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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第一部 転生少女の幼少期
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転章Ⅰ

 前世の私の家は裕福だった。

 大病院の院長の一人娘として生まれた。母も父もお医者様だったので、いつも忙しくしていた。

 私が物心ついたころには、家には基本的に両親はおらず、家政婦さんが、14:00-17:00の間に料理と家事をこなして帰るという流れだった。


 私はいつも暇で大概本を読んですごしていた。


 そのうち、父にも母にもそれぞれ外に愛人を設けていることを感じ取った。

 子どもというのは、何もしらないように見えて、そういうことには敏感のようだ。


 そして、父と母をかろうじて夫婦としてつなぎとめているのが、自分であるということも理解した。だから、また3人で仲良く暮らすには、私ががんばらないといけないのだと思った。


 そのことを悟った私は、さまざまなことを行ない、努力をした。

勉強、スポーツ、芸術。


 成績は常にトップを目指すように勉強し、卓球、テニス、陸上などのスポーツから、剣道、弓道などの武術系まで、幅広くいろいろな大会に参加し、ちょっとした大会で優勝できるまで力を磨いた。


 芸術面でも、絵画、ピアノ、ヴァイオリンなどの教室に通わせてもらい、こちらもちょっとしたコンクールで賞をとるまで続けた。


 私は、一番をとる度に得られるトロフィーや賞状を両親の目の届く位置においてみて、いつもそのあとの反応を待っていた。


 父も母もちゃんと褒めてくれた。うれしかった。


 でも、褒めるだけだった。家族の時間を増やしてくれるわけではなかった。父と母が外の愛人を切ってくれるわけでもなかった。悔しかった。



 まだ私の努力が足りないのだと思った。



 そして、両親の気を引くためにあらかたのことをやりつくして、17歳になった私はあせっていた。

 どんなに優秀な成績をとっても、一番になっても、両親は家に帰ってこない。

 そして私が大人になるにつれて、父と母を夫婦としてつなぎとめる私の効力が薄くなってきた気がして、どうにも表現できない焦燥感に苛まれていた。


 そんな時だった。いつもの学校の帰り道で、いつも通る横断歩道の信号が青になった。私には、少しはなれたところで勢いを殺さない車のエンジン音が聞こえていた。でも、きっと焦っていたからなのか、なぜかその音が聞こえない感じがして、そのまま横断歩道を渡った。

 そして車に轢かれて死んだ。



 しかし、死んだと思った私は、死後の世界を味わうこともなく転生していた。

 最初こそ自分の記憶が残っていることに驚いたが、きっと今までがんばってきた私に神様がご褒美をくださったんだと思った。


 私はもう一度やり直すチャンスを手に入れた。

 今度こそ、両親に愛されて、その無償の愛の中で、世界を感じたい。

 前世では、家族のことだけで精一杯で、友達も恋人も出来なかった。興味が持てなかった。でも、新しく生まれ変わって、両親に愛されたら、私の世界はもっと広がるはずだ。


 私にとって、親というものは世界そのものだった。それは異世界に行ったからって、かわらない。私は世界のためなら頑張れる。そのための努力なら惜しまない。


 でも、せっかく生まれ変わったのに私は、愛されなかったみたいだ。銀貨3枚で売られてしまうような存在だった。

 今まで鉄銭しかみたことないので、銀貨がどれほどの価値になるのかわからないけれど、


 私が今まで尽くしてきたことに対しての価値は銀貨3枚よりも軽いのだろう。



 愛は銀貨3枚で買えるんだ。いや、違う、もともと愛していなかったのかもしれない。

 放任主義のうちの両親はあまり子どもにかまったりしない。それは他の兄弟もそうだったから、あまり気にしてなかったけれど・・・・・・。


 貧乏だからしょうがない? いや、私が生まれてからは貧乏だとは言わせないように尽くして、実際生活はよくなったはずだ。

 愚かな親だったんだ。銀貨3枚よりも私を手元に残したほうが、永続的にいい暮らしができたに違いないのに。そうしたのに。




 それとも、もしかしたら、私の努力が足りなかったのだろうか。

 もうすこし村の発展を急いで進めるべきだったのか。

 いや、逆に村を発展しすぎて、優秀すぎたからこそ、銀貨3枚で買おうと言う者がでてきてしまったのか。

 もしくは、私が魔法使いならこんなことにはならなかったのかもしれない。

 あの時、何かが見えるふりをしていたらどうなっていただろう・・・・・・。




 考えるのはやめよう。

 いまさら「if」の話をしたところで、どうにもならない。


 私はこれから一人で、泥みたいにただ死ぬまで生きるしかないんだから。



---------

 私は揺れる馬車の中で、目を開けた。


 考え事をしながら、少し眠っていたようだ。馬車の隙間から光が漏れている。もうお昼ぐらいの時間なのかもしれない。


 お腹がすいていた。こんなときでもお腹がすくなんて、私は、けっこう図太いみたい。


 なんだ、親に見捨てられたら生きてけないような気がしたけれど、別に結構生きていけるものなんだな人間て。

 


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