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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第七部 転生少女の革命期
289/304

革命編⑥ ルービルさんの想い

【とってもお待たせしました!】

じゃじゃじゃんじゃじゃん!

なんと転生少女の履歴書11巻、2021年10月29日(金)に発売です!!!(じゃーん)

本当に持たせしました!そして告知が遅い唐澤!!(猛省

明後日の金曜日発売ということで、地域によっては明日本屋さんに並んでるやもやも!

今回も超絶美少女リョウちゃんの表紙です…!絶対に表紙は譲らない、その強い意志を感じる!!

カラーイラストには、なんと、リョウとアランのあのシーンが…!うう、アラーン!!

いつも応援ありがとうございます。

web版ともどもコミカライズ版、書籍版もよろしくお願いします!



 親分が、疑わし気にヘンリーを見るが、彼は何も答えず胡散臭い笑みを浮かべるのみ。その内親分はいらだったように口を開けた。


「お前のやりてぇことがよくわからねぇな。何故、魔法で俺達を沈めねえんだ?」

 


「確かにできるが、しかし、何故わざわざそんなことをする必要がある?」

「はあ? 何故って、勝てる戦を投げて、大地を割って……こんな面倒な事、意味が分からねえ」


「私は別に面倒などとは思っていないし、先ほどから君たちが話していることにはそれほど興味がない。戦争をしようがしまいが、私はどうでもいい」

 思ってもみなかったことを言われたのか、親分が目を見開いた。

 珍しく親分が戸惑ってる。


「じゃあ、お前は、一体……何がしたいんだ」

「……私は彼女に縛られてるんだ」

 彼はそう言って、私を見た。

 親分も驚いた様子で私を見た。

 親分の顔が言っている。

 こいつ、頭大丈夫か? と。

 私は思わず視線を逸らした。


 果たして、王族に頭大丈夫な奴がいただろうか……。


 私と親分の無言のやり取りに全く気付いていない様子のゲスリーがさらに口を開いた。

「私はただ、彼女から解放されたいだけ」

 再び意味不明なことを言われて戸惑う親分だったが、しばらく思案気にゲスリーを睨み、そして口を開いた。


「相変わらず、王族ってのは変な奴が多いな。何を言ってるか、さっぱりわからねぇが、つまり……要はお前が、国のことなんかどうでもいいぐらいにリョウに惚れてるってことか?」

 訝し気に尋ねる親分の言葉に、今度はゲスリーは目を見開いた。

 瞳を揺らし、微動だにしないゲスリー。

 彼が珍しく動揺しているのが分かる。

 わかるけど、ここで、動揺するってことはつまり……。


 少し前、記憶を失っていた時のヘンリーの言葉が蘇る。

 『リョウのそばにいるとドキドキする。きっと僕はリョウのことが好きなんだ』

  少しだけ気恥ずかしそうに、柔らかい笑みを浮かべたゲスリーがそう言った。


 あの時のゲスリーは確かに記憶を失っていたのかも知れない。

 そして、記憶を失っていた時の言葉が、彼の本当の気持ちだったとしたら……。


「惚れる……? いや、違う。私は魔法にかかってるだけだ」

 彼はそう言ったが、その声は自信がなさそうに少し震えていた。


 私も戸惑いを抑えながら、務めて平静な顔をして親分を見た。


「……ということらしいです。私は魔法なんて掛けてませんが……実際殿下は大地まで割ってくれたので、彼の言うことに嘘はないかと」

 親分は私の言葉に、再び思案気な顔を浮かべる。


「魔法使い至上主義の奴らが集まる国とは、別の国を作る……。今の俺達からしたら悪くない話だ。だが、お前は本当にそれでいいのか?」

 親分が小さくそう呟くとゲスリーをみた。

 少し動揺していたゲスリーは、親分と目が合うと不機嫌そうな顔をする。

 これもまた珍しい表情だとまじまじとみていると、ふとゲスリーが私の方をみた。

 目が合うと、彼はいいことを思いついたとばかりにニヤッと口角をあげた。


「別に大地を割った先の国については好きにして構わないが、そうだな。そういえば、リョウは交渉したいという話だった。本当は魔法を解いてもらいたいが、それはムリらしいから、別の条件をつけてみようか」

 何かいたずらを思いついた子供みたいな表情で、そんなことを言う。


「ちっ、やっぱり、何かあるんじゃねぇか」

 親分が、忌々しそうにそう呟く。


 私も、嫌な予感がして思わず眉根を寄せた。

 だって、ゲスリーがまっすぐ私のことを見てる。


「割った先の地での統治は、この男に任せる。でも、君は私とともに帰る。それが条件だ」

「帰るって……どこに……」

「もちろん王都に、そして城に」

「……誤解があったとはいえ、今の私は確か国の反逆者みたいな立ち位置ですよ? そんな私が殿下とともに王都に帰って、どうするって言うんですか?」

「どうすると言われても……そうだな。確か、グエンナーシス領の問題が片付いたら正式に婚姻を結ぶ予定だっただろう? だから、その通りにしよう」

 まるで明日の夕食はハンバーグにしよう! ぐらいのノリで結婚の話を出してきたんだが。


「本気で言っているんですか? 私が殿下の婚約者だったのは、国にとって利用価値があったからです。でも、一度国を裏切ったと思われている私に、もう利用価値はほとんどないですよ」

「私は別に、国にとって価値があるから君の婚約者になったわけじゃない」

「……では、なんで私との婚約を許したんですか?」

 正直なところ、ヘンリーの身分だったら、国が決めた婚約とは言っても突っぱねることができたはずだ。

 でもゲスリーは突っぱねなかった。

 私の婚約者に甘んじた。


「それは君が私に魔法をかけたからだろう?」

 肩を竦めて、同じ話を何度させる気だ? みたいなあきれ顔でそうのたまうゲスリー。

 いや。だから魔法掛けてないって何度も言ってるんですが!?


 ……しかし、このままゲスリーの提案を飲んだら、全てうまくいく。

 この提案を飲んだら、戦争は平和的に終わり、新しい国ができる。

 大変なこともあるだろうけれど、今までみたいに内乱に怯えなくても済む。


 だが、提案をのんだら、私はゲスリーの配偶者になる。

 ゲスリーの婚約者になる時、ゲスリーの婚約なんて、どんなゲスイことをされるのか心配だったけれど……今なら分かる。

 ゲスリーは私を粗雑には扱わない気がする。

 少なくとも彼が、魔法にかかっていると思い込んでいる間は。


 しかも現国王のテンション王があんなことになったので、ゲスリーはすぐに王として即位するはずだ。その配偶者ということは、王妃ということ。

 ガリガリ村とかいう極貧の村の子供だった私が、まさか王妃になろうとは。


 私が、どうするべきかをずっと考えていると、ゲスリーは私に手を差し伸べた。

「さあ、帰ろう」

 今までのことなんか何もなかったみたいに、無邪気にも見える笑顔を浮かべたゲスリーの手が目の前にあった。


 視線を上げれば、ゲスリーのアメジストの瞳と目が合う。


「殿下! リョウ!」

 突然、切羽詰まったカイン様の声が聞こえたかと思うと、視界の端に光るものが見えた。

 私はとっさにヘンリーの手を取り引っ張って、一緒に倒れこむようにして後ろに下がる。

 そして、次の瞬間、しゅんと風を切るような音が先ほどまでヘンリーがいた場所で鳴る。

 鋭い刃が振り下ろされた音。

 そして、その音を出したのは、剣を持った男で、思わず私は目を見開いた。


「何をするんですか! ルービルさん!」

 ヘンリーがいた場所に剣を下ろしたルービルさんがそこにいて、彼に向かってそういうと、彼の鋭い眼差しが私とヘンリーを見据える。


「こいつには居なくなってもらう」

 ルービルさんは、真っ赤に充血した目でそう言った。


「ルービルさん、どうして……!」

 これはルービルさんにとっても悪い話じゃないのに!

 

 側で、剣と剣のぶつかる音が聞こえてそちらを見ると、カイン様と親分がいた。

 駆けつけようとしていたらしいカイン様を親分が止めている。


 先ほどまで乗り気だった親分まで!?

 くそ、っと思わず唇を噛みながら、ルービルさんの凶刃を警戒する。

 今の私は丸腰だ。生物魔法を使うべきか。

 いや、今私の後ろには最強の魔法使いヘンリー殿下がいる。


「まいったな。先ほど魔法を使いすぎたか。呪文が使えそうにない」

 と、実に呑気な声が聞こえてきた。

 地面割ったりして疲れたらしい。

 この、ばか……!


「殿下を殺したら、この戦争は泥沼になりますよ!」

 私はゲスリーを庇うように前に出て、ルービルさんにそう言った。

 ヘンリーはゲスだけど、妙なカリスマ性だけはあった。

 それはその独特の性格からかも知れないし、他の追随を許さぬ魔法の力がそうさせているのかも知れない。

 国の貴族達は、ヘンリーを失ったら敵を滅ぼし尽くさない限り、戦いを止めはしないだろう。

 そして親分達も止まらない。

 ここでヘンリーを失ったら、泥沼だ。


「こんなところで戦争が終わってもらっては困るんだ!」

 そう言って、ルービルさんはまた剣を振り上げた。


 強化魔法を唱えようかと思ったけれど、丸腰の私に、ゲスリーを守り切れるか不安がある。

 私は、とっさに自分を回復させる呪文を口にして、ゲスリーを囲うようにして彼を抱きしめてルービルさんに背を向けた。


 ルーディルさんの剣を自分で受けても、回復魔法さえかかれば、傷を受けたその場で傷を癒せる。

 痛いけれど、この方が確実にゲスリーを守れる。


 そう思った私は衝撃を待ったが、痛みはこない。

 だが、後ろで鈍い音がして、周りに赤いものが散ったのが見えた。

 とっさに振り返ると、そこには……。


 左の脇腹に刃が刺さり、血を流している親分の大きな背中が見えた。



【大事なお知らせ】

転生少女の履歴書最新11巻がとうとう明後日10月29日(金)発売!

内容も大きく加筆してまして、10巻でその片鱗をみせていたシャルちゃんのヤンデレ具合が大爆発…!

ぜひぜひ週末のお供にしていただけると嬉しいです。

いつも応援ありがとうございます!

コミカライズもスタートしてますので、そちらもぜひぜひよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] しばらく前から「ルービル」「ルーディル」の表記揺れ。
[良い点] 最近読み始めて、やっと、追いつきました… ヘンリーが変化してないように見えて、徐々に変化していく姿が非常に微笑ましく、ついには 僕は君に魔法をかけられてしまった 的な、本人としては、まじめ…
[良い点] 親分もリョウちゃんも男前過ぎる! 惚れた側からすればまさに沼。 血は繋がって無くても流石親子。 [気になる点] ルーデルさん?ルーディルさん?混在してます。 双子という事で宜しいか?? […
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