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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第六部 転生少女の混迷期
272/304

混迷編④ 友との再会


 ルビーフォルン陣営の拠点が視認できる場所まできた。

 私がきたら大騒ぎになるかもの懸念があり、大きなフードをかぶって顔が見えないようにしつつ木陰に隠れて様子を伺う。


 ルビーフォルン陣営は、緊張してるのかピリピリとしたような独特の空気があった。

 葬式のように暗い雰囲気のようにも感じるが、闘志は萎えていないと言う感じでここにいる人たちの顔つきはしっかりしている。


 どうにかしてまずはバッシュ様と話して、現状を再確認したいけれど……バッシュ様がいるであろう場所まで隠れて行くのは難しそう。

 多分周りにいる人たちに止められる。


 誰か知り合いが近くにきてくれたら……と思って様子を見ていると、めちゃくちゃ見たことがある銀髪の縦ロールが見えた。


「おい、あの二人って……」

 アランが隣で小さくそう言ったので、私も驚きつつも頷いた。


 あの縦ロールの輝きは、カテリーナ嬢!

 よく見れば、サロメ嬢らしき人影もそばにいる。

 カテリーナ嬢達が、まさかこっち側にいるなんて……!!


 よくよく考えてみたらもともとカテリーナ嬢は、この騒動の中心でもあるグエンナーシス領出身だ。

 こちら側にいてもおかしくない。


 どうにかして二人とコンタクトをとりたい。


 しかも運がいいことに2人は私達が身を隠してる森の方に向かってきてくれてる。

 これなら、2人だけに接触出来るかも。


 ドキドキして機会を伺っていると、そのうち2人の話し声が聞こえてきた。


「バッシュ様の方にも、リョウさん達は戻ってきてないのね……」

「やっぱり、リョウさんとアラン様は……」

「そんなことないわ! リョウさんはそう簡単に死ぬような、可愛い性格してないもの! それにアランさんだってついてるのだし……そうでしょう!? サロメ!」

「そうね……。ごめん、つまらないことを言ったわ。突然国王軍側に戻ってきた殿下なら、何か知ってるかも……」

 どうやら私の話をしてるらしい。

 ……なんだか出にくくなった。


「……シャルロットさんのことも心配ね。まさか、殿下が戻ってきたと聞いて、一人で飛び出していくなんて思ってもみなかったわ」

 ええ!? シャルちゃんが!?

 二人の話に、私は思わずガサガサと音を鳴らして、茂みから飛び出した。


「シャ、シャルちゃん、一人で飛び出して行っちゃったんですか!?」

 そう叫ぶようにいう私をみて、サロメ嬢が警戒するように睨み、腰の剣に手を添える。


 私は気にせず二人に近寄ると、サロメ嬢は訝しげな表情をして、そしてハッと何かに気づいた顔に変わった。


「シャルちゃん、一人で飛び出したって、もしかして殿下のほうに行ったってことですか!? どうして!」

「ど、ど、ど、どうしてって……そんなの」

 戸惑うようにサロメ嬢の後ろにいたカテリーナ嬢がそういうと……サロメ嬢、カテリーナ嬢二人揃って口を開けた。


「「あなたを探しに行ったからに決まってるじゃない!」」

 二人はそう口にすると、私のことを体当たりするようにして抱きしめてきた。


「もう! どこに行ってたのよ! 今まで、散々心配したのよ!?」

「本当よ、このバカ! 無事なら無事ってことぐらい一言言いなさいよ!」

「だいたいアランさん、貴方がいて何をしてたというの!? というか、今まで 二人でいたの!?」

「二人とも、無事だったから良かったけど、無事だとわかったら怒りが湧いてきたわ。駆け落ちじゃないでしょうね!? そういうことするならちゃんとそういうそぶりを見せてからにしてくれる!?」

 サロメ嬢とカテリーナ嬢が涙に濡れたような声から、どんどん言葉尻が荒くなってきた。

 なんかめちゃくちゃ怒ってる。


 ちょっと怖いけど、それほど心配をさせてしまったってことだ。


 私は改めて二人に申し訳なくて、でも同時に、久しぶりの二人が変わらなくて懐かしくて、嬉しくって泣けてきた。


「すみません。心配お掛けしてしまいました」

「本当よ! あなたたち一体今まで何をしていたの!?」

「えっと、色々と事情がありまして……そのことについては、バッシュさんと一緒の時に説明できたらと思ってるんですけど、それより、シャルちゃんは大丈夫なのですか?」

 私が今一番気がかりなことを尋ねると、二人は眉根を寄せた。


「あなたね、こんな時でも他人の心配なの!? まったく……。シャルロットさんは、殿下が戻ったと聞いて、貴方も一緒にいないか確認するために国王軍側に行ったわ」

 なんと……。シャルちゃんが、ゲスリーの元に!?

 無事に、ゲスリーに会えるかはわからないけれど、結構危険なんじゃ!?


「それって大丈夫なんですか!?」

「彼女だって、危険なことは分かった上のはずよ。うまくバレないようにやるわ。それに、向こうにはリッツ様がいるし、彼がうまく調整してくれる」

 サロメ嬢の言葉に「リッツ様」と言う単語が聞こえてきて、どっと安心感が増した。

 というかリッツ君が向こうにいるの!?


「リッツ様があちらに?」

「まあね。密偵みたいなものかしら」

 とカテリーナ嬢が何でもないようにそういうとアランが何故か自慢げに頷いた。


「リッツがいればシャルロットは大丈夫だろうな」

 自慢の親友の頼もしさにうんうん頷くアラン。確かにリッツ君がいれば、安心だけど……。

 でも密偵って大丈夫なのかな。

 空気が読めて、人の気持ちの察しもよくて、どこにでも溶け込めるリッツ君、確かにスパイ向きかもとは思うけど……。

 私がまだ心配していることに気づいたのか、サロメ嬢が口を開いた。


「大丈夫よ。もしバレてもシャルロットさんは魔法使い。悪いようにはされないわ。それに、王国側には、学園の卒業生が多くいるのよ。彼らはずっと貴方の身を案じながら王国側にいる。戦が今のところ睨み合いで済んでるのも、彼らのおかげよ。つまり、王国側にいる人達が、全部が全部王家のために戦おうっていう人達じゃないってこと」

 マジで!?

 王国側がそんなことになってるの……!?

 睨み合いで済んでるのも彼らのおかげって、学園勢頼もしすぎるんですけど!?


 そのあとサロメ嬢達に王国側にいる人達の名前を聞いたら

 大体ドッジボールで戦いを共にしたことがある戦友達だった。

 みんな……! 本当にありがとう!


「殿下が戻ってきたと言う話も、彼らから聞いたのよ。でも、リョウさんの姿はないって聞いてたから……良かった。貴方は貴方で無事でいてくれたのね」

 改めてしみじみとカテリーナ嬢に言われて、心配をかけてしまった申し訳なさと、無事に会えた喜びで再び泣きそうになった。

 ほんと、すみません。


「本当に心配をおかけして、すみませんでした。詳しいことは皆さんがいる場所でと思っていて、バッシュ様や、アレク……剣聖の騎士団の代表者とも話しあいたいのですが、案内をお願いできませんか?」

 私の提案に、二人は渋い顔でお互いに目配せをしあった。

 そして、申し訳なさそうにサロメ嬢がこちらを見る。


「今、バッシュ様と剣聖の騎士団の幹部達は、中心にある天幕で今後のことを話し合ってるところよ。その……殿下が戻ってきたことについてどうするかという話をしているの」

「なら、ちょうど良いですね。私をそこに連れて行ってもらってもいいですか?」

「……バッシュ様に会うのは良いと思う。でも、剣聖の騎士団の代表者と会うのは、バッシュ様と相談してからの方がいいかも知れない。彼らは事を急ごうとしすぎてる。貴方が戻ってきたことを快く思わないかもしれない」

 サロメ嬢にそう言われて、私は確かにと視線を下に向けた。


 親分達が私の帰還をよしと思わない可能性はある。

 親分としては、私が戻ってくることは、こちら側の陣営の戦う意義がなくなるということだ。

 彼らは私が死んだと思って、そのために戦おうとしているのだから……。

 けど……。


 脳裏に昨日のゲスリーが大地を割る姿が浮かぶ。

 あの力を前にして、私達が万が一でも勝てると親分達は思ってるのだろうか?

 あんなの天災に挑むのも一緒。

 親分達が動いたのは、情勢が変わってルビーフォルン領民を巻き込んで国に戦争を仕掛ける絶好のチャンスがきたからというのもあるだろうけれど、ゲスリーの不在だって理由の一つのはず。


 ゲスリーは、この国の魔法で作られたものを全て崩すことができる。

 一つの文明をいとも簡単に滅ぼすことができるほどの力。

 その絶対的な力が王国側に戻ってきた。


 ……その辺りのことを詰めていけば、親分が王国との和平の同盟を結んでくれる可能性は、ある。


「それでも、この問題は早めに対処したいんです。私を、剣聖の騎士団の……アレクサンダーがいるところまで、案内をお願いします」

 私がそういうと、サロメ譲とカテリーナ嬢は、心配そうな顔をしながらも頷いてくれた。


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