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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第三部 転生少女の救済期
134/304

帰省の旅編⑥ あなたと私で〇〇コンビ

今回、懐かしい人が唐突に登場するので、あとがきに登場人物紹介を載せておきます!




 カイン様の荷物をルビーフォルンの馬車に移動させたりなんだりしてから、アラン率いるレインフォレストの一行とはお別れ。彼らはレインフォレストの屋敷へと向かって旅立っていった。

 

 カイン様が一緒に来てくれることになって、だいぶこれからの旅の計画が楽になった。気持ち的にも。

 けれどもやっぱり御者役はほしい。あともう一人か二人いてくれたら色々とやりやすい。

 せっかく人を雇う目的で、この街にきたのだし。ということで、馬車にはカイン様を見張り役としていてもらって、私とコウお母さんとで人身紹介所に向かうことにした。


 ルビーフォルン行きで危険だよという求人情報を開示した上で、それでも名乗り出てくれる人がいたら雇うつもりである。


 目指す人身紹介所に到着し、ちょっとそわそわしながらも中に入る。

 レインフォレストの人身紹介所は、王都のお店ほど豪華でも綺麗でもないけれども、清潔感のあるしっかりとした建物だった。


 受付のようなところで、欲しい人材と予算を提示して渡すと、少し待ってもらえるように言われたので待合室で待機。

 お店の様子を見てみると、意外と人がいて、盛況している。

 この街には、まだ魔物の脅威が訪れていないが、魔物が結界から抜け出しているという話は広まっており、その護衛役を探してる人が多いみたいだった。

 この分だと、わざわざルビーフォルン行きの求人に名乗り出てくれる人はいないかな……と思っていたけれども、しばらくして、お店の人がやってきた。


「いい人がいましたので、ご案内します」

「え、その人は、ルビーフォルン行きに了承してくれたんですか?」

 思わず確認した。だって、無理かなって思ってたところだもの。


 マッチのおかげもあってお金はたくさんあったから、お店側には、結構なお金を提示していた。提示してしまった後に気づいたけれど、そのせいで、お店の方が無理やり嫌がる人を私に紹介してくるんじゃとちょっと思ったのだ。


 だから、ルビーフォルン行きにちゃんと承知してくれた人なのかどうか、お店の人が嘘を言っていないかどうかを確認するために質問を投げたけれど、答える店員さんに後ろ暗いような様子は見られない。


「ええ、ルビーフォルン行きには、承知してます。なんでも、知り合いがその領地にいるような気がすると言って、むしろ乗り気です。15、6歳の少年で、御者の経験はあるようですから、条件にもあっております」


 お店の人は嘘を言っている様子はない。本当にルビーフォルン行きに承知してくれた人がいたみたいだ。

 コウお母さんと向き合って、笑顔で頷く。よかった。一人でも御者がいてくれたら、助かる。


 どんな人だろう。15、6歳と言ったら、カイン様と同じぐらいだ。

 そして、お店の人に案内されるまま、部屋に入った。


 細身の少年が部屋の中にいた。おそらくこの少年がお店の人が紹介してくれた今回の求人に見合った人物なんだろう。

 そして、その顔をみて思わず固まる。


 誰かに、似ている。すごく、見たことがある。


 前情報通り15歳ぐらいの少年だった。

 彼の生意気そうな目が、私を見る。


 私と同じ金髪で、同じ瞳の色。


 ガリガリ村の……サブロウ兄さんに似てる。でも、そんなはずがない。

 サブロウ兄さんは、今はもう15歳をとうに越してるはずだ。


 彼も、私の顔をみて驚いた顔をした。

 襟足が妙に長い髪型は初めて見たけれど……あの、今にも鼻くそをほじり出しそうな生意気な顔にはやっぱり覚えがあった。


「……シュウ兄ちゃん?」


 私は、自分の3つ上の兄の名前を思い出して、そう声をかけた。

 シュウ兄ちゃんらしき人は、私が声をかけると驚いた顔をして一歩下がる。


「お前、まさか、俺の妹の……」

 そう言って、驚いた顔は、やっぱりシュウ兄ちゃんだ。

 なんで、こんなところにいるのだろう……。

 シュウ兄ちゃんも私みたいに、売られて……?


 驚いた顔から小難しい顔に変えて言葉に詰まっていたシュウ兄ちゃんが、もう一度口を開いた。


「確か、えーと、キョウか!?」

「リョウです!!」


 おい、さっきなんか言葉に詰まってたのってまさか私の名前を思い出せなかったからじゃないよね!?

あなたと私で、『終☆了コンビ』だったでしょ!?


「そうだそうだ。リョウだ。わりぃわりぃ、だって、ほら、お前いなくなった時、俺、まだ7、8歳ぐらいなんだからしょうがねぇよ。で、どうだ、元気してたか?」

 なんか、突然の再会のはずだけど、シュウ兄ちゃんは特に感動した様子もなくあっけらかんとそう言ってきた。

 顔は笑顔だ。明るい。売られたわけじゃないのだろうか……。


「お、お知り合いですか?」

 お店の人がちょっと戸惑った様子で私に声をかけてきた。


「はい、ちょっと……。あ、この方をもらいうけます」

 と言って、シュウ兄ちゃんを人身紹介所から購入した。


-----------------


「さっきの話ぶりを聞くと、この子、リョウちゃんのお兄さんなの?」

 人身紹介所を出てから、改めてコウお母さんにシュウ兄ちゃんを紹介する。

コウお母さんは、まじまじと私とシュウ兄ちゃんを見比べて、確かにちょっと似てるわねー、と言って驚いてる様子。


 私もまさかこんなところで兄弟と再会するとは思っていなくて、まだ頭が働かない。


「はい。ガリガリ村の……私の兄です」

「おう、俺はシュウ。リョウのアニキだ。よろしくな」

 そう言って、いい笑顔で、コウお母さんと握手なんかしてる。なんか偉そうだ。そして生意気だ。


「シュウ兄ちゃ……シュウ兄さん、なんで、人身紹介所に……?」


 やっぱり私と一緒で、売られて?

 私を売った時のお金が尽きたのだろうか。畑はどうなってるんだろう。


「いんや。ガリガリ村は俺には小さすぎたから、自分から飛び出してやったんだ。途中まではうまくいってたんだが、一緒にいた行商人とはぐれちまってさ。そんでちょっとお腹が空いて、お店の食べ物を失敬しようとしたら、捕まってここに連れてこられた。まあ、よくあることだよな」

 と言いながら、笑ってるけれど、よくあることじゃないよ! なに泥棒してるんだ。

 しかも村を飛び出した理由が、田舎から上京してきたバンドマンみたいな理由だ……。


「シュウ兄さん……」

 

 私はため息とともに兄の名を呟く。


「さすがリョウちゃんの兄弟だけあって、なんかすごいわね。勢いが」

 コウお母さんがそう言って、恐ろしい子! みたいな顔をしてるけれど、私の兄弟だけあって、とかいうと私とシュウ兄ちゃんが似ているみたいじゃないか! やめて! 全然似てないよ!


 私は、大きなため息を落として、気持ちを切り替える。落ち着こう私、ちょっと驚いたけれど、うん。


「とりあえず馬車に行きますか。カイン様にも紹介しなくちゃ、いけないし……」

 カイン様に紹介……なんか気が重くなってきた。よく考えたら、シュウ兄ちゃんとカイン様って同じ年じゃない? 素敵お兄様選手権チャンピオンであるカイン様とシュウ兄ちゃんが並んだら素敵度の差が浮き彫りに……。

 いや、考えるのはよそう、うん。


「ところで、シュウ兄さんって馬車の手綱引けるんですか?」

「おう、任せとけよー! ガリガリ村を出てからは途中までは行商人と一緒にいたんだ。そこで、手綱の引き方は教わった。手綱を引くことに関して、俺の右に出るものはいねぇよ!」


 そ、そう。そこまで自信がおありなのね。すごいね。

 なんか、シュウ兄ちゃんの久しぶりすぎる再会なのに、なんか、普通だ。

 正直、もしガリガリ村のお兄ちゃんとかにあったら、もっとなんかあるかと思っていた。

 例えば……私は売られたのに、お兄ちゃん達は売られなかったっていうことを憎らしく思う気持ちは、当時はあったから、そういう嫌な気持ちが再燃するんじゃないかと思った。

 けれど、全然そんなこともなく、だからと言って久しぶりの再会に感動とかをするわけでもない。なんか変な気持ち。


 シュウ兄ちゃんがあまりにも、なにも考えてなそうな感じだからだろうか。

 今もなんか、気がつけば鼻くそをほじり出しそうな雰囲気だし。


 しばらく歩くと馬車が見えてくる。もうアラン達は先に行かせたので、そこにいるのは、カイン様だけのはずなんだけど……なぜかもう一つ人影が見える。

 誰だろう。


 近くに寄ってみると、そこにいるのは、今までなぜか私たちの馬車の御者役をやってくれていた王国騎士の人だった。


「カイン様、お待たせしました! 色々話さなくちゃいけないこともあるんですけれど、その前に、この方は……?」

 なぜかこの場にいる王国騎士に視線を移すと彼女はピンと背筋を伸ばした


「あの……! もしよければですが! 私も! お供するでありますっ! 親のコネで王国の騎士やってるようなものなので、剣は正直からきしですけど! 御者としてなら!」


 緊張してるのか、なんか声が裏返っている。ど、どうしたんだろう。前誘った時は、怯えて一言も発しなかったのに。

 膝を震わせて、そんなことを言ってきてくれた。


「え、いいんですか? 正直それは、ありがたいですけれど……そういえば、私、名前を」

「アズールと申します!」

 名を聞いてなかったと思って、そう言おうとしたら、かぶせる形で、騎士が名乗った。

 顔が緊張してるし、なんか、本当にいいんだろうかとちょっと心配しちゃう。

 でも、それでも声をかけてくれたし、こうやって待ってくれていたのだから、覚悟はあるのだろうと思われる。それに私も余裕がない。大人しく彼女の申し入れは受けたい。


「お言葉に甘えますね、アズールさん。よろしくお願いします」

「はい!」

 彼女の大きな声が響いて、ルビーフォルン行きの旅の仲間が決まった。

 コウお母さん、カイン様、シュウ兄ちゃん、アズールさん、そして私。

 少人数だけれども、この5人でどうにかやっていこう。






<登場人物紹介>


名前:シュウ

ガリガリ村出身。リョウが生まれた家の五男坊。

年齢はリョウの三つ上。

リョウがガリガリ村にいたころは7,8歳で、リョウの個人的見解としては、よく鼻くそをほじっていた模様。


また、今回の話の中で、サブロウ兄さんと似てる!という描写がありますが、見た目に関しては、書籍化時のイラストレーターさんの絵を参考にしただけなので、ガリガリ村時代にそんなこと書いてあったかしら? と思って、読み返してもそのような描写はありませんのでご注意を!

イラストが気になる方は、ピクシブノベルで無料で前半が読めるのですが、兄弟全員の顔が描かれている挿絵も見れるので、暇な時にでもご参照ください。



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