。
最近の私は、じっとしてると……アランのことを思い出してしまう。
そして思い出すと悲しくなるから、思い出さないように仕事で忘れようとしてる。
あれから、やっぱりアランから便りはない。
もしかして何かあったのかなって心配したのだけど、アランはレインフォレスト領で変わりなくアイリーンさんの手伝いをしながら過ごしてるらしい。
というのも、カテリーナ嬢やサロメ嬢がアランに手紙を送ると返事がくるのだ。
アランの近況が分かって安心したのと同時に、悲しくなった。
だって私にだけ、返事がないということだから。
ごくんと、口の中で咀嚼したサンドイッチを、苦い気持ちと一緒にどうにか飲み込んだ。
「私、アランにひどいこと、したんです。だから、アランに嫌われるのも当たり前だって、分かってはいるんですけど……」
気持ちが追い付かない。
たまに考えてしまう。
もし、あの時、アランの手をとっていたら、どうなっていただろう。
「アラン君のことだから、何かの行き違いってこともあり得る気もするけどねぇ……。けど、そんなに気になるなら、会いに行けばいいじゃない? レインフォレスト領まで、そんなに遠くないでしょう?」
「それは、そうですけど、でも、数日はここを離れることになります。さすがに、何日も不在にはできません」
「だいじょーぶよう! いないならいないでなんとかなるものよ。アタシもバッシュもアレクだっているし、中身はあれだけどタゴサクちゃんだって、頼りになるし」
「それは、そうかもしれないですけど……」
「アラン君に会うのがこわい?」
なんでもお見通しなコウお母さんの言葉に私は目を見開いた。
そう、こわい。
もし、アランに会いに行って面と向かって拒絶されたら、さすがの私ももう立ち直れない気がする……。
「でもね、くよくよ考えてるより、はっきりさせちゃったほうが良いってアタシは思うわよ。それに、伝えたい言葉があるなら、ちゃんと伝えないとずっと後悔は残る」
「コウお母さん……」
確かに、そうだ。
ずっと悩んで、後悔して……そんなの、嫌だ。
あーでも、そう思うのに、どうも踏ん切りがつかない……!
私ってやつはいつからこんなにうじうじキャラになってしまったのか。
けど、やっぱりこわいんだもん。
頭では、はっきりとした方が良いってわかってるのに、気持ちが追いつかない。
だって、やっぱりこわい。
アランに冷たくされたらって思えば思うほど。
たぶん、私にとって、アランは本当に特別なんだ。特別だから……拒絶されることが余計にこわい。
私、いつの間に、こんなにアランに甘えてたのだろう。
ずっと、そばにいたから……ううん、アランがずっとそばにいてくれたら、そばにいてくれるのが当たり前で、自分の気持ちに気づけなかった。
「入るぞ、リョウ。定期報告にきた」
そうぶっきらぼうな調子で言って執務室に親分が入ってきた。
そして、私と一緒にいるコウお母さんをみるなり、うわ、と言って眉を顰めた。
踵を返して、立ち去ろうとする親分の腕を未だかつてない素早さで忍び寄ったコウお母さんが掴む。
「あーん、アレクったら、せっかくきたのにどこに行こうっていうのー?」
「コウキ……」
舌打ちしそうな勢いの親分に、コウお母さんは怯むこともなく自分の腕を絡める。
親分の動きは完全に封じられた。
今まで、あんまり気にしたことなかったけれど、コウお母さんメンタル強くない?
親分に粗雑に扱われても、へこたれないそのメンタルに私は脱帽した。
アランに冷たく対応されたらどうしようとかくよくよ悩んでいた己が心底アホらしく思えてきたぞ……。
ああ、それより、親分の報告聞かなくちゃ。
「それで、定期報告に来たんですよね? 手に持ってるのが、報告書ですか?」
私がそう話を振ると、コウお母さんの腕を引き剥がそうとして、引き剥がせずにいた親分がこちらをむいた。
「ああ、そうだ。それと、落ち着いたから、しばらく留守にする予定だ」
という親分から報告書をもらって簡単に目を通す。
えっと……。
ーーーーーー
◯月■日、晴れ
今日も、平和だった。
昨日も平和だったし、多分明日も平和だろう。
下の奴らは勝手に色々頑張ってるし、俺のやることは特にない。
◯月▲日 だいたい晴れ、10日ぶりの日報だ。
ここずっと平和なため特に問題なし。若い奴らが家を建ててた。
あいつらすごいな。
一番力を入れたのは、壁にウヨーリの姿を掘ることだとか。
そこはそこまで力入れなくて良いだろって言ったら、睨まれた。
あいつらこわいな。
○月◯日 雨。
騎士団の規律を騎士団の奴らが勝手に作ってた。
ウヨーリ様に恥じない人間が基準らしいが、かなり厳格なんだが。
ウヨーリに背くような行いをしたら腹を自分で切るらしい。
蛮族かよ。それとウヨーリに背く行為ってなんだ。おおまか過ぎだろ。
俺もそれに合わせないとならないのか?憂鬱だ。
他にも色々規則作ってたが、覚えるのが面倒で放置した。
まあ騎士団の士気は高いので、問題なし。
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いやいやいやいや、報告書っていうか、日記じゃん!
しかも毎日つけてすらいない!
あと、騎士団に変な団中法度が蔓延しそうになってるの止めてくれる!?!?!?
【大事なお知らせ】
大事なことなどで、後書きにも書いていくスタイル!!
転生少女の履歴書12巻は、今月末の6月30日発売です!
なんと、衝撃の半分以上書下ろし。
色々なことが落ち着いてからのリョウのその後とか書いたんですが…もうとても楽しかった。
ほら、ここ最近ずっとちょとシリアスモードだったから…。
読んでくれた方が楽しんでもらえたらいいなぁと今からドキドキです!
どうぞよろしくお願いします!