王宮暮らし編⑫ 評議会に入るためには
いつも転生少女の履歴書を読んでいただいてありがとうございます!
今日は、書籍版『転生少女の履歴書7巻』の発売日!
ご購入報告も頂いて、まっこと嬉しい限り……!
今後もどうぞよろしくお願いします!
アルベールさんに評議会のことをお願いして、色々といい報告を待ち焦がれていたけれども、後ほど知らせてくれた内容は残念な結果だった。
まだ婚約者という立場で、しかも非魔法使いということもあって私の評議会入りは反対意見多数にて却下されたらしい。
悲しい。
やっぱり非魔法使いってことが一番のネックのようだ。
今までも、王族と婚姻を結んだ人が評議会入りすることはあったけれど、全て魔法使い。
ただ今は商人ギルドの代表としてヴィクトリアさんもいるし、非魔法使いの私を次期国王と噂のヘンリーの婚約者に据えたわけだし、私の評議会入りはなくもないんじゃないかって思ってたんだけどなぁ……。
城側が私を王族に入れたがる目的としては、本当に今の私の名声が欲しいだけっぽい。あ、それとルビーフォルン商会のお金もあてにしてるところもある。
最悪なヒモ国家状態だ。
私に美味しいところがほとんどない。
これはどうにかしなくては……。
と、焦った私は油断をしていて、朝の祈りの時間の際にエッセルリケ様に捕まった。
あれよあれよと連れられて、エッセルリケ様のお住まいであられる月の宮にまできてしまった。
そう、現在エッセルリケ様とのドッキドキなお茶会中なのである。
大きな六人がけぐらいのソファに私とエッセルリケ様が隣あって座る。
他の侍女たちは部屋の隅で待機だ。
アズールさんとシャルちゃんが心配そうに私を見ている。
「どうしたの? 顔色が悪くてよ」
私の隣にピタリと座るエッセルリケ様が、いつものゆったりとした口調でそうおっしゃった。そして、私の左手の甲を撫であげている。めちゃこわい。
すすっと私が手を引くと、一緒にエッセルリケ様の手もついてくる。
めちゃこわい。
「コホンコホン……。いやですわ。風邪を引いてしまったかもしれません。エッセルリケ様に風邪を移しては大変ですので、私はそろそろ……」
と退室を願ったがエッセルリケ様の艶やかな笑顔はそれを許さなかった。
「構わないわ。それにしても、私のことはお姉様とよんでと何度も言っているでしょう?」
そう言って、ニコリとエッセルリケ様が笑って私の手の甲を撫でた。
実年齢はあれだけど、見た目年齢はお姉様と言って問題ないほど若くお綺麗な方でいらっしゃる。
それに実際、私がヘンリーと婚姻を結べば義理の姉だ。
お姉様と呼ぶことはやぶさかではないような気もしたけれど、呼んだら呼んだでいけない花園にそのまま連れ込まれそうで……。
「そんな、とても恐れ多くて私には……。それに、風邪も……」
とめげずにどうにか理由を見つけて退出しようとしている私の唇に、エッセルリケ様は指を乗せた。
「そういえば、風邪って他人に移すと早く治るらしくてよ? お試しになる?」
と、エッセルリケ様が言って私の唇を撫でた。
ええ、なにこの人! 風邪をキスで移して治してみせようかっていいたいの!?
なにその少女漫画のヒーローみたいなセリフ! こわい!
言っとくけど私はそんな民間療法、信じてないよ!?
しかもじつは別に風邪は引いてないし!
てかやばいやばい。脳内突っ込み中のこのタイミングでも、エッセルリケ様の顔めちゃくちゃ近寄ってくる!
これはまた奪われる! 唇!
もう二度とふいに唇奪われないぞ宣言を立てている私は、やんわりとエッセルリケ様の手を私の唇から外す。
けれども彼女はさらに顔を寄せてきたので、私は凄まじい勢いで首をブルブルと横に振った。
「そ、そんな! エッセルリケ様に風邪を移すなんて……! 恐れ多いです!」
そう言ってジリジリとお尻を滑らせてエッセルリケ様から距離をとった。
しかし、エッセルリケ様もジリジリと私の後を追うので、とうとうソファの端っこまで追いやられてしまった。
もう後がない。
さらに顔を青ざめる私に、エッセルリケ様がクスリと笑う。
「可愛らしい人。ヘンリー殿下が気にいるだけはあるわね」
そう艶っぽく言うと、ふっと笑ってエッセルリケ様は姿勢を正して座り直してくれた。
少し距離がひらく。
助かった。
それよりも殿下が気にいるだけはあるって、エッセルリケ様が私に興味をもったのは、やっぱりゲスリーのせいなのだろうか……。
だとしたら、あのゲスリーとかいう奴は、マジで私の邪魔しかしないのだけど……。
「そういえば、リョウさんは、評議会に興味があるそうね」
お茶を飲んで、一息ついたエッセルリケ様が、含みのある笑みを浮かべてそう言うもので、どきっとした。
何故、その話を知っているのだろう……。
私の疑問が顔に出ていたのか、
「アルベールから聞いたわ。私の力を借りたかったみたいね」
と、エッセルリケ様は教えてくれた。
アルベールさん!
アルベールさん、本当に色々かけあってくれたんですね!
その気持ちは有難いけれど、本当に一生懸命なんだなって、ありがたいんだけども! でも、ありがたくない……。
正直、私もエッセルリケ様に頼るのも手かもしれないと考えたこともある。
エッセルリケ様は評議会に入っていないけれど、評議会に入れる資質を十分にもっている。
エッセルリケ様は、もともと王族の血が入っている公爵家のご令嬢だ。
夫であるテンション王とは従兄弟同士に当たる。
そして、エッセルリケ様は魔法使いだ。まごうことなき、いと尊きお方。
でも、エッセルリケ様は、テンション王と同じく政には興味がないため、評議会の役目を辞退している。
そんな彼女が、私の評議会入りを推薦してくれれば、今の現状をどうにかできる可能性は十分にある……。
私はゴクリと唾を飲み込んで、エッセルリケ様の次の言葉を待っていると、彼女はさらに楽しそうに口角をあげた。
「わたくし、外のことには、まったく興味がないの。だからアルベールには断ったのだけど、でも……」
そう言って、エッセルリケ様は私の手に再び手を重ね、その手をつつつと腕の方に這わせていく。
「あなたには、とっても興味があるのよ」
私の腕を親指の腹で撫でながらそう言った。
その目は、何か、こう、熱っぽい感じというかなんというか……。
つまり、私がエッセルリケ様のハーレム要員になったら、力になるってことだ。
ああ、もう。
絶対そうくると思ったから言わなかったんだよ……。
私が思わずと遠い目になっていると、コンコンと控えめなノックの音が聞こえてきた。
え、来客!?
エッセルリケ様は、その音を聞いて不機嫌そうに眉根を寄せたが、私は救世主の登場に目を輝かせた。
「誰? 邪魔をしないように言っていたでしょう?」
とエッセルリケ様がいらだたしげに声をあげると、扉が開いた。
入ってきたのはエッセルリケ様の侍女で、「緊急のご用があるようでして……」と申し訳なさそうに眉根を下げて言うと、その後ろからアリーシャさんが部屋に入ってきた。
アリーシャさんはこの広い部屋の大きなソファで、何故か端っこに座る私とエッセルリケ様を見て、一瞬不思議そうな顔をしたあと、ハッとしたように膝をついた。
「恐れながら、申し上げます。ヘンリー殿下が、星の宮にいらっしゃいました」
え? ヘンリー殿下って……つまり、ゲスリー!?
王宮生活九十日目ぐらいにして、初めての婚約者の訪問の知らせだった。
エッセルリケ様:わたくし、外のことには、まったく興味がないの。だからアルベールには断ったのだけど、でも……転生少女の履歴書7巻には、とっても興味があるのよ。
という王妃様のお言葉にて宣伝再び!
本日は、転生少女の履歴書7巻の発売日です!
わーい!いつも応援ありがとうございます!
とりあえずですね、手元に7巻を入手していただきまして、
清楚でいて小悪魔な笑顔を浮かべるリョウ様表紙をめくるのです。
するとですね、そこには、思いのほかに成長を見せているリョウ様のドレス姿が……!
どうにかしてそのイラストを見てもらいたい。
そして、私と一緒に、リョウちゃんこんなにたわわに成長してたのね!!(興奮)という気持ち共有したい……!
こりゃあ、エッセルリケ様もロックオンしちゃいますわ!
ということで、もちろん書籍の内容も加筆しております。
ヤンデレ(?)シャルちゃんの活躍シーンもございまして、凄みのあるシャルちゃんのイラストも見れますよ☆
それにしても気づけば7巻ですよ。驚きです!
これもそれも皆さまの応援のおかげ……!
web版も書籍版もご愛顧いただいて誠にありがとうございます!
感謝の極み!