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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第2部 転生少女の青春期
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魔物襲来編④ 2体の魔物

 保健室を出ると、戦闘の音が聞こえる方に目を向けた。

 さっきリッツくんが言っていたみたいに、確かに魔物が2体いる。

 最初、保健室の扉を叩いていた魔物は無数の剣が突き刺さった状態で、横に倒れていた。

 おそらく、アランお得意の鉱石を剣に変える魔法の類の成果だと思われる。


 そして、新しくやってきた魔物の方は、かなり大きな鷹のような魔物だった。火で焼かれながらもまだ健在のようで、大きな翼を広げて、アラン達を睨んでいる。


 ただ、やっぱり体が火で燃えているのは辛いらしく、苦しそうに、鳴き声を発すると、その大きな翼を盛大に羽ばたかせた。


 風が……! 


 魔物のその羽ばたきに合わせて、強い突風が吹きぬけて、目をつむって、飛ばされないように踏ん張る。

 風が落ち着いてきて再び目を開けると、魔物がいなくなっていた。魔物が壊した壁から、沈みかけの太陽の明かりが入ってきてる。

 再び外に飛んでいったのかもしれない。

 アラン達の方をみると、風で吹き飛ばされてはいなかったけど、手に持っていたランプの火がさっきの突風で消えていた。

 もうすぐ日が暮れる時間帯。手持ちのランプが消えると、途端に薄暗い。


 とりあえず、魔物がどこにいるのか確認しようと、私とシャルちゃんは、窓を飛び越えて外に。一階なので、特に窓からでることは問題ない。アランたちも魔物が壊したらしい壁を踏み越えて、魔物を追いかけるように走っていく。

 外に出て、上空を見上げると、やっぱり魔物がいた。体がまだ燃えているので、見つけやすい。

 燃えながら飛んでいる魔物は、一度上空に飛んでいきなり下降したと思ったら、そのまま池の中に体を突っ込んだ。

 池、というか、体育の授業で使っていたプールだけど。


 池から再び飛び上がった魔物は火が消えていた。

 火を消すために水の中に体を突っ込んだらしい。

 私とシャルちゃんはアラン達と合流するために駆け寄る。


「どうしよう……。ランプの火が消えたら、火魔法が、使えない」

「火なら、多分、リョウがなんとかしてくれるはずだ」


 というリッツ君とアランの会話が聞こえてきた。


 私はマッチを擦りながら二人に駆け寄る。


「火、です!」

「な、なんで突然、火が!?」

 驚くリッツくんに構わず、勝手にランプのロウソクにマッチの火を当てて、点火していく。


「よかったわ、シャルロット、無事そうね!」

 カテリーナ嬢のもつランプも点火していると、シャルロットの無事を喜ぶカテリーナ嬢のお声が聞こえた。


「はい、すみません、カテリーナ様」

「無事ならいいのよ。あなたは我がグエンナーシス領の魔法使い……いいえ、わたくしのお友達、なんですから」

 ちょっと照れたように、そういうカテリーナ嬢とシャルちゃんは微笑みあうと、サロメ嬢から鋭い声が飛んできた。

「カテリーナ、無事を喜ぶのはもう少し後よ」

「わかっているわ」

 そう言って、みんなで上空を仰ぎ見る。魔物は、どうしたものかと考えるように上空を旋回していた。


「火があるなら、僕に任せて」

 そう言って、リッツくんは呪文を唱えると、また大き火球がすごい勢いで、魔物めがけて飛んでいった。

 かなり遠くにいるはずなのに、火があそこまで届くというのだから、さすがリッツ大先生の火魔法の技術は結構すごそうである。

 でも、動く魔物に魔法が当たらない。


「私が魔物の動きを抑えるわ」 

 そう言って、カテリーナ嬢が魔法を唱えると、つむじ風のようなものができて、魔物の動きを鈍くさせた。

 すかさずリッツくんの火球が魔物に当たる。

 けれどあまり火が燃え移らない。魔物はさっき池に突っ込んで体がずぶ濡れだから、火の威力が弱くなったのかもしれない。


 でも、カテリーナ嬢の風魔法とリッツくんの火魔法で、現在ドライヤー状態だ。そのうち体が乾いて火魔法が効きやすくなるはず!


 いや、でも、火が付いたら、またプールに入って、火を消すだけの繰り返し?


 ドッジボールをしようとしていた時に襲われた魔物みたいに、呼び寄せてからアランの土の壁にぶつけるのは?

 いや、と思って、壊された校舎の壁を見る。

 あの魔物は、鋭いくちばしを持っている。校舎の壁を容易く壊して、平気だったのだから、アランの土の壁をぶつけたからといって怯むだろうか。

 壁を分厚くすれば、どうだろう。

 でも、あの時の魔物と違って、明らかに今回の鳥の魔物は動きが速い。攻撃を誘い出して、みんな避けられる?

 それにタイミングよくアランの土の壁を当てることも動きの速い魔物には難しい気がする。

 あの時は、動きが遅そうな魔物だったからやろうと思えたし、成功もしたけれど。今回の魔物には……。


 すると、リッツくんとカテリーナ嬢のドライヤー旋風のおかげか、火魔法が効いてきた。リッツくんが火魔法を当てるとそこから炎が燃え広がりはじめた。


 でも、火だるまにしても、またプールの中に入って……あ、そうだ!


「シャルちゃんって、確か、氷の魔法が使えるんですよね? 一瞬で池の水を凍らすことはできますか?」

 私の提案に、シャルちゃんは渋い顔をして首を横に振る。

「わ、私のちからだとそこまでのことは……」

「俺ならできる!」

 横から、アランが、声あげた。

「氷魔法は結構得意だ!」

 よし!

 私とアランとシャルちゃんで、池のほうに向かった。

 アランが、池の水に手をいれる。

「いける」

 言い聞かせるように、そう言うと、ちょうど火だるまになった魔物が、耐えられないとばかりにまた池に向かって、下降を始めた。


 アランが呪文を言う言葉が聞こえる。


 バッシャーンと盛大な音とともに、池に入る魔物。


 そしてそれと同時に池が白く輝いた。


 いつの間にか、凍ってる。池が。

 アランの荒い息遣いが聞こえた。彼の魔法が成功したんだ。


 私は、池の中央、さっき魔物が突っ込んでいった場所を注意深く見る。

 底の方に、黒い大きなものがいるのが分かる。

 ピクリとも動けずにいる魔物が、氷に封じられている。


 大きく息を吐いた。

 魔物は死んでないかもしれないけれど、これで動きは封じたはず。あとは七三の教頭あたりに止めをお願いしておこう。

 今は一旦講堂へ戻ろう。シャルちゃん救出作戦は無事に遂行できたのだから。


 そう思って、ドライヤーとして多大な成果を収めていた二人の魔法使いが笑顔で喜んでいる方角を見て、驚愕した。


「みんな! 後ろ!」


 思わず叫んだ。だって、彼らの後ろに、無数の剣が突き刺さっていた魔物が近寄ってきてる!

 みんなが振り返るのと、魔物が自分に刺さっている剣を手で抜いて彼らめがけて投げるのはほぼ同時だった。

 ほうられた剣はまっすぐカテリーナ嬢の方に向かっている。


 ガシャン! と大きな音がした。

 私は急いで彼女のいるところへと駆け寄る。

 カテリーナ嬢に、剣は刺さってない。直前で、サロメ嬢が自らの剣で叩き落としていた。

 流石です! サロメお姉様!


 そのあともいくつか剣が飛んでくる。サロメ嬢がその剣さばきで以って、すべて跳ね返してくれた。

 途中で、私もアランも合流して、アランが、土の壁を作って、投げられる剣から、身を守る。

 


 カテリーナ嬢が、風魔法で、魔物を飛ばそうとしていたが、意外と俊敏に動く魔物はそれを軽やかに避けていた。

 校舎の中にいたから、そのすばやさに気付かなかったけれど、こいつ厄介だ。

 それに何より……この魔物、なんかおかしい。

 

 リッツくんが、器用にカテリーナの風魔法を避けるタイミングに合わせて火魔法を当てるが、少し焦げ付くだけで、火が広がらない。

 それに、体に剣が刺さっているのに、全然効いてない。自ら剣を体から抜いて使っているし、刺されていたはずの体には傷一つないように見える。


「おかしい。火はあたっているのに、それが燃え広がらない……」

「動きが早いから、それで火も掻き消えてるのかしら」

「さっきから、足元を凍りつかせようとしてるんだけど、うまくいかない。なんていうか……あの魔物、魔法の効きが悪い」

「魔法の効きが悪い……確かに、そんな感じがする。僕の火魔法も、吸収されているような……手応えがないし、どんなに精霊に命令をしても広がらないし、威力も強くならない」


 そんな魔法使いお三方の会話を聞きながら、答えにたどり着いた。

 山賊生活の時、クワマルさんから聞いたことがある。

 魔物の中には、魔法の剣が効かないものがいる……。この魔物はそういう類の魔物、なのかもしれない。

 



先日もお伝えしましたが、ブクマ15000件突破記念ということで、

久しぶりに三日連続更新しますー!

今日は一日目です。


そして、ブクマ記念として開催した人気投票なんですが、

思いのほか、たくさんの方にご参加いただけて、びっくり嬉しい状態です!

ありがとうございます!

人気投票の締切は、4/5にいたします!

最新の活動報告に、人気投票のリンクとゲスリーさんの裏話、設定?を少し載せていますので、お暇な時によければみてくださいませ!


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