神殺しの剣と魔物編③ プロジェクトR-魔を封印せし者達- (後編)
おはようございます!
今日が何の日か皆さまご存知ですか?
なんと本日は、転生少女の履歴書3巻の発売日ですよ!
ナ、ナンダッテー!? ホンヤにイカナキャー!ナキャー!
はい、宣伝でした!
これからweb版の本編ですが、昨日も一話更新してますので、
いつも最新話から読んでいる方はお気を付けください!
「セキさん、魔物は私たちが引き受けるので川の結界のところまで行ってください。それで川の結界作成の続きをお願いします。魔物をそこに誘い込んで、タイミング良く川を引き込めば……封じられます。もし可能なら、結界内に魔物の動きを少しでも止めることができるもの、例えばそこまで深くなくてもいいので落とし穴なども用意してくれると助かります」
打ち合わせなしで、やるにはちょっと大変そうだけど……と思いながらセキさん達に提案したところ、セキさんは力強く頷いてくれて、少しホッとする。
「準備が整ったら、煙玉に火をつけてください。それと、双眼鏡も。魔物が中に入ったら、川を引き入れてください。一応私も何か合図を送ります」
そう言って、煙玉を念のため3つとマッチ箱に双眼鏡を手渡した。
セキさんはそれを受け取ると、隣のリュウキさんに軽く声をかけて早速離脱するために馬の腹を蹴って私達とは違う進路、結界作成途中の工事現場へと向かってくれた。
健闘を祈ります!
そして、私は魔物に私たちのほうについてきてもらうために、弓を引き絞って、魔物に矢を当て気をひく。
最初セキさん達の方に顔を向けていた魔物だったけれど、矢が顔のあたりに当たった魔物は私をじろりと睨んだ。どうやら、気をひくのには成功したようだ。
そのまま魔物に追いかけられながら、進んでいくと川の結界が見えてきた。まだ合図の煙が見えないので、少し遠回りするような進路を選ぶ。
煙が見えたら、曲がってあの場所まで一直線だ。
ところどころ、魔物が失速するように、馬の機動力を活かして木がたくさん生えたところを通ったりもしたけれど、魔物は木なんか全部普通になぎ倒して進んだり、結構長い手足が甲羅のなかに引っ込んでるようで、器用に手足を伸び縮みさせて障害物を乗り越えていた。
なにあれ、めっちゃ怖いんだけど。音とかすごいし。
魔物に追いかけられているという状況が、馬にとってもすごいプレッシャーになっているようで、少し疲れが見え始めた。
馬上の私たちも、常にドギマギしてるもんで、息が荒い。
何度も結界を引く場所を見て、煙が上がってないかどうかを確認する。
時間的にはそれほどたってないのに、ものすごく長く感じて何度も見てしまう。
そして、まだかな、まだかなと何十回も確認して、ようやく空に立ち上がる狼煙を見ることができた。
「狼煙が上がりました! 戻ります!」
そう言って、馬の腹を蹴って、煙が立ち上がった方向に曲がる。
魔物も問題なくついてきてる。あの亀、亀のくせになかなか小回りがきく。
とりあえず! このまま突っ走る!
そう思って、無我夢中で馬にしがみついてお馬さんに頑張ってもらおうとしたけれど、ちらりと後ろの魔物の様子を見たときに、ぎょっとした。
魔物の進むスピードが速くなった。というか、馬の疲れが限界に来ているのかもしれない。
それにさっきまでは、木々の間を通っていたから、いい感じに障害物があって、魔物は速く進むことができなかったというのもある。
でも、川原の近くのこの周辺は、障害物が……あまりない。
地響きのようなものすごい音を立てながら追いかけてくる巨体。
よくみれば、魔物は頭を振り子のようにグラグラと振っている。あの首の振り子みたいな動き……すごく嫌な感じがする。
でも、もう突っ走ることしかできない。
走ることに集中していたら、前方に、溝が見えた。セキさん達が作ってくれた堀だ。そこまで大きくない堀なので、馬で簡単に飛び越えられる。
魔物にとっても、今まで木々をばったばったと踏みつぶしながら進んでいたし、何より甲羅の中に思いのほか長い手足を隠し持っているので、これぐらいの凹凸ぐらいなら、気にせず進むはず。
魔物がこの溝を越えれば……。
思いっきり馬をかけさせて、セキさんが掘った溝を飛び越えていく。
あとは、魔物がこちら側に入ったら、セキさんに川の水を流してもらうだけ……。
と、思っていたら、後ろから追いかけてきていたはずの魔物の地響きがやんだ。
まさか、結界に入る前に立ち止まった!?
私は慌てて後ろを振り返ろうとしたその時、私の隣を併走していたアズールさんが、馬から投げ出され、宙に舞ったのを見た。
アズールさんは、前に飛んでいき、バランスを崩したような馬は、なぜか後ろに引っ張られるように下がっていく。
馬のお尻にあの亀の魔物が噛み付いていた。
魔物の首が、まるでゴムのように伸びて、アズールさんの馬のお尻に噛みついていたのだ。そして馬に噛み付きながら魔物の首が甲羅の方へ戻っていく。
あの魔物、手足も長かったけれど、甲羅の中にあんなに長い首を隠し持ってたのか……。あの不吉に感じた振り子のような動きは、勢いづけるための動作……!
「アズールさん!」
アズールさんが大きな音を立てて、地面に打ち付けられた。
私は馬から飛び降りながら、他者を治療する魔法を唱える。
チラリと魔物の様子を見れば、くわえた馬をおもちゃのように地面に打ち付けて遊んでいた。あいつ……いい趣味してる!
親指を歯で切って、血を出してアズールさんの口のなかに血を出した指を突っ込む。
血を直接体内に入れるほうが魔法のオーラのようなものの周りが早く、傷も早く回復するということを、今までの経験で学んでいた。
アズールさんの口に指を突っ込みながら、オーラの動きや、アズールさんの様子を確認する。
体を強く打ち付けて意識を失っているように見えるけれど、命に別状はなさそうだ。
ただ、骨がいくつか折れているのかもしれない。肋骨の辺りで、魔法のオーラがより集まっている。
治癒の痛みで、アズールさんの体が電気ショックを受けたようにビクリと動くが、今は治癒の魔法が完治するのをゆっくり見ていられない。
「アズールさん、我慢してくださいね」
まだ治癒中のアズールさんの体を肩にかける。
すると、コウお母さんが、馬を寄せてきてくれたので、手伝ってもらってアズールさんをその馬の背に乗せた。アズールさんが倒れないように、支えられるような形でコウお母さんの前に座らせる。
そうこうしていると、魔物が馬を弄んでいたドスンドスンという叩き付ける音が聞こえなくなっていた。
視界の端に、溝の向こう側にいるあの魔物が、こちらに顔を向けながら、首をまた振り子のような動きをしているのが見える。
「リョウちゃん、はやく!」
そう言って、騎乗中のコウお母さんが、私に手を差し伸べる。
私はその手を握り返そうと腕を伸ばした。
でも、亀の顔がこちらに向かってくるのが、なんとなくわかった。
私はコウお母さんに手を伸ばしながらも、身体能力を上げる呪文を唱え、そして思わず目をつぶった。
来るべき衝撃に備えるために。
でも、いつまでたっても痛みがない。
ただ、ドスっという何かがぶつかった音と、『キィイイ』という耳障りな叫び声のようなものが聞こえてきた。
魔物の首が私に向かってきたような気がしたけれど、まさかコウお母さんの方!?
私は目を開ける。目の前には、コウお母さんの手。私はゆっくりと握る。
そして、コウお母さんの顔を仰ぎ見る。
コウお母さんが襲われている様子はない。アズールさんも馬も無事だ。
でも、コウお母さんは、驚きで目を見開いて固まっていた。
私はコウお母さんの視線の先を見る。
信じられない光景が広がっていた。
亀魔物の頭に上から大きな剣を突き刺している人物がいる。
魔物は口を開くことができずにもがき苦しむように首を動かすが、その人物は首に跨りその剣にしがみついて揺れに耐えていた。
そして、そのまま亀の首が甲羅に収納されていく。
だが甲羅に頭を突っ込むには、剣がつっかえて入らない。苦しいそうにまたキイイ、キィイとなく。
剣をつきさしていた人は、甲羅の上に乗って、腰に下げていた二本目の剣を取り出し、ざすざすとその首に剣を差し込んで、そのままその首を切り落とした……。
そして魔物は右側に傾いた。
右側を見れば、そこにも別の人物がいて、魔物の足を切り落としていた。今度は手の方を切ろうとしている。それに左側にも人が立っている。
左側の人が口を開けた。
「親分、よくこいつに剣差し込めたっすね! めっちゃかてぇじゃないっすか!」
「てめぇは根性が足りねぇんだよ。見ろ、ガイはきっちり仕事してるじゃねぇか」
「……クワマルは、筋肉が足りない」
「うるせぇ! この筋肉バカ!」
信じられない気持ちだった。
だって、とても、懐かしい声だ。
そうだ。あれは、親分たちだ。アレク親分とガイさんとクワマルさんだ……。
だって、あのスキンヘッドに、泣く子も黙るような風貌……私が親分を間違えるはずがない。
書籍版発売記念の更新なので、多分、明日か、明後日も更新する気合ではいます!気合。
書籍版、昨日早売りしてないかなって思って本屋覗いたら、まだ入荷されてなかった悔しみ。
今日こそ本屋で新刊が並んでるところを見て、ウェブの更新も頑張るんだ…!
ということで、web版も書籍版もよろしくお願いします!
ちなみに3巻で一番驚いたのは、モノクロ挿絵に七三の教頭先生が載ってるのですが、
めっちゃイケメンだったことでございます。しぶいけめん!









