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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第四部 転生少女の独立期
173/304

商会長編⑦ レインフォレスト家の愉快な人々

 屋敷の玄関前で、コウお母さんとも合流して、早速伯爵邸の客室に案内された。

 ちなみに同行してくれた護衛の皆さんやシュウ兄ちゃんは、別棟で待機してくれている。


 しばらく、案内された客席で、お茶を飲んだり、コウお母さんとお話して待っていると扉がバンと開いて、アイリーンさんが現れた。


 確かに軽く杖をついて歩いてはいるけれど、見た感じ軽そうなお怪我でホッとする。


「アイリーン奥様、お久しぶりです」


「ええ、リョウさん、久しぶりね。ああ、あえて嬉しいわ」


 そう言って再会の抱擁をすると、後ろにアイリーンさんの夫のカーディンさんがいて、同じように再会の抱擁をした。


「お二人がご無事でよかったです。アイリーンさんの足は、その、大丈夫ですか?」

「ええ、もうほとんど治ってるのよ。一応念のために杖を持ってるだけ」

「ダメだよ、アイリーン、僕のかわいい妖精さん、無理は禁物だ。ちゃんと自分の体は大事にしないとね。ああ、君の痛みがすべて僕に移ればいいのに!」


 そう言ってカーディンさんが、見てるこっちが恥ずかしいぐらいの甘ったるい目でアイリーンさんを見つめると

 アイリーンさんも見つめ返して「もう、ディーンったら、過保護すぎよ。こんなの平気」と恥ずかしそうに笑った。


 あー、うん。

 どうやらお二人の仲も今まで通り順調そうで何よりでございます!


 なんだか見ていられなくて視線をそらすと、なんとチーラちゃんもお部屋にやってきた。


「リョウお姉様ー」

 とよんで私に体当たりしてきたので、私は屈んで抱きしめる。


「チーラちゃん、お久しぶりです。元気でしたか?」

 ていうか、大きくなったね! いまは6歳ぐらいかな?


 チーラちゃんは元気いっぱいの笑顔で私を見上げると、「リョウおねえ様、会いたかったの! しばらくこちらにいるのでしょ? また遊んでくださるの?」と言ってきた。


 うん、数日お邪魔するつもりだけども、というか言葉遣いがちょっと一丁前になってきてる!

 ものすごいご令嬢感!


 子供の成長具合に驚きを隠せないでいると、また新しく誰かがやってきた



「やあ! リョウ、いや、ルビーフォルン商会の商会長殿! ずっと会いたかったんだよ! 色々聞きたいことがたくさんあってね!」

 と、クロードさんがすごい勢いで話しかけてきた。


 きたきたー。くると思いました。

 クロードさんの目がギラギラしている。

 わかってる。わかってますよ。蒸留酒のことと、あとマッチのことでしょう?

 話します。

 話しますから。


 そして、ガシっと二人で、再会の握手を交わしていると、ぼそっとクロードさんが、


「じゃあ早速今日の午後時間作ってくれるね?」と、有無を言わせない口調で言ってきた。


 今日の午後って、今まさに今日の午後なのですが! 少しはゆっくりさせてくれないだろうか。こちとら結構な長旅で疲れてるのよ……。


 そして、新たな入室者が、そんな勢いあふれるクロードさんの肩に手をおいた。


「クロード叔父様、リョウは先ほどついたばかりで疲れているはずです。しばらくこちらに滞在する予定もありますし、そんなに急がなくてもよいのでは?」

 と、困ったような笑顔で私のフォローをしてくれたフォロリストカイン様!


 さすが! そのフォロー能力は衰えることを知らない!

 絶妙なタイミングで現れて、テンションの高いクロードさんに声をかけてくれたカイン様、素敵。


 しかしクロードさんは一筋縄ではいかない。

 甥っ子の止める言葉にも耳を貸さずにむしろフォロリストカイン様に食いついてきた。


「カイン君! 君は何もわかっていないよ。リョウがやったことがどれほどの功績なのか!なんでそんなに冷静でいられるのか不思議だ!」


 とクロードさんが、オーバーなリアクションとともに返す。

 しかし、そんな叔父の奇行なんて慣れっこなのか、カイン様はいつもの爽やかスマイルを浮かべた。


「私だって冷静なわけではありません。どうして冷静でいられるでしょうか? リョウがこうやって無事な顔を見せに来てくれたのですよ? 私は嬉しくて、天にも昇りそうなほど心が舞い上がってしまっております。まずは、私の舞い上がった心と、リョウの疲れを落ち着かせる時間をくださいませんか?」

 カイン様はそう言って微笑んでくれた。


 な、なんてことだ!カイン様ったら、フォロリストレベルどころか、

 ポエマーレベルも上がっていらっしゃるご様子!


 というか、ちょっと、なんか、あまりにもポエムチックだし、貴公子然として微笑まれると、私、ちょっとなんか恥ずかしくなっちゃう。


 思わず視線を外すと、いつの間にか隣にアランがいた。

 いつの間にか、いた。隣にだ。

 いつも通りの忍びスキル具合である。


 忍びマスターアランは、なるほどーみたいな顔をしてカイン様の方をまっすぐ見ている。

 カイン様のフォロー能力に恐れをなしているのかもしれないけれど、あれは、なかなか真似できないと思うよ。カイン様だからこそ、言える言葉というか、許されるというか……うん。


「カイン君は、カーディン殿似だねぇ」

 とクロードさんはしみじみとカイン様に言葉を返して一つ大きく息を吐いた。


「しかし、確かに私も焦りすぎた。リョウも、ルビーフォルンからここまで馬車できてくれたんだ。もう少し落ち着いてから、商売の話をしようか」


 落ち着きを取り戻したクロードさんがそう提案してくれたので、笑顔で私も返す。

「はい、お気遣いありがとうございます」


「うん、じゃあ今日の夜ね。よろしくね」


 いって今日の夜かい!

 早速本日かい!


 まあ、でもこれでもクロードさんにしては我慢したほうなんだろう。

 カイン様の方を見れば、すまなそうな笑顔で微笑んでいる。


 多分、『ごめん、クロード叔父様をこれ以上止めることはできない』的な感じだ。

 いいんです、いいですカイン様。

 お昼だけでもゆっくりさせてもらえてありがたいっす。


 それからは、軽食を食べながら、ひっさしぶりにレインフォレスト一族と楽しく会話することになった。


 何気ない会話の中に、大雨で結界が崩れた当時のレインフォレストの窮状なんかを聞いた。

 今でこそ魔物の被害は落ち着いたが、やっぱり最初は大変だったらしい。


 そこで活躍してくれたのが、学園から帰ってきた生徒達だったのよ、と嬉しそうにアイリーンさんが言ってくれた。

 彼らがいなかったら、今こうやってゆっくり過ごすことや、最悪無事ではいられなかったからもしれないとのことだ。


 そうでしょう。我らが学園勢はすっごく頼もしいでしょう!?

 私も学園を守る時はとっても頼りにしていた。


「それにその子たちが持ってきてくれた『約束された勝利の火種』のおかげで随分助かったのよね。後ほどルビーフォルン商会の方から追加で頂けて、本当に助かったわ」

 とアイリーンさんが、麗しい笑顔でそうお礼を言ってくれた。


 あれ? 約束された勝利の火種……?


 そういえばと、領地にマッチ等を届けさせていた商会の人が言っていたことを思い出す。


 マッチは約束された勝利の火種、お酒は約束された勝利の美酒、ルビーフォルン商会の家紋は約束された勝利の女神の印と呼ばれてるとか。


 本当に、呼ばれてるんだ……。


「せ、正式名称は『マッチ』というのですが、お役に立てたのなら何よりでした」


 こっそりと訂正を試みては見るものの、アイリーンさんは「ええ、本当に助かったわー」といったぐらいでマッチという商品名には反応しなかった……。





短めだったので、GW入る前に、もう一話更新する予定です!

よろしくお願いします!


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