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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第四部 転生少女の独立期
212/304

グエンナーシス卿の決意 前編

……お久しぶりです!

まずは、挨拶を一通り!

あけましておめでとうございます!

鬼は外!福は内!

ハッピーバレンタイン!

お待たせしました!今年度初のお話の更新、です!



久しぶりなので、念のため、あらすじも載せておきます!

あと、レビューが増えててびっくりです!ありがとうございます!

嬉しい!

それでは今年もよろしくおねがいします!


あらすじ

タゴサク(ヤバイ)が広めたウヨーリ教国教化計画を進めているリョウ(主人公)。

そんな中、友人のサロメ(美少女戦士)から、グエンナーシス領が王国と戦争をするつもりかもしれないと聞く。

そして、グエンナーシス領出身の友人であるカテリーナ嬢(縦ロール)が、国の力の象徴ともいえる『救世の魔典』を奪う(?)ため図書館へ特攻しようとしていたので、仲間(強い)たちで止めて、カテリーナ(縦ロール)の真意を確かめところで、図書館大爆発。

現場に赴くと、なんと王族であるヘンリー(ゲスリー)が救世の魔典を燃やしていて……。


以上です!

それでは、続きをどうぞ!






 ヘンリー殿下が、魔典を燃やした大事件から、数日が過ぎた。

 そして救世の魔典炎上事件は、瞬く間に王都中に広まった。


 なにせ犯人は王族であるヘンリー殿下だ。

 こともことだし、結構目立つ爆発なんかもしてるのだから、噂にならない方がおかしい。

 

 ヘンリー殿下は、しばらく謹慎処分をくらって、しかるべき話し合いの後に彼が犯したことに見合った罰を申し伝えられるらしいけれど、どういった処分が妥当なのか計り兼ねているらしく、いつその罰が決まるのかは定かじゃない。


 前例のないことで、王城側はかなり対応に困っているようだった。

 なにせ、我が王国が誇るヘンリー殿下がなさったしね……。

 

 あの事件が起こった直後は、それはもう王都では、ヘンリー殿下の暴挙に騒然としていたようにも見えたけれども、意外にもすぐにその混乱は沈静化した。

 もともとあの事件で過剰に反応する人は、魔法使いぐらいしかいなかったからだ。

 なにせ平民にとっては救世の魔典て何? という具合で知らない人すらいるんだから。


 王都は、王国の中心で、確かに他の領地と比べたら、魔法使いの人口密度は高い方ではあるけれども、それでも人数は少ない。

 その数少ない魔法使いは、最初こそ戸惑いを見せたけれど、そのうちそれを受け入れた様子で、あの事件から数日経過した今となっては、もう王都は落ち着いてしまった。


 ちなみに私は、あの後アルベールさんに連れられてお城で事情聴取され、解放されたと思ったところで、校長であるトーマス教頭にも無断深夜外泊でお叱りを受け、寮でしばらく謹慎処分を食らった。というか、あの場にいた皆が謹慎処分を受けた。

 コウお母さんにもこってりと絞られた。


 そして、あの時、ヘンリーのあの暴挙を目の当たりにした私達の中で、一番取り乱していたように見えたカテリーナ嬢も、女子寮に謹慎処分を受けるあたりでは、もう落ち着きを取り戻していた。

 

 謹慎処分を言い渡された時、カテリーナ嬢は『私のせいで、皆さんまで……』なんて、殊勝なこともおっしゃっていた。しかしよく考えて欲しい、悪いのはゲスリーである。

 でも、救世の魔典が燃えた今、カテリーナ嬢が変な暴挙をしなくても済んだのは確かで、カテリーナ嬢の顔は、どこかほっとしているようにも見えた。

 

 それにしても、色々王都の情報とかはアズールさんが届けてくれたけれど、慰労会中だというのに商会の仕事もできないし、もう色々、辛かった……。

 けれど、謹慎処分も昨日で終わり!


 私は謹慎明けの翌日朝早くに、商会へと足を運んで、ジョシュアさんやメリスさんに挨拶をしてから、私が不在時のことを聞いて、整理。

 慰労会開催中ということもあり、謹慎中は商会のことが気になって仕方なかった。


 しかし、思いのほかに私がいなくてもうまく商会が回っていた。仕事が溜まってるかなと思ったけれど、あっさりとやれることが終わる。


 午後までに終わればと思って早めに来たけれど、もっとゆっくりでも良かったかも。

 時間も空いたし、午後の一大イベントに備えて、念入りに準備をしようかな。

 

 なにせ、今日の午後は、学園の卒業式。

 最高学年である私は、今日で学園を卒業することになる。

 卒業式前日まで、謹慎処分を言い渡された生徒がいまだかつていただろうか……。


 それにしても卒業か……。

 なんだかあんまり実感がわかないな。


 救世の魔典のこともそうだけど、慰労会のこともあって色々と忙しかったから、感傷に耽る時間すらあまりなかった。私は商会のこともあるし、しばらく王都に残ると決めているけれど、大体の生徒は自分の領地に戻る。

 カテリーナ嬢達は、どうするのだろう。やはり、領地に帰るのだろうか。

 アレク親分のいるグエンナーシス領に……。


 グエンナーシス領の動きは、どうなっただろう。

 

 けれど、ゲスリーが燃やしたから少なくとも魔典はもうない。

 魔典さえあれば、他の領主が手を貸してくれるというのなら、グエンナーシス卿にも勝機があった。しかし、それが燃えてしまった今となってはそれもできない。

 しばらくは様子見をするのか、それとも、魔典なしでも王位を簒奪するつもりなのか、王位は諦め独立を主張するか……。

 魔典が王族の手によって燃え上がった今、それを理由に独立を宣言するのは有りのようにも思える。

 でも、そうすれば、王国対グエンナーシス領との全面戦争だ。


 だけどグエンナーシス領だけでは、戦争には勝てない。規模が違いすぎる。


 せめて、1つ2つでも他の領地が力を貸せば、結果は分からないかもしれないけれど。

 一発逆転で、手にするだけで他の領主の方の力を借りられる可能性があった救世の魔典がない今、他の領地の人が、グエンナーシスに手を貸す理由がないような気がする。


 何より、戦争をするってなったら、まずは近隣の領地を味方に入れるべきだと思うけれど、グエンナーシス領が接している領地は、ルビーフォルン領のみ。


 今のルビーフォルン領には、王国にわざわざ歯向かう理由が無い。

 魔法使いのほとんどいないルビーフォルンにとって、救世の魔典が燃えたからといって、何か王国に対して思うわけでもないし、先の災害でもルビーフォルンはそれほど大きな被害はなく、今は安定している。

 その安定をわざわざ捨てて、グエンナーシス領に手を貸すとは思えない。


 ただ、バッシュさんは、もしかしたらグエンナーシスで活動しているという親分とつながっているかもしれないというのが、怖いけれど……。


 でも、今のルビーフォルンは、バッシュさんの独断だけで、そんな大きな事柄を決められないと思う。

ルビーフォルン領は、ウヨーリ教徒が溢れかえっている。


 彼らは、なんというかアクが強い。

 領主であるバッシュさんが、グエンナーシス側につく!と言っても、領民はほいほいついていかない可能性がある。

 なんといっても、ウヨーリ様のために、領主邸に一度デモってる経験がおありですからね。


 安定した暮らしをわざわざ放り出して、王国と戦争するなんてバッシュさんが宣言したら、多分またデモってくるし、バッシュさんならそのことを分かってる。

 ルビーフォルンは、グエンナーシス側につかない。


 だから、グエンナーシスは孤立無援の状態だ。


 ……救世の魔典が燃えてしまった以上、グエンナーシス卿にはもうここで諦めてもらいたい。


 そして、親分も。


 けど、親分は、一体どういうつもりでいるのだろう。

 あまりにも親分の動きが読めないというか……親分の尻尾がつかめないでいるのが怖い。


 それに、ヘンリーの意図が正直よくわからないのも気になる。

 どうして、魔典を燃やしたのだろう。

 まさか、グエンナーシス卿の動きを察して、『奪われるぐらいなら、壊す!!』みたいな気持ちだったのかな……。


 そう思いながらも、1つの可能性が頭の中でちらつく。ヘンリー殿下が魔典を燃やす理由をあげるとしたら……。


 誰の目にも触れないように厳重に保管している私特製の呪文書が脳裏に浮かんだ。

 その呪文書には、生物魔法が書かれている。


 そして、多分、救世の魔典が燃えてなくなった今、この世界に生物魔法の呪文が書かれている書物は、もしかしたら、私の手元にあるそれだけになったのかもしれない……。


 私がルビーフォルンの商会の執務室で、あの時のことを思い出していると、アズールさんが入ってきて、グエンナーシス様方が私に会いにきているという知らせを受けた。


 え? グエンナーシス様方? 


「カテリーナ様がいらしたんですか?」


 まさか一緒に卒業式行こうぜってわざわざ誘いに来てくれたのかな。

 まだ卒業式まで、時間があるけれど……。


「はい、カテリーナ様と、それに、グエンナーシス領の伯爵様もいらっしゃってます」


 へー、グエンナーシス卿も……。

 ん?


「グエンナーシス伯爵がいらっしゃってるんですか!?」


「そ、そうであります!」

 

 まじか!

 え、なんで!

 まさか、もしかして、うちの娘を夜中に連れ出すとは! みたいなお叱りを!?


 と、とりあえず


「北東の一番綺麗な客間、今日空いてますよね!? そちらにご案内してください! 支度していきます」


 何で来たのかはわからないけれど、いかねば。


--------------


「お久しぶりでございます」

 とりあえずいつもの淑女の笑顔を作って挨拶すると、グエンナーシス卿は、うむという感じで頷いた。

 とりあえずうちの娘を夜中に連れ出してとか言われて怒る気配はない。


 ていうか大体私がカテリーナ嬢は連れ出してないからね。カテリーナ嬢が勝手に抜け出したしね。

 それにしても、グエンナーシス卿は相変わらずどこか迫力のあるお方である。


 隣には少し戸惑っているようなカテリーナ嬢がいた。

 私と目があうと、申し訳なさそうに口を開く。


「突然、ごめんなさい。謹慎が明けたと思ったら、お父様が、いきなり学園寮にいらっしゃって……そのままここにきたのよ」

 恨めしそうにそういったカテリーナ嬢がちらりとグエンナーシス卿に視線を移す。


 どうやらカテリーナ嬢自身も本日の突然の訪問を意図を知らないようだ。


 当のグエンナーシス卿は、すんとした顔でいらっしゃった。

 顔からは、何を考えているのかまったく読めん。


「そうなのですか。グエンナーシス卿、本日は、どのような御用向きでしょう?」

 私がそう問いかけると、グエンナーシス卿は私の部屋の様子を見た後に、口を開いた


「ここは、立派な屋敷であるな。商会を立ち上げ、自らの力で財をなし、ここまで大きくしたのか?」


「え、あ、はい。こちらの屋敷はもともと小さな宿だったのを増築した形でございますが」


「そなたは、このルビーフォルン商会の長として忙しい毎日を送っていると聞いた。人手は足りているか?」

 ん? 人手……?

 なんだろう、先ほどから、グエンナーシス卿の質問の意図がよくわからない……。


 けれどここで尋ねられた質問に無視できる権利も度胸もないので、私は恐る恐る口を開いた。


「そうですね、人手は……正直なところを申し上げますと、足りてはおりません」

 戸惑いながらもそう答えると、グエンナーシス卿は幾分かほっとしたように頷いた。


「そうか。なら良かった。1つ頼みたいことがあって今日はこちらに足を運んだのだ」


「頼みたいこと、ですか?」


 お、どうやらこれから、本題に入るらしい。


「ルビーフォルン商会に、我が娘カテリーナを置いてほしい」

 んん!?


 グエンナーシス卿の突然の申し入れに、カテリーナ嬢も「えっ!?」と戸惑いの声を上げた。


「お、恐れながら、グエンナーシス卿、それはどういう意味でしょうか?」

 私が、そう尋ねると、グエンナーシス卿は私の目を見ながら、頷いた。


「そのままの意味だ。学園を卒業したら、このルビーフォルン商会に我が娘カテリーナを置いてほしい。つまり、雇い入れて、席を設けてほしいのだ。ルビーフォルン商会所属の魔法使いにしてもらいたい」


 商会所属の魔法使いにカテリーナ嬢を!?


「お父様、何をおっしゃるの!?」

 カテリーナ嬢が再び驚きの声を上げる。


 声こそ上げなかったものの、私も内心は超驚いている!


 確かに、大きな商会には専属の魔法使いがいる場合もある。

 そのような魔法使いを商会所属の魔法使いと呼ばれていて、私の場合は、ルビーフォルン領の協力があったから、酒作りといった魔法が必要な作業も、基本的に領地所属の魔法使いだったし、アランやシャルちゃんの力を臨時で借りたりできたので、ルビーフォルン商会所属として魔法使いを雇ったことはない。


 でも、いると便利だろうなとは思っていたし、探してはいた。

 でも魔法使い不足の著しい昨今なかなかいい人には巡り会えず、卒業生の中から誰か見繕うかなとかちょっぴり考えてはいたけれど……!


 でも、それをカテリーナ嬢にお願いするつもりは毛頭なかった!

 だって、カテリーナ嬢は次期伯爵だ!


「そ、それは、私は、願っても無いことですけれど、しかしカテリーナ様は、いずれグエンナーシスを背負うお立場の魔法使い様でいらっしゃいます。それを我が商会に雇い入れるというのは、如何なものかと。一時期だとしても商会所属の魔法使いであったと領民が知れば、あまりいい気持ちはしないと思います」


 そう、魔法使いの中でも、商会所属の魔法使いというのは、あまり良い職ではないと言われることが多い。

 商会所属の魔法使いというのは、基本的に領地にあまり必要とされずに王都に返された魔法使いや、あとはまあ、物好きとか、そういう人しかいない。


 つまりアランやカテリーナのように将来重要な立場が約束されている人にとって、商会所属の魔法使いという経歴はどちらかと言えば汚点になる。


 カテリーナは大切な友人だ。

 確かに、商会に所属してもらえれば嬉しいけれど、彼女の将来の汚点になるようなことはさせたくない。

 ていうか、グエンナーシス卿だってそのことはわかるはずだよね!?


 私が、信じられない気持ちでグエンナーシス卿を見るけれど、彼は眉ひとつ動かさずに頷いた。


「案ずるな。カテリーナにグエンナーシスの伯爵位を継がせる予定はない」


 ええ!?


「お、お父様どういう意味ですの!?」


 爵位を継がせるつもりはないって、どういう!?

 いやだって、確か、カテリーナ嬢以外に魔法使いの子供いないですよね!?

 養子!? 養子でもとる気!?


 ああ、もしかしてこの前勝手に夜中抜け出したカテリーナ嬢への罰!?

 勘当ってこと!?

 罰重くない!? ねえ、罰重くない!?

 あ、もしや、カテリーナ嬢がやろうとしていた本当の意味に気づいてそれで!?


 私が、驚きで固まっていると、グエンナーシス卿はそのまま話しを続けた。


「正確にいえば、継がせられないというのが正しいだろうか。私は、これから王に拝謁し、王から賜った爵位と領地をお返しするつもりだ」


 ……え?



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