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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第一部 転生少女の幼少期

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小間使い編⑭-THE NAISEI ダイジェストでお送りいたします-

 焼き石風呂は見事成功し、アイリーンさんから好評だった。焼き石風呂は石からのミネラルも溶け出すので、お湯自体がなんか滑らかな感じになる。

焼き石風呂の作業は、その後、通常の業務として加わり、私が水を汲んで、浴槽に入れて、薪割りの使用人が、石を焼く係りになった。火の管理は子どもじゃあぶないからね。

 でも、私、桶で水を汲んで浴槽にいれる作業めっちゃ辛いんですけれど。何往復もして、筋肉痛なんですけれども。でも辛いだなんていえない。だってここはブラック企業・・・・・・!


 また、糸車と井戸の図面をその後作成し、クロードさんに持っていくと、その図面を見て、他の仕事を後回しにしてまで、力を入れてくれることになった。


 でも、井戸については、ちょっと・・・・・・と感触がよくなかった。どうやら井戸的なものはこの世界でもあるらしい。王都などの大きめな街では、井戸を使っているところもあるみたいだった。

 ただ、ここのレインフォレストの領地で昔、井戸を作ろうとしたら、民から『えー、井戸って引っ張るの重―い、時間かかるしー、か弱い私無理―、年とって腰が痛いしむりむりー』みたいな意見があり、そのときは魔法使いもたくさん居たため、余裕っしょ、と思ってため池方式になったらしい。


 いや、私正直その話聞いて『ああん? 甘いこといってないで、水ぐらい井戸から引っ張り出せやゴラァ!』って思ってしまったけれど、それは私の心が狭いからでしょうか? 心もブラック企業と化してしまった故の考え方なのでしょうか? そうなんでしょうか。


 クロードさんは、でも魔法使いが不足している今の状況じゃ仕方ないかもしれないと井戸作成に一応取り組もうとしていたので、私は内心のブラックRYOUを必死に隠して、そういうことなら、もう少し改良した図面出しますー、あんまり引っ張るのに力使わない感じのにしますーと答えて、図面を回収した。けっ。


 後日、引っ張る滑車の部分を改良したものと、ポンプ式の井戸の図面をクロードさんに提出した。

 ポンプ式の井戸は小学校の理科の授業でつくったピストン水鉄砲を参考にした。井戸の中を真空状態というか水で満たして、中の管を配管みたいにすれば、ピストン運動とともにその圧力で水がザッバーと出てくるんじゃないかと思われる。実験してないからよくわからない。だから念のため改良案は二つ。いったん二つとも試しに作ってくれることになった。


 精霊使いは水脈がわかるらしく、ピンと来た場所をそのまま魔法で、土を掘ると、水が出てきた。そこをアイリーンさんがまたもや魔法で、穴を石で加工し、井戸を作っていったので、あっという間だった。

やっぱりすごい魔法使い。魔法使いがいれば土を掘るスコップだって、重機だって要らないね! 街の便利屋、魔法使い!



 糸車は試作品を私が書いた図面どおりに手先の器用な使用人が作ってくれた。試してみると糸の巻き方が少しぶれるので、少し手直しをした上で、完成させた。滑車をまわすとカラカラと糸巻きが回って、綿もクルクルっとひねられて糸になっていく。なんか楽しい。


 糸車初めての人でも、数分ほどのレクチャーで簡単に糸が作り出せることを確認し、アイリーンさんお得意の魔法で、いくつか量産し、手始めに一番近くの集落に糸車を置いた。


 千歯こきのおかげで、時間をもてあましている農民達に、糸車を貸し与え、糸を作ってもらう魂胆だ。

 出来た糸はわずかばかりだが金銭と交換できると村民の方には伝えるとめっちゃテンションがあがった。


 収穫した作物を税として収め。残った作物を自分たちで消費したり、売ったり、交換したりして、他の作物やらなんやらを手に入れると言う流れで収穫したものを使い切ってしまうようで、生活には困らないが、貯金みたいなものがあんまりできていなかったらしい。貴族直轄地は、仕事は楽だが、税率が高いのだ。


 ガリガリ村はほとんど税の徴収なんてなかった。開拓村って言うのはたぶん見捨てられた村なんだと思う。魔法使いがいなくても畑が耕せるのかの実験地。徴収に来る人も税なんて期待してないみたいな雰囲気だった。



 色々と一気に始めてみたが、デメリットはやっぱりでてきた。

 まず井戸については、ポンプ式のものでうまく稼動したので、ポンプ式井戸を所々設置したのだけど、『水ため石のほうが、早く水をすくいだせるしー慣れてるしー』みたいなことをちらほら言ってくるクレーマーが出てきた。


 うるせぇ、だまれ! と言いたいところをグッとこらえて、井戸水についての説明会で、衛生面でもいいし、水温も一定で、それになんかほらハンドル押すの楽しいよー! と5歳児(私)がキャッキャウフフと井戸の周りで嬉しそうに遊んでいる様子をみせてごまかすことにした。


 糸車に関しては、どうやら魔法で作ったほうが、糸を生産できる絶対量が増えると言うことがわかった。つまり、同じ量の綿で糸を作ろうとしたとき、糸車よりも魔法で作った糸のほうが、たくさんの糸が出来ると言う不思議なのだ。そういえばガリガリ村にきた魔法使いも藁3本で魚の罠篭を作っていたが、藁3本では足りないはずなのだ。 


 魔法はその物質を増やす作用があるみたい。どんな仕組みなんだ魔法。いや、仕組みとかないのか魔法なのか。魔法って仕組みないの? もうよくわからない。


 でも一日に作れる糸の量は、魔法よりも村人が手分けして作ったほうが断然多いので、そのことは大目に見て、このまま糸車を使った糸の生産を進めることになった。


 糸作りは順調だった。逆に綿のストックが、綿花の収穫までに尽きるなーぐらいに思っていたら、新たな問題が飛び込んできた。


 たまに井戸や糸車の件で、外に出ることもあったが、基本的には坊ちゃまの小間使いとして、屋敷で色々やっていたときに、すごい形相の女性が怒鳴り込んできたのだ。


 彼女は魔法使いだった。主に、作られた糸を染め師が染めた後に受け取って、糸から布にするレインフォレスト家直轄の魔法使い。つまり機織り魔法使いだった。


 クロードさんと一緒に話を聞いてみると、最近糸の生産が早すぎて、機織りが追いつかない! 仕事場は糸であふれかえって、糸を見るだけで吐きそうになるのよ、キーーーッ! と訴えてきた。


 そうかそうか、うつ病一歩手前か。いや、でも、キーーーーッと言っている元気があるうちは大丈夫。まだ君ならやれる! わが社のために働ける!


 完全なるブラック企業脳と化した私は、そう諭そうとしたが、隣にいるクロードさんが、「わかりました。では、何かリョウにつくってもらいましょう」と速攻で答えていた。


 ねえ、私の意志は? もうやだ。キーーーーッ!


 私は最後の苦し紛れに、布製品を作るのに、もう他に魔法使いの介入はないですよね? 他は大丈夫ですよね? と確認をとってみたところ、大丈夫そうだったので、しぶしぶ機織り機の図面作成に了承した。


 布製品が出来るまでは、耕作・タネまき(人間)→成長させる(魔法使い)→収穫(人間)→糸作り(魔法使いだった)→染める(人間)→機織り(魔法使い)→お針仕事(人間・一部魔法使い)→出荷販売(人間)ということらしい。

 成長させる(魔法使い)の項目はもうどうにもならないので、見なかったことにして、機織りをクリアすれば、後はほとんど人間の力でいけそう。


 もうね、機織りまで魔法使いって、どういうことかしら。あ、でも日本でも昔、織姫様という姫なのに機織りしてる神様が居たもんね。そっかそっか、じゃあしょうがないなー、そうかそうかーと、どうにかこうにか適当な空想で自分を慰めつつ、やさぐれた気持ちで図面を作り終えた。


 縦糸を張って、横糸をジグザグに通して、クシみたいなものでタンタンと詰めていくスタンスのこれまた歴史の図説資料にのっていた機織り機だ。

 試作品を作って試してみたが、布の出来は悪くない。しかしスピードが・・・・・・遅い。


 魔法使いの機織りは早い。呪文を唱えると、糸が勝手に踊りだすように自ら織り込まれて布になっていく。


 しかし人間は人間らしく人海戦術。そうすれば、スピードでも負けないはず。大量に機織り機を導入し、職人さんを募集。糸作り組みからも何人かこちらに来た。


 基本は急ぎ目の仕事は魔法使いが作り、そのほかを人が機織り機で作ると言う流れになった。機織り機での布作成は経験を積めば積むほどおそらくスピードも速くなる。徐々に魔法使いの負担を減らせるという予測ではある。



 あと、たまにくたびれたおっさんの精霊使いが、『助けてー、どら○もーん』というテンションでやってきて、何か仕事が楽になる道具をねだり始めた。

 

 私は便利屋じゃないよ、のび○くん!


 精霊使いの仕事って作物を成長させるぐらいしか知らないけれど、作物を生長させるあのチートみたいな能力の前で、私が出来ることは何もないと伝えている。


 それでも、しつこく精霊使いが相談にくるので、理由を聞くと、最近畑の精霊が少ないという話だったので、精霊なんて私には見えないしわからんとは思いつつ、一応肥料の話をして、綿花の綿の部分以外が焼却処分なので、それを撒くことをお勧めしておいた。

 ただ、どうせ、魔法で成長させるんなら、なんか意味ない気がするけれど、という思いはぬぐえない。あの魔法は本当にずるいと思う。


 一応、糸車の登場で、ここらの農民は空いている時間に糸作りや機織りをするようになり、無駄に畑仕事ばかりしなくなったため、精霊使いの仕事待ちの行列が少なくなってきてはいるようだった。




 そして私が、こんな面倒くさいことをしてまで、求めてたアイリーンさんとその息子達との夕食会は無事に開催された。

 むしろそれが当たり前の日常となりつつあった。

 最初の夕食会は、アランもカイン坊ちゃまもアイリーンさんまでみんなすっごくガッチガッチに緊張していて笑えた。クロードさんも後から一緒に席について食事をしていたんだけど、そのクロードさんだけ、いつもどおりに食事していたもんだからすごく浮いてて、それもおもしろかった。


 でも、毎日続けていたら、慣れてきたみたいで、今では穏やかな家族団らんお食事会になっている。


 とっても嬉しいことだけれど、正直、ねたむ気持ちも、少なからずあった。ほんのちょっとだけ。


 アランの癇癪も少なくなってきて、着替えと湯浴みの手伝いに関しては、私以外の使用人、男の使用人に替えてもらっても吠え付かなくなった。

 カイン坊ちゃまがアランに着替えと湯浴みは男の使用人がいいからと説得したらしい。やっぱりカイン坊ちゃまは女の子に手伝ってもらうのは気になっていたみたいだ。

カイン坊ちゃまも出会った頃は8歳だったけれど、もう9歳。そろそろお年頃になるのかな。


私も6歳になっていた。


そしてその頃から、なんか私を探している怪しい男がいるという噂が立ち始めた。


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