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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第五部 転生少女の婚約期

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波乱の挨拶回り編⑧ 天才すぎるゲスリー殿下の力

更新がご無沙汰になってしまってすみません!

これから、ぼちぼち再開です!

よろしくお願いします!


 それからシャルちゃんアズールさん私の3人できゃっきゃうふふしていると、アランとカイン様がやってきた。

 アランとゲスリーの話し合いはうまくいったのだろうかと思ったところで、カイン様の左頬が赤く腫れていることに気づく。

 照れてるとかじゃなくて、あれは誰かに殴られたような痕のような……。

 私は慌ててアズールさんに冷たい水と布を用意するよう指示を出して、カイン様の方に駆け寄った。


「カイン様、その頬の腫れはどうしたんですか!?」

 慌てる私にカイン様は困ったように笑う。


「少し口を切っただけだから、大丈夫だよ」

 と答えるカイン様だけど、いやだって、そんな……!? 誰にやられたの!? という気持ちで見るけれど、カイン様は困ったように笑うばかりで答えてくれそうにない。

 ついで一緒に入ってきたアランの方を見ると、アランが視線を下げた。


「悪い。俺のせいだ」

 ええ!? ア、アランがカイン様に手を……!? いや、ありえない。アランが大好きなカイン様に手をあげるわけがない。

 そう思ったところでアズールさんが水と布を持ってきてくれた。布を水で濡らしてカイン様の頬に当てる。

 ああ、癒しの貴公子の顔に傷が……!

 とはいえ、そんなことぐらいで損なうような美しさではないのだけど、でも、痛々しいというか……。


「一体、何があったんですか? アランのせいだって言われても、信じられないです」

 と言ってみるけど、アランもカイン様も言うかどうか迷ってるような感じで口を閉ざしている。

 そういえば、アランはゲスリーのところに行ってたはずだ……。


「殿下が関わってますよね? 何があったのか話してくださいますか?」

 私がそう言ってじっと睨み上げるようにカイン様を見ると、彼は困ったように笑った。


「聞くまでリョウは諦めそうにないね。それと、これもありがとうリョウ。あとは自分でやるよ」

 と、カイン様は観念したように微笑むと、カイン様の頬に押し付けていた濡れた布を自分で持ち直した。


「大した話ではないんだ。アランとヘンリー殿下が口論になって、アランが手をあげてしまったのだけど、私が殿下をかばったというだけだよ」

 マジで!?

 と思って確認のため、アランを見ると目に見えてしょんぼりしているので、カイン様の話は事実なのだろう。

 でも、アランが何の理由もなく、突然手をあげるような人じゃないのは、分かってる。

 そして相手はゲスリーだ。

 おそらくカイン様を私の護衛につけてくれるかくれないかのことで言い合ってるうちに、ゲスリーのゲスリー節を聞いてしまったのだろう。

 大好きなお兄ちゃんを殴る羽目になってしまったアランの顔は険しい。

 許せん! ゲスリー!


「殿下が相変わらずなことを言ったんでしょう! 私が言って、反省する人ではないですけど、殿下には苦情を申しておきますね!」

「はは、ほどほどにね」

 ほどほどだけじゃ私の怒りは収まりそうにないけども! それに……。


「そこまでこじれたとなると、カイン様は殿下の護衛の任から離れられそうにないですね」

 引き続き私の護衛に、と思ったけれど難しいようだ。でも、今いるメンバーだけでも心強いし。


「いや、殿下からの許可はいただいたよ」

 というカイン様からのまさかの話に目を丸くすると、カイン様が頬に当てていた濡れた布をとって、赤くなった頬を見せてきた。


「傷のある私は見たくないらしい。殿下は、ご自身の近衛の美観にはこだわりのある方だからね」

 と、寂しそうに呟いた。

 美観? 頬が少しばかり腫れて、自分の近衛に求める美しさに達しなくなったカイン様に興味が失せたってこと……?

 憤怒のリョウがまたもやむくりと起き上がる。

 あいつはこんな素晴らしいフォロリストに対して何を思っているのか! 本当に、家畜とかそんな風にしかみえてないってこと?

 カイン様は、殿下の友人でありたいって思っている慈愛深き素敵貴公子にしてフォロリストキングだっていうのに!

 でも、そうだった。ゲスリーはそういうやつだ……。


「すみません、カイン様、私が護衛にと望んだことで嫌な思いをさせてしまいました……」

「そんな風に言わないでほしい。私はリョウに頼られて嬉しかったんだ」

 くッ、カイン様素敵すぎない? きっと素敵の国の王子様とかそういうファンタジーな存在なんじゃないの!?

 私が素敵の国のプリンスの素敵具合に感動していると、アランが重いため息を吐いた。


「いや、俺が悪かったんだ。俺が殿下に言いすぎてしまったところもあって……だから殿下は、リョウのことをあんな風に……」

 と、言ってそれ以上は口にできないとばかりにアランはムッとした顔になってから言葉を止めた。


 やっぱりゲスリーからゲスな話を聞かされたんだろうな……。私は彼のゲス話にある程度耐性ができてるけど、アランは初めてだろうし。


「ですが、これでリョウ様をお守りするのに十分な方々が集まってくださいましたね」

 と後ろで事の成り行きを見守っていたシャルちゃんが励ますようにそう言った。

 確かに、シャルちゃんのいう通りだ。


 ゲスリーに対して思うところはものすっごくあるけれど、いつまでもぐちぐち怒っていても彼のゲスがどうにかなるわけじゃない。

 私としてはカイン様が引き続き護衛メンバーに入ってくれることはありがたい。


「そうですね。それでは、明日は早速出発ですから、今後のことについて作戦を立てましょうか」

 そう言って、剣聖の騎士団から私を守るために打ち合わせをすることになった。


 私が剣聖の騎士団に刺されたら、最悪の場合は戦争だ。それだけは絶対に阻止したい。

 ゲスリーのゲス具合にばかりかまけていられないのだ。

 これからの動き方についてや、配置についての話になった。

 基本的には、周りをアランが連れてきた王国騎士達で固めつつ、アズールさんとカイン様も騎乗して周りの護衛に変なところはないかを警戒してもらう。


 そして、馬車の中には私とアランとシャルちゃん。何かあった時には、アランとシャルちゃんの魔法で私を守ってくれる。

 そして、アランは、何かあった時にすぐ対応できるように一番危ない窓際の席に座ると言ってくれた。

「アラン、弓矢で攻撃されることを考えると、窓の近くにいるのは本当に危ないですよ?」

 と、私がアランの提案に念押しをした。


 自分で言っておいてあれだけどでも、誰かが窓際に座らなくてはいけないのは確かで、それは魔術師で自分の身を守るすべがあるアランが一番だってわかってはいた。

 でも……とゲスリーの声が脳裏によぎる。

 自分を守るために周りを盾にしようとするなんて残酷なことを考えるんだなと言った彼の言葉が突き刺さる。

 ゲスリーの言ってることはある意味、的を射ている。みんなは頼ってくれて嬉しいとは言ってくれるけど……。


 みんなの言葉に甘えて私は、みんなの命を盾にしている。どんなに綺麗に言いつくろったとしても、ゲスリーの言ってることも真実だ。

 ゲスリーはゲスなことを言うけれど、でも、彼の言うことは物事を私とは違う側面から見ているだけで、デタラメというわけではない部分もある……。


「おそらく弓での攻撃はしばらくない」

 私がくよくよ悩んでいると、アランはそう言いきった。


「どうしてそう思うでありますか?」

 とアズールさんが疑問の声をあげるとアランが口を開く。


「実は、今国内にある王国騎士の矢は全て消失してる」

「え? 消失?」

「おそらくヘンリー殿下が行ったんだ。魔術師に解除の呪文があるのは知ってるだろう? 殿下はその呪文を使って、王国内にある王国騎士が使う模様入りの矢を全て消し去った」

 え、待って。

 ちょっと理解が追いつけないんだけど。


「確か、魔術師様の解除の呪文って、視界の中にあるものじゃないと作動しないのではありませんでしたか?」

「普通はな。でも、それもその魔術師の能力次第では、できなくもない。時間はかかるし、道具も場所も必要だけれど、目に見えない遠いところのものを崩すことは可能だ。俺もできる。でも俺の場合は、それは自分が作ったものに限定される」

 そういえば、魔法についてのことをこっそり勉強している時に、そういうことができなくもないという話を聞いたことがある。

 地図などを用意して、自分の作った魔力を持つ物を感知して崩す、みたいなやつだった。

 ということは……。


「まさか国内の王国騎士の矢は殿下が作っていたのですか……?」

 まさかそんな仕事してたの?

 いやだって、ゲスリーがせっせと矢作りの内職に励む姿は、なんというか、想像し難い……。


「いや、そうじゃない。殿下は特別なんだ。王家の中でも、特別で……天才なんだよ。俺も未だに信じられないけれど、おそらく殿下は、離れていても、自分が作ったものでなくても魔法で作られたものなら崩すことができる」

 青白い顔でアランがそう言った。

 私もすーっと血の気が失せていく。

 だって、それって……。


 ゲスリーがやろうと思えばこの王国の文明の全てを滅ぼせるってことじゃないだろうか。


 だって、この国は、確かに非魔法使いが作ったものが増えていってはいるけれど、それでもほとんどのものが、魔法で作られている国だ。

 魔法で作られたものの全てを遠くにいながら崩せるのだとしたら、ヘンリーがもういらないと思って、解除の魔法を放てば、この国の全ての文明が滅びる。


「そんな、まさか……」

 思わずそう呟いたけれど、アランは真面目な顔で頷いた。


「俺も信じられないけれど、でも実際に矢は崩れた。これは剣聖の騎士団にとっても予想外だろう。彼らが用意した矢も崩されたはずだからな。もしかしたら殿下の力を知った剣聖の騎士団は、反逆なんてものをやめるかもしれない。それほどの力の差だ……」

 アランの暗い声を聴きながら、親分のことを考えた。

 矢が消失したというのなら、王国騎士の矢で私を殺して軋轢を生むという親分の企みが、失敗したと言ってもいいだろう。

 アランの言う通り、ここまでの力の差を見せられたら諦める可能性も高い。

 私の生存率が急激に上がった。

 私としてはとても有り難いことなのに、ゲスリーの力のことを思うと恐ろしくて……素直に喜べなかった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ゲスリー殿下、やっば!!!! [気になる点] んー、ゲスリーの力がチートっぽい……ますます転生者説が……んー、けど実際どうなんだろ?
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