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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第四部 転生少女の独立期
199/304

慰労会編① 準爵位の授与式典にて 前編

転生少女の履歴書5巻の発売が明日となりました!

地域によっては、今日にでも本屋にあるかもしれませんね!

皆様の素敵な週末のおともにぜひ、転生少女の履歴書5巻を!とっても感謝!


いつも応援くださる皆様の御礼もかねて、発売日お馴染みの3日連続更新を開催します!

ということで、29日(金)、30日(土)、1日(日)の三日間更新する予定です。

いつも最新話から、見てくださってる方!要注意ですよ!



 バッシュさんのところに、アランとシャルちゃんやリッツ君などの友人たちを連れて行ったり、慰労会開催中に学園内の敷地で販売する勝利の女神様グッズの点検をしたりと、慌ただしくも充実した毎日を過ごすうちに、とうとう慰労会が始まった。


 お国を挙げての盛大なこちらの祭典は、なんと一ヶ月の期間をかけて開催される。


 毎日毎日違うお祝い事や催しの予定がびっしり。


 初日には盛大な開会式のようなものが開かれ、2日目にあたる本日は、魔物の災害で活躍した皆々様に爵位や報酬を授与する式典が行われることになった。


 この式典のために各領地の領主様をはじめとした名門貴族の方々や、新しく貴族や準貴族になる人達がお城に召集されている。


 式典会場に来た私は、早速私がよく知っている人物、バッシュさんとグローリアさんを見つけて挨拶を交わした。

 

「今日は、リョウさんの晴れ舞台よね。学生のうちに爵位を得るなんて、さすがだわ。そのドレスもよく似合ってるわよ」

 とグローリアさんが、声をかけてくれた。

 今日の日のために用意した、紺色のドレスを褒めてもらって思わず顔が緩む。


 そう、何をかくそう私も、この式典でもって、商爵を授与されるのです!

 史上最年少だって。

 いや、別に、史上最年少だからなんだってことないんだけどね。

 うん、でも史上最年少ってことは、今まで商爵をとった人の中で私が一番若いんだなぁってことで、これ以上の何かがあるわけじゃないんだけどね。

 ただ、史上最年少ってことで……。

 でも、もし、史上最年少美少女大商人の誕生……なんて後世に残されたらどうしよう~!

 照れる~!


 と、私が脳内で調子に乗っていると、王様のお越しをお知らせする係の方が大音量で声を響かせた。

 どうやらこちらの式典には王様がいらっしゃるらしい。


 会場にいる貴族の方々がそろって、高そうな布で仕切られた場所へと体を向けて膝をつく。

 もちろん私もみんなに倣う。


 しばらくして王様の側近みたいな人が「顔をあげよ」みたいなことをいったタイミングで、私も含め会場の人たちが、一斉に顔を上げた。


 すると先ほどまであったはずの布の仕切りが取り払われて、玉座っぽいところで一人の男性が鎮座しているのが見えた。

 もしかして、あちらに座っている人が、王様?


 おお、なんと今回の王様は顔をお隠しになっていない!

 初めて見る王様のご尊顔を、思わずまじまじと観察。

 ゲスリーの異母兄弟にあたるのだから、多少は似ているのかなと思ったけれど、思っている以上に面影はない。


 長い髪を垂らしているところはゲスリーと一緒だけど、薄い金色であるゲスリーとは違い髪色は茶色。

顔には短い髭をこさえており、年齢は30歳前後に見えるけれど、魔術師なので実年齢はもっと上なのだと思う。


 光り輝く美少年風なゲスリーと違って、王様は正直パッとしない感じに見えなくもないけど、ゲスリーの見た目が特別派手なだけかな。


 そんな王様は無表情なまま、片手を挙げると、膝をついていた貴族の方々が起立した。

 ああ、そういう感じなのね、と私も腰を挙げる。


 改めて周りの顔ぶれを見てみると知っている顔がちらほら。

 アイリーン様やカイン様もいらっしゃる。


 何を隠そうカイン様も、魔物の災害時においてたくさんの魔物を討伐した功績で、騎士爵を叙爵されることに決まっている。


 今回の魔物の災害で騎士爵を受爵した人は結構多い。


 騎士爵や商爵などの準貴族の爵位は、名ばかりの爵位で、大した恩賞はないから国にとってみれば大して金銭的な負担はない。

 それでももらえれば嬉しいものだろうということで、国がご機嫌取りのようにたくさんの貴族の子息に爵位を授けたという裏があるような気がしてる。


 まあ、でもカイン様の場合は、カイン様の実力あってこそだと思うけれどね!

 だって、超戦士だもの。


 式典が終わったら、カイン様にお祝いの言葉を述べに行こうと固く決意しながらも、定型文的な挨拶を王様の口から聞くなどして式典は進んでいく。


 それはもう位の高い方々が見守ってくださる中での授与。

 基本的には静かな感じで、なんだか緊張するなぁって思いながら自分の出番を待っていたけれど、始まってみればあっと言う間で、ちょっと緊張した割にはあっけなく終わった。


 お高いところで玉座に座った王様に、決まった挨拶を言って、王様も決まった言葉を返すだけの儀式だった。


 私の名前が呼ばれた時、「約束された勝利の火種の?」「本当に子供なのね」といった声がちらほら聞こえたりはしたので、どうしよう、最年少美少女商人の誕生ね、なんて噂されてたら……と思って耳をすませてみたけれども、そういった声は聞こえなかった。


 まあ、式典なんて、こんなものなのかも。

 

 準貴族の爵位授与式が終わると、もうお昼。

 休憩も兼ねての、立食パーティーが始まった。


 私は、再びバッシュさんと合流しながらも、とある人物をちらりと盗み見る。


 銀の髪の毛をくるくる小さく巻いた髪型……前世の世界の肖像画でみた音楽家のバッハみたいな髪型をしている男性。


 そう、あの方は、何を隠そうグエンナーシス卿。カテリーナ嬢のお父様だ。

 確かに顔立ちがカテリーナ嬢に似ているかも。特に巻き毛の感じとか……。


 こうやって国の祝い事にも駆け付け、王様の前では静かに頭を垂らしていたグエンナーシス卿を見ていると、なんだか複雑な気持ちになる。

 だってサロメ嬢の話によると、グエンナーシス卿に、国への忠誠はもうなさそうだし。


 事前にサロメ嬢からグエンナーシス卿の意志を聞いている身としては、何とも不気味でしかない。

 

 私が涼し気に飲み物を口にしているグエンナーシス卿を見ていると、「リョウ君、授与式の方はどうだったかな?」と、機嫌の良さそうなバッシュさんに声をかけられた。


 バッシュさんの方に目を向ければ、既にお酒をお飲みになって、顔を微かに上気させている。

 というか、午後は領主向けの恩賞の授与があるのに、お酒飲んで大丈夫なのかな。


「どうと言いますか、流れ通りの儀式という感じでした」

「まあ、そうだろうね」

 と、頷いたバッシュさんは私の襟もとのバッチに目をやった。金でできたコインの形をかたどったシンプルなデザインで、商爵の証になる。


「ああ、それは商爵の印だね。いや、まさか、在学しながら爵位を取ってくれるとは思っていなかった」

 と言って、楽しそうに笑っている。

 楽しそうで何よりだけどお酒はほどほどにね!


 それから、ご機嫌なバッシュさんから自分が学生の時の話なんかを聞いていると、目の端に知っている人が見えた。

 アイリーン様とカイン様だ!


 アイリーン様も私に気付いて目が合うと、カーディンさんやカイン様を伴って私の方にやってきてくれた。


「リョウ、おめでとう。さすがだわ」

 簡単な挨拶の後、アイリーン様はそう言って、褒めてくれた。


「ありがとうございます。アイリーン様も、今回の魔物の災害での対応で、国から評価されて新しい爵位をいただくと伺っております。おめでとうございます」

 そう、大雨の苦難を乗り越えた領主の皆さまには、国から、名誉伯爵の位を授与されることになっている。その式典は、今日の午後なのでこれからだ。

 ただ名誉がついただけで、今までと大して変わらない扱いだけれども。多少の恩賞をもらえる。


「まあ、私がもらう爵位なんて、とってつけたようなものよ。今回いただける恩賞にしても、ここまでくる旅費のほうがはるかに高いわ」

 そう言って、不満そうに口をとがらせると隣でエスコートをしていたカーディンさんが、微笑んだ。


「アイリーン、私のかわいい妖精さん。君の可愛らしさは、怒った顔も素敵だけど、笑顔の方がよく似合うよ」

 カーディンさんにそう言われたアイリーン様は素直に笑みを浮かべると、「いやだわ、ディーンたら」と照れた様子で言った。

 あい変わらず仲の良いご様子である。

 今にもイチャイチャし始めそうなお二人に思わず視線を逸らすと、カイン様と目があった。


 久しぶりですという挨拶を交わしあうと、カイン様がいつもの素敵スマイルを見せてくれた。


「リョウ、今日の夜色のドレスも大人っぽくて、よく似合っているね。リョウの金色の髪が、まるで夜空に輝く流れ星のようだ」

 カ、カイン様!

 カイン様がポエムを刻みながら、私に微笑んでいらっしゃる!

 久しぶりのカイン様にポエムの合わせ技でなんだかドキドキしてきた……。


 なんだかちょっと恥ずかしいけれども、あんまり照れてるのがばれたくないので、冷静を装って笑顔を作った。


「カイン様、騎士爵受爵おめでとうございます」

「ありがとう。リョウこそ商爵じゃないか。おめでとう。しかも王都の筆頭10柱にも名を連ねるのだろう? さすがだね」


「いえ、私のは、たまたまタイミングが重なっただけです」

「リョウは、謙虚だね。お祖父さまからも聞いているよ。リョウが、この国のために色々と掛け合ってくれているのだと」


 え……お祖父様って、カイン様のお祖父様と言えば……。


「アルベール様が、ですか?」


「そう。職務上、お祖父様とお話しできる機会が最近多くて、その時によくリョウのことを話してくださるんだ。あまり手放しで人を褒めたりしない方なのだけど、リョウのことは気に入っているみたいだった」


 えー! そんな! アルベールさんが私のことを褒めてくれてるだなんて!

 あの渋イケメンが私のことを陰でこっそり褒めてるところを想像すると、思わず顔がにやけそうだ。


「いえ、そんな、私こそアルベール様には、色々とお世話になっていて、私なんかはまだ全然です……」


 と照れながらも答えていると、先ほどまでバッシュさん夫婦と会話を楽しんでいたアイリーン様が、「そういえば、リョウもそろそろ成人ね。もう婚約者とかはいるの?」と突然話を振ってきた。


 え! 婚約者!?

 アイリーン様が世間話をするような勢いで恋バナをしてきた。

 突然の恋バナには慣れていない私は思わず顔が熱くなる。


 いやだって、私、まだ14歳だよ!

 恋だってこれから……とか言っていると来年そのまま成人してしまいそうで怖い。

 やっぱり、婚約者って、この年でいない方がおかしいとかいうレベルなのだろうか?


「えっと、私は、その……」


 と言い淀んでいると、アイリーン様が、「うちのカインはどうかしら?」とさらなる爆発物を投入してきた。


 え?

 ウチノカインハドウカシラって、どういう意味?



前書きにも書きましたが、転生少女の履歴書5巻が明日発売です。

まさか5巻まで行くとは!驚き!感謝!

ということで感謝を込めて、最近お馴染みの書籍宣伝手紙の紹介です。

カーディンさんから、カイン様に送ったはずの手紙は何故かこちらにも届いたので紹介します。


-------------------

私の希望カインへ


おおどうか、私の愛しい息子カインよ!

父様の悩みを聞いてくれないだろうか?

アイリーンにも言えないんだ……。


ああ、なんということだろう。

私は一体、アランになんと答えれば良いだろうか……!

まずはアランからもらった手紙を同封するので見て欲しい!

そうすれば父様の悩みに聡明なカインならば、わかるはずだ……。


追伸:ちなみに9月30日に転生少女の履歴書5巻が発売されるのは、もうカインは知っているだろうか?カインも活躍すると聞いて、父様はとっても楽しみにしています。


息子の情愛に戸惑うしかない愚かな父

カーディンより


---------------------


親愛なるお父様へ


こんにちは、アランです。狂おしいほどの愛とともに。

まさか手紙の返信が来るとは思っていなかったので、驚きました。なにより貴女を愛しく思う私の心が止まりません。

愛とかはよく分かりませんが、心臓を氷漬けというのはとても寒そうです。今すぐ抱きしめて私の愛で包めたら。

暖かくしてお過ごしください。お体お大事に。それでそばに居られるのなら体だけの関係でも構いません。


追伸:お父様、転生少女の履歴書を確実に入手するためには予約してください。そして貴女の心を奪い去ってしまいたい。


アランより


------------------------


「確かに恋愛詩文を参考にと言ったけど、不自然だし、そのままだし、というかチョイス!!」

とカイン様が叫んだかどうかはわかりませんが、このあとめちゃくちゃカイン様がフォローして、レインフォレスト一家昼ドラ騒動は終結しました。

さすがフォロリスト!


そんなフォロリストカイン様も活躍する転生少女の履歴書5巻は9月30日、とうとう明日発売です!

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