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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第一部 転生少女の幼少期
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小間使い編②-貴族とは-

「いやー、すまない。驚かせたみたいだねー」

 といいつつクロードさんは、私をひょいと抱き上げると、自分の隣の席に座らせる。

 もう一人いる御者さんとの間に挟まれる形だ。


 そして、落ちた固いパンを拾って、私に持たせてくれた。


 子どもの扱いが手馴れている。やはりロリコンか。ロリコンなのか。


 私は固いパンをカジカジしながらもクロードさんへの警戒を怠らない。


「でも、よかったよ。買い取ってからの君は、本当に人形みたいに何の反応もしないから死んだんじゃないかと思ったよ。目もうつろで、焦点も合わないし、何もしゃべらないし、ご飯も与えればたべるが、一口二口食べるだけだし。ああ、本当によかった」

そういって、私の頭をポンポンして満足げな様子だ。

 そんな心配されるほどボーっとしていたのか私。私の中では、買い取られてから半日ほどの感覚なんだが、クロードさんの話しからすると、もしかすると丸1日は経っているのかもしれない。

「ご心配おかけしました。ところで、私が村を出てからどれくらい経ったんですか?」


「おお! はきはきしゃべるね! いいことだ! 村を出てからは1週間ほどだよ」


 私の反応一つ一つに満足そうにうなづいて、クロードさんは衝撃的なことをいった。



一週間、だと?


 まったくそんな感じがしない。記憶がない。

 

 それほどショックだったのか、私。今はなんかあきらめの境地に達したのか、逆に気が楽になった感すらある。でも、よく考えてみれば私はまだ5歳の子どもだ。いろいろあきらめるのにも時間は必要だったのだろう。


「それは・・・・・・本当にご心配をおかけしました。ところで、私は、売られたわけですが、これから何をするのでしょうか?」


「うん、気になるところだよね。実は、これをやってもらいたい! と宣言したいところなんだが、何をさせたいのか、まだ決まっていないんだ。まあ、いったんは私の実家に来てもらう予定だが・・・・・・。その前に聞きたいんだが、君は千歯こきを発明した子どもで間違いないよね?」


「発明、というか、まあ、そうですね」


実際発明したのは前世の大昔の人なのだが、説明も面倒なので省略。


クロードさんは私の返答に満足したみたいで、ほっとした顔で大きく何度もうなづいた。



「一度、私の実家に来て、生活してもらう。そこには君と同じぐらいの年齢の貴族の坊ちゃんがいるので、その相手をしてもらうことになると思う。そこで少し、いろいろと勉強してもらって、君の生活を見させてもらった上で、今後の方針を決める。もしかしたら私の妹が君を気に入って買い取るかもしれないし、私がそのまま君を小間使いにするかもしれないし・・・・・・まあ、そんな感じだ」


 なるほど、きちんとした屋敷で働けるのなら、想像していたものよりもずいぶん待遇がよさそうだ。このまま逃げずに馬車にのって、クロードさんの実家に行くほうが良いかもしれない。

 ていうかこの人、貴族なのかな。実家に貴族の坊ちゃんがいるといっているわけだし。


「クロード様は、貴族なのですか?」

 その質問に対して、クロードさんの顔が若干かげった気がしたが、すぐに答えてくれた。



「いいや、私は貴族ではない。実家は貴族だが、貴族の家庭に生まれても、成人したら、魔法を使えないと貴族ではなくなる。私の場合は商人の勉強をしていたから、商爵という準貴族にはなれたが、実家の爵位は、魔法の素養をもっていた妹が継ぐ予定だ。君が相手をするのは妹の子どもたちだ。2人いて、1人は魔法が使えるので、大人になっても貴族でいられる本物のお坊ちゃんさ」


「魔法が使えないと、貴族になれないということですか?」


「そういうことだ。そういえば、君は農村育ちだから貴族についてはよくわからないんだね。簡単に説明すると、さっき君が言っていた通り魔法使いじゃないと貴族になれない。魔法の素養をもつかどうかは基本的には遺伝だから、その素養をもった人が領地をつぐんだ。貴族の家に生まれたが、魔法の素養に恵まれなかったものは、どこかの貴族の魔法使いと結婚すれば貴族になれる。私の兄がそうだ。兄は婿に出て、君の村があったところの領地を統括している貴族になっている。君の情報、千歯こきや魚とりの道具のことは、その兄から聞いたんだ。兄は村の子どもが発明したということは信じてなかったけれどね」


 ほほう、私ったらそんなうわさになっていたのか。信じてない人もいるみたいだが。


 いったん、クロードさんに身を任せてみよう。このまま逃げるよりもそれなりに暮らせそうだ。

 万が一、クロードさんの実家の人たちが、すごい性格が悪くて、過酷な労働環境だとわかったら、そのときに逃げればいい。この人すごく無用心だから、どうにでもなるだろう。


 すると突然クロードさんは、後ろに積んでいる袋をごそごそとあさり始め、そして本を取り出した。

「ところで、君は字の読み書きはできるのかい?」


 どうだろう。前世で覚えた文字だったなら、出来るかもしれないが・・・・・・。ちらりと先ほどクロードさんが取り出した本の表紙を見てみると、見たことないような記号が書かれていた。おそらくアレがこの世界の文字か。わからん。

「いえ、できません」

「そうだろう! 言葉があまりに流暢だからもう字も覚えているのかと一瞬思ったが、農村には文字の教育はないからね。念のため、本を持ってきているんだ。屋敷に着くまでに読み聞かせてあげるから、少しでも文字を覚えてほしい」


そういって、パンをカジカジしている私を持ち上げて、自分のひざの上に乗せ、本を目の前に広げた。


本をみると見たことがない文字が並んでいた。どうやらこれが異世界の文字らしい。


クロードさんはゆっくりと音読してくれた。


悪い人ではなさそうだ。





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