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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第一部 転生少女の幼少期
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農村編②-私の名前ー

 ちょっと、あぶなっ・・・!お母さん、今のぎりぎりだよ!もっと私のことを気にしてっ!


 私は今、お母さんの背中におぶわれている。そしてお母さんは私をおぶったまま、畑仕事をしている。

 クワを振るたびに、棒が私の頭に当たりそうで怖い。ね、お母さん、クワはそんなに振り上げなくてもいいと思うのですが、疲れるだけですよ?

 お母さんがクワを振り上げるたびに、くわっと目を開けてビビッている赤ちゃんがいたら私です。



 なんだかんだでもうすぐこちらに生まれて4ヶ月。わかったこともあるが、わからないこともまだまだある。


 まず、わかったことは、私が住んでいるこのあたりは、小さな農村みたい。


 しかしなかなか農業の収穫がうまくいっていないみたいで、この村の人たちは、みんな痩せ細っている。

 そんな村の名前は「ガリガリ村」。

 誰よ、この名前付けた人!名は体をあらわすというけれど、あらわしすぎでしょ!もうちょっと、いい感じの名前付けてあげなさいよ。

 


 そして、わかったことその②は私の名前。

私の名前は「リョウ」。家族からリョウちゃんと呼ばれている。

 

 最初こそ、まあ悪くない名前ね、女の子のわりにかっこいい感じがいいじゃない、と思ったのだけれども、他の兄弟の名前を聞いて、戦慄した。

まず上から、兄弟の名前を紹介しましょう。


 長男ハジメ(13歳)、次男ジロウ(12歳)、三男サブロウ(10歳)、四男マル(6歳)五男シュウ(3歳)


 皆様、お気づきだろうか?


 上の兄3人が実に分かりやすいシンプルな名前になっているが、四男のあたりで、「マル」という名前になっている。今までの流れで言うと「シロウ」だろ!と、いいたいのだが、マル。そして次が「シュウ」。そして私が「リョウ」。


 気づいたときは、はっとしたね。つまり私の両親の名づけのセンス物語はこうだ。


 最初、ハジメ、ジロウ、サブロウと順番どおりの名前を付けた。

 しかし、4人目が生まれたあたりで、もう、ここら辺で子供を産むのははやめておこうという意味をこめて「マル」とつけた。句読点の「。」だ。

 しかし、また生まれたもんだから、今度こそ最後だよ?の願いをこめて「シュウ」。

 しかし、それでも生まれたものだから「リョウ」。今度こそ「終・了」だからね?の意味を込めてだ。


 うう、このことに気づいたときの私の衝撃といったら!

 かっこいい!なんて思って気に入っていたのに!


 気づかなければよかった私。くっ、自分の優秀さがにくい。しかし、そんなこと言っても始まらない。


 それが私の名前だ。つけた意味はどうあれ、なかなか響きのいい名前だし、このことは忘れよう・・・うん・・・。

 

 でも私の両親は、私が夜泣きをしないことをいいことに、夜な夜な二人でオアツイ夜を送っている。

 ねえ、ちょっと隣に私がいるんですけど? 一番上のお兄ちゃんが興味津々で薄目を開けてみてますよ!



 まったく、名前だけで子作り終了宣言したって意味無いんだからね!

気をつけてよね!


・・・いったい次に生まれた子供はなんて名前になるのかしら・・・。うう、もし弟か妹が出来たら、私が名前を付けてあげよう。


 そんな感じで、適当な名づけに定評がある両親だが、結構生活も適当だ。


 まず、農家に向いてないと思う。なんていうか、すごい作物の育て方が雑なのだ。


 だから、畑の収穫がうまくいかずガリガリ村なんだと思いつつも、まだおぶわれている身の上のため何も出来ない私。歯がゆい。言語は理解しても、口の筋肉が発達していないため発音ができない。何かしゃべろうとしても「オブオブ」みたいなことしか話せなかった。

 なんともお荷物な私。上の3人の兄はもう畑を手伝っているというのに。

 

 どうやら、この村では、基本的に10歳以上は労働力とみなされるらしく、上の兄3人は畑仕事を手伝わされている。


 そして、10歳以下の子供たちは、仕事の邪魔をしないよう他の家の子供たちと外に遊びに出かけるという流れのようだ。

 まあ、私のような乳飲み子は、遊びに出かけることも出来ず、母の背中の上でこの有様ですが。


 うーーん。どうにかして早く、動き出さないと・・・焦る。


 動け、私の体!目覚めよ!


 と心のなかでシャウトしても始まらないわけでして。

 そして・・・どうして、こんなに私は焦っているかというと・・・本当にこの家は貧しいのだ。


 兄弟家族の力になりたいという思いはあるが、どちらかというと自分のため。


 あまり考えたくないが、「口減らし」・・・つまり養えない子供(私とか)を殺したり、売ったり・・・そういうのを若干懸念している。


 気のせいかもしれないが、お母さんの私を見る目が、たまに怖い。マジで。

 それに、上に男しかいないというのが、気になる。

 両親も、初めて女の子が生まれたねー、みたいな感動が無いのを考えるに、おそらく・・・、そういうことなのだろうと思っている。

 だからどうにかして、私の有用性をアピールしないとやばいのだ。


 とりあえず1歳になる前には、歩行とお話が出来るようにしよう。だからお母さん早まらないでね。私は金を生む女の子よ!


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