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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第四部 転生少女の独立期

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慰労会編⑧ 大晩餐会にて2

 なんか、雰囲気的に結婚相手を決めるのは自分じゃないとかいう風潮がお貴族様の中では漂ってたから流されそうになったけれど、別に私そんな風潮に合わせなくてもいいんじゃないか?

 いやだって、私既に爵位とったし……。

 というか、バッシュさんは、私が学園卒業したら、どうするつもりなんだろう?

 今のところ、バッシュさんから聞かされた婚約話は、魔法使いのリュウキさん?

 でも、多分あれは、アイリーン様の追求から私を守るための嘘だと思うし。

 なにせリュウキさんはバッシュさんの一人娘であるガラテアさんの婚約者だもの。


 私が将来設計について改めて考えていると、隣でアランとアイリーン様とのレインフォレスト親子の言い合いがヒートアップし始めた。


「アラン、いい加減いい人を決めなさい。魔法爵家のエメルダさんのところの娘さんなんて、どう? 姿絵も来ていたけれど、すごく可愛らしかったわよ」

「だから、興味ないって何度も言ってます!」

「だめよ、もうそろそろ真面目に考えないと! アランも来年で成人でしょう? それに私の次に伯爵家を継ぐのよ。世継ぎのことだってあるし、こういうのは早めがいいわ! まったく、私たちの一族の中でも近年まれに見る魔法の使い手だって言われているのよ。もうそろそろ自覚をもってもらわないと!」


 そう、ものすごい勢いで話すアイリーン様の剣幕に思わずびっくりしていると、その怒れるアイリーン様の近くにとある人影が現れた。


「母上、どうされたんですか? 母上の声が会場に響いておりますよ」

 そうヒートアップするアイリーン様をなだめるように涼やかな声をかける人影こそ、騎士爵を取得し、フォロリスト界においても他の追随を許さぬ勢いのカイン様である。


 そんなさすがのカイン様が、アイリーン様の夫であるカーディンさんと一緒にやってきてくれた。

 カイン様にいさめられたアイリーン様は、「あら」と言って周りの目を確認して、息を一つ落とした。


「やだわ、熱くなってしまったわね」

 と言って、恥ずかしそうに口をつぐむ。

 そんな可愛いらしいアイリーン様の肩を慣れた様子で、カーディンさんが抱く。


「愛しい私のアイリーン。恥ずかしそうにする君は、本当に少女のように愛らしいね。しかし、愚かな私はこれ以上、他の男にそんな可愛らしい君の姿を見せるのは、耐えられそうにない。テラスで少し涼まないかい? 君の愛らしい薔薇色の頬が落ち着くまで、私に君を独り占めにする栄誉をいただけないだろうか。今宵は月がとても綺麗なんだ」

 カーディンさんが、まるで天気の話でもするかのようにさらりとポエムを刻んで、テラスへ一緒に行こうと誘ってきた。


 多分興奮したアイリーン様に外の空気を吸って落ち着こう? と言いたいのだろうけれども、言い回しが大変にポエミーである。


 突然のポエムに私は真顔で成り行きを見守っていると、アイリーン様が、「もう、カーディンったら。でも、そうね、少し外で涼んでこようかしら」と言って、うっとりとカーディンさんを見上げた。


 アイリーン様は、ポエムが好きなんだね。


「アラン、お願いだからちゃんと次期当主として自覚を持ってね」

 と言ったアイリーン様が、そのままテラスの方へとカーディンさんを伴って去っていった。


 仲がよろしくて何よりだけども、息子達の前で、ポエムを平気で言えちゃうところが本当にすごい。

 改めてそんなポエミー夫婦の息子たちを見てみると、カイン様がアランに素敵貴公子の微笑みを浮かべていた。


「アラン、母上のことは大目にみてあげてほしい。母上は親が決めた縁談で、父上と出会って愛し合うことができたから、アランにもそういう人を自分が用意しないとと思って、気負っていらっしゃるんだよ」


 カイン様がそう、アランに優しく話しかけると、アランは大人しく頷く。


「わかってます。でも……俺は……」

 と言ってなんだか思いつめたような顔をしたアランがなんだか痛々しかったので、ポンとその肩に手を置いた。


「アラン、わかりますよ。まだ婚約とか結婚だなんて私達にはピンと来ませんよね。そういう話は早いっていうか、好きな人とかだって、良くわからないのに」

 私が優しくそうアランに声をかけると、アランは不満そうに眉を寄せた。


「いや、俺は、好きな人がよくわからないとか、そういう心配してるわけじゃない」

 え? じゃあ、どんな心配が?


 不思議に思ってまじまじとアランを見ていると、カイン様が、「えーっと」と歯切れの悪い声を発した。

「その、と、とりあえず、あ、二人とも飲み物のグラスが空だよ? 何か飲み物を取ってこようか。何が飲みたい?」

 と声をかけてくれた。


 あ、そういえば手に持っていた飲み物が空だ。

 私は、フルーツのしぼり汁ならなんでもいいかなー。


 と思ったところで、目の端に真っ赤なドレスを身にまとったカテリーナ嬢が目にとまった。


 そしてその隣には、バッハみたいな髪型をした男の人が!

 あれは間違いなくカテリーナ嬢のお父様。グエンナーシス卿でいらっしゃる!


「カイン様、ありがとうございます。飲み物は、大丈夫です。私、学友を見つけましたので、ちょっと挨拶しに行って参ります」


 そういって淑女の礼をとると、カイン様が「そう。それではまた」と言ってくれて、その場を去ろうとしたら、片腕を誰かに取られた。

 振り返るとアランだった。


「グエンナーシス卿のところにいくのか……?」

 と小声で私に話しかけた。


「はい。どういう方なのか、少し話をしてみたくて。カテリーナ様と一緒なら、さりげなく話しかけられますしね」

「なら、俺も行く」

「いいですけど……別に、何かやりあうとか、そういうのではないですからね?」

 穏便にね?

 という気持ちを込めてそう確認するとアランは「分かってる」と言って頷いた。


 そして、アランと私は一緒にカテリーナ嬢たちのいるところまで近づくと、カテリーナ嬢が私達に気づいてくれた。


 グエンナーシス卿が大人達と話している隣で、おとなしく淑女のようにしていたカテリーナ嬢が、私とアランを見つけて顔の表情を緩める。


「リョウさんに、アラン様、ごきげんよう」


「カテリーナ様、御機嫌よう。相変わらず大輪のバラのような素敵なドレスですね。でも、サロメさんがいなくて寂しそうですね」

「まあね。でも、今日はお父様がエスコートしてくださるから、それはそれで素敵よ」

 カテリーナ嬢が笑顔でそういうと、近くで他の貴族と話をしていたグエンナーシス卿が、こちらに顔を向けた。


「カテリーナの友人か?」

 バッハ髮の貫禄ある見た目のグエンナーシス卿が、無表情でそう尋ねてきた。


「ええ、紹介するわ、お父様。まず、こちらが、レインフォレスト伯爵家のご子息のアラン=レインフォレスト様」

 カテリーナ嬢がそういうと、アランは軽くお辞儀をした。


「ほお、君が。噂には聞いている。アルベールの孫か。王族にも匹敵するほどの大層な魔術の才能をもっていると聞いていたが、それがこのような美男子であったとは。確かに面ざしが若い頃のアルベールに似ている」

 先ほどまで無表情だったグエンナーシス卿が、そう言って、懐かしそうに目を細めた。


「祖父と知り合いなのですか?」

 少し驚きながらアランが訪ねると、グエンナーシス卿は頷いた。

「同じ時期、同じ学び舎で過ごした同志だ。そなたをみると、若かったあの頃を思い出すな」

 ということは、グエンナーシス卿って結構なお年?


 そういえばグエンナーシス領では領主の世代交代がしばらく行われていないような話だったかも。


「それでこちらが……」

 とカテリーナ嬢が私を紹介しようとしたところで、グエンナーシス卿は「知っている。約束された勝利の女神と呼ばれているリョウ=ルビーフォルン嬢であろう」と言って私に視線を向けた。


 なんだか鋭い視線に少しばかり驚きながらも、淑女の礼をとって挨拶をする。


「さすがに、彼女のことはご存知ね」

 とカテリーナ嬢が言うと、グエンナーシス卿は頷いた。

「もちろん、よく知っている」

 と言って、なんだか真面目な顔で私をみるもんだから、なんか緊張してきた。

 ていうかあのバッハみたいな髪型も相まって、迫力が……!


 緊張しながら、出方を待っていると、バッハスタイルのグエンナーシス卿が、微笑んだ。



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