起章:アランからの手紙 ーリッツ視点ー
お久しぶりです!
お待たせしました!恋愛タグが火を噴く(はずの)第5部です!
週に一回ぐらいの更新予定で再開します。
そして転生少女の履歴書が電子化されました!ありがとうございます!
今回の話はリッツ閣下視点です!
そして、しょっぱなギャグ回なので、飛ばして読んでも今後に影響は全くありません!
週一更新予定で、話が全く進まないのもあれなので、すぐに次の話を更新する予定です。
今後ともよろしくお願いします!
学園を卒業し、自領に戻ってきて数か月。
新しい生活にも慣れて来た今日この頃だった今朝に、アランから衝撃的な知らせが書かれた手紙をもらった。
リョウ嬢とヘンリー殿下の婚約についての知らせだ。
まさか、あのリョウ嬢が、ヘンリー殿下と婚約するなんて……。
この国で最も力のある魔法使いのヘンリー殿下の婚約者が、魔術師の家系ではないはずのリョウ嬢。
普通ならあり得ないことだけど……。
在学中に接してきたリョウ嬢のことを思うと、やっぱり、という気もしなくもない。
リョウ嬢は、なんていうか、そういうあり得ないとみんなが思うことを、やってのけてしまうところがある。
それにしても……。
僕はアランからもらった手紙に目を落とす。
『どうしようリッツ。とっても寒いんだ。柔らかな布をミノムシのように着込んでみたけど、心が寒い……。きっと俺の心は、太陽を見失った凍りついたミノムシ。溶けることのない氷に覆われたミノムシなんだ。それでも、前に進もうとすると、ガリガリ削られていくようで……そのうちシャーベットになってしまうかもしれないな。その時は、食べてくれないか? はは、なんてね……』
という手紙の冒頭を見て頭が痛くなった。
アランがかなりやばいことになってる。
なんか失恋の痛みで詩人みたいになっている上に、壊滅的に詩のセンスがない。
僕はミノムシのシャーベットなんて、食べたくないよ、アラン……。
アランの手紙の話によると、王都の人々はヘンリー殿下とリョウ嬢の婚約に大いに盛り上がっているらしい。
約束された勝利の女神が王族側についた、ということだもんね。
グエンナーシス領のこともあって、すこし不安定な情勢の中、彼女と王族の婚約は大きな意味があるように思う。
リョウ嬢の婚約は政略結婚的なもので、学生の時から恋愛には疎いけれど意外と恋に夢を見ていた様子の彼女のことだから、今回の婚約は辛かったんじゃないかな……。
ヘンリー殿下のことも、リョウ嬢は何故か少し苦手にしてる様子だったし。
そして、リョウ嬢だけじゃなくて、アランも相当辛い思いをしてる、だろうな……。
「これは、王都に戻った方がいい、のかな……」
そう一人つぶやいて、今後のことを考える。
学園を卒業して、魔法使いとして領地に仕えて仕事も覚え始めたばかり。
シャルのことや学園で出会った友人たちのことを思い出してものすごく寂しくなることもあったけれど、それも少しだけ落ち着いてきたところだ。
僕は迷いながら、再び、アランの手紙に目を落とす。
『心に大きな穴があいたみたいなんだ。ドーナツのように。俺の中のどろどろした感情が、穴の空いた俺の心を揚げていく……。最後に、リョウへの想いを砂糖のように振りかけたらドーナツの完成さ。はは、そんな僕の想いが詰まったドーナツ、食べてくれるかい? なんてね……』
目に入ってしまったアランの手紙の内容に、思わず眉間に指を当てて、目を閉じた。
もう見ていられない。
あと悪いけれど、そんな怨念が染み込んでいそうなドーナツは絶対に食べたくない。絶対に、だ。
それにしてもさっきから何故僕に食べさせようとするんだ……。
ミノムシシャーベットも怨念入りのドーナツも食べたくない。やめてほしい。
アランは、もうほとんど限界だ。
何とも言えない残念な気分だけど、とりあえず早く王都に戻らないとアランがやばいことになるのは、よくわかった。
すでにやばいのにこれ以上やばくなったら、ヤバイなんて言葉では納まらないかもしれない。
「戻ろう。王都に」
僕は思わず口に出してそう決心した。
まずは、王都に向かう許可をもらわないと。
色々面倒な手続きもあるし、王都での暮らしもどうするか考えなくてはいけないけれど、迷いはなかった。
僕の友人がこれ以上やばいことになるのは、どうにかしてとめなくてはいけない。