小間使い編①-めざめたら馬車-
目覚めてから馬車の中を見渡してみた。いろいろな品物が所狭しと積まれている。馬車の荷車、商品が置かれているところに私は押し込められたようだ。
塩、干し肉、干し魚、陶器、何かの鉱石、果物、野菜、米、ガラス瓶、布類、その他もろもろ、今まで見たこともないようなものがあふれていた。
ガリガリ村にも旅商人が定期的にやってくるがこんなにたくさんの品物は扱っていない。ていうかガラス瓶とかあるんだ。
村にくる旅商人が扱っていたのは、塩と野菜と魚と布類ぐらいだった。それでも旅の商人が来るのを、村のみんなが楽しみにしていた。ガリガリ村特産の米と豆などを渡すと塩、野菜などと交換してくれるし、藁製品を貨幣に換えてくれる。そしてその鉄銭を集めてゆくゆくは布製品と交換していた。
ふーん。馬車の中を見る限りでは、村に来ていた旅商人よりも格上みたいだ。
私を買った人は確か、クロードさんといったはずだが、なかなか若そうなのにやり手なのだろう。
しかし、私の身柄が自由なのだが、縄とかで縛ってないのだが・・・・・・。クロードさんは馬車の御者台に座っているみたいで、荷車の中には人っ子一人いない。荷物と私だけだ。・・・・・・いつでも逃げれちゃうぞ?
これから私はどうなるのだろう。買われたからには、何か仕事があるのだろう。
いや、それともまた売られるのかも。
今の私は奴隷みたいなものだ。前世の知識を紐解いてみても、奴隷というのはかなり過酷な労働を強いられるか・・・・・・女性なら娼婦とかになるのかな、あまりいい印象はない。
特に生きる目的もないから後は死ぬだけなんだけど、でもあんまり辛いことはしたくないなー。
・・・・・・逃げようかな?
とか思っていたら、御者台のほうから、布越しに、話し声が聞こえてきた。
「スミス、そろそろ食事にしようか。といっても、携帯食だからあんまりおいしいものではないけどね。もう飽きたよ」
「まあ、まあ。あと少しで屋敷に着きますから。・・・・・・クロード様、後ろの泥人形みたいなやつにも声かけますか?」
「泥人形って・・・・・・。やめてくれ、あれでも銀貨3枚出したんだぞ! ああ、もしあれがあのままだったら、私は本当に大損だ! あんな田舎まで足を運んだって言うのに・・・・・・!」
え、泥人形って私のこと? 失礼しちゃう。そう思って、御者台のほうをにらんでいたら、パサっと、荷車と御者台を仕切っていた布をクロードさんがめくってこちらを向いた。
ばちっと目が合った。
ていうか、すんごい見てくるんですけれど、彼。
それにしてもクロードさんの瞳の色、黄緑色とはなかなか珍しい・・・・・のかな? ガリガリ村の住人の瞳の色は茶系統の色だった。私もちょっと明るい茶色だ。
なんだかここで視線をはずしたら負けやで、みたいな考えがでてきて、視線をそらせない。
やだ、彼ったらそんなに見つめて、一目ぼれかしら、ロリコンなのかしら。
「・・・・・・これ、食べれる?」
すると、唐突にパンのようなものを差し出してきた。餌付けかしら。
「・・・・・・い、いただきます」
お腹もすいていたので、恐る恐る私は受け取った。
するとクロードさんが、驚きの顔とともに、いきなり奇声を上げた。
「シャ、シャベッターーーーーー!!」
馬がびっくりして、ヒヒーンとないて、馬車が大きく揺れた。
御者をしている男性から、どうどう、とあわてて馬をなだめている声が聞こえる。
私もびっくりして、思わず受け取ったパンを落として、床にカコンという音を響かせた。
何この音、すごい硬そうなパンだなと思いつつ、ロリコン変人のクロードさんの次の行動に備えることにした。









