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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第四部 転生少女の独立期

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国策制定編⑤ 赤く染められたタンポポ 中編

昨日に引き続き、本日も更新します!

ほら、前回の引きだと、先の展開を心配される方が多くいらっしゃるかなと思って、準備していたのです!


ただ、感想欄を見る限り、杞憂だったようで……w

でも準備してたので、更新します!笑


いつも最新話から読んでる方は、ご注意ください!



 人の行き交う王都の道を馬で全力疾走する。


 周りが私の乱暴な乗馬ぶりに慌てふためいているけれどごめん、かまっていられない!

 急がないと手遅れになる!


 多分、この騒動、引き金を引いたのはバッシュさん、いや、親分なんじゃないか……?


 グエンナーシス領のことが落ち着いて、国も対処に動いてくれて、親分もこれで落ち着くだろうと思って、なぜか動きの見えない親分に恐れながらも、私はごまかそうとしていた。


 親分だけの力じゃ何もできないと思っていた。


 たとえ、親分が神殺しの剣を作ろうとも、国の制度に不満を募らせた人を集めて騎士団を作ろうとも!!


 それでも、それだけで、親分がどう思っていようが、国と戦争を起こすことなんて、親分の力だけじゃできないと、思っていた。


 まさか、こんな手で……こんな手を使うなんて……!


 このウヨーリ教の暴動がうまくいけば、親分の王国に対する戦争は、グエンナーシスとルビーフォルンを巻き込んだ大きな戦争になってしまう!


 私がぐるぐると嫌な未来を想像しながら馬を必死に走らせて、やっと王城の城門が見えてきた。


 遠目でもわかるほどの人だかり。


 そして声。


 ウヨーリ教徒が城門に詰め掛けて、何やら叫んでいる。


「あのお方の教えは神聖な教え! それを侮辱することはゆるしません! 慈悲深きあの方の血の涙をみよ!」

 というウヨーリ教徒の声が聞こえてきた。


 門番の人が二人いて、彼らの剣幕にうろたえているようだけど、見た感じまだ手は出してない。


 どうやらあいつらウヨーリ教徒達は来たばかりのようだ。


 本当は、彼らが城門に着く前に止めたかったけれど、夜が明けたばかりの時間帯だったのが幸いして、ウヨーリ教徒以外の人達はあまりいない。


 まだ間に合う!

 

 私は、城門前の兵士と人々の群れの間を遮るように馬に乗ったまま割り込んだ。

 そして、馬から飛び降りると、両手を広げた。


「みなさん、落ち着いてください! こんなことをしないで!」


 ウヨーリ教徒の人達の前でそう言うと、一斉に視線がこちらに向いた。


 みんな私の顔を知っている。


 私が、領主の養女でルビーフォルン商会の会長だと知っている人が目を見開いた後、すぐに不満そうに目を眇めた。


「リョウ様のご意見でも聞き届けられません! 我らが尊いあの方が貶められようとしているのです! 黙っていようことなどできません!」


「別に貶められようとしてません! それこそがあの方の意思です!!」


「いいえ! あのお方はそのようなことお認めになっていない! 現に、我々に宣託をくださった!」


 そう高らかに声をあげた一人が、懐から布に包まれた何かを取り出し、そしてその布をとった。


 そしてそこには赤黒い液体にまみれたタンポポの花があった。


「あのお方はお怒りなのです! 血に染まったタンポポの花を、我々の前に……!」


 と言って悔しそうに顔を歪めて、その男の人は泣いた。


 だから、この人たちは一体何を言ってるんだ!

 なんで血に染まったタンポポが宣託なんかになる!


 だいたい、ウヨーリなんてものはいないんだから、というか、それは私で……私はそんな宣託した覚えもないし。


 いや、彼らのぶっ飛んだ思考に驚いてる場合じゃない。


 おそらくこの中に、そのぶっ飛んだ発想に結びつけたバカがいる。


 基本的には、善良なルビーフォルンの人を、血に染まったタンポポとかいうよくわからないもので唆して、こうやって暴れさせようとしている人が……ここにいるはず。


 私が、この群れの中での人達一人一人に視線を向けた。

 知らない顔もいれば知っている顔もいるし、下を向いていたり、フードや帽子で顔が見えない人もいる。


 私が、ここまで誘導してきた人が誰かを見極めようとしていると、前列にいる人が、一歩前に出て、口を開けた。


「貴方は所詮は、貴族側の人間! 領主の娘として、ぬくぬくと暮らしてきたものには我らの気持ちなどわからないのです! どれだけあの方が我らに尽くしてくださったか、どれだけ我々の命を救ってくださったか! 魔法使いに絶望し、国に絶望し、誰も頼れるものがいなくなった我らに救いの手をさしのべてくれたのは、あのお方だけ! あのお方の神聖なるお力のおかげです」


 その言葉に、頭に血が上った。


 だって、言ってること、全然、間違っている!


「違いますよ! そんなよくわからない神聖な力があなたがたを救ったんじゃない! 皆さんの日々の努力です!」


 ルビーフォルンが、ここまで力をつけたのは、領民のみんなが、健やかに過ごせたのは、ウヨーリとかいうよくわからないものじゃなくて、ただただ堅実に誠実に生きてきたみんなの力じゃないか!


 私は、ただ、その方法を、やり方を、伝えただけで……!


「ウヨーリ様を冒涜する気ですか! さては、やはり、この教えを侮辱する行為は、貴方がやったと思って良いのですね!? 前々から、リョウ様はあのお方を信じる気持ちが足りていないのでは思っておりましたが! まさかここまでとは!!」


 といって、一部のルビーフォルンの人が嘆くように天を仰いだ。


「冒涜も何も……! だから……! 私が……!」


 私が、ウヨーリなんだ! という言葉が口からでかかった。


 もし、このまま私がウヨーリの正体だと訴えて、真に受けてくれる人がいるだろうか。


 敵意にも似た眼差しが私を見ている。


 いない。

 私の言葉を信じてくれる人は、ここにはいないんだ……。


 自分があまりにも無力で、呆然とした。


 どうして、こんなことになったのだろう……。


 みんなが奇跡と言っているのは、私が広めた農法で、他のちょっとした生活の知恵だって、領地の助けになればと、あわよくば荒ぶる親分を止めることができたらって、そう思っただけ。


 そう思った、だけだったのに。





「愚か者めがぁああああああああああ!!」


 唐突に、ここに集まった誰よりも怒気を含んだ大きな声が鳴り響いた。


 あまりの声量に、その声の迫力に、誰もが動きを止めて、その声がした方へと視線を移す。



「ああ、嘆かわしい! 嘆かわしいですぞ! こうも愚かな者どもが、我が物顔で尊いお方を語り始めようとは!!!」


 さらに怒りや嘆きを含んだ声でそう声を発した人物の頭が、朝日の光を浴びてキラリと光った。



「よ、よかった。リョウ殿、間に合ったで、あります……!」


 そう、キラリと頭上きらめく人物を馬に乗せて駆けつけてくれたらしいアズールさんが泣きそうな声でそう言って、私はようやく状況を飲み込めた。



「タ、タゴサク先生!?」


 デモってきた人たちから、戸惑いの言葉が上がる。

 そう、いきなり大声でこの場に現れたのは、タゴサクさんだった。





皆様、タゴサクのことを覚えてくださっていて、ありがとうございました!笑

感想欄をのぞいて、嬉しく思いましたw

いつもありがとうございます!


※それと、転生少女の履歴書とは関係ないですが、他の連載中の作品(魔王軍四天王の最弱令嬢は自由に生きたい!)が本日完結しました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさか、まさか!?タゴサクが活躍するだと!?!?
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