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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第四部 転生少女の独立期
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筆頭10柱編⑯ 暴走カテリーナ対策本部

 サロメ嬢から初めてグエンナーシス領のことをきいてから、私とサロメ嬢はこそこそと会っては情報を集め、作戦を立てる日々。

 おそらくカテリーナ嬢はグエンナーシスの領主に言われて、何かしら危険なことをさせられる可能性がある。友人として、カテリーナ嬢が危険なことをしようとするのなら止めて、守らなければならない。


 そして、私とサロメ嬢は話し合いの末、他にも協力者を募り、暴走しそうなカテリーナ嬢を守るために対策本部を設立することにしたのだ。

 私たち2人だけだと、集められる情報にも限界があるし、カテリーナ嬢が暴走した時に止められるか不安があったためである。


 サロメ嬢と相談をした上で、現在対策本部のメンバーは五人。私とサロメ嬢、そして、アラン、シャルちゃん、リッツ君だ。この三人なら信頼できると踏んで、グエンナーシスの現状も含め明かした。事情が事情なので、本当に信頼できる人しか声をかけられず絞りに絞った結果がこのメンバーだ。


 サロメ嬢から事情をきいた三人とも、もちろん手伝うと言って、カテリーナ対策本部に快く加入してくれたし、逆に相談するのが遅すぎるとサロメ嬢は怒られていた。


 ということで、固い絆で結ばれた暴走カテリーナ対策本部が設立したのである。


「それでは、グエンナーシス領の方々から、レインフォレスト領の方々への接触はまだないということですね?」

 レインフォレストとグエンナーシスの動きについて報告してくれたアランに、私は指を組んで尋ねた。


 本日は定期的に開かれる暴走カテリーナ対策本部、通称カ対の会議。 

 防音機能を取り付けた我が部屋に集まって、4人が一つのテーブルを囲って情報をまとめていく。

 サロメ嬢は、そこまで頻繁に抜け出してこちらには来られないので、サロメ嬢はいないけれども、みんなで集めた情報を統合し、対策を練る重要な時間だ。

 

「ああ、俺が集めた情報によれば、まだグエンナーシス側からは、お母様に連絡を取っている節はない。とは言っても、お母様が慰労会のために王都に来たのはつい先日だ。これから接触する恐れはある」

 アランの言葉に私は頷いて肯定する。


「そうですね。アランは、引き続き調査をお願いします」


 もしグエンナーシス卿が、反乱のようなものを起こすとしたら、少なからず他の領主にも接触をする可能性が高い。だって、どう考えても、グエンナーシス領一つでヒャッハーしたところで、この国をどうにかできるとは思えないもの。


 それにしても、アランはなかなか優秀な情報官である。

 レインフォレストの情報も集められるし、アランのお祖父様はお城にお勤めのアルベールさんだから、王家側の情報もゲットできる可能性がある。

 私もアルベールさんとの繋がりはあるけれど、私では聞き出せないことを孫のアランには話したりするかもしれない。


「ああ、任せろ。気配を殺して忍び寄り、小さな噂話1つも取りこぼさず拾い上げてみせる」

 自分のストーカーレベルに絶大な自信を持つアランが真面目な顔でそう答えた。


 いや、アランは、レインフォレスト伯爵家のご子息なんだから、別にそんなストーカーみたいなことして情報を集めなくても他に方法があるんじゃないか……と思わなくもないけれど、彼はノリノリだし、結果が出ているのでそのままにすることにした。


「リッツ様の方はどうですか? 学園の生徒達から何か情報を拾えましたか?」


「うーん。そんなに大した情報はないかな。みんな今は学園祭の準備に夢中だしね。あ、でも、北方の領地の方でちょっと動きがあった。あと数日で、ゴルバデンドール領、コクーリオ領、パーリミア領の貴族達が、集団で王都に到着するみたいだよ。慰労会のために」


 おお、続々と地方の貴族の方々が王都に集まっておられる!

 もうすぐ慰労会だもんね。


 それにしても『人を集めるリッツ』の異名は伊達ではない。

 その人あたりの良さで友人の多いリッツ君は学園内の生徒達からの噂話を拾う役割を担ってくれていた。学園の生徒は何と言っても全員貴族の御息女御令息、そこから拾える情報はなかなかありがたい。


「リョウ様、私の方からも、報告があります」

 控えめな様子でシャルちゃんがそう言って、ハイと挙手をした。

 シャルちゃんは、グエンナーシス領側の魔法使い。

 中の繋がりでグエンナーシス領の情報を集めてもらうことができるカ対に必要不可欠な情報官である。


「なにかグエンナーシス領に動きが?」


「はい、実は、グエンナーシス領の有力な貴族の方々が、慰労会に参加するために、王都に向けて少し前に出発していたようなのです。その中には、グエンナーシス卿もいらっしゃるとのこと」


「本当ですか!?」

「はい、間違いありません。グエンナーシスの生徒の一部にそういうお知らせがありました」


 じゃあ、グエンナーシス卿は、慰労会には参加するつもり?

 反乱起こす気満々なのに?

 慰労会で宣戦布告でもするつもりなのかな。しかし敵地ど真ん中でそれは無謀すぎるような。

 でも、彼らの目的が救世の魔典だとしたら……他の領主達も集まる慰労会は都合がいい?

 いやいや、でもどちらにしろ無謀な気がするんだけど。


「シャルちゃん、ありがとうございます。引き続き動向を調べてもらっていいですか? どういう規模で、どのような人たちとグエンナーシス領を旅立ったのかとか、どの宿に泊まるつもりなのかとか、わかることがあれば全て!」


「はい! がんばります!」

 そう言って背筋を伸ばしたシャルちゃんがビシッと請け負ってくれた。

 可愛い。可愛いよシャルちゃん。


 やっぱりもうそろそろ慰労会がはじまるという段階で、各地から貴族達が続々と集まり始めてる。

 それにしても、こうもあっさりグエンナーシス卿ご本人が王都に上るのは、不気味な感じ。


 私はある程度考えをまとめて口を開いた。


「実は、私の方でも報告があります。ルビーフォルン領の貴族の方々がつい先日、王都に来られました。グエンナーシスと接している領地は、ルビーフォルン領だけです。グエンナーシス領の者がルビーフォルンに接触する可能性は高いと思います。私も近いうちに挨拶を兼ねてルビーフォルンのバッシュ様にご挨拶に伺う予定ですから、状況などを聞いてきますね」


 そして、グエンナーシスのことだけじゃなくて、バッシュさんには親分のことも聞かないと。


 私は内心でそう決意する。

 バッシュさんは元々親分と交流があった。

 親分となにかしら接触している可能性は、正直とても高いような気がする。


 だって、親分は、わざわざバッシュさんに神殺しの剣を届けるためにルビーフォルン領にきていた……。


 私が親分のことを考えていると、アランがなにかしら言いたそうに少し身じろぎした。


 なんだなんだ。

 何か言いたいことがあるならいいたまえと思って目配せすると、アランは何かを決意したように口を開いた。


「あ、あのさ、リョウの親に当たるルビーフォルン卿には、その、俺も、挨拶しに行きたいんだが、いいか?」


 え、アランも一緒に、バッシュさんのところに行きたいってこと?


「別にいいですけれど……あ、でも、慰労会が始まれば連日パーティーのような感じらしいので、その時にでもご紹介しますけど?」


 わざわざご足労頂かなくても……と思ってそう疑問を口にすると、アランは首を振った。


「いや、できるだけ早くご挨拶に伺いたいんだ。だって、リョウの、保護者に当たる方、だろう? となると、今後のことを考えれば親しい方がいいだろうし……」


 今後のこと?

 まあ、確かにゆくゆくはレインフォレストの家督を継ぐアランとしては、隣の領地の伯爵家と親交があった方がいいのかもしれない。

 なるほど、アランて結構先のことまで考えるんだね。

 なら今度行く時、連れていこうかな。


 でも初回訪問の時に、一度バッシュさんには親分のことをちょっと聞いておきたい。

 だから、アランとバッシュさんを合わせるのはその訪問のあとがいいかも。


 だって親分の話は、その場にアランがいたら、できない。

 アラン達には、剣聖の騎士団のトップが私のよく知ってる人ってことを言えてないから。サロメ嬢には、話の流れで少し知っている人であるとは説明したけれど……。


 今は、暴走しそうなカテリーナ嬢を守るために私たちは動いていて、アレク親分はそのカテリーナ嬢の命を脅かす敵みたいなものだ。


 言ってしまったら、多分みんな私に気を使う感じになるような気がする……。


「分かりました。では、私の初回訪問の時に今度私の友人を連れて行きますって伝えておきますね。なので、二回目に訪問する時一緒に行きましょう。慰労会開催前にはご挨拶できると思います。どうですか?」

 初回訪問の時に親分の事は聞いてその後アランを連れていけば問題ない。


 私がそう思って提案するとアランは嬉しそうに頷いた。

 いやー、意外とアランはちゃっかり先のことを見据えているんだね。

 他の領地の領主との繋がりを求めていたとは。


「アランって、意外と外堀から埋めようとするよね」

 とリッツ君が苦笑いしながら言った。


 いや、本当に。

 レインフォレスト領地だけじゃなくその周りの領地との親交も抑えた上で自領の安定を図ろうなんて、アランはなかなか慎重派だ。

 まあ、今まさにグエンナーシスのこともあって、いろいろ情勢も不安定だしね。

 親交を深めるのはいいことだと思う。


「外堀じゃなくて中身を抑えないと意味がないと思いますけどね」

 とシャルちゃんがニッコリ笑顔でアランに言うと、アランは眉をしかめた。


「お、俺だって、そう思ってる! 思ってる、けど、手ごたえが……」

 とアランは意気消沈し、リッツ君が「ハハ…」と乾いた笑い声をこぼした。

 

 まさかアランが、こんなに真剣に領地経営について考えているとは思ってもいなかった。

 そっか、でも、そうだよね。もう今年で学園も卒業だし、そろそろだよね……。


 その後も、四人で、領地の統治方法について意見を言ったり、今までのグエンナーシスの情報を整理したりしてその日のカ対の会議は終わった。



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ウヨーリ教広報担当よりコメントを頂きましたので、ご紹介いたします。


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映画キャッチコピーあるあるを詰め込んでいくウヨーリ教徒広報担当!



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[一言] あとがきが神聖すぎる衝撃で目から黒い部分が消えました(白目
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