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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第五部 転生少女の婚約期

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王宮暮らし編① お出迎え

 湧き上がるような歓声が聞こえる。

 目の前には王都中の人がみんな集まったんじゃないかと思うほどの人だかり。


『ご婚約おめでとうございます』とデカデカと書かれた大きな旗が風にはためいて、みんな笑顔で嬉しそうに私を見てる。


 いくつかある城門の中で最も華やかな意匠を凝らした南門の前で、私は遠い目になりながら、楽しそうに旗や手を振る人たちになんとか笑顔を返した。


 このリョウ=ルビーフォルン、本日をもちまして、王宮内の王族の親近者が住まうエリアにお引越しします。

 なにせ、ヘンリー殿下の婚約者という立場になりましたのでね……。


 唐突にヘンリー殿下との婚約話が持ち上がって早数日。

 関係各所にこの度婚約しました報告から始まり、ルビーフォルン商会の引き継ぎやら、タゴサクさんをはじめとしたウヨーリ教徒の今後のことやらとやることてんこもり。


 この南門に来るまでも、私が住んでるルビーフォルン商会のところにまで4頭立ての馬車が何故か10台ほどで迎えにきて、その無駄に派手な馬車に乗って手をふりふりしながらパレードのようにここまできたわけで……かなり疲れた。


 城からこんなに豪華な感じで迎えに来るなんて知らなくて、持って行く荷物はかなりコンパクトにまとめてしまったために、後半の馬車は空状態。

 本当にただの豪華な馬車を見せびらかすパレードと化していた。


 というか、こんな大騒ぎになるとは思わなかった。

 ゲスリーとの婚約ってだけでも頭が痛すぎるのに……。

 そんな恨みつらみを込めて、ジロリと何故か付添人として、城門前まで私に同行してくれたヴィクトリアさんを睨みつける。


「ヴィクトリアさん、こんな風に人を集めてるなんて私聞いてませんよ!」

 と周りの人には聞こえないようにヴィクトリアさんに訴えかけると、彼女はその豊満なお胸を寄せて、てへぺろをした。


 だめ、てへぺろしても許さない。もう私にそんな心の余裕はないのだ!


「あら、いいじゃない。せっかくですもの。商人ギルドの力を示すこんな機会、私が見逃すはずないでしょ」

 もう! ヴィクトリアさんはいつもそればっかり! もう!

 と、ヒステリックに叫びたい!


 でも今はだめだ。笑顔を維持せねば。だって、みんなが見てるもの。


 ていうか、ヴィクトリアさんの動きが早いというか早すぎるのが、私気になるんですけど。

 ちゃっかり今日も付添人として当然のごとくついてきてるし。


 引き継ぎとかでてんやわんやな私に、ヴィクトリアさんから声をかけてもらって色々商会の引き継ぎ等の件では相談させてもらって、お世話になった部分はある。


 あるけれども、そのやり取りがスムーズすぎて……。

 第一、私の婚約が決まったウヨーリ教暴動裁判で、一番最初に私とゲスリーの婚約を提案したのは、ヴィクトリアさんの商会からきたと噂の美貌の侍従のラジャラスさんだ……。

 なんとなく、ヴィクトリアさんが仕組んだこと説が私の中で抜けない。


「あ、すまないリョウ君。じつは見送る人は多いほうがいいだろうと思って、私の方で使用人達には結構声をかけてしまったんだ」

 とヴィクトリアさんと同じく門前までの付き添いとして来てくれたバッシュさんが申し訳なさそうにそう言った。


 あ、うん、それは知ってる。バッシュさんは主にルビーフォルンの人達に声をかけてくれたよね。

 見たらわかるよ。私とゲスリーの婚約を派手に祝おうとする王都民に混ざって、恍惚とした顔で祈りのポーズを取ってる人達がちらほらといるもんね。

 大丈夫、彼らは別にバッシュさんが声をかけなくても勝手に来てたと思う。


「大丈夫です。彼らのことは気にしてませんから」

 と答えたところで、「リョウ様、お迎えの方がきてくださったみたいです」というシャルちゃんの明るい声が聞こえてきた。


 門の方へと目を向ける。

 確かに、見目麗しい騎士達の集団がこちらに綺麗な行進をしながら向かってきていた。

 あの見目の麗しさから察するに、ゲスリーが選びに選び抜いた美貌の近衛騎士団に違いない。


「ヘンリー殿下のお姿が見えませんね……」

 と騎士達の行進を見ていたシャルちゃんから残念そうな声が聞こえた。


 実は、シャルちゃんは、私と一緒についてきてくれることになってる。

 本人たっての希望で、初めての王宮生活に心細くなっていた私はとても嬉しかった。本当にありがとう。

 そのほか、何人か侍女として連れてきてもいいという話だったので、アズールさんと商会の女性を数名連れてきた。

 不安しかない王宮生活で、シャルちゃんやアズールさんがそばにいてくれるということがどんなに心強いか!

 ちなみにシャルちゃんは、侍女としてついてきたわけではなく、私の教師という役職でついてきてくれた。


 学園を卒業したシャルちゃんは魔法使いということで、魔法爵を持つ貴族階級の淑女だから、侍女としてついていくことはできなかったのだけど、シャルちゃん自身が、侍女でも教師でも側にいられるなら何でもいいと言って、結構無理してついてきてくれて……本当に嬉しかった。


 たぶん私が、内心初めての王宮生活に不安に思ってることが伝わっちゃったんだと思う。

 シャルちゃんは本当に友達想いだ。私もシャルちゃんが心細い時や辛いときは必ず側にいようと誓った。


 そんな心強いシャルちゃんが、私のお迎えにゲスリーがいないことでちょっと残念そうだけど、私としてはラッキーです。


「ヘンリー殿下はお忙しい方ですからね」

 ふふ、と余裕の笑みでそう返す。

 いやほんと、パレードとかヴィクトリアさんとのやり通りだけで、ほぼほぼ私の体力は限界だったんだもの。ここでゲスリーのゲスリー節なんか聞いた時には、流石の私も笑顔が決壊する。


「流石に、王族の近衛騎士団ともなると、なんというかはながありますね」

 とついてきてくれたアズールさんの感想を聴きながら、騎士団の綺麗な行進を見ていると、騎士団が真ん中に道を作るような形でちょうど半分に分かれた。

 おや、おやおや。

 まさかこれは、この真ん中の道を通る形でゲスリー大登場しちゃうパターンなのでは!?


 安心した後の突然のゲスリー登場の予感に、笑顔が引きつり始めた時、華やかな騎士たちの花園を通る一人の美丈夫が現れた。

 あれは、いや、あのお方は……!


「カイン様……!」

 思わず声が漏れた。

「アラン様のお兄様がお迎えにいらしてくださったんですね」

 とシャルちゃんがいう。


 そう、あれは、カイン様だ!

 ゲスリーかと思いきやのカイン様の登場に頬が緩んだ。

 さすがカイン様、ゲスリー登場による私の笑顔の決壊を防ぐために現れてくれたのだろか。

 流石フォロリスト!

 カイン様のサプライズフォローに感動していると、いつもの爽やか笑顔で近くまで来てくれたカイン様が恭しく膝を折って頭を下げた。


「ヘンリー殿下の代理でお迎えにあがりました」

 カイン様がそういうと、道を作っていたゲスリー騎士団の先頭にいた人が、綺麗でよく通る声を張り上げて、『ヘンリー殿下は急な公務で直接来られなかったけれどー、この日をどんなにか待ちわびていたことかー!』 とか、『お迎えには以前よりリョウ嬢と親交があった騎士カインを遣わすあたりにヘンリー殿下の思いの深さが窺いしれるー!』 とか、『本当にヘンリー殿下はリョウ嬢に会いたかったけど、急な用事で致し方なくー!』 みたいなことをおっしゃった。


 めっちゃ言い訳に感じる。あの人、めっちゃ綺麗な声でめっちゃ言い訳してる。

 絶対ヘンリーめんどくさくなって来なかっただけでしょ。それ以外ないでしょ。

 けれども、周りにいた群衆たちはそれで納得したみたいで、祝福ムードに包まれた。やんややんやと改めて大きな声援が聞こえる。


 解せない。

 私は王都の人たちの祝福の言葉を背に、カイン様にエスコートされながら王宮の中へと入ったのだった。





改めて、先日転生少女の履歴書1巻~6巻が電子書籍化いたしました!(宣伝

気になったその時に、すぐに小説が読めるなんて!

便利な世の中になりましたね(しみじみ


書籍版は、web版と比べてとっても加筆しております。

オリキャラにオリジナルストーリーに、他者視点が多めな感じでとりあえず頑張って加筆してます!

あと、アランがwebと比べて少しイケメンな気がしてます!

これから始まるweb版5部に向けて、ぜひ読み直しなどに活用していただけると、嬉しいです!


いつも転生少女の履歴書を応援してくださって、本当にありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします!


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