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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第四部 転生少女の独立期
200/304

慰労会編② 準爵位の授与式典にて 後編

本日は、なんと!

とうとう転生少女の履歴書第5巻の発売日ですよ!

無事に発売日を迎えられたこと、嬉しく思います!

ご予約していただいた方も、これから本屋で買うんじゃい!という方も、

いつも応援してくださっている皆様本当にありがとうございます!

土日は、表紙からほとばしるリョウ様の後光を浴びながら、お好きな飲み物を片手に、転生少女の履歴書5巻を読んで優雅にお過ごしくださいね!


そして、発売日お馴染みの連続更新がはじまってます。

昨日も更新してますので、いつも最新話から読まれている方はご注意ください!



 ウチノカインハドウカシラって……。

 まさかと思うけれども、私の婚約者としてカイン様はどうだろうかと言っている……?


 そ、そんなはずは、だってカイン様は、素敵貴公子で、フォロリストで、コウお母さんと私のアイドル的な存在で……。


 と思いながらぎこちなくアイリーン様からカイン様に視線を移す。


 カイン様も驚いた顔でアイリーン様を見ていたけれど、私の視線に気づいて、ぎこちなくこちらに視線を返してくれた。


 思わず見つめ合うと、なんだか気まずく感じて思わず顔を下に向けた。


 いや、やめよう。こういうね、突然こういう話を振ってくるのはやめようよ、アイリーン様!


「母上、突然、そのような話はどうかと……。リョウも戸惑っていますし、その……」

 フォロリストカイン様がアイリーン様にそう言ってフォローしようとしているけれど、本人も突然のアイリーン様の爆発物投入に焦っておいでであまりフォローできないでいた。


 ていうか私、思わず顔を逸らしちゃったけれど、なんかこれ感じ悪いよね!?


 私は勇気を振り絞って顔を上げて、アイリーン様を見る。


「あ、あの! 私はご存知の通り農村出身ですし! 結婚には不向きかと!」


 魔法使いの子供は生まれませんよ!?

 そういうの大事でしょう!?


「確かに、魔法使いの子供は期待できないけれど、そんなの全然構わないぐらいに私もリョウのことは気に入っているもの」


「い、いや、でも、そういうのは気持ちが……」


 私はまだしも、カイン様の気持ちが!

 後、カイン様を慕っている美少女がわんさかいたりするだろうし、そうなると、ドロドロの昼ドラ展開に私も参戦しなくてはいけなくなる!


「あら、うちのカインじゃ不足かしら?」


「いや、それは滅相もないですけれども! 私じゃなくて、カイン様のお気持ちも……」


「えっ! いや、私は、その……むしろ……だ、だけど……アラ」


 とカイン様が何事が言おうとしているところで、「ゴホン」と盛大な咳払いが響いた。


「いやー、申し訳ない。実はリョウにはルビーフォルンですでに決まった人がいるのです」

 と、盛大に咳払いをしたバッシュさんがそう言った。


「あら、そうなの?」


 そう言って驚くアイリーン様が私の方を見るけれども、私も『え?そうなの?』という気分である。

 決まった人いるの?

 バッシュさん、私も初耳なのですが?


「でも、リョウは私にとっても、もう娘みたいなものなのよ。どこぞのよくわからない人に嫁がせたりはしませんわよね?」

 とアイリーン様の厳しい言葉にバッシュさんはにっこりと笑った。


「もちろん。リョウには我が領地の魔法使いであるリュウキ殿と結婚してもらうつもりです」


 え……。

 確かリュウキさんて、ガラテアお姉さまの婚約者だったはずでは?

 バッシュさんの一人娘の婚約者ですよね?

 あ、もしかして困ってる私を見かねての援護射撃?


「まあ、魔法使いの方との? そう、ならそちらの方がリョウにとってもいいかもしれないわね。けれどもよく思い切りましたわね。魔法使いとの結婚だなんて」


「ハハハ、どうせ、我が領地には魔法使いは生まれませんからね」


 そう言って、笑うバッシュさんの頼もしいこと。

 でも、後でちゃんと確認しなくちゃ。

 リュウキさんとの婚約はこの場限りのものってことでいいよね?

 もし本当にそう考えていたら、断固拒否しないと。


 だって、リュウキさんはタゴサク教徒!


 私は信者とは結婚いたしません。


「そう、リョウ、もう婚約者が決まっていたんだね」


  カイン様が驚いた顔でそうおっしゃっていて、心なしかちょっと元気がないように聞こえた。

 カイン様、落ち込んでる……?


 でも確かに私も、兄弟みたいに思っているアランやカイン様の結婚とか婚約とかの話を聞いたら、ちょっと、ショックかもしれない……。

 私ったら、マザコンだけじゃなくて結構ブラコンなのかも。


 と思って、実の兄のシュウ兄ちゃんの顔がよぎった。


 おかしい。

 シュウ兄ちゃんが誰と結婚しようがショックを受けなそうな自分がいた。

 いや、相手の方が気の毒に感じて、ある意味ショックかもだけど。

 まあ、シュウ兄ちゃんだし、仕方ないか。


 と、納得したところで、カイン様が私の耳元に顔を寄せた。


「婚約者の話はアランも知っているの?」

 2人でお話しているアイリーン様とバッシュさんに聞こえないような声でそう尋ねられて、私もカイン様の耳元に顔を寄せた。


「実は私も婚約の話、初めて聞きました。多分バッシュ様の嘘だと思います」

と答えると、驚いた顔をしたカイン様は微笑んで、「きっとリョウが困っているのを助けてくれたのかな。母の押しが強くてごめん」と小声で返してくれた。


「まあ、アランが知っていたら、きっと……」

 とつぶやいたカイン様が、何かを想像したように苦笑いを浮かべたので、思わず首をひねった。


 一体アランが知ったら、なんだというのだろう。

 あ、それよりも、私、カイン様にお会いしたら、お伺いしたことがあった!


「そういえば、カイン様は騎士爵を取得したら、領地に帰る予定だと昔お伺いしたのですが、これからはレインフォレストに?」


 もともと、騎士爵を得たら、レインフォレストでアランの手助けをするのが夢だって、言っていたカイン様。

 おそらく想像よりも早い段階で得た騎士爵なわけで、まだアランが伯爵位を継いでもいないわけだし、どうするのだろう。


「それが……少し迷ったが、まだ城にいることにしたよ。まだアランも伯爵位を継いではいないし、もうしばらくはここで精進しようと思う。ヘンリー殿下のこともあるしね」


「お城に残るのですか? ヘンリー殿下の護衛を続けるのですね?」


「そうだね」


 と少し声を落としたカイン様は、ちらりとアイリーン様とバッシュさん達アダルト勢が会話を弾ませているのを見てから、彼らに声が聞こえないように距離をおいて「リョウ、覚えているかい? 私が大雨の災害時に、ヘンリー殿下の誘いを断ってレインフォレスト領に帰ったことを」と言った。


 覚えてる。

 ヘンリー殿下が近衛として城にいるように言われていたのを、無理を言って帰郷したって聞いた。

 王都に戻るとき、大丈夫なのかなって心配していたけれど、城に戻ったら何の問題もなく元の職に就いていたので、大丈夫だったんだって思っていたけれど……。


「覚えてます。王都に戻るとき少し心配してました」


「私も、そのことがあったから、城に戻っても返される覚悟だったんだが、ヘンリー殿下は何事もなかったように受け入れてくれた。今までと同じように近衛として護衛に着くことも許してくれた」


「そう、ですか」

 と言いながらカイン様の様子が気になった。

 城に戻れて、ヘンリー殿下に許しを貰ったと言っている割にはその顔は晴れやかではない。


「でも、カイン様、なんだか元気がないような、気がします」


 私がそう声をかけるとカイン様は苦笑いをした。


「正直ね、ヘンリー殿下が何事もなかったように接した時、私はほっとしたというよりも、むしろ悲しく思ったんだ。あの時、領地に戻るのを引き留めてくれたヘンリー殿下の命に背いたのは事実なのに、まるで気にしていない。私は、彼の友人でありたいと思っているし、少なくとも、他の人と比べれば彼にとって私はそれに近しい存在だと思っていたところがあった」


 そこまで言って、カイン様にしては珍しく自嘲したような笑みを浮かべた。


「だが、違った。ヘンリー殿下は、そんな風にはかけらも思っていない。彼にとって、私は、いや、誰のことであっても、結局どうでもいい存在なんだと、思い知ったよ」


「カイン様……」


 私が思わず声をかけると、カイン様は寂しそうに微笑んだ。


「ごめん、少し弱気になってしまったね。ヘンリー殿下の話ができるのは、リョウだけだから……」

 そう言って、一度言葉を止めて、今度はいつもの爽やかな笑顔を私に向けてくれた。


「大丈夫、ヘンリー殿下を支えていきたいという気持ちはある。だから、領地に帰るのは保留にさせてもらったんだ。せめて、ヘンリー殿下が、本気で私に『お前が離れたら困る』って言わせるぐらいの存在にならないと領地には戻れないな」


 と、自分で自分を奮い立たせる様子が本当に相変わらずのカイン様だ。


 でも、ヘンリー殿下が「お前が離れたから困る!」と言って駄々をこねる様子は想像しがたい。

 それダイジョウブ? 一生領地に帰れないんじゃない?


「あ、今リョウは、それだとずっと領地に帰れないんじゃないかと思ったね?」

 ぎゃ! さ、さすがフォロリストカイン様! 心の中まで分かるのですか!?


「え、い、いや、ずっとってわけじゃなくて、長期間難しいかなぁって思っただけです。ずっとじゃないです!」


「ハハ、リョウは正直だね、それで商爵としてやっていけるか、ちょっと不安になってきたな。私の身近な商爵はクロード伯父様だから……」

 

 と言ってカイン様は遠い目をした。

 ああ、彼はものすっごく腹黒いですもんね。

 確かに、商人ギルドってね、クロードさんみたいな腹黒動物がわんさかいます……。


「この前なんか、クロード伯父様が……」


 とカイン様が言って、その後は、カイン様と一緒にクロードさんの腹黒い話で盛り上がった。




転生少女の履歴書5巻発売日とともに、なんと、ウヨーリ教会季刊誌『たんぽぽ』がルビーフォルン領内で配布されたので、季刊誌タンポポ45ページにあった『尊いお方との初めての出会いレポ』の記事をご紹介します。


---------------------


本日もウヨーリ教の入会審査の様子を見に行きました。

どうやら希望にあふれる有望な若者が、ウヨーリ教へ入るためにやってきているようです。

立派なウヨーリ教徒になって、あのお方に受けた恩をお返ししたいのです!と、入会審査官の前で話す若者の目がキラキラと輝いています。

しかししばらく審査の様子を見守っていましたが、どうにも様子がおかしい。

審査官と少しもめはじめました。

「な!本日発売の転生少女の履歴書5巻を踏めとおっしゃるのですか!?』

「そうだ。それができたら、ウヨーリ教の入会を許しましょう」

若者の目の前には、ふかふかの座布団の上に転生少女の履歴書5巻が置かれています。

審査官に踏むように言われて踏めないでいるようです。

「そんな!そんなことできるわけがありません!だってこれは、尊いあの方が大活躍する転生少女の履歴書5巻なのですよ!?」

「しかし、これを踏まずにはウヨーリ教に入ることはできませんぞ」

「尊いあの方が大活躍、神聖さ十割り増し、9月30日絶賛発売中の転生少女の履歴書5巻を踏むなんて、僕には、でぎない!!」

そう言って入会希望の若者が泣き崩れてしましました。

そしてその震える肩にそっと審査官が手を置きます。

「合格です。どんな時でも、あのお方を敬う気持ち、それこそが大事なのです。ようこそ。我々の世界へ」

審査官が優しくそう声をかけると、二人はお互いの涙を拭うように抱きしめ合いました。

いやはや私まで、入会当初のことを思い出してもらい泣きしてしまいました。

そう、これこそが試練。例え強要されようとも、あのお方を敬うことを忘れない人のみが、ウヨーリ教に入れるのです。

う~ん、尊い。こうしてまた、新たなる敬虔な信徒が増えていくのですね。

それでは今号の『尊いお方との初めて出会いレポ』は以上です。

また次回の『たんぽぽ』でお会いしましょう!


-----------------


なんという茶番!と叫んだリョウが、次回の季刊誌『たんぽぽ』の発刊を必死で阻止したとか、できなかったとか……。


そして、

転生少女の履歴書5巻 本日発売です!

ウヨーリ教入会ごっこにぜひご活用ください!






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― 新着の感想 ―
[良い点] そうかーリュウキさまと結婚するのかー
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