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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第四部 転生少女の独立期
176/304

商会長編⑩ トーマス先生のシフトチェンジ

お知らせ、お知らせですよ!


なんと!

転生少女の履歴書4巻の発売日が決まりました!

5月31日発売です。

続刊ができましたのも、応援・ご購入くださいました皆様のおかげでございます…!

ありがとうございます!


本日からアマゾンで予約も開始しております。

どうぞ今後ともよろしくお願い致します!






 しばらくレインフォレストで、蒸留酒の物流のことや、クロードさんと商会のことを相談したり、されたりして日々を過ごし、アラン達と一緒に王都に戻る頃合いになった。


 カイン様も一緒に王都に戻ってくださるようで王都までの道のりの安心感がすごい。

 そして最後まで「俺も王都に連れてってくれよー!!」と駄々をこねたシュウ兄ちゃんをなだめすかして、アランにたくさん作ってもらった蒸留器を持ってルビーフォルンに帰ってもらった。

 蒸留器は一台だけじゃなくて複数作ってもらっているので、数台だけ分解して王都行きの私の荷馬車に積んである。


 立派な蒸留器だけど、作ってもらうのに原価もすごく高くて結構なお値段がしたので、お城の人からマッチ作りの報酬でもらったお金は、とうとうそこをついた。

 まあ、それでもこれからのリターンを考えれば、余裕である。


 それにしても、これから王都か。

 クロードさんが話してくれた内容、非魔法使いが政治に関わってくるなんて、そんなこと、なんというか、未だに信じられない。

 そうしないといけないほど、国庫が貧窮しているってことなのかな……。

 でも、確かに、魔法使いが少なくなっているっていうのに、魔法頼りの体制を続けていた国には、もうとっくに無理が出てきていた……。


「リョウ、今大丈夫か?」

 最後の荷物の確認をするために馬車の中を点検しつつ、王都のことを考えていると、アランが私に話しかけてきた。


「アラン? 大丈夫ですけれど、どうかしたんですか?」

 私はそう言って、荷物の点検を中断させると、アランの方に顔を向けた。

 アランも学園まで一緒に行くとは言っても、長い旅の中では別々の馬車になる予定。だけど、やっぱり一緒の馬車に乗りたくて来たのかな。コウお母さんも一緒の馬車だし。


 今までだって、こうやって馬車で移動するときは、アランも同じ馬車に乗りたがっていたし、今までは気にせず一緒の馬車で過ごしていたのだけど、年の近い男女が数日同じ馬車で過ごすというのはあまり良くないということで、今回は別々。


 なんだかんだでそろそろ年頃ですからね。

 とはいっても相手はアランだし、気にしすぎな気もするけれど。


「いや、様子を見に来ただけだ。準備は、順調か?」

「ええ、大丈夫ですよ。もう出発できそうです」

「そうか。ところで、リョウ、ちゃんとカテリーナからもらった貝殻もってきたか?」

「もちろんですよ!」

 私はそう言って懐に大事にしまっていた綺麗なピンク色の桜貝を取り出した。

 学園を旅立つ前に、皆で再会の約束に掲げた桜貝である。

 学園に戻ったら、カテリーナ嬢にアクセサリーに加工してもらう予定なのだ。


 アランも取り出して、お互い手のひらの上に置いてある桜貝を見て微笑む。

 学園に着けば、皆に、会える、はず!

 そう思って、シャルちゃんの癒しの笑顔や、カテリーナ嬢のツンデレた仁王立ちや、サロメ嬢の色っぽいウィンクに、リッツ君の優し気なまなざしが目に浮かんだ。


 皆に、会いたい。

 学園に帰れば、会えるんだ。みんなの無事を確認できる。

 ……何事もなければ、だけど。


 少しだけ怖い想像をして、目を伏せると、アランが気づいたらしく「あいつらなら、大丈夫だろ」と何と励ましの言葉を投げてくれた。

 気遣わせてしまったね。ありがとう、アラン。


「そうですよね。みんななら、大丈夫、です」

 うん、だって、あんなに頼もしい皆だもの。

 きっと、大丈夫。



-----------



 レインフォレストとルビーフォルンの合同隊は、王都へ向けて出発し、数日の旅を経て、懐かしき王都へと帰ってきた。


 一応魔物の襲撃に備えてはいたので、早めに出たのだけど、襲撃がなくて、あっさりとついてしまった。私が思っているよりも大雨の災厄は落ち着いてきているようだ。


 王都に到着すると、コウお母さんは薬屋に、カイン様は城に、私やアランは学園の寮にもどる。


 寮に帰ってみると、既に学園に戻ってきている生徒達が結構いた。

 学園の生徒達は、私の姿を見るなり「きゃあ! リョウ様よ! 勝利の女神! 素敵ー! きゃ!」みたいなことを言って、中には私に、握手を求めてきたりする生徒すらいた……。

 どうやら、各領地にマッチを分配していたことで、生徒達の私への好感度がうなぎのぼりになってしまったみたいなんだけれど、このノリは、なんか、どうにかならないだろうか……。

 だけど、悪口を言われているわけでもないので、邪険にもできず、何とか笑顔で流した。


 そして寮に戻ってきている生徒の中には、リッツ君もいて、アランとリッツ君と3人で、再会を喜び合った。リッツ君からマッチのお礼を言われたけれど、無事でいてくれたなら、もう何もいらないっていう気持ちである。

 どうやらマッチの配給は、想像以上に各領地の助けになったみたい。それゆえの他の生徒達の反応なんだろうけれど、でも他の生徒達みたいに握手を求めたりしないリッツ君は、私の癒し。

 流石空気読める子選手権の優勝候補である。

 久しぶりのリッツ君は、お変わりなくて、嬉しかった。


 でも、桜貝で再会の誓いをしたシャルちゃんカテリーナ嬢、サロメ嬢のグエンナーシス勢は、まだ戻ってきていない。

 寂しい。早く会って、色々お話したかったな。


 一通り生徒達へのあいさつを終えて、学園の様子を改めて見たけれど、ここを離れる時には、ボロボロだった壁などもきれいに修復されて、魔物に襲われたなんて、嘘みたいに綺麗だった。

 多分魔法で修復したのだろうけれど、すごい。


 そして学園に戻ったからには、あともう一人挨拶しなければならないお人がいる。

 到着した次の日、私は挨拶をするため、「失礼します」と声をかけて校長室へと足を踏み入れた。


 大きな執務デスクには、七三に髪型を分けたトーマス先生がいた。


「久しぶりだな、リョウ君」


 そう朗らかに声をかけてきた七三教頭、じゃなくて七三校長先生。


 昨日リッツ君から聞いたのだけど、なんと、本年度から、七三教頭先生が、校長先生へと出世していた。

 もう七三教頭とは呼べない。七三校長だ。


「お久しぶりです。トーマス先生。それと、校長へ就任おめでとうございます。」


「ああ、ありがとう。まあ、別になりたかったわけではなかったが」

 とトーマス校長は苦々しくつぶやいた。


「ボルジアナ先生が、王都から出て行かれたという噂を聞いたのですが、本当ですか?まさか、あの時の発言のせいで、王都から追い出されたのでしょうか?」

「ボルジアナが王都から姿を消したのは本当だが、あの時の発言が原因で追放されたわけではない。突然消えた。家族ごと綺麗さっぱり痕跡も残さずどこかに行ってしまったらしい。……おそらく、計画的に彼が自ら出て行ったのだと思う。一応私の方でも探してはいるが、おそらくもうみつけられないだろう」


 まさかの返答に、私はちょっと目を瞬かせてから再度口を開いた。


「自ら、王都を出て行かれたのですか……?」

「ボルジアナは、あの事件以降、国に不信感を抱いていたし、城からも警戒されていた。どこに行ったのか見当は全くつかないが、自ら出て行った可能性の方が高い」


 ボルジアナ先生……。


「とりあえず、君が無事に学園に戻ってきてくれて、何よりだ。ルビーフォルンは、大丈夫だったみたいだな。……グローリアは、どうしていた?」

 どうやら、実の妹のことが気になるらしい。

 トーマス先生はそう言って、そわそわした様子で視線を窓の外に移した。

「奥様は、炎の魔法を使われてから、すっかり元気になりましたよ。今まで寝たきりだったのが嘘みたいに。最初は火魔法を使うのをためらってましたけれど、トーマス先生から頂いたマッチ箱が、良いきっかけになったみたいです」


「そ、そうか……」

 そう言って照れくさそうに顔を下に向けたトーマス先生。

 お照れになっておられる。


「それにしても、自分に合わない魔法を行使する魔法使いの負担って相当なんですね。奥様、植物精霊魔法を使っていた頃は寝たきりだったのに、今は随分と回復しました。というか、むしろ、火魔法を使い始めたあたりから、より元気になったような感じもします。魔法って不思議ですね」

 私が何気なく言ったその言葉に

 何故か七三校長先生は、目を爛々と輝かせて口を開いた。


「そうなのだ! 魔法使いは、例えるなら、魔力を魔法に変換させる網目状の、ザルのような変換装置なのだ。精霊使いの場合は、精霊に魔力を送ることで、力を発揮するが、その際、空気中の魔力を精霊に渡せる魔力に変換している。精霊使いは、網目状の魔力変換機能そのものなのだ。自分たちを通して精霊に魔力を送る。精霊はそれを吸収して力を発揮してくれる。だが、合わない魔力に変換しようとむりやり通そうとすると、魔力変換機能を果たすザルの目が目詰まりしてしまう。それが体の不調の原因だ。自分たちの得意な魔力でも使いすぎれば磨耗し精神をすり減らすが、だからと言って、魔法使いが魔法を全く使わないというのも、網目が錆びて体に不調をきたす。魔法使いは、意外と繊細なんだ」


「そ、そういうものなのですか」

 なんだか、七三の先生の勢いが凄くて、びっくりしたけれど、話の内容自体は初めて聞く内容だし、興味深い。


 なるほどね、魔法使いは網目のようなもの、か……。

 となると、私が使う生物魔法も似たようなものなのだろうか。

 確かに、生物魔法を使うときも似たような感覚がある、かも。


 トーマス先生は空気中の魔力を精霊に与えるために変換させるって言っているけれど、私はどちらかというと、体内にある何かを変換させている感じがする。

 体内にある何かは、たぶん魔力だと思う。おそらく自分の中にある魔力を変換させて、魔法を行使してる。

 私の場合、魔法を使うとものすごくお腹がすくのだけど、それは体内の魔力が減るからだろうか。となると、体内の魔力は、食事で補える何かなのだろうか……?


「まあ、先ほどの話は正式なものではなく、私の仮説だが。最近は、火魔法のみならず、他の魔法にも興味が出てきたので、全体的に研究している。魔法とは何か……奥深い。奥深いテーマだ。私は生涯をかけてこのテーマに挑むつもりだ!」


 とトーマス先生は、目を輝かせて、今後の抱負を語り始めた。

 火魔法大好き人間トーマス先生は、色々と心境の変化があったようで、興味が火魔法だけでなく魔法全体にまで広がったらしい。

 研究熱心だこと。


 しかし、トーマス先生の話は興味深かった。

 初めて聞いた話だとは思ったけれど、公式の見解ではなく、トーマス先生の仮説の話か。

 でも、なんとなくその理論は的を射ているような気もする。

 魔法使いは網目のようなもの、か……。


「先生、今後も魔法の研究、頑張ってくださいね。応援してます」

「ありがとう。リョウ君。あ、そうだ、君にあったら、伝えようと思ったことがあったんだった」

 と、ついでのようにトーマス先生がおっしゃったので、何だろうと思って耳を傾けた。


「城から召集がかかっている。マッチのことについて陛下直々に話があるらしい」


 へー城からの召集で、陛下直々の話かぁ。


 ……。



 ってなについでみたいに話してるの!?

 城からの召集!?

 陛下直々!?

 嘘でしょう!?


「え、ちょ、城から、陛下直々にですか!?」


「ああ、そうだ。まあ、悪い話じゃないだろう。何か褒められたりするんじゃないか? よくわからんが」


 いや、なんでそんなに呑気そうなの!?


「まあ、それはそれとして、さっきの魔法使い理論についてなんだが、魔術師についても、精霊使いと近しい考え方で捉えることができると考えているんだ。つまり魔術師も変換する網目状の……」


「いや、ちょ、ちょっと待ってください、トーマス先生!」


「ん?私の網の目理論に何か穴でも?網目だけに」

 いや、なにさりげなく上手いこと言ったみたいな顔してんの!?

 別にそこまで上手くないからね!

 

 って、それどころじゃない!


「じゃなくてですね! 城からの召集のことですよ。いつですか?」

「これといって、日付の指定はないが、早い方がいいだろうな」

「そうでしょうね!」


 私は、その後、どうしても魔法使い網の目理論を話したくてたまらなそうなトーマス先生から、なんとかお城側への連絡の取り方なんかを確認した。


「後ほどリョウ君の意見も聞かせてくれ。私の網の目理論に穴はないとは思うがね。網目なのに」


 と、私が慌てて校長室を退室する間際、トーマス先生が最後にキメ顔で言い放った。


 どうやら、火魔法大好き教頭先生は、網目大好き人間にシフトしたようだ。


前書きにも書きましたが、

【転生少女の履歴書4巻 5月31日(水)発売】

が決まりましたので、活動報告にも告知を書きました!

表紙が本当に素敵なので、見てもらえると…!

このまま下にスクロールすると表紙の画像が出てますので、見てみてください! 太もも!


書籍版/web版ともどもよろしくお願い致します!

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