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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第六部 転生少女の混迷期
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混迷編⑧ 再会に喜びあうとともにアランのことを思い出す


 親分達との話し合いは一旦終わると、親分一味は自分たちの天幕に戻っていってしまった。

 久しぶりの親分との再会。もうちょっと色々話したかったけれど、難しいみたい。

 

 ということで親分はすぐに去っていってしまったけれど、残った他の人たちとは久しぶりの再会に喜びあった。


 さっきは『もう謝らなくてもいい。無事ならそれでよかったんだ』と爽やかに応じてくれたバッシュさんだったけれど、改めてめちゃくちゃ怒られた。

 心配をかけさせたこと、結界の外に出るとか言う無茶をしたこと、あとなんかもろもろ含めてそれはもうコテンパンに怒られた。

 反してコウお母さんは、意外にもお叱りの言葉はなかった。

 ただ、心配したのよぉと言って再びミシミシと骨が軋みそうなぐらい強く抱きしめられた。

 言葉にはしてないけど、めちゃくちゃ怒ってるんじゃないだろうか。


 そしてアランにも「リョウちゃんを守ってくれてありがとー」と言いながら、同じようにミシミシ抱きしめていて アランの顔色が今まで見たことないような土気色だった。

 本当にごめんね、アラン、いろいろ、こう、なんか損な役回りさせて……!


「そういえば、あの山地にある隠れ家をリョウちゃん達使った?」

 再会の強めの抱擁が終わったタイミングでコウお母さんがそう尋ねてきた。


「はい、使いました。昨日もアランとそこに泊まってたんです。コウお母さんのメッセージもみましたよ」

「あら、昨日も泊まってたの?」

 コウお母さんは少しびっくりしたようで目を見開いた。


「はい、恥ずかしながら、私、ちょっと気が動転してしまって、何をすればいいのか良く分からなくなって、それにすごく疲れてたのもあって……アランが連れてきてくれたんです。休んだ方が良いって」

「あらぁ……。じゃあ、アランちゃんに連れ込まれて二人だけでそこに泊まったのね?」

「はい。昨日は、二人だけでした。殿下もカイン様もいなかったので……」

 と答えながら、ゲスリーとカイン様のことを思い出した。


 記憶を取り戻したらしいゲスリー。

 もしかしたら、もともと記憶喪失自体もなかったのかもしれない。

 というか、あの時、どうして私のことを見逃したのだろう。

 地割れを起こしてまで距離をとったのは、どういう意味なのか……未だに良く分からない。


 そして、カイン様も。

 カイン様は、ゲスリーが記憶を取り戻したことに気付いてたのだろうか。


 結局私は、カイン様がどんな気持ちでいたのかを理解することができなかった。

 そして多分、カイン様も、自分の気持ちを私に理解してもらおうとは思っていなかったのかもしれない。

 アランや私に剣を向けたカイン様には、もう迷いはないように思えた。


 私が少々物思いにふけっていると、カテリーナ嬢が首を傾げて私を見た。


「え? 何それ、ふ、二人って、二人きりで、夜を明かしたってこと?」

 怪訝そうにカテリーナ嬢が尋ねるので、私は頷く。


「あらあら。無人の暗がりに連れ込むなんて、やるじゃないアラン様」

 そうサロメがニヤニヤ笑うと、コウお母さんの過激な再会の抱擁でゲホゲホ咳をしていたアランが、驚いた顔でこちらを向いた。


「は!? べ、べ、べ、別に、ただ、休んでただけだが!? や、やま、やまやまやましいことはしてないからな!」

 アランが慌てたようにそう言った。


「ムキになってるところが怪しいわ」

「でも、なにもしないのも、男としてどうなのかしら」

 とカテリーナ嬢やサロメ嬢がいうので 私はアランを庇う気持ちで口を出した。


「ああ、いえいえ、アランは何もしないわけじゃなかったですよ。水を沸かしてくれて、白湯を飲ませてくれました」

 本当に、アランにはお世話になりました。

 正直、あの時は、色々といっぱいいっぱいだった。

 アランがいてくれたから、今こうしてここに立って居られてるまである気がしてる。


 私がしみじみとアランに感謝を捧げていると、何故かカテリーナ嬢は残念なものを見るような目でアランを見た。


「まあ、そうなの、白湯を提供したの、それだけなの……。アランさんって本当に意気地がないのね」

「なんだよそれ! どうせ手を出したら出したで何か言ってくるつもりだろ!?」

「まあ、それもそうだけど。それにしたってねえ」

 とサロメ嬢もカテリーナ嬢と同じように呆れた視線を向ける。


 なんか良く分からないが、アランが責められているように見えるこの状況は忍びない。

 私は改めて口をはさんだ。


「まあまあ、皆さん、良く事情は分かりませんが、あんまりアランを責めないでください。アランには本当にお世話になったんですよ」

「別に責めてるわけじゃないわよ。いつも通りからかってるだけ。だって好きな子を前にして何もできないなんて、アラン様らしいじゃない?」

 サロメ嬢がそう言って、いつもの色っぽい笑みを浮かべる。


「え? 好きな子?」

 そう聞き返しながら、今まで大変なことの連続でポン! と忘れていたちょっと前のことが思い出された。


 そうだった。

 アランは、もしかしたら、私のことが……。


 一気に顔が熱くなった。


「す、好きな子を前にっていうと……」

 蚊の鳴くような声でどうにかそれだけ絞り出して、でも先が続けられなかった。


 いやだって、つまり好きな子って私ってこと?

 やっぱり、アランは私のことを、特別に思ってくれていて……?

 いやいやいや確かに前そんなこと言われたような気がするけども……!

 でもでもそんなの信じられないっていうか……。


「リョウ? どうしたんだ? 顔が赤い。風邪か?」

 アランがすこぶる心配そうな顔でそういうと、覗き込むように私の顔を見てくるので慌ててバックステップで距離を取った。

 アラン、顔、近い!


「だ、大丈夫ですけど!? なんでもないですけど!?」

「そ、そうか?」

 と言って訝し気な表情を見せるアラン。


 何!? なんでアランは平然としてるの?

 意識してるの私だけ!? はっ! やっぱり私が好きとかそういうのは、もしかして私の勘違い!?


 だって、アラン平然とし過ぎじゃない? 

 どういうことなの?

 あ、でも最近情けない姿ばかり見せてるし……それで気が変わったりなんだりで?


「あら? リョウさん、どうしたの? いつもと反応が違う」

 目を見開いて驚いたような顔をするサロメ嬢が私を見る。


「えっ!? べ、べつにいつも通りですけど!?」


 戸惑う私の頭上で、「あら……アタシもそろそろ子離れの準備しなきゃ」というコウお母さんののん気な声が聞こえてきた気がした。




なんか久しぶりにわちゃわちゃしたところが書けて楽しかったです。

学園編思い出す…!


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[良い点] 恋を自覚した所 [気になる点] なんでこのバカップル、片方が近づくと片方が離れるのか……というより鈍感になるのか [一言] ばくはつしろー!
[一言] やっと主人公の好感度が一定値に達したか ここまで長かったなぁ
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