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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第2部 転生少女の青春期
122/304

魔物襲来編⑨ 魔物大戦争

 目覚めの悪いお知らせを先生に伝えると、みんな起きて、早速魔物対策作戦を開始する。

 火炎放射魔法使い部隊、マッチ部隊、魔法攻撃部隊、防衛魔法部隊、弓矢部隊、補給部隊、護衛剣士隊、医療部隊。

 身を守るための壁にもなる土嚢を魔法で築いて、魔物のお出迎え準備はばっちりだ。


 準備の間に、王城からも連絡がきた。

 どうやら魔の森の結界の綻びの修繕が終わったらしい。

 ただ、その際に、結界に詰まってるかのようにたくさんの魔物が結界付近にいて、それらを引っ張り出してから結界の修繕を行ったようで、引っ張り出された魔物が、思ったよりも大量にいて、現場の部隊だけでは抑えきれずに、飛行タイプの魔物が流れてきたとのこと。


 城からの連絡だと、援護部隊を学園に派遣するから、できる限り魔物の群れを学園に集めて欲しいというきっつい要望が含まれていた。

 まじかよ、と動揺した学園のみんなだったけれど、すでに幾度となく魔物と対戦してきた歴戦の勇者のような感じに成長した学園勢は、お城の指示通り迎え撃つ覚悟を決めた。


 それに、結界の修繕が終わったということは、きっと王都を襲う魔物とは最終決戦。


 魔物が王都には降りないよう、こちらにおびき寄せるために、以前作った煙玉で狼煙を上げる。

 まだ確証はないけれど、魔物は何か目立つものがあるとそこに近寄ってくる。

 だからこそ、王都の中でも小高い場所に派手に建造されている学園や王城に集まるのだ。


 しかも私の推測が正しければ、魔物の中には、何故か魔法使いを優先して襲う魔物と、魔法の使えないものを優先して襲う魔物で分かれている気がする。

 そして、圧倒的に魔法使いを優先して襲ってくる魔物が多い。だから、魔法使いのたくさんいる王城や学園に襲って来ているような気もした。


 双眼鏡で、魔物の群れを観察したけれども、狙い通り王都に降りる魔物はいない。

 たくさんの魔物が、学園に向かってきている。ていうか思ったより大量に向かってきている。

 

 え、これ大丈夫なの? 想像よりも多いし。ていうかまだ、城からの援護部隊とかいうの来てないし!


「トーマス教頭先生。思ったよりも数が多いです。多すぎます」

 双眼鏡を覗いてわかった魔物の大体の数を、火炎放射魔法使い部隊隊長であり、現在学園魔物対策本部長官でもある七三のトーマス教頭に告げる。


「しかし、やるしかないだろう。それに、そのうち城からの援護部隊が来てくれるはずだ。……火の準備は大丈夫か?」


 トーマス教頭は後ろを振り返って、商業科の先生に確認を取った。

 後ろには、キャンプファイヤー並みの焚き火をいくつか作って、木をくべたりしているマッチ部隊がせわしなく動いていた。


 マッチ補給部隊の隊長である商業科の先生は、大きく頷き準備万端であることをサムズアップで伝えている。

 火魔法を使うときは、火種が必要。でも風圧などで消えてしまう可能性もあるので、そう簡単には消えない大きな火で対応する体制はばっちり。

 万が一、魔物の攻撃で焚き火やランプの火が消えても、私たちにはマッチがある。

 火は、何度でも蘇る。

 マッチ部隊はマッチを擦ることに定評を得た商業科の生徒達が中心となって編成された。


 そのマッチ部隊は、火矢を使うため弓矢部隊の近くにも配置されている。

 私も弓矢部隊兼連絡係。

 色々な部隊の様子を見て、戦闘が開始したら、山賊仕込みの弓の腕前でもって、魔物をけちょんけちょんにする予定である。


 学園内に侵入してきた魔物が、火炎放射魔法の射程距離に入るやいなや一斉に火炎放射魔法部隊の攻撃が始まった。


 うまく攻撃があたり、翼を焼かれた魔物達が、バランスを崩し、地面に落ちていく。

 落ちてきた魔物を魔法攻撃部隊や、護衛剣士隊が前にでて、止めを刺していく。


 火炎放射攻撃をかいくぐってきた魔物に弓矢部隊が矢を放つ。

 先行して攻撃できたのもあって、今のところは順調。


 けれども敵は、空中を縦横無尽に飛ぶことができる飛行系魔物。

 より上空に、横から回るようにと、取りかこむように私たちに近づいてくる。

 けれどもそれも予想範囲内なので、前方担当、左右担当などという形で、あらかじめそれぞれの部隊を分断することも考えていたので、指示通り班を分けて移動する。

 そして、直接攻撃ができないぐらいの距離感でもって、こちらからの先制攻撃で始末していく。

 ただ、魔物の中には、何かを飛ばして攻撃してくる遠距離攻撃手段を持っているものもいて、そいつらの攻撃は、カテリーナ嬢も所属している防衛魔法部隊が、風の魔法などで防御したり跳ね返したりしていた。

 

 強固な守りに、強力な遠距離攻撃で、魔物はバッタバッタと倒れてくるけれども、魔物は不死身並みのしぶとさに、たくさんの数。

 今は怪我人なくしのげているけれども、何かをきっかけにこの体制が瓦解して総崩れになる可能性は十分考えられた。

 

 しかも、最初こそ、遠距離攻撃で、こちら側に近づく前に倒せていた魔物との距離も、どんどんと縮んできている。

 

 でもこちらにできることは、休みなく、連続的に攻撃を続けることぐらい。少しでも休めば、魔物との距離がもっと縮まってしまうもの。


 そう思って、私も弓でもって、近づこうとする魔物めがけて火矢を放っていると、数匹の魔物が、力を合わせて大きな岩を運んでいるのが見えた。


 魔物のくせに、器用だね!

 弓矢部隊の騎士科の先生の指示で、あの岩を持った魔物をみんなで攻撃することになった。

 あんな大きな岩が落ちてきたら、魔法使いの風の魔法じゃ防げないのは誰が見ても明白。

 ただ、魔物が持ってる大きな岩が盾の代わりにもなって、中々矢が当たらない。火の魔法も基本的には一直線な攻撃が多く岩で防がれる。

 放物線を描くように弓を放ち、矢が落下したところで、魔物に当たるようにしようと声をかけたけれど、

 もともと慣れない弓術を使ってる騎士科の生徒達には、器用にそれを実行できたものはなかなかいない。

 けれどもなんとか数人の火矢が命中し、火魔法が得意な生徒が、ギリギリまで火を操って、岩を避けて、魔物に火魔法を当てることに成功すると、私たちがいるところに来る前に、魔物に重傷を負わせて、打ち落とすことに成功した。

 喜びもつかの間、少し学習能力があるらしい魔物が同じように岩を足で掴んだり、むしろほかの魔物を盾にするようにつかんだりする魔物もでてきた。

 魔物のくせに力を合わせて岩なんか運びやがって……。

 

 そんなイレギュラーな魔物の対応に追われている間も、他の魔物の追撃が落ち着いているわけもなく、面倒な魔物に対処している分、魔物との距離が近くなってきてる。

 慌てて、攻撃の視野を広げて、近づいている魔物を優先して、攻撃していく。


 けれど、このままだと……もたない!


 そう思った時だった。


 視界の端に、何かが盛り上がるのが見えた。

 直ぐにそちらに視線を移すと、半径3メートルぐらいの面積の大地が、一瞬にしても数十メートル盛り上がっている。

 そして、一瞬みた時に確認したものが間違いではなければ、そこには人がいたように思う。


 すでに、高く盛り上がった大地の上は死角となって、もうそこにいたものが何者なのかまでは確認することができない。


 しかし、そこから放られたように何かが降ってきた。

 降ってきたそれは、赤く燃える……剣、のように見える。


 剣は、空を飛ぶ魔物のそのまた上空にそびえ立った大地から放たれたもの。無防備な魔物の背中にその赤く燃える剣はまるで隕石のように流れてきた。

 剣が突き刺さった魔物はあまりの威力に燃えながら落ちていく。


 大量の魔物がいた魔の森の方角の魔物を一掃すると、続けて、その盛り上がった大地から近い魔の森に向かって左側の魔物の集団も同じように燃える剣で蹴散らしていく。

 呆然とする私たちの近くに、いつの間にか、知らない人たちが集ってきていた。


 彼らは、騎士風の格好をしている人たちだったので、その正体は直ぐにわかった。


 そして、それを確証するようにとある人物が駆けつけてくれる。


「リョウ! 大丈夫!? よくしのいでくれていたね! 生徒達が一緒に戦ってくれていたとは思わなかった」

 そう言って、王国指定の騎士鎧を身にまとったカイン様が、私の肩に手を置いて、心底ホッとしたような顔をしていた。


「カイン様! それじゃあ、国からの支援部隊が来てくれたんですね!」

 私がそう言うと、カイン様がそう頷いて「遅くなってすまない」と付け足す。


 助かった……! もう私、ダメかと思った。まじで。


「コーキさん! リョウがいました!」

 正義のヒーローのように颯爽と現れたカイン様に感動していると、彼から思いもよらない人の名前が出てきた。


 コ、コーキ、さん? それって……?

 私が戸惑っていると、大きな衝撃がドシンと左側から来た。

「リョウちゃーーーん! ああん、よかった! 無事そうね! よかったーーー!」

「コ、コ、コウ、コ、コウお母さん!」

 コウお母さんが無事で良かったーって言って、私を抱きしめてくれてる。

 いや、私のセリフでもあるよ!

 コウお母さんだ!

 あまりの驚きで、思わず鶏みたいな声出しちゃったけど! 

 私はコウお母さんの温もりを確かめつつ、足とか腕とか怪我がないか確認する。

 うん、怪我もないし、いつもの元気なコウお母さんだ!


「コウお母さん、無事だったんですね! なんでここに?」

「リョウちゃんが絶対無茶するって思って、ここまで来たのよ。ちょうど城からの援軍が学園に行くってところだったからカイン君に声をかけてこっそりついてきたの」

 ええ!? こっそりついてきたって、コウお母さん別に変装してる様子もないけど、こっそりついていくことができたの!?


「無事なリョウを確認出来て良かった。アランも大丈夫そうだ」

 そう言いながら、少し遠くにいる遠距離魔法部隊の中で魔法を放っているアランを見つけてカイン様が安心したような声を出した。

 

「魔物はしぶとい、止めを刺さないと。私は行ってくるよ」

 カイン様はそう言って、厳しい顔をしながら、上空で撃ち落とされた魔物に止めを刺しに魔物が倒れているところに走っていった。


 そうだ、私たちも、油断するのはまだ速い。大多数は援軍のおかげで地面に落ちたといっても、まだ残ってる!

 まだ上空を飛んでいる魔物に向かって弓矢を構えた。



また、活動報告に小話の続きを載せました。

お手隙な際に見て頂けると幸いです。

カイン様とリョウの話です。

どうぞよろしくお願いします。

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