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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第七部 転生少女の革命期

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革命編② 荒ぶるテンション王

【お知らせ】

後書きにて詳細お伝えしますが、スターツ出版文庫にて7月28日に新刊が発売します!

タイトル:後宮妃は龍神の生贄花嫁-五神山物語-

イラストレーター:宵マチ先生

書下ろし作品になります。文庫サイズなのでお手頃価格…!

どうぞよろしくお願いします…!


 逃げるように去っていく騎士を見送って、改めてテンション王を見あげる。

 そうしたら再びテンション王は乙女みたいに目を潤ませて私を見てくる。

 なんなの……一体。


 ちょっとどころじゃなくて結構気持ちが悪いのだが……?

 と思っていると急にテンション王が、なんというか、魂の抜けたような顔……いや、ハッキリ言えばアホ面になった。

 そう。突然、テンション王が、アホ面になった。


 え、どういうこと……?


 テンション王のテンションについていけない……。


「リョウ様っ!!」

 戸惑う私の耳に、可憐な声が聞こえた。

 声のした方を見れば二つ結びの髪を揺らしてこちらに走ってくる、シャルちゃんの姿。


「シャルちゃん!? どうして……!」

 ここにいるの? と尋ねようとしたけれどそれを口にする前にシャルちゃんが勢い良く私にだきついてきたので、私は慌てて受け止めた。


「ああ、御無事だと信じておりました! リョウ様リョウ様!!」

 泣きながら私の胸の中で涙を流すシャルちゃん。

 いや、久しぶりのシャルちゃんは嬉しいけど、ちょっとまって、なんでここに?

 さっきから想定外のことが起こりすぎて、頭が追い付かない……。


「シャ、シャルちゃん? えっと、シャルちゃんのほうも無事みたいでよかったのですが、でも、どうしてここに?」

 私が改めてそうたずねると、涙で濡れた顔を上げてシャルちゃんが私を見た。


「リョ、リョウ様の無事を、確かめ、たくて……! それで、それで……! ヘンリー殿下のところに……! でも、戦争が始まって、私……私……!」

 と泣いて興奮状態のシャルちゃんが取り止めなく話し出す。

 何かを説明しようとしてはいるけれどよく分からない。

 そういえば、もともとゲスリーが戻ってきたと聞いたシャルちゃんは私の無事を確かめるために、王国軍陣営に向かったという話はカテリーナ達から聞いていた。


 それから私を探してここにずっといたということだろうか?

 サロメ嬢とカテリーナ嬢がシャルちゃんのところに連絡しに行くと言っていたけれど、あの後私は再び囚われてしまったし……。


 私は落ち着くようにとシャルちゃんの背中をさする。

 ヒックヒックと泣くたびにその細い背中が揺れて、すごく心配させたんだなと思って申し訳なくなった。


 と、同時に、今何が起きてるのかが本当に良く分からない。

 テンション王はなんだったの? 


「何故、お前がここに……」

 ラジャラスさんの声だ。

 近くにいるラジャラスさんと目が合った。彼も良く分かってないようで、それだけ呟くと私の方をみて硬直してる。


 状況をもう一度整理しようとしたところで、足音がぐらっと揺れたような気がして、私はたたらを踏んだ。

 周りからも、突然の揺れに戸惑いの声があがる。


 この揺れ、単なる地震なんてもんじゃない。動いてる。

 足元の地面が動いている。

 シャルちゃんもキャッと声を上げて私につかまり、私も支え合うようにしてシャルちゃんを抱きしめる。


 周りを見れば、ラジャラスさんや比較的近くにいた騎士の足もとが崩れ、彼らは流されるようにして下に滑っていき、逆に私たちのいる地面は、ものすごい勢いでせり上がってきているのがわかった。

 これはこのままここにいたほうがいいのか、この場から離れたほうがいいのか考えてはみたけれど、結局この揺れの中を動けそうにはなくて、目の前で変わっていく周りの地形に戸惑いながら耐えていく。

 そしてある程度の高さまであがった、と思ったところで、やっと揺れが止まった。


 目に映る景色が、高い。

 おそらく地面が盛り上がって、円柱状になった大地のてっぺんにいる感じだろうか。

 あり得ない規模での地形変動。

 こんな天変地異を起こすことができる人は、この場に一人しかいない。


 私はそちらに顔を向ける。


「殿下、一体何を」

「君と話がしたくて」

 ゲスリーはそう言っていつもの胡散臭い笑みをうかべる。

 改めて周りを見ると、このせり上がった地面にいるのは、ヘンリーとカイン様、テンション王と私とシャルちゃんの五人だった。

 どうやら他の人には聞かせたくない話があるらしい。


 となれば、おそらくあのことだろう。

 それはこちらとしても望むところだ。


「生物魔法の件ですね?」

 私がそういうと、ヘンリーは笑顔を深めて口を開く。


「いや、違うが」

「そうですよね。生物魔法のことを……違うんですか!?」

 速攻否定されたんだが。

 生物魔法の件ですよね?(キリッ)という顔をしていた私は少々恥ずかしくなったけれど、じゃあなんなんだと怒りのような気持ちも湧いてきて眉根を寄せる。

 というか、そもそも、さっきから私現状についていけてない……。

 そのことの苛立たしさもあいまって、ゲスリーを睨みつけた。

 

「では、なんの話ですか? この戦争のことについて? ……陛下のことについて?」

「君の希望を聞いておこうかと思って」

「え? 私の希望?」

「生物魔法を使って、この国を支配したいのか。それとも、他の何かを望むのか」

 ゲスリーから思ってもみなかったことを聞かれて目が点になる。


 支配って……!?


「し、支配するつもりなんてありません! 私はただ戦争を止めたくて……それだけです」

「へえ。ではこの戦争を止めて君はどうしたい? 君はなんでもできる。ハインリヒを自分が思うように動かして、国を思いのままにすることもできる」

「何を言っているんですか? 王を思うままに動かすって、そんなことできるわけ……」

 ないと言おうとしてテンション王に視線をむけた。

 そしたら彼の様子が、さきほどからものすごくおかしいことに気付いた。

 フラフラと体が揺れていて、その動きに合わせて垂れ下がった首も大きく揺れている。


 あれ、あの首の感じ、さすがに垂れ下がり過ぎというか、骨が折れてる……?


 でも、首が折れていたら立ってられるわけないし……。


「陛下……?」

 思わず声をかけてみたけれど、テンション王は全く反応せず。

 けれど何故か私の腕の中で泣きじゃくっていたシャルちゃんの体がびくりと震えた。


「シャルちゃん?」

 私が名を呼ぶと、弾かれたようにシャルちゃんが顔を上げる。

 ひどく怯えたような顔で……。


「ち、違うんです! 私、そんなつもりはなくて……!」

 混乱したようにそう話すシャルちゃんだけど、私にはよく事情が掴めない。


「シャ、シャルちゃん? お、落ち着いて……」

 私がそう声をかけたのとほぼ同時に、ヘンリーの笑い声が聞こえてきた。


 クククとおかしさを押し殺すような笑い声。


「今更何を戸惑っている? ただの生ける屍が、死した屍になっただけだ。とても自然なことだよ。今までにないくらい」

 え……? 屍……?

 人を食ったような笑顔を浮かべるヘンリーから、改めてテンション王を見た。


 私がルービルさんに囚われる前に見たテンション王もあまりにも哀れな姿ではあったけれど、今のテンンション王はそれとは違う雰囲気で、でも、ものすごく、くたびれてみえた。

 大きく揺れる首元に、赤い切り傷のようなものが見えた。まるで首を綺麗に切った時のような……。

 まさか……。


「陛下は、死んでるのですか……?」

 自分で言っておきながら、現実味のない話だと思えた。

 だって、テンション王は、動いてる。立っている。

 先ほども喚き散らしていた。


 でも、彼が死んでるかもしれないという推測はよく考えれば考えるほど、現実味が増した。

 この国には、魔法がある。


 結局呪文がわからなかったけれど、人を操る隷属魔法だってある。

 そして死したものを操る魔法も……。


 ……シャルちゃんが取り乱している理由がやっと分かった。





【再お知らせ】

スターツ出版文庫にて、7月28日に新刊が発売します!

タイトル:後宮妃は龍神の生贄花嫁-五神山物語-

イラストレーター:宵マチ先生

あらすじ:有能な姉と比較され、両親に虐げられて育った煉花。後宮入りするも、不運にも煉花は姉の策略で恐ろしい龍神の生贄花嫁に選ばれてしまう。絶望の淵で山奥に向かうと、そこで出迎えてくれたのは見目麗しい男・青嵐だった。期限付きで始まった共同生活だが、徐々に距離は縮まり、しかし、突然ふたりは無情な運命に引き裂かれ…!?


と言う感じの中華後宮シンデレラストーリーです!

私にしては珍しく、恋愛色つよつよのつよのつもりなのでどうぞよろしくお願いします!

なかなかに波乱万丈で、男性の方でも楽しめる内容のはず…!

ノベマにて試し読みできるのでぜひご一読いただけると嬉しみです!(下の宵マチ先生の素敵な表紙から飛べます)


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― 新着の感想 ―
[気になる点] うぉーい!? 超展開すぎて、ヤバい!!? えー、どう治めるの?これ……
[良い点] あー前話のテンション王の態度はシャルちゃんの心理の影響だったのか…納得(えっ?)
[一言] テンション王がテンションなくなっちゃった…
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