革命編④ 白黒の世界
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なんと転生少女の履歴書のコミカライズがスタートしてます!!!!
掲載先は「ヤングエースUP」さんです!
コミカライズするなんて初耳??
へへ、でしょうね!うっかり唐澤は、こちらで告知するのをすっかり忘れてました…(猛省
作画は藤本れもち先生です。とてもきれいに描いてくださってます…!
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アランが一話にして登場してます…!
私は、シャルちゃんをカイン様に預けて歩き出すと、ゲスリーの隣に立つ。
そして彼と一緒に、崖下の戦争の様子を見下ろした。
高いところだから、今の状況がよく見える。
あきらかに王国側が押されている。
士気の高い連合側の勢いと比べると、王国側は人数こそ多いものの逃げ腰だ。
それにしても、王国側は魔法使いを戦争に出していないように見える。
どこを見渡しても、魔法使いらしい姿が見当たらない。
「シャルロット嬢が、兄に戦争をやめろと言わせたからね。こちら側は混乱してるんだ。故に魔法騎士団は動いてない」
なるほど。先ほどそう言う噂を聞いた。その噂を聞いたときは半信半疑だったけど、中身がシャルちゃんだと知った今なら素直に信じられる。
「まあ、とはいえ、私が呪文を唱えれば、すぐに決着はつくだろうけどね」
余裕の笑みでゲスリーはそう続ける。
虚勢でもはったりでもなく、本当にそう思ってる口調だ。
そしてそれは事実。たぶん、ヘンリーが魔法を使えば、戦場は大きく一変する……。
だけどそれは私が望む戦争の終結とは程遠い。
「……和平交渉がしたいです」
そう口にした言葉に力が入らない。
ここに来るまでは生物魔法の秘密を使って有利に進められる可能性はあると思っていた。
けれど、もう今は、想定外のことが起こりすぎてどうすればいいかわからない。
まず交渉相手がゲスリーってだけで先が読めない。
なにせ、ゲスリーの目的や持ってる手札が全然わからないのだから。
「和平、交渉……? はは、私と君が対等に交渉を行える立場だと思っているのかい? それとも分かってて言っているのかな」
何かのツボに入ったらしくゲスリーが笑い出す。
もう、わかってるよ! 対等に交渉なんてできる立場じゃないことぐらい!
でも、それでも……やるしかない。
「思ってますよ! 私は和平交渉をしに来ました。私が求めるのは、早急な戦争の終結、そして一部領地の自治権です!」
私は鼻息荒くそう宣言するとゲスリーがピタリと笑うのを止めて、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をして私を見る。
そこまで驚かなくても……。
そんなに突拍子もないことを言ってるつもりはない。
「本当に、君の考えることは良く分からないな」
いや、それは私のセリフなんだけど。
ゲスリーはやれやれと言った感じで首を横に振ると、さらに口を開いた。
「交渉ごっこがしたいのか? まあいい。……それならそれで、私としても助かるが」
とゲスリーが良くわからないことをぶつくさ言った後に、突然呪文を唱えた。
「え、呪文……!?」
ゲスリーが口ずさむ呪文は早すぎて、呪文と分かった時にはすでに唱え終わってる。
くそ、と内心私が毒づくと、地面が大きく揺れた。
ゴゴゴ、ゴゴゴゴという地響きに、戦いの最中の戦士たちも、おかしいことに気づいたらしい。
動きを止めるものたちが出始めた。
そして私は信じられないものをみた。
戦いが行われている場所の地面に、大きな亀裂が走ったのだ。
戦士たちの戦いは完全に止まった。
それもそのはずだ。地面が割れ始めたのだから、戦いどころではない
それぞれが自分の身を守るために亀裂から距離を取ろうと、動く地面から逃げ惑う人々の姿が見える。
これは……。
以前にもみた。
大地を割るというあり得ないことを成し遂げるゲスリーの魔法だ。
しかし前みた時よりも巨大な亀裂。
この地だけじゃなく、亀裂はずっと見えないところまで続いている。
まさかこの大陸を全て横断したのではないかとそう思わせるほどで……。
ふうと一息つくようなため息が聞こえると「流石に、少し疲れたな……」と片手で両眼を押さえて頭をもたげさせるゲスリーがそういった。
そんなゲスリーを気遣う余裕もなければ義理もないと、私はすぐに割れた大地とそこで呆然とする人々を見る。
一見したところ、割れ目に落ちた人はいなさそうだが……。
「殿下、これって……」
「みてわからないか? 大地を割った」
「それは! それは見ればわかります! 何故こんなことをしたのかと聞いているんです!」
「和平交渉がしたいと言ったのは君の方だ。戦争の終結と自治権が欲しいと言ったのもね。だから国を割った。ちょうどルビーフォルンとレインフォレスト領の境目を割ったはずだ。君にこの亀裂の先の国をあげよう。好きにすれば良い」
なんてことないような口調でさらっとゲスリーはそういうと、目が疲れたのか眉間のあたりを指で揉みこんでいる。
いや、いやいやいやいやいや。
この亀裂の先の国をあげる?
何を、言ってるのだろう、この人。
「この亀裂の先を私に? 何を言ってるのかわかってるのですか? つまり、この先にあるルビーフォルン領と、グエンナーシス領の独立を許すということですよね?」
それって、私が求める解決方法の中でもっとも理想的なものなんだけど。
この戦争を終わらせたとしても、引き続き王家が主導権を握る形となれば親分達は止まらないし、ルビーフォルンやグエンナーシス領民たちの国に対する不信感が消え去ることはない。
だから、独立ができたらそれに越したことはない。
しかもゲスリーが綺麗に大地を割ってくれたことで、国の境が明確だ。
地続きの国同士だと、接触が多くなって小競り合いが起きやすいけれど、亀裂があるからその心配も多少は軽減するはず。
「そうとも。君がそうしたいならそうすればいい。だが、交渉がしたいと言った君の言葉に嘘がないなら、一つだけ条件を付けたい」
「じょ、条件?」
出た! 後だし条件!
やっぱり、そう簡単にうまくいくわけがないか。
一体どんな条件を……やはり、生物魔法を使える私の、死……?
「私にかけた隷属魔法を解いて欲しい」
……は?
何言ってるのだろう。このゲスリーさん。
私が戸惑ってると、ヘンリーは話を続ける。
「君と距離をとれば、魔法が解けるかもしれないと思って、あの時、カインとともに君の元を離れたが、結局魔法は解けなかった。魔法を解くには、君が解いてくれる以外ないらしい」
ゲスリーの説明に、眉根を寄せる。
あの時、記憶を失っていたと思ってたゲスリーが突然、魔法を使ってカイン様と一緒に離れたのは、そういう理由だったのか。
でも、そんなことしても隷属魔法が解けるわけない。
だって、もともと魔法なんて掛けてないんだから。
「いや、だから何度でも言いますけれど、私は隷属魔法なんて使えません。使ったこともありません」
ヘンリーに最初言われた時は、もしかして、とも思った。でも、今ならはっきり分かる。私はそんな魔法は使ってない。
第一、今まで人の気持ちを支配したいと思ったことが私にはない。
それにもしそんなことができたのだとしたら、多分こんな面倒な事態にもなってない。
申し訳なく思いながらも、タゴサクあたりにはばんばん使ってしまっている自信がある。
「君はひどい人だな」
そう言ってヘンリーは、私を鼻で笑った。
いや、鼻で笑われても、してないものはしてない。
「でも事実です。私は隷属魔法の呪文を知らない」
「なるほどね……。君は知らない振りを貫くつもりらしい」
「ですから、知らないふりも何も、知らないんです」
「どんなに嘯こうと、君は確かにその魔法を私にかけたに違いないんだ」
そう言って彼は私を見て、目をすがめる。
何か眩しいものを見るような目で。
なんで、そんな顔を……?
「この前も言っただろう? 私の世界は白黒の世界だ」
ヘンリーがそう言って、私は彼がそう言った時のことを思い出した。
あの時は、ヘンリーがまだ記憶を失っていると思っていて、私は外で戦争のために王国軍と連合軍が集まっているところをみて、ショックを受けていた時だ。
『あそこにいるのは、黒。向こうにいるのは、白。カインは黒で、アランは白。リョウは、私に黒いものを指して、黒じゃないという。白いものを指して白じゃないという。でも、私の目には、そうにしか見えない。黒か白か、どちらかにしか見えない』
ゲスリーは、非魔法使いと魔法使いを指しながら、そう言った。
彼には、人が黒か白か、どちらかにしか見えないのだと。
だけど、一体、その時の話を何故今?
「殿下、一体、何を……?」
私がそう尋ねると、ゲスリーがこちらに一歩近づいた。
「君が黒いものをさして白だと言えば、白かもしれないと言ってしまいたくなる。君が求めるのなら、白いものにしか見えなくても、黒も混じってると言いたくなる。君がそれで喜ぶのなら、私の目に映るものすべてを偽ってしまいたくなる」
そう言いながら、さらにヘンリーは私に近づく。
「君の望む通りに見えるふりをしたくなる」
そう言って、目と鼻の先にまできたヘンリーは私の頬に手を添えた。
「それは、君が私に魔法をかけたからだ。……私の白黒の世界で、君だけが色づいて見えるのだから」
彼の真剣な眼差しは確かに私を見ていた。
思わず、息が詰まった。
なんて答えればいいのか、どう答えればいいのか、わからない。
もしかして、ゲスリーは……。
「睦み合うのはまた後にしてくれねぇかな、王子様」
突然、ドスの低い、いかにも悪人な響きの声が割って入ってきた。
この声は……!?
振り返ると、いつも懐かしいスキンヘッド……!
「親分、どうしてここに……!?」
見間違うはずがない、毛皮のベストを羽織ったいかにも山賊スタイルな親分が、立っていた。
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大事なお知らせなので、何度でも!!
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