革命編⑦ 隷属魔法の解き方
すみません、大分お待たせしました!
今回の話で革命編は終了、一旦の区切りです…!どうぞよろしくお願いします!
そして毎度告知であれですが…告知!!
今月2月28日に「後宮妃は麒神の生贄花嫁」(スターツ出版刊)が刊行されます!
昨年発売した「後宮妃は龍神の生贄花嫁 五神山物語」がおかげさまでシリーズ化しまして、今回は第二弾です!
シリーズ化とはなりますが、単体で楽しめる作りになっていますので前回のものを読んでいなくても楽しめます!
神様×中華風後宮×溺愛(重要)な盛り盛り作品です!
そう、恋愛ジャンルなのです!(重要)
内容紹介は、また後書きでも失礼します…すみません…
「アレク……! なぜだ……!?」
ルービルさんの絶叫が耳に入り、
私はやっと目の前に起こったことを理解をした。
親分が、ルービルさんの刃を受け止めてくれたのだ。自分の体を使って。
カイン様が、剣を構えたまま呆然として親分を見ているので、親分はカイン様の猛追を逃れてここまできたのだろう。
そんな親分の体に、ルービルさんの剣が深々と刺さっていて赤く濡れたものが地面にぽたぽたと落ちる。
「ルービル……俺はな、最初はこんな国滅んじまえばいいと思っていたさ」
うめくように、でもはっきりと親分が言う。
「食糧難だった村の奴らに力を貸してやったよな。でも俺達のことを売ったら魔法使いに目をかけてもらえると思った村人に裏切られたこともあった。くだらねぇと思ったよ。魔法使いの家畜として生きてる方がいいのかってよ、憤りもしたさ。でもな。今なら分かる。それも、力のない村人達が平穏な生活を手に入れるために、考えて動いただけのことだ」
「そ、そんなの! 弱い奴らが悪いに決まってる。いや、そんな弱い奴らばかりだからこの国は腐っているんだ」
「そうかもしれねぇな。だが、弱いことは罪か? 誰も彼もが、俺たちと同じ考えでいられるはずはねぇ。安全で平穏を選ぶ奴もいる。きっとそういう奴らが多くて、ある意味その方が 人としては正しいのかもしれねえ。弱さが悪いと、弱い奴らを蔑ろにしたら、俺たちが毛嫌いしてる魔法使いとなんら変わらねぇと思わねぇか?」
親分は、剣が刺さってるとは思えないほど穏やかな口調だった。
「せっかく国を割ってくれたんだ。それでよしとしようじゃねぇか。こっちは俺たちの理想を掲げる、それに賛成してくれる者たちで国を作っていけばいい。片方は今まで通り魔法使いの力が強い国だ。その方が安全で平穏だと思う奴らはそっちに行けばいい。その方がいい」
「何をぬるいことを言うんだ! フィーナのことは、いいのか! 彼女は……王族に! 魔法使いに、いや、この国に殺されたんだ!!」
「お前がフィーナのことで怒ってくれることで俺は救われていた部分があったのかもしれねぇな。俺の気はもうすんだ。もう俺の中にいるフィーナは満足してる。思い出すと、いつも笑ってるところが思い浮かぶ。妹はあまり強い人間じゃなかった」
「違う! 俺の中のフィーナは、違う。俺が思い出すのは、いつもあの、最後の顔なんだ……!」
泣きそうな声で、いやもしかしたら泣いてるのかもしれない。
ルービルさんの濡れた悲鳴が耳に痛かった。
「フィーナは安心と家族の安全を祈る女だった。魔法使いのお陰で今の生活があるのだと、感謝もしていた。今になって思う。フィーナはお前の言う弱い人間だ。こうやって国が割れたら、妹は安全と平穏をもとめて今まで通りの暮らしを求めるんじゃねえかと思う」
「それは……」
「なあ、ルービル俺たちはよくやったよ。ここで、手をひこう。弱いものも強いものも、この新しい二つの国でやっていこう」
親分がそういうと、ゲスリーの声が聞こえた。
これは、呪文だ! しかも、解除の……!!
さっきまでもう何もできる気がしないとか言ってなかった!? と声の主の顔を見た。
いつもの胡散臭い笑みを浮かべてる。
そして、私とヘンリーのいる場所以外の地面が、砂のようになって崩れていく。
カイン様がシャルちゃんを守るように、親分が腹に剣を差し込んだままルービルさんを守るようにして、その崩れてゆく砂の地を滑り降りていく。
「みんな……!」
私が咄嗟に手を伸ばすも、彼らはもういない。
そこにヘンリーが別の魔法を使って、周囲に風が舞う。
突然使えないと言っていた魔法を使って、こんなことをしでかした奴に何か言おうとしたけど、砂が風とともにまうので私は目も口も開けられなくなった。
砂嵐の中にいるみたいな感覚。
それに、私のいる地面も少し不安定になってきた。揺れが続く。私の足元も崩れる……?
しばらくこの状況になすすべなく委ねていると、やっと地の揺れが大人しくなってしっかりと足がついた。
風の音は聞こえるけれど、肌に砂や風が当たらなくなる。
私はおそるおそる目を開けると、笑っているヘンリーがいた。
ヘンリーと私を囲むように砂嵐が渦巻いている。
砂嵐に遮られ、周りにいたはずの親分たちがどうなったろうと周りを見渡したけれど、その砂嵐のせいで外の状況が何も見えない。
そして私は再び目の前に視線を向ける。
目の前のヘンリーの笑顔は、何事もないかのような笑顔で。
その無邪気にも見える笑顔は、記憶を失っていた時の彼と重なった。
「魔法、使えないんじゃなかったのですか?」
不満そうにそういうと、彼は笑みを深くした。
「ああ、あれは嘘。最初君が男の剣から私を守るために動いてくれたのが楽しかったから、またやりたくなって。ああいえば、君がまた私を構ってくれると思ったんだ。でもなんだか面倒臭くなって、彼らには退場してもらったよ」
はあ!?
どういうこと!? まさか私に構ってもらうためにあんな嘘ついたの!?
あの命の危機的な状況で!?
そして私なんてまんまと身を犠牲にして庇おうとしたんですけど!?
これは流石に文句言ってやろうと勢い込んで話しかけようとしたところで、私の目の前に手を差し出す。
「さあ、帰ろうか」
ヘンリーが先ほどの続きとばかりにそう言った。
改めてヘンリーの顔を見上げた。
彼は差し出した自分の手に私が応えるのが当たり前みたいに、信じ切った顔をしてる。
……ほんと、ヘンリーには、いつも手を焼かされた。
何を考えてるのか分からなくて、気まぐれで、口を開けばゲスってきて……。
今でも信じられないけれど、多分彼は彼なりに、私のことを好いてくれていたのかもしれない。
それは博愛主義なように見える彼の言う家畜に対する愛じゃなくて、もっと特別なもの。
全然伝わらなかったけれど。
いや、正直今でも良く分からないけれど……。
けれど、彼が そういった、誰かを特別だと思う気持ちが分からないということに関しては、私にもなんとなく覚えがあった。
私もコウお母さんに出会わなかったらきっと、ヘンリーと同じようなところで戸惑っていたのかもしれない。
彼と同じ状況になった時、私も彼と同じように、この気持ちを魔法のせいにするかもしれない。
彼にも、心の底から愛してくれる人が必要なのだろう。そして心から愛することができる人も。
愛の形が二人同じ形であったならそれは恋愛でもいいし、親愛でもいいし、友愛でも構わない。
心から愛して、そして愛されて、きっとそのうち、今彼を混乱させているこの気持ちについて、これが魔法じゃないということに気づくだろう。
いつかカスタール王国を統べるはずのゲスリーが、それに気づくことがこの国の未来のために必要だと思えた。
だから、私は、顔を上げてまっすぐとヘンリーをみて、差し伸べられた彼の手にそっと自分の手を重ねた。
そしてその手を優しく彼に戻す。
この手は取れないと伝えるように。
「私は一緒に行かない」
私の言葉が意外だったようで、ゲスリーは目を見開いて固まった。
「……どうして?」
「それがお互いのため、だと思う」
そう答えたけれど、それはヘンリーが納得する答えではなかったらしい。不機嫌そうに眉根を寄せる。
「一緒にも帰らないし、隷属魔法も解かない。交渉ごっこをしたいと言ったのは君なのに、ひどいな」
少しばかり責めるような口調でそう言った。
私は何度か隷属魔法なんてかけてないと言っているけれど、やっぱり彼は受け入れられてないようだった。
それなら……。
「……私は、隷属魔法を解くことはできません。でも、解く方法なら知ってます」
「解く方法?」
「そう……」
私はそう言って、彼の頬を両手で包み込んだ。彼のアメジストの瞳がよく見えるように。
これから私がいう御伽噺みたいな話を信じて貰えるように。
「あなたが誰かのことを心から愛し、そしてその人からも心から愛してもらえたら、あなたにかかった魔法は解ける」
一瞬、動揺のためかヘンリーの目が見開く。
けれどそれは一瞬で、すぐに視線を逸らした。
「そんな簡単なことで、この魔法が解ける気がしない」
……何を思って簡単だと申すのだろうか、この王子は。
「あなたが思ってるよりも、ずっと難しいことだと思いますけど」
そう告げてみたけれど、ヘンリーは不満そうな顔のままだ。
でも、なんだかんだと私の言葉を受け取ってくれたらしい。
彼は 頬に添えられた私の手を掴むと、優しく下ろして距離を取る。
「……まあ、いいさ。どうせ今の私は魔法のせいで君に逆らえない。君がそういうなら、それを信じるしかないんだ」
諦観を滲ませた声でゲスリーはそういうと、私に背を向ける。
私たちを囲んでいた砂嵐がピタリととまり、重力の存在を遅れて思い出したみたいな感じで砂がいっきに落ちてゆく。
同時に視界が砂埃に覆われて、私は目を瞑った。
目を閉じる瞬間見えたヘンリーの背中が、少し寂しそうに見えた。
もしかしたら、彼の姿を見るのはこれが最後かもしれないと、そんなことを思った。
さて、本当に最後なのか。どうなのか。
リョウがそう思っただけなので、最後かどうかは定かじゃないっていうのがみそですね!
では、再び告知。
2月28日発売「後宮妃は麒神の生贄花嫁 五神山物語」のあらすじ
時を統べる神、麒神・オウインの生贄花嫁に選ばれた春蘭。
人外との婚姻におびえていたけれど、麒神のオウインはとってもイケメンで慈悲深いスパダリ。孤独だったオウインにとっても天真爛漫な春蘭は、心の隙間を埋めてくれる離れがたい存在となり二人は急速に惹かれあって溺愛の末にとうとうご懐妊…!?と幸せ絶頂のうちに春蘭の身に悲劇が…!
そして三百年後、転生した春蘭が見たのは、最愛の妻を亡くして完全に闇落ちしたオウインだった…!?
転生前の春蘭の死の真相、悲劇に抗うために何度もタイムリープする二人…はらはらどきどきできあい!な、内容です。
ネタバレすると…超ハッピーエンドです。
これでもかってぐらいハッピーなエンドなので、是非見届けてほしいです…!
そしてそして、もう一つ告知です!
「後宮茶妃伝」のなろうの連載を再開しました…!
(※カクヨムさんで先行配信しているものになります)
といいますのも、茶妃伝は書籍化したのですがその続刊が決定しまして…!
こちらについても改めて告知します!
どうぞよろしくお願いします。









