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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第一部 転生少女の幼少期

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小間使い編⑪-奥様付の小間使い 後編-

「まあ、リョウ、これが疲れをとる農民の技なの? とっても気持ちが良いわね」


 現在私は、疲れを取るいい方法がありやすと声をかけて、湯船に浸かっているアイリーンさんにアイマッサージ中。


「こちらはマッサージといいます。手で揉んで血行をよくし、コリをほぐして疲れをとる手技でございます。奥様が魔法を使われるとき、目が恐、ゲフン、失礼、目を酷使しているようすでしたので、目がお疲れではないかと思いまして、恐れながら失礼させていただいてます。ご不快ではございませんか?」


「いいえ、とても気持ちがいいわ。このまま続けて頂戴」


 アイリーンさんの許可もいただいたので、そのままヘッドマッサージまで行って本日の湯浴みを終わらせた。


 ステラさんと一緒に布でアイリーンさんの体を拭き拭き。私はまだチビなので下半身担当です。それにしても、子どもを二人も生んだ体とは思えない。


 それに、裸を見られてあまつさえ布で拭かれても、動じないアイリーンさん、さすがっす。複合型工場だと思っちゃいましたけれども、かしずかれるのが当然と言う風に振舞うアイリーンさんは、ちゃんとお貴族様だったんですね。


 最後にネグリジェのようなふわっとした服を着させると、今まで無言だったアイリーンさんが、


「明日もリョウが私の手伝いをなさい」


 といって、颯爽と自らの寝室へ歩き出した。

 私が返事をする前にステラさんが、かしこまりましたと答え、アイリーンさんについていく。


 私も慌ててついていこうとしたが、ステラさんから明日も早いのでもう休みなさいと言われたので、去っていく二人にお辞儀をして見送った。


*


 それから数日奥様の仕事をお手伝いしながら見させてもらったけれども、仕事内容は一日目とほとんど変わらなかった。ただ、生産するものが少し変わるぐらいだ。毎日、複合型工場として立派にさまざまなものを生産していた。


 主に時間がとられるのは綿からの糸作りだった。どんなに急いでも、出てくるものが小さい糸なので、建物を建てるように豪快に行なうことが困難だからだと思う。


 アイリーンさんに随行して3日目ぐらいに、初めて別の魔法使いと遭遇した。無精ひげが生えたくたびれたおっさんだった。やつれていて、隈とか、肌荒れとか、顔色とかがすこぶる悪かった。


 彼は、主に作物を育てる魔法使いのようだった。ステラさんから、精霊使いのほうが作物を育てるのが得意なので、そっち方面は精霊使いに任せているという話をきいた。


 奥様は魔法使いの魔術師に当たるらしい。そういえば昔ガリガリ村に来た魔法使いも二人いて、それぞれ精霊使いと魔術師というふうに名乗っていた。得意分野が違うということなのかな。



 精霊使いのくたびれたおっさんは、千歯こきのおかげで、農民の畑を耕すスピードが速くなり、てんてこ舞いであること、それに最近土に宿る精霊が少なくなってきていて、思うように成長しないことなどを奥様と話していた。


 その話に耳を傾けた奥様は、しかしやるしかありません、やるかやらないかしかないのです、とどこかのブラック企業の社訓みたいなことを言って一蹴していた。

 くたびれた精霊使いの顔によりいっそう死相が刻まれた。



 アイリーンさんの小間使いになってから1週間ほど過ぎたころ、いつもと同じように湯浴み中にマッサージをしていたら、いつものように「明日もリョウが私の手伝いをなさい」といわれた。

 いつものようにステラさんが、かしこまりましたと答えるのかと思ったが、すこし躊躇している。


「恐れながら奥様。実は、リョウを奥様の手伝いに来させてから、またアラン様が荒れてしまいました。他の使用人たちも困っておりまして・・・・・・。カイン様が言うには、リョウがいれば大人しくなるとのことなのですが・・・・・・いかがいたしましょう」


 アランよ、親分が近くにいないからと羽を伸ばしまくっているな。親分は恥ずかしいよ。後で再度教育せねばなるまい。

 

「そう、アランが。・・・・・・わかりました。明日はいままでどおり息子達の小間使いにもどりなさい。ただ夜は私にまっさーじというものをすること。それは譲れないわ」


「かしこまりました」

 私とステラさんは声をそろえて、お辞儀をした。


 奥様付の小間使いのお役目も本日で終了。ハードだった。

 私が奥様付になる前の小間使いさんは倒れたと聞いてたけども、現在復活しているらしい。過労だったみたい・・・・・・ブラック企業って怖い。


 私は子どもと言うこともあって、体力的に大変そうなことはステラさんが手を貸してくれていた。それでも疲れた。ステラさんもかなりのスーパーウーマンだ。さすがっす。


 ステラさんに手伝ってもらいながらとはいえ、疲れていたし、やりたいこともあったので、アランのクソガキ振りに助けられたかも。奥様付小間使いは、忙しい奥様に付き従うので、やりたいことをやる時間がない。


 しかし、私がいないからと、えらそうに振舞うアランはいただけない。親分としてきちんと指導せねばなるまい。うむ、明日からきちんとこきつかってあげよう。そうしよう。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] んー、農民が千歯扱きで暇になってるならその分、製糸産業に力を入れればいいんだけど意識改革が難しそう
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