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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第四部 転生少女の独立期

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起章 とある商会長とルビーフォルン商会

お久しぶりです!

お待たせいたしました!

ぼちぼち更新再開です!

今話はリョウ視点ではありませんのでご注意を!

次回からは、リョウ視点です!


ちなみに今回出てくる人は、初出の方なので、

出てくる人、みんな知らないやつらでございます。

やっべー久しぶりの更新でキャラ忘れちゃったー読み直そうかなー

と思って読み直しても、出てきてませんのでご注意ください!





 末の娘を前に乗せ、久しぶりに馬をのんびり走らせ、家路を進む。

 結界が壊れてからというもの、慌ただしく時は過ぎていき、こうやって娘と外に出かける時間もなかなか取れなかった。

 やっと6歳になったばかりの娘は久しぶりの乗馬に楽しそうにはしゃいでいた。 


「お父様! みてみて! あの馬車、約束された勝利の女神様の印がついてる!」

「約束された、勝利……?」

 娘に言われて、娘が示した場所を見た。 

 するとそこには、ルビーフォルン商会の紋を背負った馬車が停まっている。

 馬車の持ち主であろう女性が近くで待機しており、私に気付いて恭しくお辞儀をした。


 なんと! もう来られていたのか! 


「ルビーフォルン商会の方ですかな!?」

 慌ててそう声をかけて、馬から降りる。

 娘を馬から降ろす時に、「マリーナ、あれはルビーフォルン商会の紋様だよ。大事なお客様だ。粗相のないように」と小声でそう言い聞かせたが、娘は馬を降りるやいなや、ルビーフォルン商会の馬車のところまで駆けて行って、「すごいすごーい」と言ってキラキラとした目で馬車の天幕に縫い付けられた紋を見始めた。

「こら、マリーナ。失礼だぞ!」

 思わずそう声をかけたが、ルビーフォルン商会の方が、「いえいえ、構いませんよ。子供が元気なことは良いことです」と言って人のよさそうな笑みを浮かべた


「申し訳ない。それに、お待たせしてしまったようで」

「いいえ、先ほど到着したばかりです。それにこちらが、お約束の時刻よりも早く来すぎてしまいましたから」

 そう朗らかに笑う女性にほっと胸をなでおろす。


「寛容なお心に感謝を。私は、モーリック商会の商会長ガルビン=モーリックです」

「私はルビーフォルン商会のアリーシャです。どうぞよろしくお願い申し上げます」

「こちらこそ。ルビーフォルン商会の方々とは、末永く良いお付き合いがしたいものです。取り合えず屋敷の中へ。お疲れでしょう」

 そう言って、屋敷の中に招こうとしたが、アリーシャ殿は首を横に振った。


「せっかくのご厚意ではございますが、このままいけば、明日中にでも隣の領地まで足を運べそうなので、例の物をお渡ししたらそのまま進もうと思っております」

 そう言って、商会の方はすがすがしく微笑んだ。

 護衛がいるとは言っても女性の身ながらの長旅。滅入ることもあろうに。

 今までルビーフォルン商会の方と何度かお会いしたが、どの方も大変丁寧で好感が持てる。

 商会長のしつけが行き届いているのだろう。


「そうでしたか……。いや、仕事熱心でおられる。ルビーフォルンは実に素晴らしい人材が多い。では、早速積荷を運ばせていただきます」

 私はそう言って、屋敷の使用人を呼び寄せた。

 ルビーフォルン商会が運んでくれた荷物を確認するよう指示をだす。


「道中はいかがでしたか? 一部ではまだ魔物が出ると聞いておりますが?」

 使用人たちが荷物を降ろしている間、アリーシャ殿にそう問いかける。

 

「おかげさまで、今回の旅では一度も魔物に遭遇することなく無事に進むことができました。大通りは比較的安全のようですね。これもすべて、神聖なる尊きあの……ゴホン、失礼しました。天運に恵まれたのでしょう。それに、どの領地も最近では比較的魔物の被害は落ち着いてきているようです」

 そう言って、アリーシャ殿は微笑まれた。


「そうでしたか。いや、よかった。一時はどうなるものかと思いましたが、おかげさまでこちらの被害も落ち着いて、今日は久しぶりに娘と馬乗りをしたのです」

 そうやって、たわいない話の中で、他の領地の現状やこちらの領地の現状を確認し合っていると、アリーシャ殿が姿勢を正して、申し訳なさそうに眉を寄せた。


「モーリック様には一つお伝えしないといけないことがございます」

「なんでしょうか?」


「もしかしたら我が商会からのマッチ等の支援物資のお渡しは今回が最後になるかもしれません。もともと魔物の被害が落ち着くまでという目安でしたので」

 そう言って、深く頭を下げるアリーシャ殿に慌てて止める。


 頭を下げて謝られる立場ではない。

 むしろここまでしてくれたことへの感謝しかないのだ。


 ルビーフォルン商会は、魔物に対抗するために必要なものを無償で提供していた。

 いや、無償というわけではなく、国から前金をもらっているということだったが、それでも各領地に馬車を走らせてその復興のために全力を尽くしてくれていたのは確かだ。

 私どもが暮らすこの領地がいま落ち着きを取り戻してきているのは、ルビーフォルン商会のおかげと言っても過言ではない。


 最初、ルビーフォルンから、荷馬車が来たときは驚いた。

 ルビーフォルン領からここまで逃げてきた商家なのかと思ったら、そうではなくルビーフォルン領から魔物対策のための支援物質を運んできたというのだ。

 魔物の被害で、滅亡していてもおかしくないと思われたルビーフォルンから、まさか逆に救われることになるとは思いもしなかった。


「頭を下げないでくだされ。むしろここまでのものをくださったルビーフォルン商会には頭が上がりません。魔物の被害を抑えられたのも、間違いなく『約束された勝利の火種』のおかげでしょう」

 私がそういうと、アリーシャ殿は首を傾げた。


「約束された勝利の火種、ですか?」

「ああ、失礼、マッチというものでございましたな。すみません、私の子供らが、そう呼ぶものですから、ついつられてしまって」

ハハハと笑って頭をかいた。


アリーシャ殿は特に気分を害する様子もなく、さようでしたかと言って頷く。


「確かに、マッチは魔物に対する対抗策として、素晴らしい成果を上げています。勝利を約束した道具と呼ばれてもおかしくはないですね」

 子供たちの発想に二人で笑い合うと、私は改めてアリーシャ殿に向き合った。


「アリーシャ殿、支援物資の件はここで終了とのことですが、ルビーフォルン商会とは今後もお付き合いしていきたいのです。特に、お酒とマッチを我が商会でも取り扱いたい。どうでしょうか? これからこの国に住むものにとって、お酒もマッチも生活必需品となりましょう。現在は、レインフォレスト商会のみとの取引とのことですが、ぜひ、我が商会と直接取引させていただきたい」


 私が前のめりになりながらそういうと、アリーシャ殿は柔らかく微笑んだ。


「ありがとうございます。私共の商会長にモーリック商会長からそう言ったお話しがあったと申し伝えます」


「ええ! ぜひ! ぜひお願い致しますよ!」


 そう言って念を押して、アリーシャ殿の手を取って固く握手を交わす。

 ここで、ルビーフォルンとの取引が始まるかどうかで我がモーリック商会の今後にも必ず影響する。


 私の熱意が伝わっているのかいないのか、アリーシャ殿は依然穏やかな笑顔を浮かべるのみ。

 しかし、しばらくして、ハッと何かを思い出した顔をした。


「モーリック様、実はお渡ししたいものがあったのです」

 アリーシャ殿はそう言って、荷馬車の中から樽を持ってきた。


「今回が最後のお渡しということで、こちら我が商会長からモーリック様への贈り物として預かっております。ルビーフォルン領で新しく作ったお酒でございます。今までのお酒とは違う味わい。ぜひご賞味ください」


「おお、お酒! しかも新しいというのは!?」


「ご賞味いただければ、今までのお酒との違いを感じてくださるでしょう。果実水と割ってもおいしくいただけます」

「なんと! いやー、実は私最近お酒に凝っていまして。比較的手軽に入手できるようになってからというもの、色々な時期のお酒を集めていて……いや、これは嬉しい! ちなみに新しいお酒ということですが、名前は決まっているのですか?」


「商会長は蒸留酒という種類であるとおっしゃってましたが、銘柄はまだ。今まで作っていたお酒も、柿から作れば、柿酒、山葡萄から作れば葡萄酒とそのままの名前を使っていたので、今回も蒸留酒という名前になるかもしれませんが……。今のところは未定ですので、現在は樽にルビーフォルンの家紋だけ彫っております」


 アリーシャ殿がそういうと、先ほどまで馬車に縫われたルビーフォルン商会の紋を楽し気にみていた娘のマリーナが、突然こちらにやってきた。


「マリーナ!」

 私がそう呼びかけたが、娘は気にした様子もなく、樽に刻まれたルビーフォルン商会の印を指して、笑顔でこちらを仰ぎ見る。

「ここにね、約束された勝利の女神様の印がついてる!」

「だから、マリーナ、それはルビーフォルン商会の紋だよ」


「違うよ! 約束された勝利の女神様の印だって、ランドルフ兄様は言ってたもん!」

 また、ランドルフか。

 もともと娘が約束された勝利の何とかと言い出したのは、学園に通っている息子のランドルフの影響だ。

 魔物の災害で、家に帰ってきた息子は、妹にルビーフォルンの学友の話をしており、そのせいで、マリーナはルビーフォルンの家紋を約束された勝利の女神の印と思い込んでいる。

 息子に聞いたら、ルビーフォルン出身の学友のあだ名だという話だ。


 アリーシャ殿は穏やかな女性だから、自領の家紋を別の名前で呼ばれたぐらいで、怒らないとは思うが、と思ってアリーシャ殿に娘の非礼を詫びようとして、思わず固まった。


 アリーシャ殿の顔が険しい。


「約束された勝利の……女神? それは随分と大層なお名前でございますね」

 そう言ったアリーシャ殿の言葉もどこか不穏な色を匂わせていた。

 今まで穏やかな口ぶりだったので、思わず目を見張る。


「女神というのは、恐れ多い表現では……。もし本物の尊き方が聞かれたら……」

「ア、アリーシャ殿?」

 突然物思いにふける様子のアリーシャ殿に思わず声をかけると、彼女はハッとしたように顔をあげた。


「いえ、申し訳ありません! すこし考え事をしてしまいました。女神というのは、恐れ多すぎるかなと。本物の尊き方が聞かれたらあまり良い気分はしないのではと思いまして」

 アリーシャ殿はごまかすようにそう言って笑っているが、本物の尊き方とは……。


 思わずまじまじとアリーシャ殿をみている私の横に使用人が荷物の運び出しが終わったと知らせに来てくれた。

 ルビーフォルン商会からの物資を、この領内の要所にいきわたらせるのは私の仕事だ。


「それではお預かりいたしました。あとは私共にお任せください」

 アリーシャ殿もそれを聞いて、また最初のような穏やかな雰囲気に戻って、「よろしくお願いします」と言って丁寧に腰を折った。


先ほどのアリーシャ殿の不穏な雰囲気は私の思い過ごしだろうか。


 彼女は、「今後の取引のお話は、また後日別のものをよこします」とだけ言いおいて、荷馬車に乗って去っていった。


 それにしてもルビーフォルン商会は急激に大きくなった。

 商会長はかなり若いと聞いてはいるが……そのうち商人ギルドの筆頭10柱に指名されるのではないだろうか。


 今後のことも考えると、ぜひ取引を行えるように準備をしておかなければ。

 だが、それよりも今は。


 酒だ!


 近くに待機していた家令が、心得ておりますという風に、酒樽を屋敷に運んでいく。

 早速試飲をしなければ。ルビーフォルンの新しいお酒。


「さあ、マリーナ、家に帰るよ」

 愛娘を腕に抱えて弾む足取りで進んだ。


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