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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第四部 転生少女の独立期

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慰労会編⑤ ミスコン&ミスターコン


最近、頻繁にひょっこり顔を出してくるゲスリーに精神的疲労を感じている方、朗報です!

今回は、ヘンリーサンはでてきません!ただのコメディ回です!




 学園勢による学園勢のためのパーティーが、学園の講堂で行われた。

 劇の打ち上げも兼ねた、ほぼほぼ生徒達だけで楽しむ内輪のパーティーだ。

 

 劇の打ち上げパーティーということで、もう学園関係者ではないけれども、一応演劇の役者として、はるばる暗闇からご足労頂いたゲスリー殿下も誘うべきではという話もありましたが、いえいえ殿下もお忙しいですから難しいんじゃないかしら? とか言って、誘わない流れになったので不参加です。

 まあ誘ったとしても、彼のことだから、こなさそうだけども。


 ともかく学園勢による演劇は大成功で、ヘンリー殿下不在でもいいから、慰労会中にまた公演してほしいという意見もチラホラきている。

 そんなアンコールまでされた劇の大成功ぶりを今夜は存分に祝い尽くす!


 授業で使う講堂が、現在は魔法の力でリニューアルして、華麗なパーティー会場と化していた。

 会場は、立食形式で、生徒達みんな和気あいあいの雰囲気。

 しかも、今日のパーティーは、校長であるトーマス先生の計らいで、サロメ嬢のように諸事情によって学園をやめた生徒達も参加している。


 そうつまり! 久方ぶりに懐かしいメンバー勢揃いなのだ!


 よく考えたら、みんなで力を合わせて乗り越えた魔物からの学園勢の防衛戦のあと、慌ただしくて、こうやって盛大にみんなでパーティーというか祝勝会のようなものをやってなかった。


 慰労会には、色々と良い機会をもらえてよかったかも。

 色々と思惑のあるイベントだけど、もうすぐ、学校を卒業する私達にとって、最後にたくさん良い思い出が作れそう。


 学年も魔法が使える使えないも関係なく、みんなで楽しそうに演劇のことや、1年以上前の王都の魔物襲撃事件のことを語って、お互いを称えあったりしている学園勢を見ながら感傷にふけっていると、隣にいたシャルちゃんがふふっと笑った。


「リョウ様、本当に楽しそうですね」

 そう話かけてくれた今日のシャルちゃんは、パーティー仕様の素敵な可愛らしいドレスを着ている。


「はい、なんだか、改めて、みんなすごいなって。魔物が学園を襲った時だって……もう何度もダメだって、めげそうになったし、国中で魔物の被害があるって聞いた時や、領地に帰って、現状を目の当たりにした時だって、くじけそうになった。みんなだって、きっとそうだったのにそれでも乗り越えて、こうやって無事を祝えた。私、本当にすごい人達と一緒に学校生活を送れたんだなと、改めて思ったら、なんだか気持ちがいっぱいで……」


 なんとも言えないこのいっぱいの気持ちをなんと表現すれば良いかわからない。

 嬉しさもあるし、卒業してみんなとさよならすることに寂しさもあるけれど、こんなにすごいみんなが、これから学園を出て外で活躍していくんだと思うと、誇らしくもあった。


 そんな私に、またシャルちゃんがふふふと笑う。

 シャルちゃんのあの鈴をころがすような笑い方可愛い。

 心の卒業アルバムにシャルちゃんの笑顔を収める。


「本当に、最初に学園に入学した時には、皆様とこんな風に打ち解けて、楽しい時間を過ごせるようになるとは思っていませんでした。皆様、本当に素晴らしい方々です。でも、そうさせたのは、きっとリョウ様です。私達は、リョウ様と学園生活がすごせて、本当に、幸運でした」


 そう言って、シャルちゃんが幸せそうに笑うものだから、思わず見惚れてしまった。

 シャルちゃんかわいい! これも心の卒業アルバムに収めねば!


 でも、幸運とかそんな! たまにシャルちゃんは、思わず赤面しそうなくらいの褒め言葉をサラッと吐くので油断できない。


 ちょっと照れながらも、「私もシャルちゃんと一緒にすごせて良かった」と返す。

 なんて言ってもシャルちゃんは私の女友達第1号だもの!


「まあ! ふふ、ありがとうございます。でも私はリョウ様が思っている以上に、リョウ様と過ごせて良かったって思ってますからね」

「いやいや、私の方が、良かったって思ってますよ」

「いいえ、絶対に私の気持ちの方が大きいです」

「いえいえ、気持ちの大きさで言えば断然私の方が……」

 なんていう、まるでバカップルが、言いそうなセリフを言い合っていると、会場が暗くなった。


 お、とうとうミスコン&ミスターコン開催の予感!

 私がコンテストの企画書を出したところ、忙しい私を気遣って別の学園祭実行委員の生徒が指揮してくれることになったのだ。

 

 だから、早々に私の手から離れたイベントなので、新鮮な気持ちでこのコンテストを楽しむことができる。

 コンテストには、どんな子達が出てくるんだろうと思って見守っていると、まずはミスターコンが先に始まるらしく、男の子達が続々ステージに上がっていく。


 観客の生徒達も、拍手や口笛を吹いたりしてなかなかにノリノリだ。

 みんなでワイワイな雰囲気で始まったコンテスト。

 ステージに上がった立候補者が、各々自分のアピールポイントを紹介してくれる。

 

 踊りとか、剣技とか、楽器の演奏、までは良かったけれど、火縄くぐりや、早食いとか、熱湯風呂にどれだけ我慢できるかとか……、なんか、あれはアピールポイントなのだろうか? と思うようなものも飛び出して、会場は笑いの渦に包まれていた。


 なんだか、私が想像していたコンテストとは違う感じだけど、これはこれで良いかもしれない。


 ていうか、みんな貴族、準貴族のお子様達だというのに、こんなノリでいいのか不安になってきた。

 ここに保護者の方々がいなくて本当に良かった。


 いや、でも、このノリのまま生徒達が、学園卒業後にご実家に戻られたら……? いったい学園ではどんな教育をしてるザマスか! とかクレーム言われたりしないだろうか……。


 先ほどまで誇らしく思っていた学園勢に一抹の不安が……。

 私がちょっとばかり不安を抱いていると、途中でなんとあのリッツ君が出てきた。


 リッツ君もミスターコンに参加してたんだね。

 リッツ君は火魔法を使って明かりを灯し、手で犬の形を作ったものを影に落として、影絵を披露してくれた。

 なんだかリッツ君らしいとっても素朴なアピールにとてもほっこり。

 

 そして、ミスターコンの参加者が全員アピールし終わったようで、とうとうミスコンが始まります的なアナウンスが流れた。


 あれ? アラン、出ないの?


 先ほどから、いつも私の側に忍び寄るアランがいないものだから、てっきりミスターコンに出るから準備しているのだと思っていた。


 アラン、どこにいるんだろう。

 と思っていると、早速ミスコンが始まった。


 ミスターコンと同じようにみんなで一発芸のようなものを披露していく。


 女性陣は、歌を歌ったり、花を活けたり、踊ったり、やっぱり華やかなものが多い。ミスターコンはどちらかというと笑いを取る成分が多かったからね。


 そんなことを思っていると、サロメ嬢と銀髪の美女がステージに上がった。


 ていうか、あの銀髪の子……あ、あれカテリーナ嬢だ!

 髪型がいつものドリルじゃなかったからすぐにわからなかった。


 確かに、カテリーナ嬢達も会場にいないからもしかして、とは思っていたけれども、やっぱりミスコンに出ようと準備してたのか!


 カテリーナ嬢が一体どんな一発芸を披露してくれるのかとシャルちゃんと一緒にステージに注目する。


 ていうかどうしてカテリーナ嬢今日は縦ロールじゃないの?

 縦ロールがほどけてるもんだから、一瞬分からなかった。


 もしかして……と思っていると、サロメ嬢が、髪をセットする小道具をバッと広げて、カテリーナ嬢の髪に色々と巻いていく。


 やはり! これは、サロメ嬢とカテリーナ嬢による縦ロール作成現場の生披露だ!


 サロメ嬢のヘアメイクスキルは劇でもお大変お世話になったけれども、改めてみると神技である!

 音楽に合わせて軽やかな手つきで、カテリーナ嬢の髪をセットしていき、そしてあっという間に銀髪縦ロールが出来上がった。


 早技!


 そして、カテリーナ嬢が自慢気に首を振って、どんなに動いても縦ロールが乱れないことをアピールしてからステージを降りていった。


 生徒達は見事な縦ロールに惜しみない拍手を送っているけれども。


 いや、あの一発芸は、サロメ嬢の技だよね!?


 出場者の証である番号札は、カテリーナ嬢しかつけてなかったので、出場者はカテリーナ嬢なのだけど!

 カテリーナ嬢はただ座っていただけだよね!?


 ま、まあ、あれはあれで、面白かったけれども。


 生徒達もカテリーナ嬢のドリルの秘密が明らかになって大興奮のご様子だった。


 他にも、劇で勝利の女神役をやってくれたオルテちゃんが、剣技を披露してくれたりして、会場は大興奮。


 この感じだと、カテリーナ嬢とオルテちゃんの一騎打ちでは?


 と思っていると、最後の最後に、とんでもない美少女が出てきた。


 長い睫毛に縁取られた黄緑色の瞳。

 光沢を放つほどに丁寧に手入れされた長く美しい黒髪。


 なんか、少し見たことがある顔のような気もするけれど、と思って彼女の黄緑色の瞳を見て、アイリーン様を思い出した。黒髪で黄緑色の瞳の美女と言えばアイリーン様。

 だけど、どちらかといえば、吊りあがり気味な目元のアイリーン様と比べて、あちらの美少女の目元は柔らかい印象で、あまり似ているという感じはしない。


 薔薇のように色づいたお肌に、ぷっくりと膨らんだ唇は実に女性らしく、甘そうな印象だった。

 けれども、可愛らしい顔とは対照的に、身長は女性にしては高い。手足がスッと長くて、なんだかモデルさんのような体型だ。


 キュッと締められた腰から下は、生地を何層も重ねたのだろう大きく膨らんだ瞳の色と同じ黄緑色のドレスが花のように広がっている。

 あのドレス、相当生地を使っているし、使っている生地もかなり上等だ。

 それに首元に巻いている毛皮の飾り物も相当なもの。


 本気だ。あの美少女は本気でこのコンテストに挑んでいる!


 そして先ほどまでやんややんやとコンテストを楽しんでいた会場の生徒達は思い出した。


 これは、どの一発芸がすごいかと決めるコンテストではなく、美少女を決めるコンテストだったことを。


 とびきりの美少女が、本気の様子で、ステージに登場すると、会場が静まり返ったのがわかった。


 そんな様子に、すこしあの美少女が戸惑う表情を見せるが、それさえも美しい。


 でも、あんな子、学園にいたかな。

 あれほどの逸材ならば、もっと目立つはずなのに。


 あの美少女は一体どんな一発芸を見せてくれるのだろうかと固唾を飲んでみんなが見守ると、ふと彼女が私と目を合わせてきた。


 すると、すぐに目をそらして、照れたようにして顔を紅潮させる。


 な、なんということだろう!

 めちゃくちゃ可愛い!


 思わず他の生徒達からも、ほう、とため息のような声が漏れた。


 ドキドキと次の彼女の行動を待っていると、「どうしてきたんだよ!」とあのリッツ君が慌てたようにステージの上に駆け出して、美少女の手を取った。


「やめようって、僕、あれほど言ったよね!? 今ならまだ間に合う! 戻ろう!」


 と言って、めずらしく強気なリッツ君がグイグイと美少女の手をとってステージの脇に連れて行こうとしている。


 しかし、美少女は不満そうにリッツ君に掴まれた手をふりほどいた。


 おお、なんというか、これは痴話喧嘩!?


 突然のドキドキ展開に会場中がクギ付けである。

 手を振りほどかれても、負けないリッツ君は再度美少女の手を掴んで近くの壁に追いやった。


 そのままリッツ君は、ドン! と美少女を閉じ込めるように壁に手をつける


 ま、まさか、あれは!!!


 壁ドン!!

 壁ドンよ!!!


 おおおーー!

 と会場中、男らしいリッツ君に感心するような声が漏れるけれども、ステージの上の2人はそんな周りの声が聞こえないようで、何やら小声で言い争っている。

 先ほど素朴な影絵で会場をほっこりさせたリッツ君とは思えないほどの男らしい動き!


 というか、服装とか照明とかの兼ね合いとかで、気づかなかったけれど、あの美少女思ったよりも体格がいい。リッツ君と変わらないぐらいの身長だし。


 そして、結局美少女がなにやら負けたようで、すごすごとステージの裾に引き返していった。


 2人がステージからいなくなると、会場中大喝采だった。


 なにがなんだか私にもわからないけれど、だいぶ興奮した。なんだか恋愛ものの劇を一本分見た気分である。


 そして、結局、ミスコン、ミスターコンは、謎の美少女と、男らしくその美少女を掻っ攫っていったリッツ君の2人が優勝したのだけど、優勝者発表のタイミングの時には、あの謎の美少女は会場からいなくなっていた。


 そしてあのリッツ君もかたくなに彼女の正体については語ってくれないのもあって、謎が謎を呼ぶミステリアス美少女に皆が興奮したまま記念すべき学園のミスコン&ミスターコンは終了したのだった。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] あの謎の美少女誰なんだろうなー? らんにゅうしゃがいなければ、名前もかけたかもしれないのに!! んー、気になるなー かわいかったなぁ わたしもあんな美少女なりたい いったい、どこであん…
[一言] 知り合いにバレない女装って相当なものですよね…
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